ネフィリム 超吸血方舟譚   作:ばりるべい

6 / 7
今回人によってはキャラブレと感じるかも…
会話文が非常に多いです。あと色々間違えてるかも…


オッカムの剃刀ー吸血鬼の存在証明ー

 

シャーレを奪還してから一週間が経った。

 

あの後、ワカモは4人が到着する前に姿を消した。

ランドルフは左腕のダメージが残っていたので、去っていくワカモの後ろ姿を眺めるだけにとどめた。

勿論追いかけようと思えば出来なくはなかったのだが…

 

その後は色々と大忙しだった。

到着した4人とリンには散々なじられたり。

チナツに右肩に包帯を巻いてもらいながらリンから渡されたタブレットを起動すると、崩壊した校舎と言う謎の空間に意識だけ飛ばされたり。

そこで眠っていたスーパーAIを自称する少女「アロナ」との邂逅。

左腕を骨折したので病院に担ぎ込まれ、結局シャーレの活動開始は一週間延期になった。

 

そして今、ランドルフは目の前に大量に積まれた書類に頭を抱えていた。

一週間の内にランドルフの背丈を優に超える量の紙が積み重なっていた。

ランドルフは現在、左手が使えず作業効率が低下しているので書類は増えていく一方だ。

幸い、ユウカを始めシャーレ奪還の立役者の4人組がちょくちょく顔を出して手伝ってくれるので何とかなっている。

 

今日もユウカが午前中からシャーレの書類整理を手伝ってくれている。

 

彼女には頭が上がらんな…

 

ランドルフは対面する位置に座って次から次に書類を分類していくユウカを見ながらそう思った。

休憩時間に彼女が入れてくれたコーヒーに口をつけながらパソコン内のファイルを整理していく。

 

ふとメッセージボックスに新着のメールが届いているのを発見した。

シャーレでは各学年や生徒の問題に介入できるので、生徒や学園からの多種多様な内容のメールが送られてくる。

中には嫌がらせや脅迫じみたものも。

 

きちんとした内容だったら良いんだが。

 

クリックして開くとアビドスという名の学校から送られてきたものだった。

内容はミカと言う子供を保護したのでそちらで保護者の情報などを照会してほしいとの事だった。

 

ミカ?

 

ランドルフはヨブが連れていた少女を思い出した。

かつてミカを助ける為にランドルフは吸血鬼以上の怪物と戦って瀕死の重傷を負った。

目を覚ますと病院のベット上で、ミカやヨブの事を尋ねても死体は見つからなかったと聞いたので何処かで生きているだろうと思っていた。

 

いや、あの子とは限らない。

 

むしろその可能性は低いだろう。

そう思い直してメールに添付されている画像ファイルを開いた。

 

知った顔だった。

 

ランドルフはコーヒーを吹き出しそうになって咳き込んだ。

 

「どうかしたんですか?」

 

ユウカが怪訝そうな表情でランドルフの顔を覗き込む。

 

「あぁ、いや…ちょっとアビドスとか言う所に行ってくる」

 

「はい?」

 

事情を知らないユウカに状況をかいつまんで説明した。

 

「…事情はわかりました。でも。ダメです」

 

「なぜだ」

 

「わざわざ先生がアビドスに赴かれる必要がありません。メールにも照会を依頼されているだけでこちらまで来て欲しいとは一言も書かれてません。そして何より、目の前の書類が片付いていません」

 

ユウカは断固認めないと言わんばかりに畳み掛けた。

 

「…だが彼女がこの世界に来ていると言う事はヨブもこの世界に来ているかもしれない」

 

「…だったらなんだって言うんです?」

 

「吸血鬼は殺さなくては」

 

ランドルフの瞳に苛烈な復讐の炎が灯っているのをユウカは幻視した。

それでもユウカは説得を諦めていなかった。

 

「…先生は“オッカムの剃刀”と言う言葉をご存知ですか?」

 

「…いや、知らん」

 

「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでないとする指針です。例えば、『宇宙は神の意思によってビックバンが発生した事で生まれた』という説明があった時、存在を証明できない“神の意思によって”の部分は不要なので削ぎ落とす、という事です」

 

「あぁ、聞いた事があるぞ。ケチの原理ってやつだろ」

 

「違います!思考節約の原理ですっ!」

 

「だが、神の意思は本当に証明できないのか?」

 

「オッカムの剃刀は真偽を判定するものではありませんし、存在を否定するものでもありません。オッカムの剃刀に従って削ぎ落とされたからと言ってその仮定が間違っているという事では無いんですよ」

 

「だったらあの子がここにいるからヨブもここにいる可能性があるってのはなんら可笑しくないだろう。あらゆる状況を想定するのはむしろ必要な事だ」

 

「それは目の前にある先に解決すべき問題を無視して良い免罪符にはなりませんよ」

 

「見解の相違だな。君は吸血鬼より書類の方が優先すべき課題だと思っているわけだ。俺はそうは思わん」

 

「私も吸血鬼が書類より優先すべき事項だとは思えません」

 

「君は吸血鬼の恐ろしさを知らない」

 

「そうですね。なんなら実在すら疑っています」

 

議論はどんどん白熱していった。

 

「だが、実に残念な事に実在する」

 

「では証拠を見せて下さい」

 

「そんなものはない。いや、俺が元いた世界にはあったがここにはないだろう」

 

「…いえ、一つだけあります」

 

「なに?」

 

「吸血鬼をここに、正確には私の目の前に連れてきてください」

 

「生きたままか?」

 

「死体より生きている方がサンプルとしては好ましいでしょう」

 

