別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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派閥大戦⑤

『い、い、一体何がどうなっているんでしょうかぁぁぁぁぁぁぁ!? 突然現れた【フレイヤ・ファミリア】の無名眷族が、味方である筈の【女神の戦車(ヴァナ・フレイア)】を脱落させたぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 中継で観ているオラリオは既に混乱が起きており、実況役を務める【ガネーシャ・ファミリア】所属のイブリ・アチャーも拡声器を使って思いっきり叫んでいた。

 

 ヘディン・セルランドに続いて無名眷族――隆誠も離反したのかと思いきや、副団長のアレンに不意打ち同然の攻撃を仕掛けて脱落させた事に、最早意味が分からない状態に陥るのは無理もない。

 

 最強派閥である【フレイヤ・ファミリア】の副団長(ナンバーツー)が倒され、(フレイヤの護衛を務めてるラスクとレミリアは別として)団長のオッタルと隆誠のみ。【派閥連合】が倒すべき相手は残り二人とは言え、それでも不利な状況に変わりないのだ。

 

 東部で隆誠が相手をするのは、ヘディンと同じく離反したヘグニ。端から見てもすぐに勝負が付くだろうと素人でも分かる。『Lv.6』のアレンを簡単に倒されたのを見たら、同じく『Lv.6』で手負い状態のヘグニがやられるのは時間の問題だと。

 

 もう一つの戦場である北西にある『円形劇場』では、一人だけで戦うオッタルに対してベル、リュー、ミア、そして離反したヘディンも途中で加わる。流石は『Lv.7』の【猛者(おうじゃ)】と言うべきか、四人相手に苦戦しないどころか互角の戦いを繰り広げている。

 

 どちらの戦場も全く目が離せない中、【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)ではちょっとした事が起きている。

 

「詠唱や魔法名を口にする事なく、ただ指で文字を描く仕草をしただけで……ロキから聞いた時には本当に可能なのかと耳を疑ったが、アレがルーン魔術か。そう言えばベル・クラネルもオッタルと戦う前に似たような仕草をしていたが、まさかあの少年もルーン魔術を……だとすれば隆誠に教わったと見るべきだろう。出来るのであれば私も彼から是非ともルーン魔術を――」

 

「………リヴェリア、いい加減にブツブツ言うのを止めんか」

 

 隆誠が扱うルーン魔術を見た時から考察するように長々と独り言を言い続けているリヴェリアに、ガレスは辟易するように指摘した。

 

 ティオナやティオネ、アイズやフィンも少々うんざりしたような表情だ。

 

 リヴェリアがそうなるのは分からなくもない。詠唱や魔法名を口にする事なく仕草だけで発動させるなど、自分達が知っている常識と全く異なる未知の力だと分かれば猶更に。

 

 それとは別に相当な実力者だと言う事も充分理解した。『Lv.4』のアイシャ、クロエ、ルノアを簡単に倒しただけでなく、不意を突いたとはいえ『Lv.6』のアレンも倒されたとなれば、隆誠は確実に『Lv.6』(第一級冒険者)以上の実力者だと充分に証明されたのだ。もしかすれば『Lv.7』の【猛者(おうじゃ)】オッタルに匹敵しているかもしれないと嫌な想像もしている者だっている。

 

 だけど、彼等は知らない。隆誠が実力の半分も出さずに倒していた事を。

 

 

 

 

 

 

「リューセー、お前は何て事を……!」

 

「妹の方を非難してるなら、俺に非はないぞ。向こうが自ら被弾したんだから、な」

 

 隆誠の言ってる事は決して間違っていない。

 

 敵対してるとは言え(アレン)を助ける為に(アーニャ)が身を挺して守ろうとするのは理解しても、戦争遊戯(ウォーゲーム)中にそれは命取りになってしまう。普段から『家族愛』を重視している隆誠でも、こういう時は心を鬼にしてやるほどだ。

 

「それはそうとヘグニ、自分の身を心配したらどうなんだ? 俺の前で堂々と裏切る発言をした筈だろ」

 

「あ……」

 

 ヘグニは今になって不味いと焦り始めて顔を青褪めていく。

 

 シルを助けたいと堂々と言ってスッキリした気分になっていたが、フローメル兄妹が倒された事で今この場には彼と隆誠のみ。

 

 ヘディンから『なるべく足止めしろ』と頼まれて了承するも、この状況でそれはもう叶わないと殆ど諦めかけていた。目の前にいる相手は自分を完全に敵と認識しており、手の指の関節をポキポキと鳴らしている。

 

