ベランダのガラスが割れ、異世界から「あのツンデレエルフ」が現実に突撃!?
「オーク顔!! なんで私の恥ずかしい姿を勝手に投影してるのよッ!!」
水浴び、鼻血、管理会社、警察、セガ。
おじさんの平和な現代は、今、崩壊する……。
※本作は『異世界おじさん』の非公式二次創作です。
※キャラクター性と世界観の再現を重視しつつ、原作では描かれない「もしも」の展開を含みます。
※ギャグ成分多め、セガ成分は控えめです。
※作者は原作とセガに最大限の敬意を込めております。あなたたちがいたからこの作品が生まれました。大目に見てくれると助かります。感謝を!
残暑の名残が漂う、八月最後の午後。
とある集合住宅の一室ではいつも通りの光景が流れていた。
「いいよ! おじさん! 良い感じだよ!」
「おじさん、強すぎですよねー」
記憶再生中。
映っているのはとあるダンジョンの最奥。
光が届かないほど広大な空間で、おじさんとエルフが巨大ゴーレムと戦っていた。
「陽介!!」
「翠!!」
場面はちょうど、おじさんの極大雷魔法が決まり、エルフの巨剣が降り下ろされたシーン。
ゴーレムは轟音と共に砕け、大量の粉塵が舞っていた。
「まあ、これはエルフの一撃のおかげで倒せたようなもんだ。粉塵すごかったけど」
おじさんはあっさりと解説を終えると、記憶再生を切る。
「はー、今回も良かったよ、おじさん」
「そうか?」
「うん。なんかエルフさんとも良い感じだし、合体攻撃なんかは最高だね」
「そんなもんか……」
おじさんはコーヒーを一口のみ、ふうと息を吐く。
「あのー、ちょっといいですか?」
「なにかな、藤宮さん?」
「エルフさんと良い感じじゃないですか。もっとこう、日常的なものとかないんですか?」
「日常?」
「おじさんって前半良い感じなのに、後半は戦ってばかりじゃないですか。その……普通の会話だけで一日終わったー、みたいなことはなかったんですか?」
「んー……、どうだったかな? よく思い出せんな」
考え込むおじさんにしびれを切らし、タカフミが口を開く。
「おじさん」
「ん?」
「緊迫した連続の合間に「日常」を挟む——王道じゃない?」
「!? あれか!」
「そう。プロクリエイターの「間」の使い方だよ」
「流石だな、タカフミ。そこに気づくとは」
「でしょ」
「俺もプロだ、任せろ。日常日常日常……」
おじさんはプロYouT〇berとして矜持を守るため、一人、記憶の底に沈む。
「相変わらずおじさんの扱いうめーな、タカフミ」
「もう長いしね。それに、エルフさんとの日常も気になるし」
「だよな」
「もちろん」
二人がポテチとコーヒーを堪能してる間も、おじさんは記憶をさぐる。
「うーむ…………あ、あれは日常と言えるんじゃないか?」
「やっぱりなにかあるの、おじさん?」
「もったいぶらないで教えてくださいよー」
「さっき見せた遺跡を出た後の話だ。記憶再生《イキュラス・エルラン》」
おじさんが魔法を唱え、いつも通りの巨大スクリーンを表示する。
そこに映るのは、遺跡っぽい洞窟からおじさんとエルフが出てくるところだった。