「それはまず不可能だ。吸血鬼を生きたまま捕まえた前例はない」

 

「前例がない事は不可能である事の根拠にはなりません」

 

「…そもそもキヴォトスに吸血鬼がいるか分からない」

 

「そうですね。先生が言うヨブもいないと思いますが」

 

「だから、それを確かめる為にアビドスへ行くんじゃないか」

 

「ですから、起きる“かもしれない”問題より目の前の課題を先に解決してくださいと言っています」

 

「おい、議論が一巡したぞ」

 

「…えぇ、そうですね」

 

ランドルフは必死に頭を回転させた。

 

「吸血鬼は存在する。信じられないなら逆に吸血鬼が存在しない事をユウカが証明すれば良い」

 

我ながら名案だとランドルフは思った。

 

「待ってください。何かがないを証明するのは『悪魔の証明』と言って、事実上不可能です。」

 

「なぜ不可能なんだ」

 

「先生がおっしゃっている事はこう言う事です。“白いカラスは存在する。白いカラスを捕まえてくる事は難しいので、君が白いカラスがいない証拠を見せてくれ”」

 

「…そうだ」

 

「白いカラスはたった一羽の白いカラスを捕まえてくれば証明できます。しかし、白いカラスの非実在性を証明する為には全てのカラスを捕まえなければなりません」

 

「…全てのカラスが黒い事を証明することが逆説的に白いカラスの非実在性の証明になると言うことか」

 

「そう言うことです。だから不可能なんです。吸血鬼の非実在を証明する為にキヴォトスの住人全員を集める事は合理的とは思えません」

 

「成程…」

 

ランドルフはばつが悪そうに緩くなったコーヒーに口をつけた。

 

「…別に行くなとは言ってませんよ」

 

同じようにマグカップを口に運びながらユウカは前言を覆す発言をした。

 

「…さっきまで行くなって言ってじゃないか」

 

「書類を片付けてからなら構いませんよ…その…私も手伝いますから」

 

ユウカは頬を僅かに染めながらか細い声で言った。

 

「…わかったよ。行くのは終わらせてからな」

 

「そうしてください」

 

ランドルフは残ったコーヒーを全部飲み切ると書類に向かい合った。

 

「じゃあ早速今日から徹夜だな」

 

「ちゃんと寝てください」

 

 

 

 

「どこだここ…」

 

ランドルフは道に迷っていた。

ここはアビドス高等学校自治区…のどこかだ。

 

地図を持ってきたのに迷ってしまった…

 

ランドルフはポケットに入れている内にくしゃくしゃになってしまった地図を取り出した。

シャーレの資料室にあった地図の中でも比較的新しいものを持ってきたのだが、地図に書いてある道がなくなっていたりして使い物にならなかった。

 

もうアビドス自治区に入ってから数時間が経過しているが一向にアビドス高校に辿り着けない。

それどころか校舎すら見えて来ない。

日はさんさんと輝き、ランドルフの体力をじわじわと奪っていった。

 

「…アロナ、道わかるか」

 

スーパーAIを自称する少女に一縷の望みをかけて話しかけた。

 

「…ぐ、ぐぅ」

 

「寝たふりするな」

 

自称スーパーAIに期待するのはやめる事にした。

こうなったら地道に自力で学校の位置を特定するしかない。

ランドルフはポケットに地図を適当にしまって歩き出した。

 

後ろから自転車の車輪が大地を滑る音が近付いてきた。

ランドルフは振り返って音の主の姿を拝んだ。

長めの銀髪に獣耳が生えた青い制服の少女だった。

ランドルフは通りすがる彼女に話しかけた。

 

「お嬢ちゃん、アビドス高校の人かな」

 

「お客さん?珍しいね…」

 

銀髪の少女はランドルフの手前で急ブレーキをかけて停止して自転車から降りた。

 

「アビドスに何か用?」

 

「お嬢ちゃん達が送ってきたメールを見て来たんだ」

 

「ん…アヤネが言ってたシャーレの人…?」

 

「そうだ…そのアヤネちゃんがメールをくれたのか。俺はミカちゃんと知り合いでね」

 

「!…もしかして貴方がヨブ?」

 

「いや、違う。俺はランドルフだ。ヨブもここに来ているのか?」

 

「分からない…ミカもヨブを探してる… あ、私は砂狼シロコ」

 

「俺もヨブを探してるんだが見つからなくてね…所でアビドス高校への道が分からなくて困ってるんだが」

 

「そう…アビドスはこっち。」

 

そう言うと銀髪の少女は自転車に跨って走り出した。

自転車とは思えない速度で彼女は遠ざかっていく。

ランドルフは慌てて大声で彼女を呼び止めた。

 

「ん。ごめん…自転車は押していくね」

 

 

 

 

ミカはノノミに渡されたキャンディを舐めながら暇を持て余していた。

対策委員会の部室にはミカの他に誰もおらず、ミカは椅子に座って足をぶらぶらさせていた。

と、突然部屋のドアが開いてシロコが入って来た。

 

「…皆んなは?」

 

「分かんない。でも、学校の中にいると思うわ」

 

「そう…」

 

扉の影から一際背の高い人が入ってきた。

 

「久しぶりだな…お嬢ちゃん」

 

「…おじさん?」

 

ミカの目尻に涙が浮かんだ。

 




ユウカはもうちょっと理系っぽいと言うか、頭いい所がフォーカスされても良いと思ってこういう内容になったんですが、作者より頭の良いキャラは出て来ないってのを凄く実感しました。
俺バカだからユウカを頭良い感じに書けないわ…_(:3 」∠)_
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