別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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今回は活動報告に載せていない蛇足的な内容です。


戦争遊戯(ウォーゲーム)に向けて①

(まさか俺を行かせるとは、ねぇ)

 

 『魅了』の解除後による一斉騒動が起こった翌日以降。

 

 隆誠はフレイヤの命令でとある人物(・・・・・)伝言(メッセージ)を伝える為、単身で【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)へ向かっていた。

 

 今の【フレイヤ・ファミリア】は孤立状態になっている為、(一応は)非戦闘員である彼が都市を歩いていれば確実にオラリオの住民達から白い目で見られてしまう。以前にあったベル・クラネルのように。

 

 と思いきや、実際そうでもない。確かにフレイヤのやった事は到底許されないのだが、その鬱憤を晴らそうとするだけの度胸は流石に無かった。団服を身に纏って街を歩く隆誠を恨めしげに見ても、いざ視線が合った瞬間に目を逸らしてしまうのだ。

 

 敵視されているとは言っても、【フレイヤ・ファミリア】は今もオラリオが誇る最強【ファミリア】の一角として君臨している。その眷族に喧嘩を売れば手痛い竹箆返しを受けてしまうから、住民達は今まで通り距離を取り、【ロキ・ファミリア】も含めた冒険者達が倒してくれるだろうと完全な他人任せだった。

 

(お、此処か)

 

 そんな彼等の心情など微塵も気にしてない隆誠は、大きな城を目にする。それこそが【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)である『黄昏の館』なのだ。

 

 近寄りがたい雰囲気を見せる【フレイヤ・ファミリア】とは対照的だが、隆誠は『恐らく此処も相当癖が強い冒険者がいるんだろうなぁ』と少し失礼な事を考えていた。以前に単身で『戦いの野(フォールクヴァング)』にやってきた【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインが原因で。

 

 彼はアイズと会うまでは表面上の情報しか知り得なかった。【ロキ・ファミリア】が誇る有望な第一級冒険者で、他派閥の冒険者からも尊敬の念を抱かれるほど強く美しくて完璧な美少女だと。

 

 しかし、実際に相対した事で全く異なる人物だったと認識される。冒険者としての実力があっても、精神的に幼く口下手で感情を表に出すのが苦手だったのだ。しかも天然とも言える性格で、本当に十六歳の少女なのかと疑問を抱いてしまうほどに。

 

 【ロキ・ファミリア】を束ねる団長のフィン・ディムナは、脳筋のオッタルと違って相当な切れ者だと聞いている。果たして実際はどんな人物なのかと思いながら、隆誠は正門前で佇んでいる団員に声を掛けようとする。

 

「すいません。此処は【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)でしょうか?」

 

「【フレイヤ・ファミリア】! 此処に一体何の用だ!?」

 

 正門前で門番を務めている【ロキ・ファミリア】の団員二人は、隆誠を見た途端に【フレイヤ・ファミリア】の者だと警戒を露わにした。

 

 団服を見れば警戒するのは当然かと思いながらも、彼は大して気にする事無く用件を言う。

 

「其方の【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインさんに御用がありまして、ね。彼女はいらっしゃいますか?」

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)を控えていると言うのに、アイズさんに会おうとは一体何を考えている!?」

 

 アイズが第一級冒険者だからなのか、年上である筈の眷族達からも敬称で呼ばれていた。

 

 彼等は目の前にいる相手が【フレイヤ・ファミリア】の眷族だと分かっても、隆誠について一切知らない。もしこれがオッタルやアレンだったら眼光を放たれただけで尻込みしてしまうが、冒険者として一切名の知れてない眷族だから、こうして強気に出ているのだ。

 

「そんなの貴方達に教える気はありませんので、早く彼女に取り次いでくれませんか?」 

 

 隆誠は強気に出ている【ロキ・ファミリア】の眷族に一切動じることなく、淡々とアイズを呼ぶように催促した。

 

「これでも一応は女神フレイヤの使者として来たのです。此処で俺と余計な揉め事を起こした瞬間、貴方達の面目が丸潰れになってしまいますが、それでも良いのですか?」

 

「ぐっ……!」

 

 隆誠の発言に、彼等は何も言い返せなくなった。

 

 相手は【ロキ・ファミリア】に並ぶ最強の一角を担う【フレイヤ・ファミリア】の眷族だから、末端である自分達の勝手な判断で門前払いなどすれば非常に不味い事態になってしまう。

 

「……分かった。だがその前に、此方の主神や団長に一度報告させてもらう。それは構わないな?」

 

 隆誠が本当に【フレイヤ・ファミリア】の使者として来たのであれば、確実に主神ロキや団長フィン・ディムナが対応しなければならない案件になる。

 

「ええ、是非ともそうして下さい」

 

