別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ 作:さすらいの旅人
隆誠がベルの教育を行って約二週間以上経つ。
最初の一週間は修行用バンドに慣れる為に基礎を中心にした訓練だったが、残りの一週間は午前中に基礎を終えた後、午後以降からは殆どヘディン達と同じ実戦訓練の時間に費やした。違う点を挙げるのであれば、バンドと言う重い枷を付けたままやらせた事で、普通に戦うより遥かに大変だとベルが時折音を上げそうになっていた程だ。それでも何とか重さになれて最後までやり切った。『拳龍帝』を見せていた際、主人公のイッセー・グレモリーが自分と同じ
実戦訓練の相手は勿論隆誠で、普通に相手をするのは味気ないと思ったのか、ちょっとした趣向を凝らす事にした。今まで戦った【フレイヤ・ファミリア】幹部達の戦闘スタイルを模して。
長槍を使って機動力を活かした白兵戦を得意とするアレン・フローメル。
卓越した剣技の白兵戦を主体とする『魔法剣士』ヘグニ・ラグナール。
『無限の連携』と称される都市随一の連携で相手を翻弄するガリバー兄弟(隆誠が分身拳を使って四人となり、木製の槍、大槌、大斧、大剣を持つ)。
魔法攻撃を主体として、白兵戦では
『絶対防御』と称される防御を持ち、大剣を使用する生粋の『戦士』オッタル。
最強と称される【フレイヤ・ファミリア】幹部達の戦闘スタイルを完全に模倣した事で、ベルは本人と戦っていたと錯覚する程だった。
因みに
完全に心を取り戻しているベルが諦めずに挑む姿勢を見せることで、隆誠は
地下室に幽閉していた筈のリュー・リオンが脱走して
正気に戻ったオラリオの住民達は当然怒り狂い、【ファミリア】の殆どがフレイヤのやらかしに怒髪天を衝くのは必定だった。相手の尊厳を踏みにじる行為をされたら、いくら相手が神でも許されないから。
オラリオに住まう者達が敵に回ってしまった【フレイヤ・ファミリア】は孤立状態になるも、フレイヤは取り乱すこと無くヘスティアに
最初は難色を示すヘスティアだったが、結局のところ受ける事にした。後に始まろうとするオラリオ史上『最大の
「本当にブレないな、お前は。こんな状況になっても未だにベルを欲しがるとは」
ベルが
「私は絶対に諦めない。この戦いにかって、必ずベルを頂くわ」
全く気にしてないフレイヤは、絶対にやり遂げようとする意志を見せた。
これ以上何を言っても無駄だと悟ったのか、隆誠は話題を変えようとする。
「ああ、そうかい。ところで、ヘルンについてだけど」
ヘルンと聞いた瞬間、フレイヤは途端に表情を変えて隆誠の方へ視線を移す。
「今もふて寝状態になってるみたいだが、何なら俺が叩き起こしてやろうか?」
隆誠に連行されて罰が下される身となっていたヘルンだが、一切何もされなかった。罰しない事が一番の『罰』になると言うフレイヤの判断によって。だがそれとは別に、女神祭での約定に従ってベルの前には姿を見せない事になり、今後はただ遠くから見るだけ。
しかし、彼女はまたしても裏切り行為を働く。地下室で捕えていたリューの脱走を手引きしただけでなく、フレイヤとの約束を破って再びベルと対面した。その後に自害を図り、最後の力を振り絞って『変神魔法』で『シル・フローヴァ』の姿になった。感覚を共有しているフレイヤはすぐにヘルンを救うように命じ、ヘイズが治療を施して完治したものの、まるで仮死状態のように『シル』の姿のまま眠り続ける事になった。
もう手の施しようがない為に安静にさせて誰もが諦めかけているところ、叩き起こそうと発言する隆誠にフレイヤが目が点になってしまうのは無理もない。
「ヘイズでも不可能なのに、貴方なら可能なの?」
「ルーン魔術を使えば、な。自ら深い眠りについた状態を強制的に目覚めさせるのがある。北欧の神であるお前もそれなりに知ってる筈だが?」
「……そうだったわね」
隆誠がルーン魔術を口にした事で、言われてみれば確かにと納得顔になるフレイヤ。
開発者であるオーディンほど詳しくないが、彼女もある程度は齧っているから、それに関するルーンをヘルンに刻めば目覚める事が出来ると確信する。
最初は隆誠が何故ルーン魔術について詳しいのかと疑問を抱くも、彼の世界にいるオーディンから一通り学んだと聞いて心底驚いた。人間の身で一体どんな方法で天界へ行ったのかと物凄く気になったが、別世界に関して干渉したところで何の意味も無いと自ら戒めている。
「ならヘルンを起こすのは
「何故だ? すぐにでも出来るんだが」
「また勝手をされたら困るのよ。正直言って今はヘルンが何を言っても信用出来ないわ」
「それは確かに」
ヘルンは一度ならず二度も命令に背いた。そんな状況で目覚めさせた後に、『もう二度と裏切らない』と言ったところで何一つ信用出来ない。
「なら俺はヘルンの世話をしながら、此処で観戦してるよ」
いつものように待機を命じられるのが分かっているから、隆誠はがら空きとなる
だが――
「いいえ、今回はリューセーも
「え?」
今までとは全く異なる命令が出た事に隆誠は目を見開いてしまう。
「おいおい、俺に【
隆誠は【フレイヤ・ファミリア】の眷族であっても、【
今回のようなオラリオの行事に関しては絶対参加不可だろうなと思っていたところ、フレイヤが参加するよう促してきたのだから無理もない。
「問題無いわ、そんなモノが無くても私の眷族である事に変わりはない。それに貴方の実力はオッタル以上だから、もしもの時の保険にしておきたいの」
隆誠の実力が『
今回行われる
「アイツ等でも負ける可能性があると?」
「確実に勝つ為に、念には念を入れておきたいの。それに……貴方はベルを鍛えて強くさせたのだから、それなりの責任がある筈よ」
暗に『ヘディンの教育係を奪った責任を取りなさい』と言ってくるフレイヤに、隆誠は反論出来なくなった。
「分かりました。今回はフレイヤ様のご命令に従いましょう」
今回も傍観するつもりだった隆誠だが、フレイヤの命令で参加せざるを得なかった。
隆誠「それにしてもベルは運が良いんだが悪いんだか……。今夜見る予定だった『拳龍帝』は一番良い所だったのに」
ベル「……………あ~~~~~~!!!」
ヘスティア「ど、どうしたんだいベル君!?」
ベル「今夜、今夜観る筈だった『拳龍帝 ファイタードラゴン』が……もう観れなくなっちゃったぁぁ~~!!」
ヘスティア「へ? けんりゅうてい? ファイタードラゴン?」
ベル「ああ~、どうしてこんなタイミングで……!」
ヘスティア「ちょっとベル君! 何か僕達が助けに来たのが余計だったようにしか聞こえないんだけど!?」