ネフィリム 超吸血方舟譚   作:ばりるべい

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もう少し1話ごとの文字数多い方がいいですかね?


吸血鬼の便利屋

 

この世界に来てから一週間が経った。

ミカは未だに見つけられていない。

 

“こちらのミカ”に教えてもらったブラックマーケットという場所にたどり着き、そこでかつての様に殺し屋を始めた。

吸血鬼にとって殺し屋は正に天職だ。

もっとも俺以外に殺し屋をやっている吸血鬼なんて一人もいなかったが。

何故なら吸血鬼に金なぞ必要ないからだ。

血を吸っていれば吸血鬼は生き続けられる。

食事が欲しくなったら血を吸った時にその人間を食えばいい。それか人間共の食料を奪い取るか。

 

俺はブラックマーケットの一角の空き家を勝手に拝借して事務所を構えた。

ブラックマーケットなんて大層な名前で呼ばれているのでそれなりに依頼が来るかと思っていたが、驚いたことにこれが全く来なかった。

どうもここの連中は人を殺す程の肝っ玉は持ち合わせていない様だ。

まったく笑わせてくれる。

 

仕方がないので便利屋に鞍替えした。

そうするとそれなりに依頼が来る様になった。

俺はたった一週間の間にかなり有名になった。

どんな内容でも即座に達成してしまうからだ。

はっきり言ってほとんどの依頼は俺にとって造作もない様な仕事ばかりだった。

まぁその辺は外の世界で殺し屋をやっていた時もそうだったが。

 

仕事の報酬を使って情報屋にミカに関係している情報を探らせたが、送られてきた情報はほぼ全て“こちらのミカ”のものだった。

 

俺自身、仕事の合間を縫って様々な学園に赴いて情報を募ったが有益な情報は何一つ得られなかった。

いっそミカが吸血鬼だったのならもっと簡単に見つけられただろうに。

依頼達成の報告を雇い主に送った後、安物のソファーに寝そべりながらそんな事を思った。

焦ってはならないが、どうもこの地は北アメリカ大陸程の面積がある様なので早いとこ見つけ出さなければまずい。

 

「ミカ…お前は何処にいる…」

 

 

 

 

小鳥遊ホシノは初めて獣耳の後輩に出会った時の事を思い出していた。

今、彼女の目の前には黒髪の小さな女の子が寝息を立てている。

ここはアビドスの外れにある廃ビルの入口だ。

いつものように夜間のパトロールに出かけたホシノはぼろ布にくるまって眠る人影を発見した。

最近アビドス付近に現れるチンピラを思い出し警戒しながら近づいてみると、チンピラとは似ても似つかぬ小学生くらいの女の子だった。

 

一瞬起こそうかとも思ったがまずは後輩たちに連絡することにした。

と言っても今は夜の11時前だ。

もうみんな寝ているかもしれないなと思いつつ、モモトークのグループに画像を添付してメッセージを送った。

 

『廃墟の入り口に女の子が寝てるんだけどどうしよう』

 

十秒と経たない内にノノミが既読したと表示された。

 

うへ、さすがだな~

 

ホシノは苦笑しながら返信を待った。

 

『ちょっとそれどこ⁉』

 

ノノミよりも早くセリカが反応した。

 

『ん、学校に連れて帰るべき』

 

『まずはヴァルキューレに連絡した方が…』

 

『皆落ち着いてくださいっ』

 

既に全員がモモトークを開いている様だ。

あっという間に収拾のつかない大騒ぎになった。

目で追えないほどの速度で更新されていく画面を見て、ホシノは全員が閲覧できる場所に送ったのは失敗だったかもしれないと思った。

 

「んぅ…誰?」

 

少女が目を覚ました。

目が合った瞬間、少女に神秘が宿っていない事を直感的に理解した。

ホシノは片手で額を押さえて天を仰いだ。

 

 

 

 

翌日、廃校を回避するために設立した対策委員会の部屋に入ると、いつもより一時間も早く全員が学校に集まっていた。

 

「おはよう、まだ朝なのに皆早いね~」

 

ホシノは寝不足な目をこすりながら後輩たちに話しかけた。

 

「おはようじゃなくて!あの子は!?」

 

セリカが食い気味に昨夜の少女の安否を尋ねた。

 

「セリカちゃん、挨拶は大事ですよ?」

 

「そうだよ、セリカちゃん」

 

ノノミが微妙にズレた事を言い、1番寝不足のように見えるアヤネがノノミに同調した。

 

「アヤネ、ちゃんと寝た?」

 

シロコもアヤネの異変に気づいた様だ。

 

「えぇと…実はあんまり」

 

「ん、実はアヤネが1番寝付けなかった」

 

「ちょっ、シロコ先輩!」

 

アヤネが恥ずかしがってシロコを咎めるが、皆にこにこと眺めているだけで助け舟を出そうとする者は現れない。

その後、全員から散々揶揄われてしまい若干拗ねてしまったのだった。

 

「あの子は視聴覚室に敷いた布団の中で眠ってるよ〜」

 

「お名前とか聞きましたか?」

 

ノノミの問いにホシノはかぶりをふった。

 

