別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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戦争遊戯(ウォーゲーム)に向けて③

 リリルカの悲鳴で玄関に【ヘスティア・ファミリア】の眷族達が集まった事で、一触即発の状態になっていた。

 

 以前の襲撃で負傷したヴェルフ・クロッゾ、ヤマト・命、そして悲鳴をあげていたリリルカ・アーデは、もう二度と油断しないと敵意を剥き出しにしながら武器を構えていた。更には三人の後ろでメイド服を身に纏っているサンジョウノ・春姫も何か覚悟を決めたような表情になっていた程だ。そうなってしまうのは無理もないと、隆誠は改めてフレイヤ達のやらかしに呆れてしまう。

 

 しかし、そんな状況はすぐに一変した。団長のベル・クラネルと、主神のヘスティアが隆誠を見た途端、ヴェルフ達に武器を下ろすように言ったから。

 

 一人と一柱(ひとり)が抑えて何とか事無きを得るが、それでも彼等は警戒を一切緩めたりしなかった。来訪者が【フレイヤ・ファミリア】の眷族となれば、襲撃されたヴェルフ達がそうするのは至極当然なので、隆誠は敢えて何も言わずに受け入れている。

 

「てっきりフレイヤが我慢出来ずに襲撃してきたのかと焦ったけど、まさか君だったとはねぇ」

 

「まぁ、そう危惧するのは至極当然だろうな」

 

 案内されたのは居室(リビング)で、来客用として使われているであろう一対の長椅子(ソファ)に座って対面しているヘスティアと隆誠。

 

 彼女の隣には団長のベルも座っており、その後ろには残りの眷族達が護衛するように立っている。特にリリルカは威嚇するかのように睨んでいるが、隆誠からすれば可愛い子犬が反抗している程度にしか見ておらず一切気にしてない。

 

(リリ、頼むから落ち着いて……!)

 

 因みにこの中で一番気を揉んでいるのはベルだった。隆誠が【フレイヤ・ファミリア】の幹部達に匹敵、もしくはそれ以上の実力がある事を身を以て経験しているから、もしヴェルフ達の対応に気分を害したら瞬殺してしまうかもしれないと。

 

「確認するけど、またフレイヤに内緒で来たとか言うんじゃないだろうね?」

 

 ヘスティアは敢えて周囲の事を気にせず、少々不安気な感じで訊いてきた。

 

 彼女が隆誠の事を知っている様子に、ベルだけでなくリリルカ達も驚くように見ている。

 

「そう警戒しなくても良い。この前と違って、今回はちゃんとフレイヤの許可を貰って此処へ来た」

 

「だとしても今は戦争遊戯(ウォーゲーム)を控えてるだけでなく、一応君とボク達は敵同士なんだけど」

 

「あの、神様。リューセーさんの事を御存知なんですか?」

 

 隆誠とヘスティアの会話に、ベルが気になるように訊いてきた。リリルカ達も同様で、一斉に彼女へ視線を向けている。

 

 これがもし狂信的なフレイヤの眷族であれば気分を害してるかもしれないが、隆誠はそんな事を微塵も気にしてない。

 

「単にフレイヤの阿呆がやらかした事に対する謝罪と助言(アドバイス)をした程度だが、な」

 

 隆誠の発言にヴェルフ達は目を見開いた。絶対の忠誠を誓っている筈の眷族が、美の女神を平然と罵倒している事に。

 

 対してヘスティアとベルは苦笑気味だった。彼がフレイヤに対して敬った態度を一切見せていないのを知っているから。

 

「それでもあの時は助かったよ。君のお陰でベル君を絶対救おうって決意したからね」

 

 ヘスティアは思い出す。フレイヤが『魅了』を使ってオラリオ全てが傀儡になり、自分が孤立と同時に絶望したあの時を。

 

 

 

 

 

 

「初めまして。俺はリューセー・ヒョウドウ、フレイヤの眷族だ」

 

「……フレイヤから監視をするように頼まれたのかい?」

 

 備品を調達しにいった隆誠は、それを終えた後、彷徨うように歩いている女神ヘスティアを発見した。

 

 フレイヤからベルを貰うと力付くで奪われ、更には『魅了』で孤立状態となっていた彼女は心身ともに疲弊している。自己紹介をする隆誠が【フレイヤ・ファミリア】だと分かった途端に奮起するも、それは単なる虚勢に過ぎなかった。

 

 しかし隆誠は気にする事無く、突然頭を下げる。

 

「な、何をやってるんだい君は……!」

 

