別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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思っていた以上に四苦八苦して遅れました。

おまけに内容も短くて、ちょっとスランプになってるかも。


派閥大戦⑦

(さて、お次は……)

 

 ベルが『Lv.6』にランクアップした事で敵味方問わず固まってる中、隆誠は懐からある物を取り出した。

 

 それは小さな袋であり、彼は締めている紐を緩めると、開封された中身を出そうとする。指でつまんで出てきた者は緑色の豆で、それを未だに呆然としてるオッタルに渡そうとする。

 

「オッタル、コレを食べろ」

 

「……この豆は何だ?」

 

 隆誠とオッタルのやり取りに、ベルや呆然としていたリュー達も気になるように視線を向けていた。

 

 彼等の目から見ても分かるように、何の変哲もない食用の豆。

 

 一体何を考えていると疑問を抱いてもおかしくないのだが、ヘディンだけは何故か嫌な予感がしていた。あの男がオッタルに豆を食わせようとするのは何か理由がある筈だと。

 

「食べれば分かるから」

 

「…………」

 

 隆誠から豆を受け取ったオッタルは不審がりながらも恐る恐る口に入れ、ポリポリと咀嚼した後にゴクリと飲んで喉が通った瞬間――

 

「ッ!」

 

 すぐさま身体に異変が起きた。良い意味での。

 

 先程まで負っていた筈の手傷が一瞬で完治しただけでなく、全身にエネルギーが満ち溢れるように体力も回復した。

 

「なっ、【猛者(おうじゃ)】の傷が……!」

 

「あの猪坊主、何か急に元気になってないかい!?」

 

「そんな……!」

 

 オッタルが豆を食べた事で完全回復したと分かったリューとミアは驚愕し、振り出しに戻ってしまった事に嘆くベル。

 

「リューセー、貴様そんな物を一体何処で手に入れた!?」

 

 万能薬(エリクサー)とは全く異なる回復アイテムだと分かったヘディンは、思わず隆誠に怒鳴り散らしてしまう。

 

 四人掛かりで漸くオッタルにダメージを与えたにも拘わらず、ここで無かった事にされたように回復されてしまったのだから、彼がそうするのは無理もない。

 

 冒険者としての回復手段はポーションやエリクサー等の薬、治療師(ヒーラー)が扱う魔法が常識となっている。だと言うのに、それをあんな小さな豆で完全回復するなど一体誰が想像出来るだろうか。

 

 この戦争遊戯(ウォーゲーム)で公開すれば、医療派閥のトップである【ディアンケヒト・ファミリア】が絶対黙っていない。特に主神のディアンケヒトは金に汚い老獪な男神なので、小さな豆がエリクサーと同等の効果があると知れば、何かしらの接触を図って利益を貪ろうとするのが容易に想像出来る。

 

「手に入れたんじゃなくて、俺が作ったんだ。【フレイヤ・ファミリア】の本拠地(ホーム)で、な」

 

「……………は?」

 

 言ってる意味が分からないと頭の処理が追い付かないのか、ヘディンが珍しくも目が点になっていた。

 

 隆誠がこれまで回復薬を作成する素振りは一切無かった。だと言うのに、一体何時からやっていたのかが分からない。

 

(いや、そう言えば……)

 

 豆と言えば、一つ気になる事があったのをヘディンは思い出す。隆誠が何処かから土入りの植木鉢を持ち込んで、それを見たフレイヤも加わって時折一緒に水やりしていたのを。

 

「ヘディンやオッタルも見ていただろ? 俺とフレイヤで植木鉢に水やりやっていたのを」

 

「っ! やはりアレか……!」

 

(ならばあの豆はフレイヤ様の……!)

 

 隆誠が種明かしをするように言った事でヘディンは確信したのとは別に、水やりをしたフレイヤの愛情も込められた大変貴重な豆を知らずに食べてしまったと後悔するオッタル。

 

 因みに水やりで育てた豆の正体は、隆誠が元の世界で回復用アイテムとして開発した『神豆(しんず)』。ドラグ・ソボールで傷や体力を全快にする『仙大豆(せんだいず)』を参考にした物だが、『フェニックスの涙』と同等に希少な代物となってる。

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)前に実がなって、折角だから持っていこうと……おいオッタル、何で回復した筈のお前が落ち込んでいるんだよ」

 

「俺は、フレイヤ様が水やりされた豆だと知らずに……」

 

 オッタルだけでなく、フレイヤの眷族達は非常に面倒臭い一面がある。

 

 フレイヤ(シル)が作った毒マズ料理とは別に、彼女に関する物に関して人一倍以上にうるさい。

 

 例えばフレイヤの私物を壊してしまったとなれば、それが大して価値が無い物であっても大罪を犯してしまったと悲嘆に暮れてしまう。それどころか死で償いをしようとする者もいたとか。

 

 水やりをした事で女神の愛情が込められた神聖な豆を知らずに食べてしまったのは、オッタルとしては非常に申し訳ない気持ちになっている。知っていればフレイヤに感謝の意を込めながら(無駄に時間を掛けて)食べると予想して、隆誠はさっさと食べるよう促したのだ。先に言えば絶対面倒なことになると分かっていたから。

 

後悔(ポンコツ)してる暇があるなら一度フレイヤの所へ戻ったらどうだ? 俺一人でベル達の相手をするから、さ」

 

「何?」

 

『ッ!?』

 

 オッタルは途端に表情を切り替え、ベル達は予想外だったように彼を見ていた。

 

 普通であれば不利である筈のオッタルに隆誠が加勢すれば、勝負の流れは一気に変わってベル達の敗北が決まる。

 

 なのに彼は敢えて一人で戦おうとするから、端から見ると圧倒的有利な状況を自ら不意にすると言う愚かな行為にしか見えない。

 

「……問題無いのか?」

 

「心配無用。『Lv.6』が四人いても俺の相手にはならないことくらい、オッタルも知ってる筈だ」

 

 余りにも舐め腐った発言にミアとリューが不快な表情を浮かべるも、ベルとヘディンは全く異なる反応をしていた。

 

 直に戦った者達しか知らないのだ。隆誠が第一級冒険者どころか、それ以上の実力者である事を。

 

「ならば少しばかり見届けさせてもらおう」

 

 いきなり現れては下がれと指示された事で内心不服なオッタルだが、隆誠であれば話は別だった。

 

 彼はフレイヤの命令が無い限り決して参戦しない。なのにこうして出てきたのは、自分達が女神に不甲斐無い状況(ところ)を見せてしまったからだと察していた。

 

 アレンやアルフリッグと違い、オッタルはフレイヤの不興を買ってしまったと思い、隆誠の指示に対して反抗的な態度を見せていないのだ。

 

「では此処からオッタルに代わって、俺が相手をさせてもらおうか」

 

 後方へ下がるオッタルを確認した隆誠は、ベル達に向かってそう宣言する。

 

「貴方が何者かは知りませんが、私達を一人で相手にするとは舐められたものだ……!」

 

「リュー・リオン、だったな。かけがいのない親友だとフレイヤが俺にそう自慢してたから、余り手荒な真似はしたくないが」

 

「っ……。その無礼な発言、今すぐ撤回させてもらおう!」

 

 挑発と受け取ってしまったのか、先ずはリューが動いた。

 

「ダメですリューさん!」

 

「待て小娘! 迂闊に動くな!」

 

 剣を構えながら突進していくリューにベルとヘディンが待ったをかけるも、既に彼女は隆誠に接近して斬撃を仕掛けようとする。




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