別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ 作:さすらいの旅人
(ふむ。あの時と違って、こっちの方は中々強そうだ)
『タポラ』を使って合体したベルとリューを見て、隆誠は【ヘスティア・ファミリア】の
ベルを除く眷族のリリルカ達は全員『Lv.2』とは別に、戦闘スタイルや相性の問題もあってか、合体しても満足する結果にならなかったのだ。一応それなりに強くなったとは言っても、
しかし、今回は隆誠が想定した以上の結果となって内心喜んでいる。
ベル・クラネルとリュー・リオンは、戦闘スタイルが似通っているだけでなく相性も良い。ソレ等が上手く組み合わさった事で、合体した二人――『リュール・クラン』から相当な実力を感じ取れる。
『Lv.6』同士での合体となれば間違いなく
隆誠を除く誰もが困惑している中、リュールは地面に落ちている星剣を拾った直後に軽く振っていた。
「不思議ですね。リューさんの武器なのに、まるで自分の得物のように凄く馴染んでいます」
(成程、基本ベースはベルか)
如何でも良い事だと思いながらも隆誠は確信する。目の前にいる合体した人物の性別は男だと。
見た目は男か女なのか分からないくらい中性的な容姿だが、リュールの台詞を聞いた事で肉体は男性のベルだと分かったのだ。
因みに【ヘスティア・ファミリア】の
「……お待たせしました、リューセーさん。今度は僕が、いや、僕達が相手になります!」
軽い準備運動を終えたのか、リュールは手にしてる星剣を両手で持ち構えた直後、隆誠に剣気をぶつけるように放ってきた。
「っ! ほぅ、これはこれは」
突然の剣気に隆誠は思わず笑みを浮かべていた。
明らかにリューが放ったモノだが、ベルと合体してリュールになったのだから出来て当然と言えよう。
だがそんな事より、先程まで相手をしていた『Lv.6』の彼女とは比べ物にならない剣気。『Lv.1』の下級冒険者がまともに受ければ、一瞬で戦意喪失どころか気絶してしまうほどのモノだったと隆誠はそう推測する。
「何だ、今の殺気は……!?」
「リューに間違いなさそうだが……本当に坊主と合体したようだね」
リュールの剣気を感じ取ったのか、ヘディンは自分以上の実力者だと驚愕し、ミアは自分の
「どうやらさっきよりマシになったようだな。その合体した力、存分に見せてもらおう――」
「待て」
黄金の長剣を構える隆誠に、突如背後から待ったの声が掛かった。
振り返った先には黒大剣を手にしている万全のオッタルがおり、リュールの剣気に当てられた事で全身から闘志が溢れている。
「何だよ、オッタル。まだフレイヤの所へ戻ってなかったのか」
「悪いが俺にやらせてくれ。それに見守るのも飽きた」
「そんな勝手な……まぁ良い、やりたいならどうぞ」
今のオッタルに何を言っても無駄と判断したのか、隆誠は途中からの参戦を認めた。
「あの戦馬鹿め、こんな時に……!」
「これはいい加減にアタシも……ん? 鎧坊主が下がった……」
オッタルが加わったのを見て、ヘディンとミアは身体に鞭を打ってリュールを加勢しようとするも状況が変わった。
隆誠がその場から離れ、オッタルとリュールの一対一の戦いになろうとしている。
「貴様が放った剣気、明らかに俺以上だった。故に確かめさせてもらうぞ」
「オッタルさん……」
全く動揺せず星剣を構えてるリュール。
合体前のベルとリューは、一番の強敵であるオッタルを前に決死の覚悟を抱いていた。
しかし、今のリュールはそんな様子を全く見せていない。合体して実力が上がったからなのか、余裕があるように見受けられる。
それは当然オッタルも気付いていた。先程まで相手をしていた二人とは全く実力が異なっている事に。
「ぬぅんッ!」
先に動いたのはオッタルで、一気に接近して黒大剣を振り下ろす。
並みの冒険者では簡単に防ぐ事が出来ない斬撃に、リュールは焦りを見せる事無く星剣を片手持ちに切り替え、空いた右手で腰に刺している短剣――《ヘスティア・ナイフ》を持ち構えた瞬間に激しい金属音が鳴り響く。かなり重い斬撃だと証明するように、リュールが立っている地面に罅が入っている。
『ッ!?』
(やはりな)
リュールが微動だにしないまま斬撃を
咄嗟に武器を切り替えたのは、オッタルが振るう斬撃の威力を考慮したからだ。リューが使う星剣『アルヴス・ユースティティア』は一級品の武器でも
「複雑です。今まで必死に防御や回避に徹していたのに、こうも簡単に防げるなんて」
「オオオオオオオオオオッ!」
自身の斬撃を全く脅威ではないと思われたのか、オッタルは雄叫びを上げながら連続の斬撃を振るう。
しかし、リュールはまるで見切ってるようにナイフ一本だけで全て受け流していた。
オラリオの『頂天』と謳われているオッタルの斬撃を簡単に防ぐなど、今のオラリオにいる冒険者では到底無理なのだが、それを覆す光景を見せられている。
すると、今まで防御していたリュールが途端に後退した。直後に何故かナイフを再び納刀し、空いた右手でルーン文字を描く仕草をする。
(? この状況でルーン魔術を使う必要は無い筈だが)
先程の攻防を見た事で、隆誠はリュールの実力がオッタルを超えていると既に見抜いていた。
にも拘らず、ルーン魔術を使って強化するのは解せない。
今のリュールがその気になれば、オッタルの斬撃をすり抜けて強烈な一撃を与えてもおかしくないのに、それをやらなかった事に隆誠は全く理解出来ないのだ。
「させんっ!」
オッタルは強化されたら不味いと判断し、それを阻止する為に突進する。
しかし、既にルーン文字を描いたリュールの方が早く、魔術が発動する寸前。
(ん? ちょっと待て。あの文字はまさか……!)
