別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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派閥大戦②

「行か、せるか……! 僕達【炎金の四戦士(ブリンガル)】がいる限り、フレイヤ様の元へは決して行かせない!!」

 

 主戦場の一つとなってる東部。

 

 リリルカが捨て身の策によってガリバー四兄弟を分散させた事で、四男(グレール)はルノアの拳の爆乱で力尽き、次男(ドヴァリン)はクロエのダガーで斬り裂かれた事で毒に冒されて脱落、三男(ベーリング)はナァーザから更なる弱体化魔法の重ね掛けにより(ミコト)に斬られて脱落、長男(アルフリッグ)はアイシャの紅の斬撃波を繰り出す魔法【ヘル・カイオス】で撃破。

 

 と思いきや、アルフリッグだけは倒れなかった。血濡れの修羅と化しながら、兄弟の得物を握っている。彼の背から倒された筈の弟達の幻影が見えてしまうほどの執念を見せながら。

 

 まるで幽鬼みたいだとアイシャ達は戦慄しながらも、今度こそ倒そうと動いた瞬間――突如空から何かが降ってきた。

 

『!?』

 

 降ってきた何かが地面に激突したのは、アイシャ達とアルフリッグの間。

 

 敵味方関係無く、一体何が起こったのかと困惑していた。

 

 直接目にしている者達だけでなく、激突音を耳にしたリリルカや春姫やナァーザ以外にも、少し離れた所にいるアーニャ、そして駆け付けたアレンも視線を向けている。

 

 激突した事で発生した砂塵が漸く霧散して姿を現わしたのは、地面に突き刺さった石柱の上に乗っている隆誠だった。

 

「ふむ。初めてにしては上出来、か」

 

 周囲の反応を余所に、まずまずと言った感じな表情になっている隆誠。

 

 本当ならヘディンがいる方に向けて柱を投げるべきだったが、奴はいつでも始末出来ると考えて、アルフリッグ達がいる場所へ向かう事にした。

 

 柱に乗って移動中の時から見ていたが、此処へ来たのは正解だったと彼は改めてそう認識した。

 

 【フレイヤ・ファミリア】の強靭な勇士(エインヘリヤル)達は全滅しており、残りは負傷している幹部(アルフリッグ)、アーニャと交戦中の副団長(アレン)のみ。

 

 ヘディンの離反でだけで容易く打ち崩されてしまう光景に、隆誠は心底呆れるしかなかった。たった一人だけの指揮官に依存してるから、そんな間抜けな目に遭うんだと思いながら。

 

 もし戦争遊戯(ウォーゲーム)に参加しなかったら、このまま【フレイヤ・ファミリア】が敗北したら甘んじて受け入れていただろう。しかし、それは無理だった。フレイヤから強制参加と出撃命令を下された以上、彼女の為に(表面上は)勝利を貢献しなければならないから。

 

「リューセー、何故お前が此処に……!?」

 

 今までフレイヤの傍で待機していた筈の男が現れたのを見た瞬間に認識したのか、アルフリッグは驚くように見ている。

 

 今まで視線が虚ろだった彼だが、もうハッキリしてるように覚醒してる。

 

 隆誠が動いたのは間違いなく女神(フレイヤ)の命令。それはつまり自分達が不甲斐無い姿を見せてしまった所為で、動かざるを得なくなってしまったのだ。

 

「態々聞かなくても分かるだろう。この状況になれば最早俺が動くしかない事を、な」

 

「ぐっ……!」

 

 呆れた視線を送ってくる隆誠に、何も言い返す事が出来ないアルフリッグ。

 

「それにしても、随分無様にやられたな。以前に俺の方で弱点を指摘した筈なのに、今までずっとほったらかしにしてたのがよく分かったよ」

 

「…………」

 

 隆誠が更に付け加えると、アルフリッグは最早ぐうの音も出なくなってしまっていた。

 

 ガリバー四兄弟の『無限の連携』は都市随一の連携で、それは足し算ではなく掛け算となり、『四人が揃えばいかなる第一級冒険者にも勝る』と言われている。

 

 端から聞けば確かに見事と称賛すべきモノだが、その連携には当然弱点もある。四人揃えば完璧な連携が出来るのであれば、それを阻止するように分断されてしまったら、一人でも欠けた瞬間に瓦解してしまうのだ。

 

 隆誠は以前にアルフリッグ達と相手をした時、『分身拳』を使って一対一の勝負にさせたのだが、あっと言う間に勝負が付いてしまった。分断されたら弱体化すると言う弱点を発見した後、『お前等は連携だけじゃなく、一対一の戦いもやった方が良いぞ』と指摘したのだが、四兄弟はそれを一切教訓にしないまま無視して今に至る。

