別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

20 / 57
本当は今日の0時に更新する予定でしたが、思ったより四苦八苦して遅くなってしまいました。


派閥大戦④

 隆誠は悔し涙を流している命に敢えて止めを刺さず、アルフリッグを除くガリバー兄弟に原初のルーン『癒し』を施していた。

 

 そこら辺に倒れている強靭な勇士(エインヘリヤル)達にもやろうかと思ったが、大して重傷ではなかった為、後から回収する【ガネーシャ・ファミリア】に任せようと次の戦場へ向かう。

 

 向かった先は、銀槍(ぎんそう)金槍(きんそう)が交差している戦場。アレンとアーニャの兄妹対決をしている最中、予想外な展開が起きる。戦いが行われている最中、リューとの一騎打ちで敗北した筈のヘグニがアーニャを加勢するなど誰が想像するだろうか。

 

 一体どういう事だと隆誠は疑問を抱くも、それはすぐに判明する。ヘグニもシルを助ける為に裏切ったのだと。

 

 それを聞いた隆誠は一切悪感情を抱いていない。ヘディンに唆されたとは言え、自分の意思で離反を決意しただけでなく、自己改造魔法(ダインスレイヴ)を使わずにありのままの自分の言葉で告げた事に感心していたから。

 

 ヘグニの心情を知った隆誠はこのまま見過ごしたい気持ちになるも、フレイヤから出撃命令を下された以上遂行しなければならない為、一先ずアレンに加勢しようと動き出す。

 

 そんな中、アレンは叫んでいた。『(シル)』の護衛を務めていた不満とは別に、女神に対する絶対の忠誠を。

 

「俺の心を奪ったのは、傲慢で、冷酷で、誰よりも強い『女神』だ!!」

 

「随分苦戦してるようだな、アレン」

 

 アレンがヘグニとアーニャに激情を叩きつけたのだが、思わぬ別の声に反応した。

 

 その声の主である隆誠は、アレンの後方にいる。

 

「リューセー、てめえ何しに来やがった!?」

 

「何しにって……加勢しに来たんだが」

 

 大事な妹(アーニャ)負傷者(ヘグニ)に梃子摺っているのを見るに見兼ねたから、と思いながら呆れるように表面上の理由を言う隆誠。

 

「ヘグニ。まさかお前もヘディンと同じく離反するとは、な」

 

「………ごめんよ、リューセー。俺はどうしても、シルさんを救いたいんだっ!」

 

「そうか」

 

 友を裏切ってしまった罪悪感を抱くヘグニの謝罪に、隆誠は咎める気など一切無かった。消極否定悲観(ネガティブ)な塊であるダークエルフが、正面から言い切ったのは実に良い事だと思っているから。

 

「アーニャ、だったな。悪いけど君の同僚二人は俺が始末した。殺してはいないから、そこは安心してくれ」

 

「クロエとルノアが……!?」

 

 一緒に参戦してくれた二人の脱落を聞いて驚愕するアーニャだが、隆誠は気にせずアレンの方へ視線を向ける。

 

「アレン、下がってろ。後は俺がやる」

 

 今のアレンはアーニャの【レミスト・フェレス】による『能力低下(ステイタス・ダウン)』の状態だから、思うように力を発揮出来ない状態だった。

 

 加えて手負い状態でも『Lv.6』のヘグニも加われば、如何に彼でも苦戦は免れないと思い、隆誠は下がるように命じた。

 

「俺に指図すんじゃねぇ! てめえはすっこんでろ!」

 

 しかし、アレンは拒否した。隆誠と言う不愉快極まりない存在の命令に従う気など微塵も無いから。

 

「アレン、お前が俺の事を心底嫌いなのは勿論理解している。だが今は聞き分けてくれ。フレイヤから確実に勝利しろと命令された以上、お前も副団長として――」

 

 フレイヤの命令と言われれば多少は耳を傾ける筈だと思っていたが――

 

「俺が従うのはあの方だけだ! 女神に忠誠を一切誓ってないテメエ如きが俺に命令する権利なんかねぇんだよ!」

 

「……………はぁ」

 

 アレンは初めから聞く気など無かったようで、隆誠は呆れる余りに嘆息しながら瞑目してしまう。

 

 知っての通り、アレン・フローメルは隆誠を殺したいほど心の底から憎悪を抱いている。オッタルと同じく当然のようにフレイヤの傍にいるから猶更に。

 

 それが心底気に入らずに以前殺そうとするも、彼が予想外な実力者である為に今まで何度もボロ雑巾にされると言う屈辱の敗北を与えられていた。それでも諦めずに何度も挑み続けているが、結果は全戦全敗で既にプライドがズタズタなのは言うまでもない。

 

 加えて今のアレンはアーニャの件もあって、今まで以上に苛立ちを募らせている。ただでさえ沸点が低い状態の為、隆誠の台詞が引き金となったのか、殺意をぶつけながら拒否する始末。

 

 その怒りの余り、彼は気付けなかった。隆誠が閉じていた目を開くと、何かを決心したかのようにアレンを見ている。

 

「それがお前の理屈なら仕方ない。だったらこの場から退場してもらおうか」

 

「あ?」

 

 言ってる意味が理解出来ないのか、アレンは思わず振り向いた直後――隆誠が自身のオーラで物質化させた光の剣を手に持ち、それでアレンの腹を斬り裂いた事で血が噴き出る。

 

「がっ……!」

 

『!?』

 

 アレンだけでなく、敵対している筈のアーニャとヘグニも驚愕していた。何故隆誠が自派閥の副団長を斬ったのかと。

 

