今も青き、呪術アーカイブ   作:ネログリフィス

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まだ第一話にもかかわらず多くの反応をいただきありがとうございます。
引き続き、頑張って書いていきます。


移り変わっていく非日常

あれからどれくらい時間が経ったのかわからないが、ひとまず連邦生徒会の拠点から約30kmほど離れたD.U.外郭地区に着いた。

 

「いくらなんでも多すぎだろ・・・。」

 

ただ走って移動するだけならまだしも、10回以上も不良グループと交戦したこともあり、疲れからか愚痴を零す。全てがほぼ瞬殺といっても、ただただ数の多さに苛立ちを覚えていた。

 

あと単純に眠い。三徹目明けであることを完全に忘れていた。

 

「一人で来るんじゃなくて、早瀬と生塩も連れてくればよかったな。」

 

タタタタタ!

 

脳内で突如流れ出した『相変わらず後先考えないんですからっ!!』と言う後輩の声をかき消すように、少し離れたところから発砲音が聞こえてくる。一応外郭地区といっても、ここも連邦生徒会が統括している地域である。それにも関わらず、この治安の悪さはハッキリいって異常だ。

 

「また、不良たちが暴れているのか・・・・ん?」

 

ヒュオオオオーーー!!

 

音に釣られるがまま接近を試みようとするが、何かが降ってくる音に気が付いて足を止める。

 

「いやっ、ふざけn────!!」

 

ドカアアァァァァン!

 

「ぎゃあああああああああ!!」

 

突如起こった凄まじい爆風に巻き込まれて、身体が宙へと放り出される。そして、そのまま吹き飛ばされた後、重力に従って地面に叩きつけられた。幸い呪力で身を守っていたため、無傷で済んだが、少しでも遅れたら死んでいた。

 

「いたたた・・・普通街中で戦車か何かをぶっ放すかよ、普通。」

 

正直銃火器のことは使わないこともあって、詳しいことは分からない。ただ街中で使うようなものでないものが降ってきたことは分かる。イカれてやがる。

 

「そこの方、大丈夫ですか!?」

 

地面に叩きつけられて寝転がったままでいると、一人の女の子が青い空に被さるように顔を覗かせて声をかけてくる。

 

「ちょっと服焦げたけど、大丈夫。」

 

眼鏡をかけたエルフ耳の女の子に対してそう答えると、身体を起こして立ち上がる。先程の爆風で服に付いた砂埃や炭を手で払いながら、彼女へ尋ねる。

 

「君は、その腕章からしてゲヘナの風紀委員かな?」

 

「はい。ゲヘナ学園1年生 風紀委員会所属の『火宮(ひのみや) チナツ』です。」

 

『風紀』の文字が刺繍された赤い腕章を左腕につけた彼女は、そう答えると礼儀正しく一礼をする。『ゲヘナ学園』もまたミレニアムと並ぶキヴォトス三大学園の一つである。

 

「火宮さんだね。俺は────」

 

「おーい、チナツ~!」

 

こちらも火宮さんに自己紹介を返そうとすると、さらに後ろの方からグレーのスーツを着た男性が走ってやってくる────って、普通の人間で大人の人!?

 

「先生、大丈夫ですか?」

 

「はぁはぁ・・・ありがとうチナツ。もうちょっと体力をつけないとだね、ははは・・・・。」

 

火宮から『先生』と呼ばれた男性は到着するや否や、両手を膝について肩で息を整え始める。このキヴォトスに来てから、自分以外の男という意味でも、大人の人間という意味でも、初めて見る得体のしれない存在に、俺は少し戸惑う。

 

「えっと、あなたは?」

 

そう尋ねると、ようやく息が整ったのか、彼は顔をあげてシャツの胸ポケットから名札を取り出しながら答える。

 

「私は、連邦捜査部のS.C.H.A.L.E(シャーレ)の先生だ。よろしくね。」

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。」

 

つまり、2人の話をまとめるとこうだ。

 

キヴォトスの中枢に位置する巨大建造物『サンクトゥムタワー』は、ただデカいだけの建物だけでなく、連邦生徒会の行政業務に必要不可欠な最重要建造物である。しかし、その最終管理者である連邦生徒会長が数週間以上前から失踪中であり、連邦生徒会の管轄から外れてしまい、宙に浮いた状態なのだ。