「あのゴーレムを倒したとき、粉塵がすごかったろ。でも風呂は近くにないし、どうするかなーって思ったんだよ」
おじさんとエルフは徒歩で移動を開始し、近くの森、小川まで移動した。
「俺は精霊の力を使い過ぎてバテてたし、エルフの消耗もヤバかった。それで近くの小川で少し休もうってなってな。そこで一日過ごしたんだ」
「「 おおー 」」
二人は目を輝かせ、画面のおじさんとエルフに釘付けになる。
「バカ陽介。洞窟内であんな雷魔法使ったらどうなるか考えなさいよ」
「仕方ないだろ」
「顔だけじゃなくて知能もオーク並になったんじゃ——」
「翠を助けたいと思ったんだから」
「ッ———!!」
エルフがドタバタと暴れ、おじさんを叩き続ける。
「「 …… 」」
「エルフめ。相変わらず理不尽な奴だよな」
(( 相変わらずツンデレ属性との相性最悪だな、おじさん…… ))
「まあでも、これも日常と言えば日常だな。理不尽だが」
「「 …… 」」
「この後は河川敷でそのまま野営して朝になったんだ」
「……何もなかったんですか?」
「ん?」
「その、メイベルさんの歌とか、アリシアさんのお風呂みたいに……」
「あー、あったと言えばあったかな?」
「あったんですか!?」
藤宮が勢いよく立ち上がり、身を乗り出す。
「ちょっと違う気もするが……ちょっと待ってねー、えっと……」
おじさんがスクリーンの早送りボタンを押して、「その時」に調節する。
「の、覗かないでよ、インランオーク!」
「覗かない。俺も早くほこりを落としたいんだ、早くしろ」
「ふんだ!」
エルフが茂みに隠れて装備を外し、服を脱ぎ始める。
その様子に、タカフミと藤宮は即座に違和感を感じた。
「なあ、タカフミ」
「うん。これは……」
「見せてる、よな?」
「うん、わざと見せてるね」
「だよなー……」
エルフは木陰に隠れながらも、おじさんから微妙に見える位置を計算し、脱いでいた。
顔はリンゴのように真っ赤に染まり、目はおじさんを捉えている。
どうみても「恥ずかしい。けど見てほしい」という意思表示だった。
二人は、エルフと画面を無視して「おやつ」を頬張る両方のおじさんにため息をつく。
「エルフさん、大胆になってるなー」
「まあ、おじさん相手だし、仕方ないよ」
「はあー……」
エルフが服を脱ぎ終え、気落ちしながら水浴びを始める。
その顔は振られた恋人といった様子であり、もの寂しげな雰囲気を放っていた。
視点が切り替わり、おじさんが無言で焚き火の準備を続けている場面になる。
おじさんの目に映っているのは炎なのか、それとも――藤宮とタカフミは、黙ってポテチを噛み砕いた。
そして、「やっぱりいつも通りかー……」と思っていた瞬間だった。
「[[rb:長重穿孔 > ちょうじゅうせんこう]]っ!!」
エルフの声が響き渡り、水柱が幾つも上がるのが見えた。
「おじさんおじさん!」
「なにがあったんですかコレ!?」
「ん? ああ、これはたしか水棲の魔獣が群れで襲ってきて、俺とエルフが……あ」
「「 鼻血!! 」
「すまん。あー、思い出した。俺はここでエルフの裸を見た——」
おじさんがティッシュを取り、鼻を押さえたその刹那。
バリィィィィン!!!
