別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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今回は短いので幕間にしました。


派閥大戦 幕間

『……………………』

 

 【派閥連合】側を力強く応援していたオラリオの住民や冒険者達だが、今は水を打ったかのように静まり返っていた。

 

 先程までベル達四人がオラリオの『頂天』を相手にもしかしたら勝てると言う流れになってて、あともう少しで勝てると確信するように騒いでいたのだが、隆誠の加勢によって一気に変化する事になる。

 

 オッタルの時は何とか互角の勝負を繰り広げていたのに対し、隆誠は一人なのにも拘わらず圧倒的な力の差を見せ付けていた。挑んだ四人の攻撃を全く物ともせずに反撃しただけで、全員倒れてしまう光景を見せ付けられたら静まってしまうのは無理もない。

 

 それとは別に【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)では――

 

「馬鹿な! 奴が使ったのは間違いなく【静寂(アルフィア)】の魔法だ!」

 

「確かにワシも、あの女の魔法にしか見えなかった」

 

「……………」

 

 信じられないと言わんばかりに思わず席を立つリヴェリア、座りながらも当時の事を思い出すガレス、無言のまま見詰めるアイズがいた。

 

 今から七年前、オラリオが当時暗黒期だった頃、闇派閥(イヴィルス)との決戦時に一人の魔導士と交戦した。嘗ての最強派閥【ヘラ・ファミリア】の元幹部、【静寂】の二つ名を持つ長い灰髪の女――アルフィアと。その時はリヴェリアとガレスとアイズの他、壊滅前の(リューも含めた)【アストレア・ファミリア】も一緒に。

 

 アルフィアは眷族の中で最も『才能』に愛され、『才能の権化』にして、『才禍の怪物』と称された人物。それも十代半ばで『Lv.7』に到達し、魔導士でありながらも戦士顔負けの卓越した技量を持っており、最早才能だけで片付けられない反則級の強さを持つ女傑。

 

 そんな凄い人物が何故リヴェリア達と戦う事になったのかは割愛するが、隆誠が使ったルーン魔術に三人は凝視していた。

 

 【福音(ゴスペル)】と口にした事で音の塊を放つ攻撃魔法は、【静寂】のアルフィアが使っていた超短文詠唱の魔法で、リヴェリア達はその威力を身を以て経験している。喰らえば身体がズタボロになるだけでなく、平衡感覚もおかしくなるなど回避が困難だった。

 

 隆誠の放った魔法がアルフィアと同様であれば、間違いなく聴覚にも異常を来たしている。特に五感が常人以上に優れている第一級冒険者であれば、簡単に立て直す事は出来ない。【万能者(ペルセウス)】謹製である音対策用の耳飾り(アクセサリ)を装備してれば話は別だが、いくらヘディンでも流石に用意していないだろう。

 

「ねー、アルフィアって誰?」

 

「ちょっ、バカティオナ! アンタ空気読みなさいよ!」

 

 アルフィアの事を知らないティオナが口を開くと、隣に座ってるティオネが全く空気を読んでない妹の発言を指摘した。

 

 アマゾネス姉妹が【ロキ・ファミリア】に入団したのは五年前だから、七年前に起きたオラリオ暗黒期にあった決戦について知らないのは無理もない。

 

「彼がアルフィアの魔法を使ったのは僕も驚いたけど、問題はそれだけじゃない」

 

 フィンはティオナ達の発言を敢えて無視し、画面に映っている全身鎧姿の隆誠を凝視している。

 

 【静寂】のアルフィアが使う魔法を再現させた『ルーン魔術』。

 

 ベルを『Lv.6』へランクアップさせる程の育成能力。

 

 万能薬(エリクサー)に匹敵する回復アイテム生成技術。

 

 魔力を物質化させる付与魔法(エンチャント)

 

 第一級冒険者(Lv.6)を簡単に一蹴してしまう途轍もない実力。

 