 

そして、その連邦生徒会長が行方不明になる前に設立していた超法規的組織『連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)』の担当顧問として、先生が呼ばれた。現在は、先述したサンクトゥムタワーの制御権を取り戻すべく、シャーレの部室にある『とあるモノ』を目指して向かっているところらしい。ただ、先程俺が爆風に巻き込まれた通り、現在D.U.外郭地区では矯正局から脱走した停学中の生徒が不良たちを先導して、シャーレビルを占拠しようとしているということで戦闘が起こっている。

 

現在は、火宮さんを含んだ3人の生徒と協力して、不良たちの撃退を行っているとのことだ。

 

「そういうことでしたら俺も是非協力させてください。ここ最近の治安の悪さには、辟易していたんです。」

 

先生は、俺と同じようにキヴォトス外から来た人間であり、銃弾一発が致命的になりかねない。そのため、不良たちを撃退する前衛、支援や戦闘指示出しを行う後衛という形式で進んでいる。火宮さん以外の2人は、前衛の方で戦っているらしい。

 

「本当かい?助かるよ!ただ────」

 

先生は嬉しそうに答えるが、直後俺の頭の上を見て少し不安げな表情になる。何となく言いたいことは伝わった。

 

『君も私と同じで、キヴォトスの外から来たんじゃないか?もしそうなら、同じように一度の被弾が致命傷になるのではないか?』

 

そう言われるよりも早く、俺は答える。

 

「大丈夫ですよ。俺、ミレニアムだと結構強い方なので。」

 

先程から聞こえていた銃撃戦の音が近くなってきた。どうやら先行していた前衛に追いついたらし

い。

 

一発でも当たったら致命傷なら、一発も当たらずに相手を倒せばいい。呪力を練り上げて、足元を強化し終えると、俺は戦いの最前線へと飛び出す。

 

「な、なんだ!?」

 

「(数は、12人か。)」

 

突然飛び出してきた俺に怯みながらも、不良たちはこちらに向けて銃弾を放つ。

 

「なんで当たらない!?」

 

「もっとちゃんと狙え!!」

 

ただ前に直線的に進むのではなく、横方向への移動や遮蔽物、時たまに織り交ぜるフェイントを使っていけば、案外当たらないものだ。基本的に彼女たちは、訓練された兵士ではなく、ちょっとした小競り合いで日常的に銃火器を使うだけの学生である。ほんの少し遊びを混ぜてやるだけで、簡単に惑わされる。

 

「ぐべっ!」

 

壊れたガードレールを足場にしてバネの要領で加速し、先頭の不良の顔面を呪力で強化した拳で殴りつける。こちらの打撃が届く範囲に入ってしまえば、簡単に攻守は逆転する。

 

「ぐっ!?」

「がっ!?」

「うべっ!?」

「ごほっ!?」

 

不本意な接近に対する対処方法を確立してなければ、銃よりも打撃の方が早く、柔軟性も効く。一人一人、確実に意識を刈り取っていき、1分足らずで決着となった。

 

「相変わらず容赦ないですね、魚里さん。」

 

前衛を担っていた2人のうち、今声をかけてきた1人は顔見知りだった。

 

彼女は『羽川(はねかわ)ハスミ』。『トリニティ総合学園』の正義実現委員会、通称正実の副委員長だ。名前からは少し過激な印象を受けるが、その実態はトリニティの治安維持活動を行っている普通の治安維持組織である。

 

「まあ、見ての通り丸腰だし、下手に意識残すように手加減して背中から撃たれたら、こっちがお陀仏だからさ。」

 

俺自身セミナーの副会長ということもあり、政治の場に赴くことも少なくない。その時トリニティのトップ層が参加するのであれば、自ずと護衛として正実も同席するため、羽川さんとは顔見知りなのだ。

 

「(とはいえ、『相変わらず』という言葉が出るほど、肩を並べて戦ったことないんだけど・・・。)」

 

そんなことを思っていると、前衛を任せられていたもう一人の銀髪の少女もこちらにやってくる。

 