 本当ならアイズに会ってさっさと終わらせたい隆誠だが、【ロキ・ファミリア】の幹部に会う以上は仕方ないと妥協せざるを得なかった。

 

 

 

 

色ボケ(フレイヤ)んとこの使者と聞いた時は一体何の冗談やと思うとったが、まさかホンマやったとはなぁ……」

 

「リューセー・ヒョウドウ。君はアイズに一体何を伝えに来たんだい?」

 

 門番が報告をした後、隆誠は応接室に来てもらうように案内された。

 

 品質の良いソファに座る彼の目の前には【ロキ・ファミリア】の主神ロキ、小人族(パルゥム)でありながらも団長を務める【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナが同様の椅子に座っている。一柱と一人の後ろに対象の【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインだけでなく、副団長を務める王族妖精(ハイエルフ)の【九魔姫(ナイン・ヘル)】リヴェリア・リヨス・アールヴもいる。

 

 【ロキ・ファミリア】の主神や団長と副団長も勢揃いしてる事で、隆誠は何だか随分大事になってきたなと思いながらも、取り敢えず用件を伝えようとする。

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン、女神フレイヤの言葉を伝える。『借りを返してもらう』」

 

「…………」

 

 伝言を聞いたアイズは無言でありながらも、一切反論せず聞いているだけ。

 

 一緒に聞いていたロキは大変嫌そうな表情になり、フィンとリヴェリアも似たように眉を顰めていた。

 

 アイズが【フレイヤ・ファミリア】に借りを作っていたのを、ロキ達は既に知っている様子だ。あくまで彼女の個人的な借りの筈だが、隠してるのがバレたか、もしくは気付いて彼女を問い詰めたかもしれない。

 

 隆誠としては経緯を説明する手間が省けたから、具体的な内容を伝えようとする。

 

「その支払いの代償として、今回行われる予定の戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わるまで、ベル・クラネルに関わる事柄の一切関与しないように。だってさ」

 

「っ……」

 

 フレイヤが伝えた代償は即ち、【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインの動きを完全に封じる為の束縛だった。

 

 内容を一通り聞いた彼女は、ここで漸く動揺を示している。

 

「尤も、これはあくまで口約束に過ぎない。どうしてもベル・クラネルの力になりたいなら、それはそれで構わないとの事だ」

 

「……………良いんですか?」

 

「その時は、君だけでなく【ロキ・ファミリア】の汚点として残す事になってしまう。神ロキも当然そんなの嫌ですよね?」

 

「言うてくれるやないか……!」

 

 笑顔で問う隆誠に、ロキは笑いながらもヒクヒクと頬を引き攣らせていた。

 

 それは当然フィン達も理解している。個人で交わした約束であっても、契約で取り決めた事を無かったかのように反故するなど断じてあり得ない。オラリオを代表する都市最大派閥の【ロキ・ファミリア】であれば猶更に。

 

「……はぁ~~、しゃーない。『契約』を出された以上うちとしては何も言えんわ。戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わるまでアイズは本拠地(ホーム)に謹慎させとく、ってフレイヤに伝えときぃ」

 

「了解しました。必ずお伝えします」

 

 ロキとしては(はらわた)が煮え返る思いだが、アイズがいつの間にかフレイヤと『契約』を結んだのであれば従わざるを得ない。

 

 だがそれでも、目の前にいるフレイヤの使者に何か言い返さなければ気が済まなかった。

 

「せやけど覚悟しておくんやな。【ロキ・ファミリア(うちら)】を完全に敵に回した以上、キッチリ落とし前は付けさせてもらうで」

 

「ええ、今回我が主神のやった事は到底許せない気持ちは私も充分理解しています」

 

 隆誠の発言にロキだけでなく、アイズを除くフィン達も訝しんだ。

 

 【フレイヤ・ファミリア】の眷族は基本的に主神フレイヤに絶対の忠誠を誓っており、彼女がどんなに問題行動を起こしても全て是としている。

 

 しかし、今回来た使者はフレイヤの行動を問題視していた。【フレイヤ・ファミリア】の眷族なのに、こうも否定的な考えを持つ者は非常に珍しい。そんな存在は嘗て団長を務めていたドワーフの女将(ミア・グランド)だけしかいなかった為に。

 

 そう考えれば隆誠と言う眷族は、【ファミリア】内の中で相当浮いているかもしれない。前団長はフレイヤ相手に平然と軽口を叩く事によって眷族達から敵視されても実力(ちから)で黙らせていたが、目の前にいる彼の実力は未だ不明でも、理不尽な目に遭っているのではないかと。そんな事を気にしたところで、他所の派閥に口出しする事ではないが。

 

「ではこれにて失礼します」

 

 フレイヤの伝言を全て伝えた隆誠は、立ち上がって一礼した後に応接室から出ようとする。

 