 

「取り敢えずお前はもう休んでろ。後は俺がやるから」

 

「バカかお前は!」

 

 フレイヤの所へ行こうとする者達が目の前にいるのに、それを放棄するように言ってくる隆誠の発言にアルフリッグは激昂した。

 

「こんな状況で呑気な――がっ!」

 

「馬鹿はお前だ。これ以上恥の上塗りをするなと言ってるのが分からないのか」

 

 抗議するアルフリッグだが、一瞬で背後に回った隆誠が手刀で彼の首筋に当たった瞬間に気絶してしまった。

 

「な、何なのアイツ……!?」

 

「負傷してるとはいえ、第一級冒険者をあんな簡単に……!」

 

 二人の会話を聞いていたルノアとクロエだが、隆誠が『Lv.4』である自分達の目でも見えない速さを見せた事に驚愕していた。

 

「アイシャ殿、気を付けて下さい! あの御仁はベル殿が作戦前に話した、第一級冒険者以上の実力者です!」

 

「何だって!」

 

 警戒するように言った命に、一早く反応したのはアイシャだった。

 

 この戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まる少し前、ベルは【派閥連合】に隆誠の情報を事前に公開している。

 

 しかし、聞いた彼等としては本当に第一級冒険者の実力があるのかと疑問視していた。そんな実力者がいるのであれば自分達の耳にも入るのに、何故その男は冒険者活動をしていないのかと。実際に隆誠の実力を目の当たりにしてるのは、【フレイヤ・ファミリア】を除けばベルだけなので、それ以外の者達が半信半疑になるのは無理もない。

 

 彼女達の反応を余所に、隆誠は原初のルーン魔術の一つ『癒し』を使っていた。指先で描かれたルーン文字が、意識を失い仰向けで倒れているアルフリッグに触れた瞬間、結界が形成されて彼を覆っていく。

 

「アレって、魔法なの?」

 

「詠唱どころか魔法名も口にしないまま、仕草だけで簡単に発動させてるニャ」

 

 隆誠が披露したルーン魔術にポカンとするルノアとクロエ。

 

「どうやら只者じゃないのは確かだね」

 

「自分もそう思いました」

 

 アイシャと命はベルが嘘を吐く人間(ヒューマン)じゃない事は知ってるが、自分が知っている魔法とは全く異なる方法で発動させていたのを目にした瞬間、非常に厄介な相手と遭遇したと改めて認識する。

 

「さて、いつまでも其方を無視する訳にはいかないな」

 

 アルフリッグと同様に負傷してるドヴァリン達も治癒の措置は必要だが、一先ずは後回しにしようと、自身に視線を向けているアイシャ達の方へと視線を移す隆誠。

 

『ッ!』

 

 コツコツとゆっくり歩く彼に、アルフリッグ達を倒した四人は一斉に警戒しながら構える。

 

「時間が惜しいから、すぐに終わらせてやるよ」

 

「それはコッチの台詞だぁ!」

 

「誰かは知らないが、ミャーが終わらせてやるニャ!」

 

 カチンときたルノアが殴り掛かり、皮肉交じりな台詞を吐くクロエもそれに続く。

 

 武器を一切持っていない無手の隆誠は、迫り来る二人に一切動じることなく見ているだけ。

 

 ルノアの拳を、背後に回ったクロエのダガーに斬撃を軽々と躱した隆誠は、二人の手首を掴んで思いっきり交差させた。

 

「あだッ!」

 

「ギニャッ!」

 

 直後、ルノアとクロエの額が見事にぶつかった。

 

 隆誠は掴んでいる手首をすぐに放して距離を取る為に後退すると、目の前にいる二人は揃って地面に膝を付き、すぐにぶつかった額を両手で覆う。

 

「~~~ッ! 何してんだよアホ猫!」

 

「それはこっちの台詞ニャ! オミャーどんだけ石頭ニャ!?」

 

「何やってるんだよアンタ達!」

 

 敵がいるのにいがみ合うルノアとクロエに、アイシャが思わず突っ込む。

 

「はっはっは。アホな攻撃だったが、どうやら相当効いたようだな」

 

 面白いものが見れたと言わんばかりに隆誠が笑っていると、それを聞いたルノアとクロエが即座に振り向きながらキッと睨む。

 

「こんの野郎! 舐めた真似しやがって!」

 

「ミャーの受けた痛みを百倍に……アレ? ミャーの得物……」

 

 憤慨しながら再度突撃するルノアとは別に、持っている筈のダガーが無い事に気付くクロエ。

 

