別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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派閥大戦⑥

 場所は変わって『円形劇場』。

 

 ベルがリューやミアと一緒にオッタルを倒そうとしても、流石は【Lv.7】と言うべきか、三人掛かりでも苦戦を強いられていた。

 

 これがオラリオの【頂天】。その圧倒的な実力を、中継を通して見ている都市の住民達にも思い知らされている。

 

 しかし、状況が一変する。離反したヘディン・セルランドがベル達と合流した事で。

 

 後衛の魔導士による雷魔法【カウルス・ヒルド】の支援(サポート)で、今まで不利だったベル達の戦況が一気に流れが変わる。

 

 『絶対防御』で防がれていた攻撃が漸く当たるようになったのだ。

 

 ミアの円匙(スコップ)による一撃。

 

 リューの継承魔法(アストレア・レコード)で発動したゴジョウノ・輝夜の魔法【ゴコウ】。

 

 その後にベルの【ファイアボルト】による炎雷の豪射、ヘディンの【カウルス・ヒルド】による雷弾の全投入。

 

 流石のオッタルでも攻撃と魔法を連続で受け続けてダメージを負うだけでなく、久しぶりに喰らった激痛に怯んでしまい、完全に隙だらけとなってしまう。

 

 ここで一気に決めようと、ヘディンが止めの一撃を放とうとする。

 

「【永伐せよ、不滅の雷将】―――【ヴァリアン・ヒルド】!!」

 

 特大の砲閃と呼ぶに相応しい雷衝が、円形劇場中央に炸裂――しなかった。

 

「何だと!?」

 

 発動させた筈の一撃は照準されていたオッタルに必ず当たる筈が、真横に逸れてしまう予想外な結果となってしまいヘディンが驚愕するのは無理もない。

 

 彼がこれまでの戦いで狙いを外した事は無い。誤射など以ての外で、本人も絶対あり得ないと断言する程だ。

 

「どうして、師匠(マスター)の魔法が……?」

 

「この状況で【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】が撃ち損じるなど……」

 

「おいヘディン! 一体何してんだい!?」

 

 信じられないように呟くベルとリューとは別に、仕損じた事に憤るミアが怒鳴っていた。

 

「っ、まさか……!」

 

 正確に狙った雷衝が逸れたのは即ち、誰かが自身の魔法を妨害したと瞬時に頭を切り替えたヘディンは、すぐに周囲を見渡した。

 

 魔法を只管受けていた脳筋のオッタルは当然論外。それは別の戦場にいるであろう愚描(アレン)も同様であり、そうなれば答えは最早一つしかない。

 

 ヘディンが何度周囲を見渡すも、彼が想像する人物は見付からなかったが――

 

「何処を見ている、ヘディン。俺なら此処だぞ」

 

「!」

 

 突如、上から聞き覚えのある声がしたので振り向いた瞬間、足場が無いにも拘わらず宙に浮いてる隆誠がいた。

 

 ヘディンだけでなく、ベルにリューにミア、そしてオッタルも彼の登場に目を見開いている。

 

「リュ、リューセーさんが、空を飛んでる……!?」

 

「バカな、アンドロメダの魔道具(マジックアイテム)も使わずにどうやって……!?」

 

「何だい、あの坊主は……」

 

 隆誠を知っているベルが空を飛んでる事に驚くも、リューとミアは彼について知らなかった。

 

 今までフレイヤが徹底的に秘匿していたから、彼女達が知らないのは無理もない。

 

 因みに元団長(ミア)だけは一年以上前より、シル(フレイヤ)が矢鱈と大変機嫌が良く店で働いてるのを見てる事は何度もあった。そうなったのが、目の前にいる隆誠だと知れば少々驚くかもしれない。

 

 予想外の人物が登場した事で誰もが驚いている中、『飛行のルーン』を使っている隆誠は降下して両足を地面に着地する。オッタルの近くで。

 

「リューセー……」

 

「アレン達と違って訊かないんだな」

 

「お前が動いたのは女神の命令だと、俺でもそれくらいは分かる」

 

 今まで秘匿し続けていた存在を表舞台に出したとなれば、フレイヤはもう出し惜しみしてられない状況にまで追い込まれたのだろう。周囲から脳筋と呼ばれているオッタルでも、その程度の察しは付いている。

 

「だがアレン達はどうした? 奴等も此処へ来てもおかしくない筈だが」

 

「全員やられたよ。尤も、アレンは俺の方で始末しておいたが」

 

『ッ!?』

 