リュールの描いた文字が、自身の教えたルーン魔術と全く異なる事に隆誠は気付く。
「【
「ッ!?」
ルーン魔術を口にした事でオッタルが目を見開くも、発動されたルーン魔術は不可視の音の塊となって対象に襲い掛かろうとする。
「ぐぅううう!?」
ヘディンの時と違って相当な威力なのか、オッタルが黒大剣を盾代わりにしても、まるで無意味と言わんばかりの音の衝撃は彼の全身に浴びせながら吹っ飛ばしていた。
突進していた筈の
『……………………』
たった一つのルーン魔術でオッタルが倒された事にヘディンやミアだけでなく、隆誠ですら呆然とさせられた。
(俺は攻撃用の魔術を教えた憶えは無いんだが)
リュールまでもが
これは隆誠も完全に想定外で、一体どう言う事だと疑問だらけになっている。
彼はベルに攻撃関連のルーン魔術を一切教えておらず、あくまで回復と強化のみ。
自身と別れて独自で学んだにしても、【
(っ! そうか、俺が戦闘中に描いたルーン文字を見て学習したのか!)
リュールが攻撃のルーン魔術を発動出来た理由が、隆誠はやっと判明した。
ヘディンに精神的ダメージを与える意味合いも含めて【
だがそれでも、戦闘中に僅かな間に見て学習するなど思いもしなかった。基礎だけでも覚えるのに必死だった筈のベルが、難しい筈の【
すると、観客席に激突して再びダメージを負っているオッタルが立ち上がった瞬間――
『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
天に打ち上がる怒号を響かせていた。
否、『獣』の雄叫びと言うべきか。
直接浴びている隆誠達とは別に、『鏡』を経由して見ているオラリオにいる住民達や神々も被害を受けている。
「あの猪坊主、魔法一発受けただけで『獣化』したのかい!?」
「それだけ奴が追い詰められたと言う事か……!」
ミアとヘディンはオッタルが真の切り札である『獣化』を使ったのだと察していた。
あの姿になった以上、もう生半可な攻撃や魔法が通用しない。
オッタルの『獣化』は強化を通り越した化物となり、『Lv.8』にランクアップしたと思わせるほどの強さを見せる。
「……………………」
本気を見せるオッタルに、リュールは一切動揺の姿を見せる事無く、次の動作に移ろうと【
僅か数秒の
その直後にリュールは左手に持っている星剣を地面に刺し、輝いている右手を握りしめながら構えたと思いきや、腰を低くしながらオッタルに向かって突進していく。
「オオオオオオオオオオッ!」
接近するリュールを見たオッタルは迎え撃とうと、黒大剣を両手で持ちながら再度突進。
『獣』になりながらも得物の長さを把握しているのか、オッタルは自身の間合いに入ったと言わんばかりに黒大剣を振り翳す。
しかし、リュールはその斬撃を一瞬で躱してオッタルの懐に入り――
「
「――――――――――――――ッッッ!?」
【
零距離砲撃に、『獣化』されているオッタルの巨躯が再び吹き飛ぶのであった。
またしても観客席に激突してしまうが、先程とは全く異なって壁面に大穴が開いてしまう。
オラリオ最強の冒険者であるオッタルは、リュールにたった二発の攻撃で倒される瞬間だった。
簡単に倒されてしまうオッタルでした。
やり過ぎかと思うかもしれませんが、合体したリュールがそれだけ強いという証明をさせました。
感想お待ちしています。