ガラスが激しく砕ける音が響き渡る。
ベランダのガラスが突如として粉砕されたのだ。
「きゃあああ!?」
「ベランダが!? ベランダがあああ!!」
藤宮が絶叫し、タカフミが条件反射で叫んだ。
そして二人とおじさんは見た。
煙と風と共に、剣を構えた少女がガラス片の中に現れのを。
紫電を纏った金色の髪に深緑のコートの少女。
細剣を片手に、キレ気味の鋭い目が3人を射貫く。
そして、唇から飛び出した第一声が――――。
「このオーク顔ッ!! 何勝手に投影してるのよ!? 私の恥ずかしい姿!!」
「「 え? え!? えええええええええええええええええええええ!!!??? 」」
タカフミと藤宮の悲鳴がハモった。
エルフ。
そこにいたのは、画面に映る人物とうり二つの、あのエルフだった。
「は? エルフ? どうしてここに……」
おじさんは立ち上がり、目を見開く。
エルフは剣を納めて、ぷいと顔を背けた。
「まさか本当にニホンバハマルに飛ばされるとは思わなかったわよ……」
「……」
「あんたが「俺のことは忘れてくれ」って言ったから、忘れようとしてたのに……」
おじさんの肩がわずかに揺れた。
視線は床に落ち、手にしたティッシュも力なく下がる。
「そうか、あの時……記憶の精霊が……」
鼻血は流れ続けていた。
そして、おじさんはゆっくりと顔を上げる。
「翠、お前——あの言葉、本当に聞いてたんだな」
静かに、でも確かにその名を呼んだ瞬間。
エルフ――翠の瞳が揺れた。
「バカ。今さら呼ばないでよ、名前なんて——ッ」
唇をかみしめ、震える声で背を向ける。
だが、それでも部屋から出ようとはしなかった。
「俺は帰るしかなかった。あの世界では、もう……」
「知ってるわよ。オーク顔はいつもそう。全部ひとりで抱えて、勝手に終わらせる」
翠の目が鋭さを増し、おじさんを睨んだ。
その瞳には、怒りとも、哀しみともつかぬ強い光があった。
「でもね——」
彼女が決意の言葉を紡ごうとしたその瞬間。
「本物のエルフさん!? なんで!? どうやって!? 転移魔法!? おじさん何やったの!? いやそれよりもガラスが粉砕して——!?」
タカフミが大声で割り込んでくるが、混乱していた。
続いて、藤宮が冷静なトーンで言う。
「落ち着け、タカフミ。さすがに「ベランダから異世界人が突入してきてガラスが割れました」って言っても信じてもらえないから。とりあえず別の説明を考えよう」
藤宮も混乱していた。
二人の混乱のお陰か、翠とおじさんが同時に現実に引き戻される。
「な、なによその顔!? 今さら惚れたとか言っても——」
「いや、藤宮さんの対応が冷静で凄いなと。ガラス割っちゃったら、ちゃんと説明しないと駄目だからな……」
「はあ!?」
エルフ——翠が顔を真っ赤にして怒鳴ると、部屋の中に残っていたガラス片がさらに振動した気がした。
「な、なによそれ!? あたしが来たことより割れたガラスの方が大事ってわけ!?」
「いやいやいや大事だから! 日本ではベランダ破壊は立派な事故案件だぞ!?」
翠の理不尽な怒りにおじさんの理知的な説明が炸裂する。
「ふっ。そんなこと言って——」
翠が呆れたようにため息をついたその瞬間。
ピリリリリリリリリッ……。
タカフミのスマホが震えた。
「うわ、管理会社からだ……」
「早いな!? 魔法で監視でもしてるのか!?」
「さすがにあの破壊音は誤魔化せないよ、おじさん」
タカフミはエルフをガン見しながらも、飛び散ったガラスの破片を見つめ、ため息をつく。
そして覚悟を決め、「管理会社」と表示された画面を押す。
「はい、高岡です。ええ……あ、はい。ええ、ええ。あの音は……その……実はちょっとした事件、いえ事故で……」
「この破壊痕。動画素材として使えるんじゃないか?」
「ちょっと黙ってて、おじさん」
全員を無視して割れたガラスと窓枠をチェックするおじさんは放置決定だった。
「——はい、ちょっとプロセス技の練習してたら足をつってしまって……はい、バカでした。はい、ガラスが……ええ、はい、はい……」
「おお、タカフミは凄いな。立派な社会人——」