「あなたが噂の魚里さんですね。初めまして、トリニティ自警団の守月(もりづき) スズミです。」

 

「はじめm─────って、噂のってなに!?俺、トリニティでなんか変な噂立ってるの?!」

 

丁寧な挨拶に応えてこちらも挨拶をしようとしたが、聞き捨てならない言葉が聞こえてきて、即座に聞き返す。

 

「いえ、なんでもありません。」

 

「絶対なんかある顔だろ、それ・・・。」

 

ジトっとした目で俺から目を逸らす守月さんから何とか噂について問い質していると、先生と火宮さんが追いついた

 

「皆さん、お怪我はありませんか。」

 

「ええ。少々敵の数が多く、攻めあぐねていたところに魚里さんがいらっしゃって全部片づけてしまいました。」

 

「本当かい?それはすごいなぁ・・・・って何しているの?」

 

「どうやらトリニティで噂になっている件について、聞き取りをしているようですね。」

 

そう言われた俺は、なんとか守月さんから自分の噂について聞き出そうとしていた。正直身に覚えがない。直近ではトリニティに行ってない上に、最後に行ったのも例の条約についての会議にミレニアム代表として参加した時だ。別に変なことをしたつもりもないのだが・・・・

 

「せめて、良い噂か悪い噂かくらいは教えてくれよ。」

 

「・・・・どっちもですね。」

 

「どっちもってなんだよ!!」

 

「別に気にしなくてよいと思いますよ。」

 

「気になるんだよ!」

 

ゴゴゴゴゴ────

 

羽川さんと守月さんに噂についてはぐらかされていると、突如鈍い車輪の駆動音が響いてくる。

 

「気を付けてください、巡航戦車です・・・・・!」

 

火宮さんがそう言った瞬間、音の主が目の前に現れる。

 

「クルセイダー1型・・・・!私の学園の制式戦車と同じ型です。」

 

「さっき俺のことを爆風でぶっ飛ばしてくれたのはあれか。」

 

噂について問い質すのは後回しだ。というか、さっきぶっ飛ばされたことを思い出したら、段々ムカついてきた。

 

「どうせ、不法にPMCに流れたのを買っただけだろ────速攻でガラクタにしてやる!」

 

再び呪力を身に纏い、構えを取る。流石に拳だけで重装甲をぶっ壊すのは骨が折れるが、羽川さんのスナイパーライフルなら貫通できるだろう。

 

「ハスミは、遮蔽物に隠れて隙をついて攻撃、チナツは、みんなの回復に専念して!あとの2人は、ハスミの攻撃の隙を作るんだ!」

 

先生も有効打を持つ羽川さんを主軸とした戦術を考え、指揮を飛ばす。

 

「了解。」

 

「分かりました!」

 

守月さんは、そう答えると俺に目を配らせた後、遮蔽物を駆使しながらクルセイダーへ近づいていく。

 

「いくら数を集めても無駄だからって、戦車に乗って勝てると思ったら大間違いだぞ~!このウスノロが!!」

 

一方で、俺は遮蔽物を使わず、わざとらしく目立ちながら距離を詰める。

 

ドカアアァァァァン!

 

あっさりとヘイトをこちらに向けることができた。搭乗している不良たちが顔を真っ赤にして、怒り狂っているのが目に浮かぶ。

 

「よっ!ほっ!」

 

次から次へと砲弾が飛んでくるが、すべて避ける。確かに当たったら銃弾とは比べ物にならないが、使い慣れていない分狙いが滅茶苦茶だ。それに、守月さんも準備ができたようなので、隙を見つけて目元を腕で隠す。

 

「これは痛いですよ、閃光弾投擲!!」

 

守月さんが投擲したスタングレネードは、クルセイダーの覗き窓付近に直撃したと同時に、激しい光と音を放つ。そして、光と音で操縦者たちがパニックになったのか、さらに狙いが滅茶苦茶になってきた。

 

その隙をついて、クルセイダーとの距離を一気に詰める。

 

「うおりゃああ!!」

 

呪力を込めた足で、砲身を思い切り蹴り飛ばす。流石に壊すとまではいかないが、砲身が変な方向に曲がってしまったので、まともに砲撃できないだろう。

 

