別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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凄く四苦八苦しています。

今回も凄く遅れての更新となります。


派閥大戦⑧

「はぁぁっ!」

 

「………」

 

 ベルとヘディンの制止も聞かず斬撃を仕掛けるリューに、隆誠は一切動じることなく無防備を晒していた。

 

(何故避けない!?)

 

 剣があと僅かで衣服ごと肌を斬る寸前なのに、この状況でも相手が全く動かない事にリューは一瞬躊躇ってしまいそうになる。

 

 数秒後、隆誠の身体は斬り裂かれる事になったが――剣から人肉を斬った感触が一切無いまま素通りした。

 

「バカなっ!?」

 

 対象がいる筈なのに何故と疑問を抱くリューだが、すぐに分かった。

 

 目の前にいる隆誠は徐々に姿が消えていき、斬ったのは単なる残像に過ぎない。

 

 『Lv.6』になったばかりとは言え、自身の攻撃を難なく躱されてしまった事にリューは驚愕を隠せなかった。

 

「何を呆けている小娘!」

 

「後ろです、リューさん!」

 

 ヘディンとベルの叫びを耳にしたリューが背後を振り向いた瞬間、数歩先には隆誠がいて、指先に魔力らしき光を集束して振り翳そうとしていた。

 

「ッ!」

 

 指先に収束されている魔力を見た途轍もない不安を感じ取ったのか、リューは放たれた縦長の大きな黄金の斬光をギリギリで回避しながら距離を取った。

 

 躱された斬光はそのまま地面を抉りながら真っ直ぐ。

 

 途中である壁面、円柱を切り裂くように突き進み、丘のように高い観客席の一部も切り裂かれていく。

 

「なっ……!」

 

 隆誠が放った斬光であらゆる物が平然と斬り裂かれていく光景に、リューは絶句していた。

 

 まるで障害物など初めから存在しないように突き進んだ斬光の跡には、劇場の一部を切り取られた光景が出来ている。

 

 リューだけでなく、見ていたベル達も同様に絶句していた。

 

 オッタルが放った黄金の残光(【ヒルディス・ヴィーニ】)に比べれば劣ると言っても、詠唱も一切せずに放った魔力の斬光はとんでもない威力であることを証明されている。

 

 もしもリューが躱せず直撃していれば身体が左右に真っ二つ、もしくは身体の一部を失うか、どちらにしても死ぬ事には変わりないだろう。

 

「残念、外れてしまったか」

 

 斬光を放った張本人から落ちた呟きは、それを耳にしたリューの身体を震わせてしまうほどだった。

 

「ベルに感謝しておくんだな。でなければ君は確実に死んでいた」

 

「くっ……!」

 

 笑みを浮かべながら言う隆誠に、リューは全く否定出来ずに何一つ言い返せない様子。

 

 尤も、彼は殺す気など最初から無い。

 

 ベルが叫ばなくても『後ろだよ』と呟き、それを聞いたリューが咄嗟に離れたのを確認した直後に放とうとしていたから。

 

 因みに隆誠が撃ったのは『ドラグ・ソボール』に出てる極悪人キャラのフリーズの技――『キルウェーブ』。指先にエネルギーを集めながら振りかざすことで対象を切り裂く技で、原作のフリーズはピッコルの故郷である惑星を切り裂いていた。

 

 もし本気でやればオッタルの【ヒルディス・ヴィーニ】以上の光景となっていたが、流石にそんな事をする気が無かった為に加減して撃ったのは言うまでもない。

 

「さて、余興はここまでにしよう」

 

 オッタルに匹敵する一撃を放ったにも拘わらず、余興と言い切った隆誠は改めて四人に視線を向ける。

 

「【フレイヤ・ファミリア】を追い詰めた【派閥連合(おまえたち)】に敬意を表して、俺もそれに応えるとしよう」

 

 そう言いながら隆誠は構えた瞬間、全身から金色のオーラが発する。

 

「させるか! 【カウルス・ヒルド】!!」

 

 ヘディンはいつのまにか詠唱を済ませていたのか、無数の雷弾が隆誠に襲撃を仕掛けた。

 

 しかし、隆誠の全身を覆っているオーラによって防がれてしまい、対象に届かない。

 

「【ファイアボルト】!」

 

「【アガリス・アルヴェシンス】!」

 