「探し物はコレかな?」

 

「――ぎっ!?」

 

 背後から隆誠の声が聞こえたクロエはすぐに離れようとするも、向こうの方が速かった所為で背を斬り裂かれた。

 

「アイツ、また!」

 

 同僚の悲鳴にルノアが脚を止めて振り向くも、またしても一瞬で移動した隆誠がクロエの背後を取って攻撃をした事に目を見開く。

 

「中々良い切れ味だな、猫人(キャットピープル)

 

「くっ……!」

 

 隆誠が手にしてる鎌の様に先端が曲がっているダガーを目にしたクロエは、アレで自分を斬ったと認識した瞬間に焦り始めた。

 

 あの黒紫の色を宿したダガーは『バイオレッタ』と呼ばれ、暗殺に特化した暗剣。様々な毒を塗って使用しており、今回は第一級冒険者の『耐異常(アビリティ)』を貫通する程の激毒を吸わせている。故に先程戦ったドヴァリンは、その猛毒に冒されて脱落したのだ。

 

 クロエは劇毒の恐ろしさを当然理解しているから、事前に持って来ていた解毒剤を使おうとしている。

 

「おっと、そうはさせない、よ!」

 

「がっ!」

 

 距離がある筈なのに、クロエは上半身に突然強い衝撃を受けた所為で軽く吹っ飛んでしまう。

 

 明らかに隆誠の仕業なのだが、ルノア達には単に彼が強く睨んだだけ(・・・・・・・)にしか見えなかった。『ドラグ・ソボール』で空孫悟が使っていた『遠当て』と言う技を知らなければ無理もない。

 

 そんな周囲の反応を気にしてない隆誠は、再度一瞬で仰向けに倒れたまま口から真っ赤な血を吐いているクロエに接近する。

 

「がはっ、ごほっ……!」

 

「どんな気分だ? ドヴァリンにやっていた事をやり返されている気分は?」

 

 解毒剤を出したいクロエだが、隆誠が放った『遠当て』による衝撃が少々強すぎた所為で思うように動けないだけでなく、激毒が身体を急速に蝕んで吐血している。

 

 隆誠は見ていた。遠目でありながらも、アルフリッグ達がやられているところを。その時は黒い煙幕で見えないのだが、彼は神の能力(ちから)で透視した事によって鮮明に捉えていたのだ。

 

「本当ならそっくりそのまま返したいところだが……これで勘弁してやるよ」

 

「がはっ!」

 

 顔を踏まない代わりとして、クロエの腹部を踏みつける隆誠。それが更なる激痛だったのか、彼女は意識を断ってしまう。

 

「てめえぇぇぇぇぇ! よくもクロエをぉぉぉぉぉ!」

 

 クロエが脱落したのを見たルノアが完全に激昂し、『Lv.4』に相応しい速度で隆誠に接近し、拳の乱打を浴びせようとする。

 

 そんな彼女の猛攻を、隆誠はクロエから離れながら持っていたダガーを放り投げ、余裕で躱しながら――片手でルノアの首を掴んだ。

 

「あ、が……!」

 

「確か君は、グレールを滅多打ちにしていたな。その返礼を受け取ってくれ」

 

 そう言いながら隆誠は掴んでいる手を放した直後、左拳の腹撃(ボディーブロー)を当てる。

 

 腹に突き刺さってルノアの身体は折れ曲がり、そこから先は拳の爆乱となる。

 

 ストレート、フック、アッパー、エルボー、バックフィスト等々、ルノアの全身と言う全身を抉るような滅多打ちだった。しかも地面に付くこと無く、宙に浮遊したまま乱打を受け続けていた。

 

「あぁぁあああああああああああああああああああああああああっっ!?」

 

 乱打を受けてると同時に激痛を味わっているルノアは理解した。先程勝利したグレールにやっていた猛攻が、そっくりそのままやられている事を。

 

「終わりだ」

 

 止めの一撃がルノアの腹部に当たると、吹っ飛んだ彼女は石壁に激突。

 

「………………」

 

 ボロボロの姿となり果てているルノアは、既に意識を失い倒れて沈黙する。

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わった後に治療してやるから、それまでは我慢してくれ」 

 

「「……………」」

 

 援軍として来た『豊穣の女主人』ウェイトレスのクロエとルノアが、後から現れた隆誠によって苦も無く倒されてしまい、この場にいる者達だけでなく、中継で見ている観戦者達も言葉を失うのであった。




先ずはクロエとルノアが退場となりました。

一応言っておきますが、隆誠は女を殴る事に何の躊躇いもありません。

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