恋と真実 作:1人の深空ハンター/超勉強不足
私『………』
敵のEVERグループについて、少しでも知っておきたい。
でもできればシンに会うのは避けたい。
N109区に行く踏ん切りがつかずにウロウロしていた。
私『(ええいっ!)』
両頬を自分でバチっ!と叩き、気合を入れた。
行く前から怖気付いてたら、きっとシンから必要なことは
聞き出せない。行くしかない。
270HM(=バイク)に乗りN109区へと向かった。
私『(ん?あれは…)』
アキラ『おっ、きたきたー』
アキラとカゲトが屋根の上から飛び降りた。
カゲト『ボスがもうすぐ来るっていうから見にきた!』
私『そう。お迎えありがとう』
どこからか私の動きは見張られていたらしい。
ここに来ると初めて来た時のことを思い出す。
本当に本当に本当に酷い目に遭い苦労したものだ…。
私『(今は感傷に浸ってる場合じゃないか)』
重い扉の向こうにシンが座っていた。
シン『ようこそ再びN109区へ、とでも言ったほうがいいか?』
やっぱりシンのもつ独特の雰囲気には未だに慣れない。
私『いらない。それより聞きたいことがあるの』
シンは腕を組んでから顎で先を促した。
私『もうすぐこの国で… EVERグループ内の
軍需産業のせいで戦争が始まるって貴方は知ってる?』
シン『なんだ。そんなことか。ずっと奴らはこそこそ準備してきてただろ』
シン『戦争はビジネスだ。戦争が生まれるから武器が売れるんじゃない。
武器を売るために戦争を起こす。当たり前の話だろ?』
シンはコインをクルクルと手のひらで弄ぶ。
シン『全ては偽善的な自作自演(=マッチポンプ)だ。』
ふっとシンは笑う。
シン『まぁ、今の羊達はそれすら分からなくなってるのかもしれないがな』
やはりシンは知っていたのだ。EVERグループの動きを。
私『……戦争がビジネスなことは知ってる。』
でも…何かが私の中で引っ掛かってる。
戦争はビジネス…。そして通貨発行権を握っているEVERグループ内のロス・チャイルド…。
お金…通貨発行権………
私『待って。もうEVERグループはお金を充分すぎるほど持ってるじゃない。
戦争を起こすのは本当にお金だけのため?』
生きてるだけで、とんでもない額のお金が国民から奪われ、苦労もせずにずっとロス・チャイルドの懐に入っていくのだ。
高利貸しという詐欺システムのせいで。
シン『知ってるか?情報は宝石よりも価値がある。俺の情報料は高いぜ。代わりに何を差し出す?』
シンは人差し指と中指を立てコインを挟み、こちらを指差した。
私『シン、私と貴方はEVERグループを倒したい。いわば運命共同体のはず。
この点については私達、立場が違うけど協力するべきだわ。』
シンは目を眇めた。
私『私は貴方の手となり足となる。私が提供するのは貴方への働き。』
私『何を差し出すかは、貴方が私にどんな働きを求めるかよ』
シン『やれやれ。』
シンは手を額においてわざとらしく首を振るような動作をした。
シン『ハンターの嬢ちゃんはスパイ活動でもするつもりか?』
射抜くようにシンの赤い瞳がこちらを見た。
彼は燃えるような瞳をしている。
握っていた自分の手から汗が出てきた。
それでも私はずっとシンから目を逸さなかった。逸らしたら最後。
食われて終わりだろう。
シン『ハンター協会の命令より、俺からの命令を優先すること。それが条件だ』
……背に腹はかえられない。
私『分かった。』
シン『それで、お前が聞きたかったのは金以外の戦争を起こす理由だったか。』
腕を組んだシン。
シン『お前は聖書を読んだことがあるか?』
私『聖書?貴方に似合わない言葉だね。』
シンは鼻をならした。
私『全くないよ』
シン『読むといい。』
シンはEvolを使い、どこからか急に現れた本を2冊手の上に浮遊させた。
旧約聖書と新約聖書と書かれていた。
私『(シン、悪魔みたいな見た目だから素手で触れないのかな?)』
シン『これを正確に読み解ければお前が知りたかった答えは分かる』
シン『ヒントは教えてやる。』
シン『文字どおりに理解しようとするな。』
シン『敵を知ることだな』
聖書を2冊放り投げてきた。罰当たりな。
慌てて受け取る。
シン『情報は最大の武器になる。』
カラスのメフィストが飛んできてシンの肩にとまった。
シン『野生の勘が働いたラッキーなやつか、
権威に従わず正しい情報にアクセスできたやつしか、
もうこの先は生き残れないぜ』
シンは人差し指で自分のこめかみを規則的なリズムで
何回か叩いた。
シン『覚えておくといい』
カァとメフィストが鳴いた。
───用語──
※ マッチポンプ…マッチで自ら火をおこし、ポンプを使って消火する様子から、
意図的に発生させた問題を自ら解決して、利益や評価を得る行為。