 そんな凄い人物がつい先日に【フレイヤ・ファミリア】の使者として本拠地(ホーム)に訪れたなど、流石のフィンでも想像出来なかっただろう。

 

 しかし、そんな事は心底如何でも良い。このままでは【派閥連合】の敗北が決定になってしまうのが一番の問題なのだ。

 

 他にも気掛かりなことがある。隆誠がフレイヤの命令で圧倒的な実力を見せ付けているのであれば、もう既にベル達の意識を失ってもおかしくない。にも拘らず、彼等は必死に立ち上がろうとしている。

 

 彼がその気になればアレンみたく簡単に始末出来る筈なのに、何故そうしないのかがフィンは未だに分からない。

 

(とは言え、ベル・クラネル達が今の状況を逆転する可能性は――限りなく低い)

 

 隆誠が手を抜いている(・・・・・・・)理由が定かでないにしろ、何らかの奇策を打たない限りベル達に勝ち目は無いのは明白だった。




 ~黒妖精(ダークエルフ)の楽しかった日々~



 ベルが【フレイヤ・ファミリア】で『教育』を受けていた際、教育者が急遽交代した事で劇的に変化した。

 最初はヘディンによる身体と精神(こころ)が壊れるまで実戦訓練をする日々を送っていたが、隆誠になった時は生気に満ち溢れる表情となった。

 隆誠の実戦訓練はヘディンと大して変わらなかったが、それとは別に遊びの時間もあって、ベルに取って最も楽しいモノだった。

 一番楽しかった『拳龍帝』の動画鑑賞とは別に、卓上遊戯(ボードゲーム)もかなり面白かった。相手の石をはさんでひっくり返し、最終的に石が多いほうが勝ちという単純なルールの『オセロ』が。

 単純でありながらも色々考えさせるゲームで、ベルが真剣になるほど嵌っていた程だ。

 その際、隆誠はある人物に声を掛けた。オセロをやってる自分達を羨ましそうに見ているヘグニを。 


「あっ、角を取られちゃった!」

「クックック、少々焦り過ぎたな白き兎よ。我が暗黒の(まなこ)は、真に取るべき白き駒を見据えているのだ。目先の誘惑に囚われるなど以ての外である事を、今の内に心して刻んでおくのだな」

「はい、そうします!」

 初めてオセロをやる筈のヘグニだが、ルールを一通り覚えた事でいつの間にかベルより上手くなっていた。それどころか、何だか指導を感じでベルにこうした方が良いと指摘している。

(ヘグニも随分楽しんでるなぁ)

 二人の対局を見ている隆誠は、これはこれで良いものだと思いながら見ていた。

 本来だと中二病言葉は普通なら到底理解出来ないが、ベルは通訳しなくても理解しているから驚きだ。

 それが嬉しいのかヘグニは上機嫌となって、遊びの時間の時は必ず現れるようになった。特にベルと相手をする際は満面の笑みを浮かべている。



 そして二週間後、ヘスティアがフレイヤの魅了を解除した事でベルは【ヘスティア・ファミリア】に戻る事になった。

「……ねぇリューセー、どうして楽しい時間はあっという間に過ぎちゃうのかな」

「時間の感覚を忘れるほど夢中になっていたからだろ」

 オセロの相手をしている隆誠だが、ヘグニは以前と違って少々落ち込んでいる様子だ。

 そうなっている理由は既に分かっている。ベルとオセロをやるのが、彼にとって至福とも言える時間だったから。

「……はぁっ。もう少しベルとゲームしたかった」

「ま、その気持ちは理解出来る。俺としても、まだまだベルの訓練を続けたかったし」

戦争遊戯(ウォーゲーム)で勝てば、また出来るかな?」

「…………………」

 いつもと違って中二病言葉を言わないヘグニに、隆誠は敢えて何も言わなかった。



原作以上にベルの事を気に入ってるヘグニでした。

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