別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ 作:さすらいの旅人
「どうだ、ヘディン。雷と違って視認出来ない攻撃魔法を受けた気分は?」
「くっ……貴様……!」
音の衝撃によって傷だらけになるヘディンだが、それだけでなく平衡感覚も狂うと言う状態異常に陥っていた。
隆誠が既に死去してる【静寂】の魔法を再現出来たのは、以前にオッタルから聞いたのだ。七年前の暗黒期で
その際に魔導士のアルフィアが使う【
ヘディンが『Lv.6』になって『対異常』や『魔防』の発展アビリティがあるにも拘わらず、そんな物は無意味だと言わんばかりに貫通されていた。それを悟られないように振舞っているが、フラフラとなってる今の状態を見てる隆誠は既に気付いているだろう。
「ふむ、どうやら平衡感覚に異常を来たして動けないようだな」
「……ならば何故攻撃を仕掛けない? 貴様からすれば、今の私は隙だらけだぞ」
「お前らしくない挑発だな」
気丈に振舞いながらも武器を構えるヘディンに思わず苦笑してしまう隆誠。尤も、全身鎧型の
別の方へ視線を向けると、先程まで倒れていたリュー、そして壁面に激突していたミアも立ち上がっている。
「
すると、彼女達より早く立ち上がっていたベルがヘディンに近付いていた。
「リューセーさんより効果は薄いですが、多少は回復する筈です」
「ッ!
「そ、それなりには……」
ベルは隆誠と同じく指で描く仕草をすると、浮かんだルーン文字がヘディンに付いた瞬間、淡い光が彼を包み込む。
「ほう。まだまだ未熟だが『癒しのルーン』もそれなりに使えるようになったか」
隆誠の使う原初のルーンとは程遠いが、ある程度回復しているヘディンを見た事で感心の声を上げていた。
「そう言えば一人でオッタルと戦ってた時も使っていたな。俺が教えた四つの内、三つのルーン魔術を
『!?』
ベルもルーン魔術が使える事に周囲が驚きを示すも、ヘディンとオッタルだけは少々異なる反応だった。
(あの仕草だけで三つも同時に発動させていたのか……!)
まだ離反せず指揮官に徹していたヘディンは遠目から見ていたが、一体何をしているのかと疑問を抱いていたが、つい先程に隆誠が魔法を発動させる仕草を見た事で漸く理解した。
『教育』を自分から隆誠に強制交代された僅か二週間で、複数の魔法を習得させていたなど想像もしなかった。
ベルが習得したルーン魔術は、隆誠が言った通り計四つまで。
傷を負えば
攻撃力と防御力を一定時間の間に
速度を
ポーション程度に即効で回復する『癒しのルーン』。
隆誠からすれば単なる
尤も、今のベルはルーン魔術を習得したばかりなので付け焼刃程度の効果しかない。教えた隆誠もそれを承知の上で、短い期間でありながらも必要最低限の知識を与えていた。
(成程、そう言う事だったのか)
戦いを見守っているオッタルは、隆誠の話を聞いた事で納得の表情となる。
ベルと一対一で戦っていた際、彼もヘディンと同じく違和感があった。
攻撃しても硬い何かで防がれて威力が軽減、負っていた傷も徐々に回復していたりと、戦いながらも一体何が起きていると内心疑問だらけだったのだ。
隆誠が教えてくれた事で漸く疑問が氷解するも、同時にベルの事を凄いと心底感心してしまう。短い期間とは言え、学んだだけで魔法を習得するなど自分には到底出来ない事だと思いながら。
オッタルは感心しても、隆誠がやった事は魔導士の常識を覆すモノだ。
本来であれば魔法を発現するのは決して容易でなく、獲得できるのは最大三種までとなっている。それでも強制的にしたい場合は非常に高価で貴重な『
なのに隆誠はベルに『ルーン魔術』と呼ばれる魔法を四種も習得させた。普通は三種までが限界の筈なのに、それを超えた時点で偉業も同然。
三種以上の魔法を使える【ロキ・ファミリア】のリヴェリア・リヨス・アールヴ、レフィーヤ・ウィリディスは魔法に特化した
「ヘディンもそれなりに回復出来たようだな。俺としては、そこの女将さんも回復させるべきかと思うんだが」
「舐めんじゃないよ、鎧坊主。あの程度の攻撃で音を上げるほど、あたしの身体は柔じゃないさね」
ヘディンの次にダメージを受けているミアの方へ視線を向けるも、当の本人は屁でもないと言わんばかりに自身の頑強さを主張していた。
「……それは失礼した。ならば準備運動はここまでにして、そろそろ本番と行こうか」
四人が漸く戦える状態になったのを見たことで、隆誠は再び動こうとする。
すると、彼は開いてる右手を真っ直ぐ伸ばした直後、その掌から魔力と思わしき光が集束し―――黄金と思わしき一振りの長剣が出現した。
『!?』
「何をそんなに驚いている。俺がオーラを鎧に物質化したのだから、こうして武器も創造可能だと既に察していた筈だ」
隆誠が創造した黄金の長剣は、全身鎧と同様にミアの攻撃でも砕けない程に硬い。加えて切れ味だけで言えば、木場祐斗の
