別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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ヘディン・セルランド/ヴァン

 隆誠はいつものように本拠地(ホーム)で事務仕事をしている。

 

 午前中にあったフレイヤとのデートは問題無く終わったのだが、他の眷族達がオラリオ中を捜しまわっていたらしい。隆誠は勿論気付いており、彼等に見付からないようフレイヤと一緒に本拠地(ホーム)へ戻っていた。その後に『今まで何処へ行っていた!?』と問い詰められたが、そこは主神の口添えで事なきを得て、午後から何事も無く事務仕事に徹しようとする。

 

「仕事をサボるとは良い度胸だな、愚人」

 

 いざ執務室へ行くと、そこには【フレイヤ・ファミリア】の幹部で白妖精(ホワイトエルフ)の男性――ヘディン・セルランドがいた。

 

 美麗な眉を顰めながら侮蔑の言葉を発する彼に、隆誠は嘆息しながらも仕事の準備をしようとする。

 

「仕方ないだろ。フレイヤが出掛けようって言ってきたんだからさ」

 

「……やはりあのお方と一緒だったのは本当のようだな」

 

「だったらどうする。今この場でヘディンが俺を処刑するか?」

 

「………………」

 

 やれるものならやってみろ、隆誠は暗にそう挑発した。

 

 一年前に仮眷族となった頃は新米として遜っていたが、フレイヤと同様、幹部も含めた眷族達相手にも一切遠慮しなくなっている。特に平然と罵倒を吐くヘディン、この場にいない副団長のアレンに対しては。

 

 そんなふざけた態度を取る隆誠に、ヘディンは一切仕掛けず無言だった。これが他の眷族であれば容赦無く叩きのめすが、彼だけは例外なのだ。アレンと同様に敗北した一人であり、更には思い出すだけでも悍ましい屈辱を味わわされた為に。

 

 共通語(コイネー)を教わった今の彼は事務仕事も凄く優秀で、ヘディンはどの道彼を処刑する事は出来ない。眷族達の殆どが『洗礼』に明け暮れる【フレイヤ・ファミリア】の中でも貴重な存在なので、もし彼がいなくなってしまえば、一日中執務をする破目になるのだから。因みに隆誠に共通語(コイネー)を教えたのは珍しくもフレイヤで、それを知った眷族達は殺意の波動に目覚めて本拠地(ホーム)が大変なことになっていたとか。

 

「さっさとそこの書類を片付けろ。私はこの後にやらねばならん仕事があるのでな」

 

「はいはい、分かったよ」

 

 早く執務をやるように促してくるヘディンに、隆誠は遅れた分を取り戻そうと、早速仕事に取り掛かるのであった。

 

 そして二時間後――

 

「ほれ、今日の分は終わったぞ。後はヘディンの方で確認しといてくれ」

 

「……相変わらず、腹が立つほど手早く片付けたな」

 

 隆誠が自分以上に事務処理を済ませる事に腹立たしくなるヘディンだったが、予定が早く終わった事に複雑な心境となっていた。

 

 

 

 

 

 

「ふぅっ。ちょっと一息入れるか」

 

 事務仕事が予定より早く終わった隆誠は、一先ず休憩しようと自室へ戻ろうとしていた。

 

 その途中で広い庭を見渡せる道があり、そこを通り抜けようとする際、相変わらずな光景が浮かんでいる。隆誠を含めた非戦闘員を除いた『Lv.1』~『Lv.4』の団員達が朝から日没まで『洗礼』と称される殺し合い同然の戦いが。

 

(確かにああやれば強くなるかもしれないが……)

 

 隆誠は『洗礼』に全く付き合いきれないみたいな感じで呆れた視線を送っていた。

 

 眷族達がフレイヤの寵愛を欲する為に強くなろうとしているのは、【フレイヤ・ファミリア】からすれば当然の行動だろう。しかし別世界から来た隆誠からすれば、彼等のやっている事は狂信者の振る舞いとしか見ていない。本気で相手を殺そうと戦っているのだから。

 

 強くなる為に鍛錬をするのは勿論良い事なのだが、あんな野蛮な方法で強くなったところで却って虚しくなる。強くなる為に相手を殺すなど、(イッセー)を鍛えてる隆誠からすれば唾棄すべき行為なのだ。

 

 あの『洗礼』は【フレイヤ・ファミリア】が解体しない限り終わる事はないだろうと思いながら、隆誠は視線を外して自室へ向かう。

 

 そんな中、隆誠の姿を見かけた一人の眷族が声を掛けようとする。

 

「リューセー!」

 

「ん?」

 

 名前を呼ばれた隆誠が振り向くと、自分を忌々しい存在のように見る男性眷族がいた。

 

 彼の名はヴァンで、ヒューマンと小人族(パルゥム)のハーフである半小人族(ハーフ・パルゥム)の冒険者。『Lv.4』で【石火(フリント)】の二つ名を与えられている。

 

 フレイヤに忠誠を誓っている身である為、隆誠の事を心底気に入らない者と見ている。午前中にフレイヤが出掛けていた際、眷族達に出動指示を出したのが彼だという事を補足しておく。

 

「何か用か?」

 

「貴様、午前中にフレイヤ様と一体何処へ行っていた!?」

 

 ヴァンは隆誠が本拠地(ホーム)へ戻って来た際に問い質そうとするも、フレイヤがいたことで無理だった。その主神が今いないから、この隙に訊き出そうとする。

 

「何処へって……単にカフェで一緒にお茶を飲んでいただけだが」

 

「なっ!」

 

 一緒にお茶を飲んでいた。それは即ち、隆誠がフレイヤとデートしていたと言う事になる。

 

 【フレイヤ・ファミリア】の眷族からすれば最大級の褒美だと言うのに、目の前にいる男は午前中に堪能していたなんて、ヴァンからすれば抹殺案件も同然だった。

 

「新参者如きが、フレイヤ様とお茶していただと……!」

 

「言っておくけど、向こうから行こうって誘ってきたんだからな」

 

 本当なら午前中に仕事する予定だったのにと付け加える隆誠だが、ヴァンは全く聞いていない。それどころか腰にある双剣を抜こうとしている。

 

「貴様、覚悟は出来てるんだろうな?」

 

「止めときな。そんな下らない理由で俺に挑むなんて、後で死ぬほど後悔するぞ」

 

「殺す!!」

 

 隆誠が下らないと口にした瞬間、双剣を抜いたヴァンは接近して斬りつけようとする。

 

 

 

 

 

 

「おいフレイヤ、ヴァンちゃんがお前に構って欲しいみたいだから相手しといてくれ」

 

 ヴァンを一撃で意識を失わせた隆誠は、性転換ビーム銃を使って女にさせてから、神室にいるフレイヤに引き渡そうとする。

 

「それは構わないけど………今度はヴァンが可愛い女の子になったのね」

 

 いきなり現れた隆誠に戸惑うフレイヤだが、自身の眷族が女の姿になってる事に楽しそうな表情となる。以前に別の眷族でこうなった事があるのを知っている為に。

 

「ねぇリューセー、一体どうやって性別を変えているのかを詳しく教えて欲しいのだけど」

 

「それは秘密。んじゃ、後は任せた」

 

 この後、目覚めたヴァンは女になった事に戸惑う中、忠誠を誓っている筈のフレイヤから女としての快感を味わわされると言う黒歴史を抱える事になってしまった。




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