「あの、リューセーさん」

 

「ん?」

 

 扉を開ける寸前、アイズは隆誠に声を掛けた。

 

 ロキやフィン達は彼女らしからぬ行動に珍しげな感じで見ている。

 

「貴方も、戦争遊戯(ウォーゲーム)に参加するんですか?」

 

「勿論。主神から必ず出るように言われてるよ。君と戦えないのは残念だが、な」

 

「そうですか」

 

 参加すると知った事に、隆誠と戦う機会を失ってしまったと改めて残念な気持ちになるアイズ。

 

 『戦いの野(フォールクヴァング)』で訓練して貰った際、彼は自分やオッタルの斬撃を素手で簡単に受け止めていたのを見て、一体どれだけ強いのかと彼女は今まで気になっていた。本音では手合わせしたかったが、補助だから一切参加出来ないと言われて結局分からず仕舞いになるも、作ってくれたジャガ丸くんが凄く美味しかったのは今でも鮮明に憶えている。

 

「まぁ他にも、其方の【九魔姫(ナイン・ヘル)】さんが使う魔法にも興味がありますし」

 

「私の魔法だと?」

 

 アイズが使者の隆誠に一体何を聞いているのかと疑問を抱くも、突如リヴェリアの魔法について言われた事で思わず口に出してしまう。

 

「ヘディンから聞いています。誰に対しても辛辣なあの鬼畜エルフが珍しくも、貴女の話題になった途端物凄く柔らかな口調で称賛していた時は驚きましたよ」

 

「……そ、そうか」

 

 ヘディンに対して鬼畜エルフと罵る隆誠に、リヴェリアは何とも言えない表情になっていた。だがそれはあくまで彼女だけに限った話なので、ヘディンの事を知るフィンからすれば、それは驚くだろうなと内心頷いている。

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)で戦うのを楽しみにしてますよ。オラリオ最強と謳われる貴女の魔法と俺の『ルーン魔術』、どちらが上を行くか勝負しようではありませんか」

 

「ルーン魔術だと?」

 

 誰よりも魔法についての知識を得ているリヴェリアだが、隆誠の言う『ルーン魔術』は全く知らなかった。

 

 明らかに未知のモノだと即座に理解する彼女は、早速と言わんばかりに好奇心が湧き始めようとする。

 

「何や自分、ルーン魔術使えるっちゅうことは、ひょっとしてオーディンの奴から学んだんか?」

 

「ええ、まぁ……」

 

 質問に答えた隆誠は嘘を言ってない為、神であるロキの嘘を見抜く能力は一切反応しなかった。実際は別の世界にいるオーディンから学んだのだが、流石にそんな事をバカ正直に教える訳にはいかないが。

 

「待てロキ、お前はルーン魔術とやらを最初から知っていたのか?」

 

「へ? あ、やばっ……!」

 

 リヴェリアが誰よりも魔法についての探求心がある事をロキは知っているから、オーディンから聞いたルーン魔術の事を知れば絶対に根掘り葉掘り問い質すだろう。そうならないよう今まで話題にしなかったが、隆誠が使えると知った事で思わずポロッと口にしてしまい、彼女は途端に焦り出す。

 

 因みにロキはルーン魔術について知っていても、誰かに教えるほどの専門知識は無い。大して興味無かった上に、使えてもたかが一~二個程度の浅い範囲の知識しかない為に。

 

「後で話があるから覚悟しておけ」

 

「は、はい……」

 

 本当ならすぐにでも逃げ出したいロキだが、使者がいる手前無理だった。例えそうしたところで、先日『Lv.7』にランクアップしたリヴェリアから逃れられないが。

 

「では、失礼します」

 

 留まる理由が無くなった隆誠は、今度こそ応接室から出るのであった。

 

 リヴェリアの魔法がどれほどのモノかと期待する隆誠だったが、それは叶わなくなってしまう。

 

 後になってからギルドより、『今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)で【ロキ・ファミリア】の参加は禁止』と言う通達が届く。

 

 参加する満々だった【ロキ・ファミリア】は納得行かないと不満を露わにし、普段から理性的な団長のフィンですらギルド長に抗議しに行くのは無理もなかった。

 

 だが結局のところ、どんなに抗議したところで覆らなかった。ギルド長のロイマンより切り札として【ロキ・ファミリア】、正確にはリヴェリアが絶対に無視出来ない情報を開示されてしまったから。

 

 それを後から知った【フレイヤ・ファミリア】は予想外の肩透かしを食らってしまう事になる。隆誠だけでなく、彼に【ロキ・ファミリア】を(殺しはしないが)殲滅するよう命じたフレイヤでさえも。




原作ではオッタルがアイズに簡単に伝えるモノでしたが、此方では隆誠がロキ・ファミリアに伝える展開にしました。

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