「いや〜それが凄い疲れてたみたいでね〜。目を覚ました後、二言くらい喋った後また寝ちゃったんだよね。仕方がないからおじさんがおぶって連れてきたってわけ」

 

「じゃあまだ何も情報は得られていないんですね」

 

「とにかく起きてくるまで待つしかないわね」

 

セリカの台詞に全員が頷いた。

 

 

 

 

9時を下回った頃、例の少女が目を覚ました。

小さくあくびをして目をこすると少女はおなかすいたとつぶやいた。

それから先はまたてんやわんやの大騒ぎとなった。

セリカとアヤネが大慌てで小さい机や椅子を倉庫から引っ張り出し、その間にシロコがロードバイクで近場のコンビニに食事を買いに行った。

ノノミとホシノは自分達の身分を説明し、少女の事情を聞き出そうとしていた。

 

「お嬢ちゃん、お名前はなんていうの?」

 

「…ミカ」

 

「ミカちゃんっていうんだね~」

 

「ミカさんはどちらから来たんですか〜」

 

「えっと…日本」

 

「…それどこ?」

 

ミカはホシノを見つめながら首を傾げた。

 

「お姉ちゃんたちは日本人じゃないの?」

 

「えっと…学園の名前?」

 

ミカはぶんぶんと首を横に振った。

 

「…じゃあ土地の名前?ごめんけど聞いた事ないなぁ。ノノミちゃん知ってる?」

 

「うーん…私も聞いたことないですねぇ~」

 

二人はお手上げだとばかりに両手を挙げた。

 

コンビニへミカの食事を買いに行っていたシロコが戻ってきた。

セリカとアヤネも子供用の机を持って来てミカの前に設置した。

 

「はい」

 

そう言ってシロコはビニール袋の中から10個程のおにぎりとペットボトルのお茶を手渡した。

ミカは慣れない手つきでおにぎりを包む外装を引っぺがすと、手が汚れるにも構わずがっついた。

 

「おなかすいてたんですねぇ~」

 

「どの位食べてなかったの?」

 

アヤネがかがんでミカと目線を合わせながら聞いた。

 

「えっと…このくらい」

 

ミカは三本指を立てた。

 

「「えぇっ⁉そんなに⁉」」

 

セリカとアヤネは驚きのあまりハモった。

 

「ミカちゃんは…お父さんとかいる?」

 

ホシノはミカの現状を考慮して遠慮がちに聞いた。

 

「いない…でも、ヨブがいる」

 

「ヨブ?」

 

「保護者の方でしょうか…」

 

ミカは二つ目のおにぎりに手を伸ばしながら小さくうなずいた。

 

「…それで、そのヨブさんは今どこに…?」

 

「…わかんない」

 

おにぎりの外袋を外していたミカの手が止まった。

 

「大丈夫だよ。おじさんたちがその人を見つけてあげる。それまでここにいなよ」

 

「…いいの?」

 

ホシノを見上げたミカの目はうるんでいた。

 

「いいよ。ねぇみんな?」

 

対策委員会の全員が力強く頷いた。

 

「ありがとう…」

 

ミカは目をこすると再びおにぎりに手を付けた。

 

 

「…ところでおじさんってなに?」

 

「うへ…」

 

 

 

 

事務所に設置した固定電話が鳴った。

目を瞑って横になっていたヨブは起き上がるとうっとおしそうに受話器を取った。

 

「…もしもし」

 

ヨブは不機嫌さを隠そうともせずに言った。

 

「便利屋のヨブ様ですね」

 

電話の相手は機械人形の様だ。

若干エコーのかかった様な低い男の声だった。

 

「確かにそうだ。依頼か?」

 

「左様です。申し遅れました、我々はカイザーPMC。民間軍事会社です」

 

「PMC?そんな連中が何の用だ」

 

「ですから依頼です。」

 

「…聞かせろ。受けるかどうかは聞いてから決める」

 

ヨブの勘が告げていた。

彼らは信用できないと。

 

「アビドスという名の廃校寸前の学校がありまして。そこを襲撃してほしいのです」

 

「…それは犯罪じゃないのか」

 

「詳しくは説明できかねますが土地の権利はこちらが持っていますので、どちらかと言えば彼女らの方が不法滞在者です」

 

「…」

 

「どうでしょう?金額はそちらが提示する額をご用意できますが。」

 

ヨブは金には困っていなかった。だが…

 

「…お前らカイザーってのはでかいグループだったな」

 

「…左様ですが」

 

「報酬は金じゃなくていい。情報だ」

 

「と言いますと?」

 

「俺の要求はとある女の子の情報だ。詳しくは達成してから話す」

 

「…少々お待ちください。上の者と掛け合ってきます」

 

二分ほど会社のCM曲らしきものが受話器から流れた。

 

「…大変お待たせ致しました。理事は構わないと申しております」

 

「契約成立だな」

 

「後日改めて契約書をお送りいたします。では失礼いたします」

 

 

後日送られてきた書類にサインをしたヨブは同じ仕事を受けたと言う同業者の元へ向かった。

 

 




最近モチベーションが低下しているので…
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