 ヘディンに倣おうと、ベルとリューも動き出した。

 

 ベルが炎雷の速射砲を放ち、リューが焔の花弁を纏い直しながらの接近。

 

 前者は雷弾と同様に防がれてしまうが、後者は強力な火力を生かした強襲だから阻止出来る筈。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ぐぅっ!」

 

 構えてる隆誠は全く気にしてないように叫んだ瞬間、覆われているオーラが集束しながら彼の全身に纏った直後、今度は急に輝くように光った。その所為でリューは視認出来なくなってしまい思わず足を止めてしまう。

 

 強烈な光にベル達も目を守ろうと腕で覆っている。

 

『ッ!?』

 

 そして輝きが収まり、彼等の視線に入ったその先には――異形の存在がいた。

 

 だが、それは決してモンスターではない。隆誠が黄金の全身鎧を身に纏う姿となっているのだ。

 

 リューやミアだけでなく、鍛えてもらったベルは勿論、【フレイヤ・ファミリア】のヘディンやオッタルですら初めて見る姿に目を見開いている。彼等だけでなく、オラリオにいる者達も同様の反応を示しているのは言うまでもない。

 

「これは『気鋼鎧(オーラアーマー)』と言って、オーラを最大限に高めれば物質化して至高の武器にも防具にもなる。リュー・リオン、君や【剣姫】が使っている付与魔法(エンチャント)と似たようなモノだ」

 

「……明らかにレベルが違うと言いたげですね」

 

 自ら解説をした隆誠に、リューは口惜しげな表情となっていた。

 

 実際、彼女の言う通りなのだ。魔力(オーラ)を物質化させる魔導士など今まで存在していないから。

 

 過去に戦った【静寂】のアルフィアは【静寂の園(シレンティウム・エデン)】で『鎧』を展開させていたが、隆誠のように物質化まで至らず、あくまで魔力で覆われていたモノに過ぎなかった。

 

 加えてエルフ達が崇拝している【九魔姫(ナイン・ヘル)】と名高いハイエルフの魔導士(リヴェリア)も含まれているが、リューやヘディンはそんな事を絶対に口が裂けても言わない。

 

「この鎧を纏った以上、もう生半可な攻撃では砕けないとだけ言っておく」

 

「だったら今この場で証明してもらおうかねぇ!」

 

「【カウルス・ヒルド】!」

 

 すると、今まで動かなかったミアが円匙(スコップ)を振り翳しながら果敢に突撃してきた。ヘディンからの援護狙撃付きで。

 

 効いているのかは不明であっても、無数の雷弾を隆誠は頭を守るように片腕で防いでいる。

 

「うらぁぁぁぁあああああ!」

 

 動けないところをミアが上手く懐に入り、がら空きとなってる腹部に円匙(スコップ)を思いっきり振るって殴り飛ば――せなかった。

 

「っ!」

 

 『Lv.7』のオッタルですら殴り飛ばしたミアの強烈な一撃を、全く微動だにせず直立したままに誰もが目を疑ってしまう。

 

 鎧の方も全くの無傷で、『最硬金属(オリハルコン)』でも出来ているんじゃないかと、攻撃したミアが内心そう考えてしまう程の硬さだ。

 

「今度は俺の番だ」

 

 直後、隆誠が動き出した。

 

 ミアに反撃をしようと、アッパーの要領で彼女の腹部に右拳を繰り出す。

 

「あ……ぐ……ごふっ……!」

 

 冒険者を引退したとは言え、『Lv.6』かつ『耐久』に特化している筈のミアが円匙(スコップ)を手放し、腹部を手に当てて両膝を付きながら血を吐いていた。

 

「ミアさん!?」

 

「ミア母さん!!」

 

「あのミアが……!?」

 

 ベルとリューがミアを案じるように叫ぶ中、ヘディンは信じられないように目を見開いていた。

 

 彼だけでなく、後方に下がっているオッタルも同様の反応を示している。

 

 蹲っているミアに隆誠は蹴り飛ばそうと片足を浮かせていたが、そうはさせないと阻止する者達がいた。

 

「やらせない!」

 

「させません!」

 

 隆誠に向かって突進するのはベルとリュー。

 

「はぁぁ!」

 