それならばと車輪を限界まで動かし、クルセイダーはこちらに向けて突撃してくる。

 

「目標補足、行きます!」

 

────しかし、すでに羽川さんの攻撃がその考えを摘み取った。彼女の放った渾身の一撃は、黒い衝撃波を発生させながら、クルセイダーの装甲を貫通する。それによって、致命的な箇所を損傷したのか、何度か小さな爆発が起こった後、クルセイダーは動かなくなってしまった。

 

どうやらこちらの勝ちで終わったらしい。

 

「お疲れ様です、先生。いい指揮でした。」

 

「うん、ありがとう────って、顔に傷が・・・。」

 

先生に言われて右頬を拭ってみると、血がついていた。恐らく砲弾によってコンクリートが砕けた破片が飛んで切ったのだろう。

 

「ああ・・・大丈夫ですよ。こんなの唾つけとけば治ります。」

 

「いえ、きちんと治療しておきましょう。痕になってしまったらよくありません。」

 

適当に放置しようと思ったら、眼鏡のレンズを光らせながら、火宮さんが俺の背後に立って言う。・・・・もしかして、出番がなくてちょっと拗ねてる?

 

ひとまず大人しく従って、簡単な治療を受ける。消毒液で消毒した後、普通の絆創膏を貼ってもらう。

 

「これでよし、です。」

 

「ありがとう、火宮さん。」

 

火宮さんにお礼を言ってひと段落したところで、羽川さんが先生へと尋ねる。

 

「さて、これでシャーレの部室を奪還し終えたのですが、我々はどうすればよいでしょうか?」

 

「さっきリンちゃんから、そろそろ着くから地下で会おうって通信が来たから、ひとまず待機かな。」

 

・・・・リンちゃん?

 

「分かりました。それではお待ちしています。」

 

こうして、俺たちはシャーレビルの外で待機することになった。

10分ほど経つと、先生が片手にタブレットを持って出てきた。話を聞くと、無事にサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻せたらしい。しばらくすれば、不良たちも次第に沈静化していくように、連邦生徒会が執り成してくれるとのことだ。

 

「それじゃあ、今日はこれで解散ってことになるかな。」

 

結局連邦生徒会に殴り込みをかけることなく終わってしまった。だが、事態が解決するのならそれでいい。あとで、早瀬と生塩に連絡をしておこう。

 

「ええ。ひとまずはお別れになりますが、近いうちにぜひ、トリニティ学園に立ち寄ってください、先生。」

 

羽川さんがそう言った後、その場を立ち去る。それを追うようにして、守月さんは頭を下げて彼女の後を追って去っていった。

 

「私も、風紀委員長に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃった時は、ぜひ訪ねてください。」

 

続いて、火宮さんも自分の自治区へと帰っていった。

 

「じゃあ、俺も今日は帰ります。また困ったことがあったらいつでも呼んでください。ミレニアムにもいつか遊びにきてください。」

 

先生に別れの挨拶をした後、俺はゆったりと帰路につくのであった。そういえば、なんか忘れているような気がするんだけど・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────あっ、羽川さんと守月さんに、噂のことを聞くの忘れてた。」

 

ミレニアムまで残り半分くらいのところで思い出して後悔するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日後、俺はシャーレに来ていた。

あれから連邦生徒会が行政権を取り戻したこともあり、不良たちの暴動は大分沈静化されてきており、キヴォトスには平和な時間が流れていた。

 

「困ったことがあったらいつでも呼んでくださいって言いましたけど・・・・早すぎるでしょ・・・・」

 

ただ、俺は全く穏やかな気分でなかった。

 

「────それと、この書類の山はなんですか!?」

 

目の前に山のように積まれた書類を指しながら、苦笑いを浮かべている先生に尋ねる。下手したらこの前のセミナーにできていた書類の山よりも多いかもしれない。それもすべてに関連性がなく、バラバラの内容である。

 

「ははは・・・・いや~私一人で何とかやろうと思ったんだけど、あまりにも多すぎて・・・・『シャーレの当番制度第一号』ってことで呼んじゃった!」

 

「け、結局書類仕事やらないといけないのかよぉぉぉぉおおおお!!」

 

先生と4徹して、片づけた。

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