別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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戦争遊戯(ウォーゲーム)に向けて④

 ベルが再びランクアップした事でヘスティアの脳がパンクどころか完全にショートしてしまうも、隆誠の方で色々と処置を施した他、いざと言う時のプレゼントも渡しておいた。

 

 用件が済んだ隆誠は『竈火(かまど)の館』を後にして『戦いの野(フォールクヴァング)』へ戻るも、フレイヤから戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まるまで待機するよう命じられてしまう。

 

 次に会うのは戦場になりそうだと思いながら、隆誠は来たるべき決戦に向けて鍛錬をやる。今までと違って久しぶりに分身拳を使って四人になり、集団戦を想定して一人の隆誠VS三人の隆誠と言う少々不気味な戦いが『庭』で繰り広げていた。『Lv.7(オッタル)』程度の実力まで抑えるように(おもり)を付けた状態でやっていたのだが、他の眷族達からすれば凄まじい戦いだと恐ろしげに見られていた事に当の本人は気付いていない。

 

 その際、毎日行われていた神会(デナトゥス)戦争遊戯(ウォーゲーム)の詳細がようやく決まった。

 

 勝負の方法は隠れている神を見つけて、神の胸に差している花を散らせる『神探し(ハイド・アンド・シーク)』と呼ばれる『かくれんぼ』。【フレイヤ・ファミリア】だけで、【ヘスティア・ファミリア】も含めた計四十六の派閥が組んだ『派閥連合』を相手にすることになる。

 

 数だけで言えばフレイヤ側が圧倒的不利であっても、【フレイヤ・ファミリア】の眷族達は全く気にしていない。対抗馬である【ロキ・ファミリア】がいなければ、『派閥連合』など有象無象に過ぎないのだからと認識しているのだ。例えロキ達が参戦したところで、隆誠一人で殲滅させる予定だったが。

 

 【ロキ・ファミリア】が不参加と判明した以上、フレイヤは最大の切り札(ジョーカー)である隆誠を出す気はなかったが、万が一に備えて自身の近くで待機させることにした。確実に勝利する為の布陣を敷いてる筈なのに、何故こうも胸騒ぎがするのかと思いながら。

 

 

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)の仔細が決定したそうだぞ、フレイヤ」

 

 神室に来た隆誠は紙を差し出しながら、寝椅子(カウチ)の上で受け取って静かに読み上げてるフレイヤの隣に座った。

 

「ソレに書いてある通り、日時は六日後、場所は『オルザの都市遺跡』。確か以前、お前と二人で出掛けた『神の家』がある所だったな」

 

「ええ、そうね」

 

 フレイヤは以前のデート――オッタル達に内緒で隆誠と一緒にオラリオから抜け出した出来事――を懐かしそうに思い出しながら、短脚の丸テーブルの上にある蠟燭の火で、一通り目を通した紙を燃やす。

 

 出来ればギルドから渡された書類を燃やさないで欲しかったが、既に別の紙に書き写してあるから問題無い。

 

「やはり【ロキ・ファミリア】の不参戦は確定だと、ギルドが公式に発表したそうだ。ったく、本当に余計な真似を……!」

 

「随分拘っているわね。そんなにロキ達と戦いたかったの?」

 

「まぁな。俺の敵じゃなくても、【フレイヤ・ファミリア(おまえたち)】の対となる派閥がどれほどの実力なのかを見たくて楽しみにしてたんだ……」

 

 他にもハイエルフと交渉をするつもりだった、と内心付け加える隆誠だが、それはもう今更なので敢えて口にしなかった。

 

 彼は【フレイヤ・ファミリア】の(仮)眷族になって一年以上なるが、これまで一度も強敵と呼べる相手と戦ったことはない。この世界で最強クラスの第一級冒険者のアレン達とこれまで何度相手をしても、本人からすれば単なる暇潰し程度しか見てなかった。戦闘の勘を鈍らせないように鍛錬を欠かさずやっているが、自分と張り合える強敵がいなくてフラストレーションが溜まる日々を送り続けている。