 オッタルだけでなく、一緒に聞いていたヘディンやベル達も予想外と言わんばかりに驚愕の反応を示していた。

 

 離反したヘディンはともかくとして、自陣の副団長を隆誠が何故手に掛けたのかが理解出来ない。

 

「何故だ?」

 

「あのチビ猫は副団長の役割に相応しくないと、そう判断したまでだ。ヘディン、お前なら理解出来るよな?」

 

「………………」

 

 隆誠からの問いにヘディンは無言であっても、内心は同感だと頷いている。

 

 彼もアレンに対して強くなる理由(アーニャ・フローメル)を捨てた事で、『腑抜けた』や『副団長を譲るんじゃなかった』と憤慨していた。

 

 それに加え、隆誠もある事を言っていた。執務をしてる最中に『本来なら派閥のカギを副団長が握る筈なんだがな』と言う愚痴を零したのを聞いたヘディンは、副団長の重要性を理解していると一定の評価を下した程だ。

 

 だが、あくまで派閥内の話だけに過ぎない。戦争遊戯(ウォーゲーム)中にそれを理由でアレンを始末するなど、隆誠のやった事は愚行も同然。

 

 余りにも非効率的な事を敢えて実行したのであれば、明確な理由があるとヘディンは気付く。

 

「リューセー、二つ聞かせろ」

 

「何だ?」

 

「貴様が愚描(ぐびょう)を始末したのは、副団長の座を挿げ替える意味合いも含めてか?」

 

「その通り。奴に代わって、俺が今後の【フレイヤ・ファミリア】副団長となる為に、な」

 

「っ!」

 

 ヘディンの問いに隆誠があっけらかんに答えると、オッタルは驚きの連続だった。今まで地位に興味が無かった筈の男が副団長になると知れば無理もない。

 

 意外であっても、隆誠が副団長になるのは悪くないと思っている。オッタルもヘグニと同様、彼とはそれなりの交流がある他、他の幹部達と違って自分を罵倒しないと言う理由が一番大きい。

 

 しかし――

 

「オッタル。俺が副団長となった以上、お前も今後団長としての役割を果たしてもらう為、この戦いが終わった後に必要最低限の学力を身に着けてもらう。言っておくが『学が無い』を理由に拒否したところで逃がさないから、な」

 

「…………………」

 

 傷を負っても平然と耐えれる筈のオッタルが、隆誠の話を聞いた途端に顔を青褪めながら後悔するのであった。

 

 因みに彼の勉強嫌いは昔から付き合いがあるミアも当然知っており、ほんの僅かだけ気の毒そうに見られている事に気付いていない。

 

 一つ目の質問を答えた隆誠は、再度ヘディンへ視線を向ける。

 

「で、もう一つは?」

 

「……私が唆したヘグニはどうした?」

 

「当然始末した。と言っても、可愛い女の子になってもらっただけだが」

 

「「ッ!」」

 

「「「?」」」

 

 隆誠の問いに反応が二つに割れた。

 

 性転換させる手段がある事を知っているヘディンとオッタル。

 

 言っている意味が全く分からないベルとリューとミア。

 

 事情を知る者と知らない者の反応が全く異なるも、隆誠は全く気にせずこう言った。

 

「お前も離反した代償として、また優しいヘディ子ちゃんになってもらうぞ♪」

 

「止めろ! その悍ましい名で私を呼ぶな!」

 

「あの、師匠(マスター)。一体何の話を……?」

 

「黙れ愚兎(ぐさぎ)、それ以上聞いたら殺すからな!」

 

 気になったベルが問うも、ヘディンは二度と聞くなと言わんばかりの怒りと殺気を発しながら無理矢理黙らせた。

 

「ベルもベルで、そんな鬼畜エルフによく『師匠(マスター)』と呼べるものだ。まぁそこが君の良い所かもしれないが、な」

 

 少しばかり呆れるように言う隆誠だが、今度はベルの方へ視線を向ける。

 

「それはそうとベル、君はこんな状況でも俺の言いつけを律儀に守っていたようだな。まさか今も枷を付けたまま戦っていたなんて予想外にも程があるぞ」

 

「え? ………あっ!」

 

 隆誠の指摘に、ベルは今まで忘れていたかのようなリアクションをした。

 

 枷と聞いた事で、ヘディンとオッタルは思い出した。隆誠がベルに訓練をする際、見た事のない重りを両腕両脚に着けさせていた事を。

 

「ベル、枷とはどういう事ですか?」

 