 先ずはベルからで、手にしている『ヘスティア・ナイフ』で胸部にある宝玉らしき水晶目掛けて刺突をやろうとしていた。

 

「よっと!」

 

「なっ!」

 

 それを見た隆誠は体勢を整えながら素手でナイフの刀身を逸らして、がら空きとなったベルに回し蹴りを仕掛けた。

 

「がぁっ!」

 

 蹴りを喰らったベルは吹っ飛んで、地面に当たった後にゴロゴロと回ってしまう。

 

「貴様ぁ!」

 

 ベルの方へ意識を向けていた所為もあってか、リューが既に自身の間合いに入っていた。

 

 彼女が持つ星剣には付与魔法(エンチャント)の【アガリス・アルヴェシンス】の炎が纏っており、如何に強固な鎧を纏おうともダメージは免れない。

 

 そう確信しているリューは斬撃を振り下ろし、鎧ごと隆誠を斬り裂こうとする。

 

 炎を纏っている刀身が鎧に直撃するも――斬り裂けないどころか、罅一つ入らずに斬撃の進行を止めていた。

 

「そんな!」

 

 付与魔法(エンチャント)によって戦闘能力が飛躍的に向上した筈の斬撃が全く通用しない事に、リューは一体何の冗談だと思わず現実逃避してしまう。

 

 【アガリス・アルヴェシンス】のお陰で『Lv.6』のヘグニを撃破し、『Lv.7』のオッタルにも対抗出来ていた筈が全く通用しないなど、彼女にとって悪夢に等しいほどのショックを受けていたのだ。

 

「残念だった、な!」

 

 彼女の心情を全く知らない隆誠は、反撃をしようと蹴り飛ばした。

 

「ぐはっ!」

 

 腹部に直撃したリューは吹っ飛んでしまい、ベルと同じく地面に当たってゴロゴロと回った後に仰向けに倒れていた。

 

 次はヘディンに標的を切り替えようとしてるところ――

 

「どこ見てんだい!」

 

 いつの間にか立ち上がって円匙(スコップ)を手にしてるミアが、今度は兜ごと叩き割ろうと脳天目掛けて振り下ろす。

 

 完全な不意打ちで決まるかと思いきや、隆誠はまるで舞うように躱しながらミアに回し蹴りで反撃した。

 

「がっ!」

 

 二撃目を喰らったミアは吹っ飛んでしまい、二人と違って壁面に激突。

 

 その直後――

 

「【ヴァリアン・ヒルド】!!」

 

 隙を狙っていたヘディンがここで、大いなる将光を呼んだ。

 

 特大の砲閃と呼べる雷衝が隆誠に襲い掛かり、円形劇場中央に炸裂する。

 

 電流と煙が舞い散っている中、長刀(ロンパイア)の『ディザリア』を構えるヘディンは倒したと微塵も思っていない。

 

 リューが使っていた炎と違って雷であれば多少のダメージは免れないが、魔力で物質化された鎧に通じるかは彼でも全く分からなかった。

 

「残念でした。ただ単に埃を撒き散らしただけの結果になったぞ」

 

 煙が霧散して砲撃の中心地に、隆誠が二本の脚で立って、自身に纏わり付いている埃を振り払っていた。

 

 しかも彼を守っている鎧に一つも傷が付いておらず、ダメージは全く無いと言わんばかりの姿だ。

 

「何だと……!」

 

 加減など一切無い最高火力で放った筈の雷衝が全く通用しなかった事実に、流石のヘディンもショックを隠せなかった。

 

「ダメージを与える魔法と言うのはな――こうやるんだよ」

 

 隆誠はそう言いながらルーン魔術を使おうと指で文字を描いた。

 

 描いた文字の意味を――

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

「っ! 貴様、その魔法は……!」

 

 告げた後、不可視な音の塊が発生してヘディンに襲い掛かろうとする。

 

「ぐぁぁあああああああああ!」

 

 雷と違って回避出来ない為、直撃してしまうヘディン。

 

(あの魔法は【静寂】の……!)

 

 見覚えのある魔法にオッタルが一番に反応するのは無理もなかった。

 

 嘗て存在していた【ヘラ・ファミリア】の眷族が使っていた魔法であれば猶更に。

 

 だがそれは彼だけでなく、オラリオにいる一部の冒険者も同様の反応を示している。




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