別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ 作:さすらいの旅人
ギルドからの通達に、隆誠は言うまでもなく不満を露わにしていた。【ロキ・ファミリア】と戦う機会を失ってしまった為に。
同時に疑問を抱いていた。如何に立場が中立とは言え、ギルドは何故【フレイヤ・ファミリア】に付いたのかを。
今回フレイヤがやらかした理不尽な『魅了』で傀儡にされたので、誰しも怒りが突き抜けている。それは当然、中立の立場であるギルドも例外ではない。普通なら一切擁護せず、【ヘスティア・ファミリア】側についている筈なのだ。
しかし、それを反する展開となってしまった。今回の
その疑問を解いたのはフレイヤだった。『これは間違いなくロイマンの仕業ね』と答えた瞬間、隆誠を除く【フレイヤ・ファミリア】の眷族達はすぐに納得している。
隆誠はフレイヤの眷族であっても冒険者じゃない。あくまで中立機関と呼ばれるギルドが都市運営をしている程度の知識だけで、職員に関しては全く皆無だった。なので隆誠はギルド長のロイマン・マルディールと言う人物を知らないのは無理もない。
その男は一世紀以上もギルドに勤めているエルフだが、俗世に染まった事で欲塗れな性格だけでなく、でっぷりと太った体格をしているのも含めて『ギルドの豚』と言う仇名で呼ばれている。それでも主神ウラノスから非常に有能な人材と見られている他、オラリオに対する想いは誰よりも強く真摯だからこそ、長らくギルド長の椅子に座り続けているのが実状だ。
今回はギルドと言うより、ロイマンが独断に近い形で通達したのだろうとフレイヤは察した。『フレイヤとロキを衝突させ、潰し合わせるわけにはいかない』と言う一念で、今回の
隆誠からすれば余計なお世話なのだが、これには相応の理由があった。最後に残っている三大
この世界の『黒竜』について隆誠が大して知らないのは言うまでもない。当の本人は最初に知った時、『嘗て
もうついでに、オッタル達や【ロキ・ファミリア】で本当に倒せるのかと彼は疑問視している。聞けば嘗ての最強派閥に『Lv.8』や『Lv.9』の眷族がいても黒竜に敗れたのだから、その
ロイマンの独断とは言え、ギルドが【ロキ・ファミリア】に
☆
「えっと、確か地図ではこの辺りだな……」
中央都市にそびえる『バベルの塔』で
行き先は【ヘスティア・ファミリア】の
前に行った【ロキ・ファミリア】の件と違い、今回は完全に隆誠の独断だった。一応主神のフレイヤには行く事を話したが、『どうしてヘスティアの所へ行くのかしら?』と尋問してきたのは言うまでもない。
ちょっと話をしに行くだけだと理由を述べ、嘘偽りが無いのを理解して外出の許可を貰っている。尤も、彼女は隆誠がヘスティア側に寝返るなど微塵も思ってなく、許可はあくまで形だけに過ぎない。自身の口で言っておかなければ、他の眷族達が必ず黙っていない光景が容易に想像出来てしまうから。
「お、此処だ此処だ」
地図を頼りに【ヘスティア・ファミリア】の
『
非情に如何でも良い個人的願望を抱きながらも、隆誠は相手の
「誰ですか!? こっちは
「それは失礼した」
大層不機嫌そうな感じで玄関扉を開けたのは栗色の髪をした
彼女の事は隆誠も知っている。サポーターでありながらも、ベル達の参謀として活動している事を。
と言うより、【ヘスティア・ファミリア】の眷族達の情報を一通り得ていた。フレイヤと一緒に見守ってる際、ベルと一緒に冒険をする眷族達も中々粒揃いだと思いながら。
隆誠が来訪した事に謝罪するも、リリルカは固まっていたが――
「――フ、フ、【フレイヤ・ファミリア】ぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
彼の纏う団服を目にした事で以前に襲撃されたトラウマを思い出しながら、悲鳴同然の大声を出すのであった。
彼女の叫びで
~団長の憩い~
我儘なフレイヤだけでなく、【フレイヤ・ファミリア】眷族達の傍若無人を見続けた隆誠は一切遠慮しなくなっている。
自分を一人の
殆どの眷族達に敵意を持たれている隆誠だが、それでも彼に対して普通に話せる相手もいる。
「アイツ等にはつくづく呆れるよ。特にアレンは何度ぶちのめしても全然懲りてないし」
「奴はお前を殺すと決めた以上、何度でも挑むからな。俺もダンジョン探索中に襲撃された事がある」
夕餉を終えた厨房には、二人の男性が利用している。調理している隆誠と、それを見ながら座っている団長のオッタルが。
此処は本来『
「そこは本来、団長があのバカ猫を矯正すべきなんだが……」
「俺が言ったところで無駄だ」
「そんな情けない事を言うなよ。と言うか貴方も団長としての仕事は全然してないじゃないか。本来やるべき執務もヘディンや侍従達にやらせてるし」
調理しながら苦言を呈する隆誠に、オッタルは少々気まずそうにこう言った。
「……俺には学が無いから、余りそう言った事に向いていない」
「いい年した大人が言う台詞じゃないんだが」
「むぅ………」
返す言葉もないのか、途端に無言となるオッタル。
彼も充分理解しているのだが、それでも自分は武人気質な為に文官としての才がない。それを伝えようとするも、言葉足らずの彼に隆誠は呆れるしかなかった。
「まぁ尤も、洗礼にかまけて雑務すらまともに出来ない連中にも言える事だが、な。まぁ取り敢えずコレでも食べな」
「………美味い。今日も酒が進むな」
隆誠が作ったのは『
因みにエールは本来ぬるい温度で飲む酒なのだが、そこを隆誠がルーン魔術で調整しながらキンキンに冷えたビールに変貌させたのだ。それを知ったオッタルは最初躊躇っていたが、今はすっかり嵌っている。ゴクゴク飲んでも喉越しがよく、彼の作る料理に合うのが更に良いと。
「次はレンコンの唐揚げを作るけど、食べるか?」
「是非とも頼む」
まるで居酒屋の店主と常連客みたいな光景だが、毎回幹部達からの罵倒を受ける団長にとって、この時間は至福とも言える一時であった。
内容が短かったので、活動報告に書いた番外編を出しました。
感想お待ちしています。