「おい坊主、一体何の話だい?」

 

 リューとミアも気になるように反応するのは当然と言えよう。

 

 ベルが今まで本気を出していないと分かったのか、二人はすぐに問い詰めた。何故枷を外さなかったのかを。

 

「え、えっと、それは……」

 

「戦いに意識し過ぎた余り忘れていた、と言ったところか。如何にもベルらしい」

 

 それだけ戦いが壮絶だったと言う証拠だったのだろう、と隆誠は察した。

 

 元の世界でオッタルより遥かに格上の存在と戦い続けた元神からすれば大したことは無いが、流石にそんな野暮な事を口にはしない。

 

「だったら今この場で枷を外して、本来の実力を見せてくれ。オッタルとの戦いで、身体もある程度慣れた筈だ」

 

「……分かりました」

 

 すっかり忘れていたとは言え、隆誠がこの場に来た以上外すしかない事をベルは理解していた。

 

 普通なら敵側である筈のオッタルは阻止すべきなのだが、本来の実力に興味があるかのように敢えて見守っている。

 

 ベルが枷である両腕両脚用の修行用バンドを外した瞬間―――全身から抑えていた魔力が吹き荒れようとする。

 

「!?」

 

「何だと!?」

 

 突然吹き荒れた魔力にオッタルだけでなく、ヘディンも驚きを禁じ得なかった。並みの魔導士とは比べ物にならない精神力(マインド)だと認めてしまいそうな程に。

 

「何だいこりゃぁ!?」

 

「ベルにこれ程の魔力が……!?」

 

 ミアとリューも約半年前まで『Lv.1』だった筈のベルが、飛躍的に急成長するなど異常だと分かっていた。

 

 今見せられている光景は自分達の想像を超えた予想外過ぎる展開で、冒険者としての常識を破壊されて、何度驚かせれば気が済むのかと少しばかり文句を言いたい。

 

(ふむ。先程までの戦いで、また一段と成長したか)

 

 敵味方問わず誰もがベルの吹き荒れる魔力に驚愕してる中、既に一度見ている隆誠はベルの成長に関心を示していた。

 

「すぅ~………はぁ~………」

 

 枷を外したベルは暴走している魔力を抑えようと、前に隆誠から教えてもらった深呼吸を行った。

 

 数秒後、暴れ馬状態となっていたベルの魔力は落ち着きを取り戻したかのように、すっかり鎮静化される。それでも魔力量が多い事に変わりないが。

 

「俺との訓練で『Lv.6(・・・・)にランクアップした(・・・・・・・・・)のは正直不安だったが、どうやら完全にコントロール出来てるようで安心したぞ」

 

『………は?』

 

 (冒険者についてのルールを全く知らない)隆誠の発言によってオッタル達だけでなく、オラリオにいる者達も驚愕したのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

「アルゴノゥト君が『Lv.6』!?」

 

「どういう事! あの子は確か『Lv.5』じゃなかったの!?」

 

 ティオナとティオネは、信じられないと言わんばかりに困惑していた。

 

 戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まるまでベルに訓練の相手をしていたが、その時は確かに『Lv.5』としての実力があると認識していた。

 

 しかし、枷を外した瞬間に『Lv.6』だと聞いて、いつの間にか追い付かれた事に危機感を抱き始めている。

 

(あの人、一体どうやってベルを『Lv.6』に……!?)

 

 アイズもアマゾネス姉妹と同様にショックを受けていたが、それとは別に隆誠がどんな訓練でベルを『Lv.6』に至らせたのかが物凄く気になっている。

 

 同時に物凄く後悔した。【フレイヤ・ファミリア】の本拠地(ホーム)に来た際、何で自分は彼に訓練をするよう頼まなかったのかと。

 

「……リヴェリア、ガレス。今の僕は『ふざけるな』と叫びたい気分なんだけど」

 

「同感だな」

 

「安心しろ。ワシもじゃ」

 

 既に『Lv.7』となっている三首領だが、冒険者に喧嘩を売る発言をした隆誠に思いっきり問い詰めたい衝動に駆られていた。自分達が『Lv.6』になるまで途轍もない時間と苦労を掛けたのに、ベルがあっさりとその領域に辿り着かせた事に納得行かないのだ。

 

 因みに『バベル』にいるベートは――

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!」

 

 自分と同じ領域に踏み込んだベルに心底気に食わないと言わんばかりの雄叫びを上げているのであった。




漸くベル達と合流する隆誠でした。

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