「許されない事をしたのは重々承知の上だが、今回フレイヤの馬鹿がやらかした件については誠に申し訳ない」

 

 フレイヤとその眷族達がベルを奪う為の暴挙を仕出かした筈なのに、目の前にいる眷族が謝っている事にヘスティアは混乱した。

 

「そんな謝罪をするくらいなら、今すぐベル君を返してくれ! ベル君は、ベル君はボクの大事な……!」

 

「確かに貴女の言う通り、本当なら俺もそうするつもりだった。ついでにフレイヤの顔を思いっきり殴りたかったが、な」

 

「………は?」

 

 怒りをぶつけているヘスティアだったが、隆誠の発言に意味が分からなくなって再度混乱してしまう。

 

 彼女は神だから、下界の人間(こども)が嘘を見抜くことが出来る。なので先程の発言は単なる気休めな戯言かと思っていたのだが、彼から嘘の反応が一切無く本気で実行するつもりでいたのだ。ベルを助けるだけでなく、主神である筈のフレイヤを本気で殴ろうとしていた眷族など前代未聞である為に。

 

「だが仮に実行したところで、あの美神(バカ)は絶対諦めないのが目に見えていたから、俺は敢えてやらなかった。フレイヤの性格を知る貴女であれば、そうは考えられないか?」

 

「………た、確かに」

 

 フレイヤが一度手に入れたものを簡単に諦める性格じゃない事を理解しているヘスティアは、例え話をしてきた隆誠に納得の意を示した。

 

 だけど同時に、目の前にいる眷族は一体何者なのかとヘスティアは改めて疑問視する。絶対の忠誠を誓っている【フレイヤ・ファミリア】でありながらも、何故こうも平然と主神に遠慮が無い言動をするのかを。もし彼以外の眷族が耳にすれば、絶対に黙っていないだろうと確信している。

 

「神ヘスティア、申し訳ないが今の俺では如何する事も出来ない。この圧倒的不利な状況を打開する方法があったとしても、それは絶対周囲に悟らせないように心掛けてくれ。フレイヤが明日から貴女に監視の目を光らせると言っていた」

 

「!」

 

「ついでに、もしベル・クラネルを取り返したとしても決して気を抜くな。あくまで俺の予想に過ぎないが、フレイヤは最終手段として戦争遊戯(ウォーゲーム)を持ち込んでくるかもしれない。貴女も含めたオラリオ中の【ファミリア】全てを相手にする覚悟を持って、な。とまあ、俺が教えられるのは此処までだ」

 

 一通りの話をした隆誠は、後は何とか頑張ってくれと言わんばかりに背を向けて去ろうとする。

 

「リューセー君、一つだけ教えてくれないかな。君はフレイヤの眷族なのに、どうしてボクにそんな助言をしてくれるんだい?」

 

美神(アイツ)に『魅了』が諸刃(もろは)(つるぎ)だと教える必要がある。そう考えただけだ」

 

 ヘスティアの問いに、隆誠は背を向けたまま答えながら去って行く。

 

 そして約三週間後、オラリオに施された『魅了』が解除され、逆転されたフレイヤは孤立状態に陥ってしまう。

 

 だがそれでも彼女は諦めず、戦争遊戯(ウォーゲーム)をやろうと提案した事で、ヘスティアは本当に隆誠が予想した通りの展開になったと内心驚く事になる。

 

 

 

 

 

 

「――と、ボクとリューセー君はそう言う内緒話をしてたって訳だ」

 

「そんな事があったんですか……」

 

『………………』

 

 ヘスティアが前にあった密談内容を教えた後、意外な事実を知って驚いているベルを余所に、フレイヤに『魅了』されていたリリルカ達は呆然としながらも複雑な気持ちになっていた。

 

 味方ではないにしろ、隆誠のやった事は反逆行為も同然だった。独断でヘスティアに情報を漏らしたのが発覚すれば、女神に絶対の忠誠を誓っている眷族達に知られれば問題視されるどころか制裁を下されてもおかしくない。

 

 とは言え、ヴェルフ達はそれを知ったからって割り切れない。いくら彼が敵対してないとは言っても、彼等は【フレイヤ・ファミリア】の第一級冒険者達に襲撃された身なので、そう簡単に信用する事が出来ないのだ。

 

「まぁ俺が何をしようが、君達が気にする必要は一切無いよ」

 

 隆誠としても、立場の関係もあって完全な味方ではない為、どうか信用して欲しいとは微塵も思っていない。どうせ戦争遊戯(ウォーゲーム)になれば、本格的に敵対する事になるのだから。