 隆誠は武器を使わずとも、これまで何度も襲い掛かってきた【フレイヤ・ファミリア】の眷族達を素手だけで叩きのめしている。特にアレンの時は最高速の刺突を放たれても簡単に躱すどころか、指二本だけで簡単に穂先を挟んで受け止めていた事があり、その直後に強烈な反撃(カウンター)KO(ノックダウン)させていた。

 

 ヘグニも過去に挑み、自身が使う得物によって軽い傷を与えるも、それが不味かったと死ぬほど後悔してしまう。隆誠が笑みを浮かべた瞬間、『本物の俺を捉えられるかな』と言って急にアレン以上のスピードを出して、無数の隆誠が出現した。どれを斬っても全部彼の残像ばかりで、完全に翻弄された自分の目の前に急に現れ、凄まじく速い手刀を八発を浴びせられて意識を失う結末となったのは今でも鮮明に憶えている。

 

「手負いのお前を倒すのは造作も無いが……」

 

 隆誠は少しばかり躊躇っていた。

 

 ヘグニは【フレイヤ・ファミリア】の中で数少ない友人関係を築いている一人。手負いの彼をこれ以上痛めつけるのは酷だろうと、容赦無く倒したアレンと違って気を遣っている。

 

 本来なら手刀で気絶させるのがベストなのだが、アルフリッグとは違って彼は離反したので、相応の報いを受けさせねばならない。

 

(あ、そうだ)

 

 丁度良いお仕置きがあると思い付く隆誠。

 

 彼が途端に笑みを浮かべた事で、ヘグニは突如悪寒が走る。

 

「リュ、リューセー。その笑みを見てると、何か凄く嫌な予感がするんだけど……!」

 

「フフフフフ……離反したヘディンには後でやるつもりだが、ヘグニも同様の罰を下しておく、か」

 

「……一応確認なんだけど、一体何の罰なんだい?」

 

 内容次第では逃げると言わんばかりの姿勢を見せるヘグニだが、それを見抜いているのか、隆誠は超スピードを使って一瞬で彼の背後を取った。

 

「そりゃ勿論、性転換だよ♪」

 

「やっぱりぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいい!!」

 

 既に性転換ビーム銃を手にしてる隆誠が引き金を引いた瞬間、銃口から放たれたビームはヘグニに命中した。

 

 直後、ヘグニの全身からボンッと煙が噴き出る。

 

 そして――

 

「ううう……離反したからってこんなの酷いよ……」

 

 煙が晴れると隆誠の目の前にはヘグニではなく、とても可愛らしい黒妖精(ダークエルフ)の美少女が両膝を付いて、涙目になりながら訴えていた。

 

「こうなる事も覚悟していた筈だろ、ヘグニちゃん」

 

 隆誠が美少女に向かって友人の名を呼んだ事で、オラリオにいる誰もが信じられないと言わんばかりに絶叫したのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

「ちょっと待てェェェェェエエエエエエエ!!」

 

「何アレ!? 何あの可愛い子!?」

 

「マジで【黒妖の魔剣(ダインスレイヴ)】なの!?」

 

「男が女になったぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 『バベル』にいる神々は様々な感情が交じり合った叫び声をあげており、誰もが女に性転換したヘグニを凝視していた。

 

 残念な性格をした褐色肌のエルフが、服装はそのままでも、女性特有の見目麗しい容姿をした美少女に変身したことで、男神の殆どが興奮状態になっている。

 

「おいおいおいおい、何が一体どうなってるんだ!? 【黒妖の魔剣(ダインスレイヴ)】を性転換させるなんて、下界の未知なんてレベルじゃないぞ!」

 

 先程までシリアスな雰囲気を見せていたヘルメスだったが、隆誠がヘグニを性転換したのは完全に予想外で、他の男神達と同様に騒ぎ立てるのは無理もなかった。

 

「うっひょぉぉぉぉおおお! 涙目で訴えてるヘグニたん萌えぇぇぇ! あの中二病エルフがあんな美少女になるんなら……なぁベート、後で自分も女になってくれんか!?」

 

「ざけんな! 死んでも嫌に決まってんだろうがぁ!!」

 

 美女・美少女好きの女神ロキも男神と同様に興奮するも、近くにいる眷族も相当な美女になるかもしれんと声を掛けたが、狼人(ウェアウルフ)のベート・ローガが即拒否の声が上がった。

 

 同時に神々はこう思った。この戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わった後、必ず隆誠に接触しようと。

 

 例え拒否されても自分達は神だから手荒なことはされないと高を括っているが、それは大きな間違いだと言う事を知らない。

 

 隆誠はこの世界の神々に対して最低な愉快神(ゆかいはん)だと見ているから、もしも下らない理由でちょっかいを掛けてきた際、元神として容赦の無い制裁を下そうと考えている。




最後辺りをギャグ展開にさせてしまいました。

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