 

「それはそうと、一つ訊きたいんだが」

 

 自身の心情を余所に、隆誠はフレイヤにある事を尋ねようとする。

 

「何で今更、【剣姫(アイズ)】をベルから遠ざけたんだ?」

 

「………」

 

 以前はヴァレンシュタインと呼んでいた隆誠だが、以前やった補助で対応してた事もなって名前で呼び合う仲になっていた。

 

 自分が知らない間に二人が親しげになってる事にフレイヤは面白くなさそうに彼を睨むも、取り敢えず質問に答えようとした。

 

「【剣姫】と鍛錬を積む事で、あの子は今以上に成長する恐れがあるわ」

 

 ベルの情報(スキル)を知っている為、フレイヤは事実としての可能性を告げた。

 

「俺としては是非ともそうして欲しいんだが、な」

 

 強敵と呼べる相手を欲している隆誠としてはそれを望むも、今のフレイヤに受け入れる余裕が無かった。

 

「そうなっては困るのよ。あの子を、確実に手に入れる為には」

 

「………なぁ、フレイヤ」

 

 女神が答えた一文に、眷族はこう言い返した。

 

「素直に言ったらどうだ? ただ単にあの二人が一緒になるのを見たくないだけなんだろ」

 

「…………」

 

 まるでお見通しと言わんばかりに核心を突く隆誠に、フレイヤは無言になる。

 

 彼は知っているのだ。フレイヤがベルにアイズを近付けたくない事を。

 

 以前にオラリオを覆う巨大市壁の上で、ベルとアイズが鍛錬していた。その時にフレイヤは『バベル』の最上階から何度も目にしており、一緒に見ていた隆誠はある事に気付く。嫉妬の感情を露わにしようとする美神が、苦痛に耐えるかのように我慢していた事に。

 

 あの時と違って、今は無理だろう。

 

 フレイヤは既にベルに対する独占欲が肥大化した所為で、今まで抑えていた(たが)も外れている。そんな状態でベルとアイズが鍛錬をしていると分かった途端、絶対に抑えきれないと理解しているから、アイズに戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わるまでベルから遠ざけたのだ。

 

「悪いけど、今は一人にさせて」

 

 何も言い返せなくなったのか、フレイヤは誤魔化すように命じた。

 

 返答を聞かずとも既に察しているのか、彼は何も言わずに退室する。

 

「……初めてね、こんなに煩わしく思ったのは」

 

 天井を仰ぎながら忌々しげに呟くフレイヤ。隆誠に対してだけでなく、自分自身にも。

 

 自分を理解している眷族に心を開いていた筈なのに、心境を言い当てられた事で拒絶してしまった。

 

 いつもであれば女神(おんな)の心を暴いた罰――隆誠の頬を思いっきり抓る――を与えるのだが、とてもそんな気分じゃなかった。その時は心に余裕があったからで、今は制御不能な感情を抑えるだけで手一杯だから。尤も、隆誠はそれすらも見抜いているかもしれないが。

 

「………………本当に、無様ね」

 

 自己嫌悪に陥るフレイヤの呟きは、誰の耳にも届かない。

 

 六日後に予定する戦争遊戯(ウォーゲーム)で、全てが決まろうとする。

 




 ~不満をぶつけたいヘイズ~



 隆誠がオッタルに接待(?)をした数日後。

 【フレイヤ・ファミリア】の眷族達はいつものように『洗礼』が終わると、夕餉は明日に備えてガッツリ食べていた。その食欲に『満たす煤者達(アンドフリームニル)』は大量の食事を作らされることで疲弊する毎日を送っている。

 しかし、隆誠が加わった事で、ある程度の自由時間を確保する事が出来るようになった。最初は四人に分身する『分身拳』を見て気味悪がっていたが、長引いていた筈の作業が一気に縮小されたことで、今ではすっかり頼もしい戦力(?)として重宝している。と言うより、出来れば毎日やって欲しいと願っている程だった。これは冗談ではなく本気(マジ)で、彼女達は心底そう願っている。