 これは彼等だけでなく、オラリオやバベルで観ている住民や神々も同様だ。ヘディン・セルランドに続いて、新たな離反者が出来たのかと困惑するばかり。

 

「ぐっ……何のつもりだぁ!?」

 

 突然の激痛にアレンは、今も血が流れている腹部を片手で押さえながら、もう片方の手で銀槍を振るった。しかし、それは隆誠に当たらず躱され距離を取られてしまう。

 

「羽虫共に続いて、今度はテメエまでも……!」

 

「勘違いするな。俺が今後新たな副団長として(・・・・・・)派閥再編(・・・・)をする際、お前は不要だと判断しただけだ」

 

「何を、言って……ッ!」

 

 隆誠の発言に益々困惑するアレンだが、漸く理解した。

 

 ヘディン達の離反とは違い、目の前にいる男は今の状況を利用して副団長(じぶん)を本気で始末する気だと。

 

「ざけんなぁ! 地位(そんなもの)に一切興味無い筈のテメエが、一体何を考えてやがる!?」

 

「俺がこんな事を仕出かした一番の原因はお前だ、とだけ言っておこう」

 

 呆れるように答えた隆誠は、これまでの【フレイヤ・ファミリア】の在り方を思い出す。

 

 諸事情があったとは言え、彼がフレイヤの仮眷族となって一年以上経ち、主に執務や調理など裏方の事務仕事をしていた。

 

 そこでの生活にある程度慣れた事で、隆誠は【フレイヤ・ファミリア】が都市最大派閥として問題だらけな点が大有りだと言う事も判明する。それはもう色々あり過ぎて、よくこんな状態で【ファミリア】を維持できるなと失礼な事を考えてしまう程に。

 

 一番の問題点を挙げるとすれば、派閥のカギを握る筈の副団長(アレン)が、その必要な役割を一切やらないのが隆誠を心底呆れさせた。尤も、それは団長のオッタルにも言える事だが。

 

 副団長として必要な事を隆誠が教えようとするも――

 

『末端のテメエが一々口出しすんじゃねぇ!』

 

 ――と言い返されて一年以上経ち、未だに改善の傾向が見当たらないまま今に至る。

 

 故に隆誠は決めた。アレンはいずれ副団長の地位から降りて貰おうと。

 

 その計画は既に潰えた(・・・・・)のだが、今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)で少しばかり利用しようと考え、そして行動に移す事にした。

 

「お前みたいな迷惑猫(トラブルメーカー)が副団長のままでいたら、【フレイヤ・ファミリア】の品位が下がる一方なんだよ。少しでも改善してくれれば、こんなバカな事をする気は無かったんだが、な」

 

「テメエ……!」

 

 心底残念そうに言う隆誠に、アレンは我を失うほどの怒りを醸し出す。

 

 怒りによるモノか、もしくは時間切れになったのか、『能力低下(ステイタス・ダウン)』となっていたアーニャの魔法が効力を失う。

 

「殺す!」

 

 本来の実力が戻った事で、アレンは本気で隆誠を殺そうと最速の刺突を繰り出した。

 

 『Lv.4』のアーニャは勿論のこと、『Lv.6』のヘグニですら簡単に防ぎきれない刺突なのだが、既に何度も戦っている隆誠からすれば既に見慣れてるのか――

 

「負け猫如きが……大人しく砂遊びでもしてろ、三下」

 

「ぎっ!」

 

 超スピードを使って躱した際、後ろを取ったアレンの背中を光の剣で突き刺しながら吐き捨てた。

 

 光の剣を刺された瞬間、急に身体が動けなくなり、そのままうつ伏せの状態で倒れてしまう。隆誠が光のオーラを彼の身体の中に注いでいる事で、アレンはもうまともに動く事が出来ないのだ。

 

 同時に突然思い出す。以前に交戦した【ヘスティア・ファミリア】所属の()()()ヴェルフ・クロッゾに唾棄した台詞と全く同じな事に。

 

「て、てめえ……!」

 

「邪魔だ。失せろチビ猫!」

 

「がぁっ!」

 

 刺した光の剣を引き戻した後、倒れて動けなくなったアレンの脇腹を思いっきり蹴り飛ばした隆誠。

 

 彼は弱っている相手を甚振る趣味は無いが、今まで溜め込んでいた鬱憤を晴らす意味も込めてやったのだ。

 

 蹴り飛ばされたアレンは廃屋の石壁に激突した後、そのまま無抵抗のまま地面に落下していく。

 

 それを見た隆誠が止めを刺そうと手にしている光の剣を霧散させ、右の人差し指に黒い魔力を集束させてルーン魔術の爆発用『ガンド』を放つ。

 

「兄様ぁぁぁぁぁ!!」

 

 すると、今まで呆然と見ていたアーニャが飛び出した。

 

 落下していく兄を助けようと駆け付けて抱きとめるも、運悪く隆誠のガンドが直撃し――爆発した。

 

「………………」

 

「に、兄、様……」

 

 爆発によって発生した粉塵が霧散すると、既に意識を失っているアレンだけでなく、アーニャもボロボロの姿に成り果てて倒れていた。

 

 しかし、彼女も次第に意識を失い脱落となってしまう。

 

「おやおや、こいつは思わぬ収穫だったな」

 

 アレンを仕留める筈が、敵である筈のアーニャも倒してしまった事で手間が省けたように呟く隆誠。

 

 彼女が脱落した事で、残りは急遽離反したヘグニだけ。

 

 余りにも予想外過ぎる展開に誰も理解が追い付かない状況になるも、フレイヤだけは静かに見守っていた。




原作と違って、アレンを退場させる流れにしました。

感想お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。