「黙ってて、おじさん。あ、はい——」
タカフミはおじさんを黙らせ、管理会社に説明を続けていた。
「え、えーと、おじさん……」
「ん?」
藤宮がそっと耳打ちする。
「もし警察とか来た場合、エルフさんは……どうするんですか?」
「どうしようか……普通に外国から来た知人、でいいんじゃないか?」
「外国、ですか……」
藤宮はファンタジー装備に身を包み、剣を持つエルフをみて首を振る。
その時、玄関のチャイムが鳴った。
ピンポーン♪
場が凍りつく。
「もう来たのか!?」
「ここの管理会社、事故とか事件の対応めちゃくちゃ早いから……」
タカフミは通話終了の画面を見て深いため息をつく。
「誰が出る? 俺が行くか?」
「一番ダメだから! おじさん行ったら絶対テンパるでしょ!?」
「だったら私が……!」
エルフが剣を展開し、雷を纏わせる。
「ちょっとぉぉぉ!? その剣しまって!! 日本でソレは違法だから!!」
「違法ですって!? ニホンバハマルはこの程度で違法なの!? どうやって身を守るのよ!」
ピンポーン♪
二度目のチャイムが鳴り、室内の空気が一段階さらに凍りつく。
タカフミは息を飲む。
「これはたぶん、警察、かな……?」
「どうするよ?」
藤宮が低い声で問う。
おじさんが立ち上がり、胸を張った。
「やっぱり俺が出るしかないな。任せろ——」
「「 おじさんは駄目!! 」」
タカフミと藤宮が即座に制止する。
だがもう遅い。
おじさんは胸を張って玄関に向かい、ガチャリとドアを開けた。
そこに立っていたのは、純度100%の警察官2人だった。
「こんにちは。この部屋から大きな物音がしたと通報がありまして」
「通報? マイク・ハーディ? 確かに、実機再現映像を試験投影していたらサターンとの干渉で爆発的な閃光と音が発生してガラスが割れてしまったが、それはサターンの持つポリゴン能力が——」
意味不明だった。
警察官はかわいそうな人を見る目でおじさんを見る。
ただ、おじさんをよく知る二人はすぐに悟った。
おじさんが自信満々に、意気揚々と語れる理由。
それは《―SEGA―》しかないと。
「「 おじさん——ッ 」」
「——あのポリゴンと動きはセガサターンのバーチャコップ2でしかだせないもの! あれはコントローラーとハードの限界を超えた技術者の執念であり、セガハードを知り尽くした———」
「はあ……そう、ですか……はあ。はい、はい……」
壮年の警察官Aが困ったように相槌を打つ一方、若い警察官Bが小声で訊く。
「セガって、なんですか?」
沈黙が走った。
「……は? セガを、知ら、ない……?」
おじさんの声が低くなる。
場の空気が一段冷え込み、おじさんに黒いオーラが宿る。
背後から見ていたタカフミと藤宮は同時に身構えた。
「やばい……セガを「否定された」ときのおじさんだ……!!」
「ちょっ! 止めないと!」
焦る二人だが、もう遅い。
おじさんは《―SEGA―》なのだ。
自己を否定されて黙ってるほど、おじさんは優しくなかった。
「セガは、セガは、セガはなぁ……」
おじさんの両拳が震えながら握られる。
タカフミと藤宮は「人類絶滅」というキーワードを思い出す。
怒らせたら滅びるのだ。
しかし————。
「セガはなぁ、セガは……勝てなかったんじゃない! 違う道を選んだんだぁぁぁ!!!!」
「「「「 は? 」」」」
おじさんの叫びに空気が震え、全員の声が虚しく抜ける。
「……まあ、怪我人もいないようですし、今回は厳重注意ってことで……」
警察官が首を振り、書類を閉じながら背を見せる。
肩で息をするおじさんを、警察官は2度と見ることはなかった———。
セーガァアアア……(再生音)
おかげさまで累計総動員数1000UA達成しました!おじさん好きのみなさんに感謝を!
次の機会があれば、突撃してきたエルフによる高岡宅での日常なんか書ければいいかなーと、ゆる~く考え中です。
あとはメイベルの日常回かな~と思ってます。
それでは、ガーヒーでもプレイして気長にお待ちください。
ありがとうございました!