 『満たす煤者達(アンドフリームニル)』は久々に自由時間を満喫しようと各々動いている中、その筆頭格であるヘイズは――

「リューセーさん、貴方が【フレイヤ・ファミリア】に来てくれた事に感謝しています」

「えっと……どういたしまして、と言うべきなのか?」

 自室で自由時間を満喫するつもりだったが、隆誠から『新作料理の味見をしてくれないか?』と誘われた。普段は作る側だから、偶には食べる側になるのも一興かもしれないと思いながら。

 彼が作った料理は憎たらしいほど美味しくて、用意されたお酒にも合っているから余計に腹立たしくなっている。

「ええ。貴方のお陰でこうして時間も空いて、今まで出来なかった事がやっと出来るようになりました。ですが……」

「?」

「何で貴方だけいつもいつも………フレイヤ様と二人っきりの時間が多いんですかぁ!?」

 料理と酒によってリフレッシュされている筈のヘイズだが、同時に今まで溜め込んでいた不満もぶちまけていた。

 彼女も『女神の付き人』と呼ばれるヘルンにも劣らないほどフレイヤを狂信的に崇敬している。自分も従者として行動したいと心底願っているのに、目の前にいる男は当然のように女神の傍にいるから、当初は心底気に入らなかった。

「文句ならフレイヤに言ってくれ。向こうが勝手に俺を呼ぶんだから」

「私だって、私だってフレイヤ様の従者をしたいんですよぉ! 貴方に恩があるとは言え、杖に手を伸ばすのをこれまで何度我慢したことか……!」

 更に言えば本気で殴り殺したいほどの嫉妬を抱いていたヘイズだが、今はもう既にその気がない。下手に敵対すれば男に性転換されてしまうだけでも悍ましいのに、そんな姿をフレイヤに見られたら絶対に憤死してしまうと自ら断言している。

「だったら直接言えば良いじゃないか。アイツはお願いされたら基本的に受け入れるぞ」

「そんな恐れ多いこと出来るわけ無いじゃないですか! 私達がそんな無礼を仕出かすとでも!?」

「分かった分かった。取り敢えずコレでも飲め」

 目が完全に据わってるヘイズが『貴方とは違うんですよ!』と訴えるも、隆誠は冷えた果実酒を用意した。

 丁度良い甘さで飲みやすい味が大変気に入ったのか、彼女はゴクゴクと何度も飲んだ事で完全に酔っぱらう事になる。

 上級冒険者でも、仕事で酷使され続けている事で耐性が低下したのだろうと思いながら隆誠はベロンベロンに酔っているヘイズを姫抱きして――

「あ~、フレイヤしゃまぁ~」

「急で悪いが、今夜はヘイズの相手をしてくれ」

 フレイヤがいる神室へ連れてきた。

「珍しくかなり酔ってるわね。一体どれだけ飲ませたの?」

「フヘヘヘヘヘ、フレイヤさま~♪」

「あらあら」

 隆誠に降ろされたヘイズは、そのままフレイヤに直行して抱き着いた。

「それじゃあ、今夜は私と一緒に寝ましょう」

「ほんとれすか~? うれしいです~」

 甘えてくる眷族の姿に、主神は微笑ましげにベッドへ連れて行こうとする。それを見た隆誠は、『それじゃお休み~』と言って退室するのであった。



 そして翌日――

「へぁ!? ふ、フレイヤ様!?」

「おはよう、ヘイズ。昨夜の貴方はとても可愛かったわよ」

 フレイヤと一緒に寝たと言う事実を知った瞬間、ヘイズは混乱の極みに陥る事になるのであった。

 因みにその情報はすぐに知れ渡る事になり、『満たす煤者達(アンドフリームニル)』も含めた他の眷族達から嫉妬される事になったのは言うまでもない。
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