武器と防具が完全に揃った事で、ベル達は隆誠が本気で戦うのだと武器を構える。
しかし、この直後にまたしても予想外な事が起きた。
隆誠は剣を持っていない方の片手で、ルーン文字を描いた瞬間――
「【
「っ! その魔法はアイズさんの!」
発動した魔法は【ロキ・ファミリア】の【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインが使っている風属性の
既に全身鎧を纏った
自身が懸想してる女性の魔法を使われている事で、ベルが動揺してしまうのは無理もなかった。
「それじゃあ先ずは!」
「っ!」
風を纏っている隆誠が狙いを定めたのはリューだった。
膝を軽く曲げてから跳躍した瞬間、風の力も加わった事で突進する速度も上昇しており、あっと言う間に接近して片手で剣を振り下ろす。
「ぐっ!」
「ほう、よく防いだ」
自分が狙われたと直ぐに理解していたリューは、咄嗟に剣を構えた事で隆誠の斬撃を防ぐ事が出来た。
(お、重い! アリーゼの
リューは剣を構える寸前、【アガリス・アルヴェシンス】を発動させていた。炎を纏わせる事で戦闘能力を上昇させ、両手持ちで何とか堪える事が出来ていた。
「そんな『付け焼き刃』な魔法で防げても、俺に攻撃が通じなければ意味は無いが、な」
「ッ! 舐めるな!」
「面白い。少しばかり興に乗ってやろうか」
果敢に挑むリューを見たからか、隆誠はある事を思い付いて剣劇をやる事にした。
互いに
斬撃の威力と魔法の効力は見ての通り隆誠が上だが、それを分かっていながらもリューは諦めていない。
「リューさん、加勢します!」
「あたし達を忘れてんじゃないよ!」
リューに感化するように、ベルとミアも加わった事で三人同時の攻撃となる。
(非常に腹立たしいが、今の私では無理だ……!)
ヘディンだけは動いていない。回復したとは言え、平衡器官が未だに治りきっておらず、その状態で加われば足手纏いになってしまうのを理解しているのだ。
かと言って魔法で援護しようにも隆誠が纏っている全身鎧だけでなく、【剣姫】の
だがそれでも、彼に『何もしない』と言う選択肢など無かった。自身の魔法が通じなくても、後衛としての役割を果たす為の準備に取り掛かろうとする。
(この剣筋、何処かで……!)
(もしかして、これって……!)
リューとベルは気付いた。(手加減した)隆誠の斬撃を何とか回避しながらも、ある人物と似ている事に。
「そらぁっ!」
「「「ぐぅっ!」」」
隆誠の長剣に纏っている風が途端に吹き荒れ、力強く振るった斬撃によってベル達三人を纏めて吹っ飛ばした。
「な、何でリューセーさんが、アイズさんの太刀筋まで……!」
魔法だけでなくアイズの剣技も再現している事に、吹っ飛ばされたベルは立ち上がりながらも驚きの声を上げていた。
「前に【剣姫】の魔法や戦い方を見る機会があったんだ。その時に観察した結果、こうして模倣出来るようになった訳だ。尤も、膂力は俺の方が上だが、な」
「…………………」
本物以上の実力だと遠回しに言ってる隆誠にベルは即座に否定したいが、言い返す事が出来なかった。
「まるで『
嘗て【静寂】のアルフィアと戦ったリューだが、目の前にいる隆誠に比べればまだマシな方だと思わず考えてしまう。
「どこまで化物染みてんだい、あの鎧坊主は……!」
ミアも【フレイヤ・ファミリア】の団長だった頃は
「化物とは酷いな」
心外そうに言い返す隆誠は、突如纏っている風の
「
いきなりの発言にベル達は思わず目が点になりそうになるも、隆誠が突然後方にいるオッタルに向かってこう言った。
「オッタル! その場から決して動くなよ、良いな!?」
「? 分かった」
いきなり声を掛けられて不可解な表情になるオッタルだが、ああ言ったのは何が理由があるだろうと思い了承した。
ベル達も一体何をするつもりなのかと疑問を抱くも、
「【静寂】のアルフィアを知っている者に問おう。彼女が使っていた魔法――【
「ッッッ! ベル、ミア母さん! すぐに退避をっっ――!」
「もう遅い」
そう言いながら隆誠は、空に向かって伸ばしていた片手でルーン文字を描き終えた瞬間――
「【
魔法名を告げた瞬間、音の衝撃波はこの場にいるベル達だけでなく、劇場全体も巻き込むほどの威力だった。
「どわぁぁぁぁぁぁ!! 何だこの暴風はぁぁぁぁぁ!!??」
「ふ、吹き飛ばされそうですぅぅぅ!!」
「ヘスティア様、春姫殿!」
劇場へ向かおうとしていたヘスティア達だが、突然の暴風で足を止めざるを得なくなっていた。
「ふざけろ! 【フレイヤ・ファミリア】の奴等、一体何をしやがった……!?」
彼女達とは別に、フラフラな状態でありながらも合流しようとしていた赤髪の
ちょっとやり過ぎかと思いますが、取り敢えずこんな展開にしました。
感想お待ちしています。