 

「それでリューセー君、用件は何なんだい? ただ単にそんな話をする為に来た訳じゃないんだろう?」

 

「ああ、そうだったな」

 

 ヘスティアの問いに、隆誠は思い出したようにこう言った。

 

「ベル、君が向こうにいる時に貸した物を返して欲しいんだが」

 

「え? …………あっ!」

 

 いきなり言われたベルは何の事かと思っていたが、数秒後に思い出した。修行用として両腕両脚に装着させていたバンドを。

 

「す、すみません! 実は今もまだ付けたままでして……!」

 

「何だ、まだ使っていたのか。俺の訓練は終わったから、もう既に外してたと思ってたんだが」

 

 最初はバンドの重さに音を上げていたベルだが、この二週間ですっかり慣れていたようだ。

 

「【ステイタス】更新してた時から気になってたけど、アレはリューセー君の持ち物だったのかい」

 

 更新する時にベルが上半身裸になっていた際、両腕に見慣れないリストバンドを付けていたのを思い出した。

 

「その更新をする時に外したか?」

 

「いえ、アレから一度も外してませんが」

 

「え? ホントに?」

 

 隆誠はもう一度確認するも、ベルは本当に外していないようだ。

 

 それを聞いた隆誠は次にヘスティアに問う。

 

「神ヘスティア。他派閥の俺がこんな事を訊くのはダメだと重々承知してるんだが、ベルの【ステイタス】を更新した際に能力値(アビリティ)はかなり上がったか?」

 

「本当にダメな事を訊いてくるね。まぁ君の言う通り、それなりに上がったのは確かだよ」

 

 流石にベルが向こうでやった『洗礼』によって熟練度上昇値が2000(・・・・)オーバーだけでなく、その後に『Lv.5』へ【ランクアップ】した直後に再び熟練度が上昇したなど前代未聞過ぎて答えられなかった。こんなの余りにも異常過ぎて、同じ眷族のヴェルフ達にも言える訳が無いと秘密にしている程だ。

 

 だが、隆誠から更に予想外な事実を口にする。

 

「確信持って言えないんだが、恐らくベルがバンドを外した瞬間、また能力値(アビリティ)が上昇するかと」

 

「へ?」

 

 コイツは一体なに訳の分からない事を言っているんだと思っているのはヘスティアだけでなく、ヴェルフ達も同様の反応を示していた。例外なのはベルと春姫だけで、キョトンとしながら両腕に着けてるバンドを思わず凝視する。

 

 取り敢えず今この場でベルに両腕両脚に付けているバンドを外してもらうよう頼むと――

 

「あ、身体がとても軽く……って、何コレ!?」

 

「どわぁぁぁぁぁ!!」

 

 急に身体が軽くなったベルだが、突如全身から凄まじい魔力の風が吹き荒れ始めた。隣にいるヘスティアは直撃して既に吹っ飛ばされている。

 

「ちょっ、ベル様!? 何なんですかコレはぁ!?」

 

「おいおいおい! こんなすげぇ魔力初めてだぞ!」

 

「ベ、ベル殿、何とかして下さい!」

 

「はわわわわぁ! ベル様、このままでは春姫があ~れ~になってしまいますぅ!」

 

 近くにいたリリルカ、ヴェルフ、命、春姫もベルの身体から噴き出す魔力の風に吹っ飛ばされそうになっていた。

 

「リュ、リューセーさん! これは一体どうすれば……!?」

 

「はぁっ、やはりこうなったか。取り敢えず力を抜いた後に深呼吸をしてだな――」

 

 隆誠だけはこうなる事を予想していたかのように慌てる様子を見せる事無く、慌てるベルを落ち着かせながら魔力の制御方法を教えるのであった。

 

 そしてその後、改めてもう一度ベルの【ステイタス】更新をした結果――

 

「リューセー君! どうかボクに説明を、納得の行く説明をしてくれぇぇぇぇぇぇ!! 何でまたベル君の能力値(アビリティ)が急激に上昇しただけでなく、もう『Lv.6(・・・・)()ランクアップ(・・・・・・)可能(・・)なのかをぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「ああ、それは多分バンドの効果とベルの情景一途(レアスキル)に関係してるかと」

 

 別室で隆誠を呼び出して、再び二人だけの密談を始めるのであった。




ハイスクで悪魔であるリアス達の魔力を急上昇させたように、此方ではバンドによってベルを『Lv.6』にランクアップ可能にさせました。無理があるかもしれませんが、そこはご容赦ください。

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