別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ 作:さすらいの旅人
都市最強の冒険者であり、『頂天』の異名を持つ筈の【
その事実を受け入れるのに少しばかり時間を要しなければならない。ヘディンやミアだけでなく、オラリオ側に者達の殆どが口を開けたまま呆然としている。
少し前まで『Lv.6』の四人を相手でも互角の戦いを繰り広げていたのだが、今はたった一人の冒険者にあっさり倒されてしまう結果になれば無理もない。正確には
(やはりオッタルでは相手にならない、な)
隆誠だけは他と違って驚く様子を一切見せてないどころか、一体どれだけ実力差があるのかを測っていた。
非情に申し訳ないと思いながらも、オッタルでは合体したリュールとまともな勝負にならないと既に結論を下している。
リュールのルーン魔術【
だがこれは、隆誠からすると嬉しい誤算だ。
本当であればオッタルは既にフレイヤの傍にいる予定だった。戦いを興味深そうに見ている所為で戻ろうとする様子が一向に無くて頭を悩ませていたところ、ベルとリューが合体した事で状況が一変。リュールが強いと感じ取って血が騒いで再び戦おうとしたから、隆誠は内心で非常に好都合な展開だと思いながら仕方ないように振舞って今に至る。
「オッタルさん、こんな手段であなたを倒してごめんなさい」
好都合な展開と内心喜んでいる隆誠とは別に、オッタルを倒した筈のリュールは非常に申し訳なさそうな表情で謝罪していた。
リュール――もといベルからの謝罪だろう。合体しているリューも当然同調してる筈だが、彼女の一面が無いのは気を遣っているのかもしれない。
「そんな気遣いは不要だ。それどころか『十五年早い!』と言い返してくるぞ」
オッタルの心情を理解してるかのように代弁する隆誠は、ゆっくりと歩き始める。
リュールは訝しむ。味方がやられた筈なのに、心配する様子を一切見せない彼の言動に。
「……倒した僕が言うのも何ですが、オッタルさんのところへ駆け付けなくても良いんですか?」
此処へ来てすぐオッタルに傷を癒す為の回復アイテムを渡していたのに、今の隆誠は全くその気が無い為に疑問を抱いて尋ねるリュール。
「ふんっ。生憎だが、無様な敗北を晒した奴に手を差し伸べる気は無い」
余りにも素っ気ないように言う隆誠だが、これには当然理由がある。
オッタルは意気揚々とリュールの実力を確かめようとするも、敗北と同時に大恥も掻く結果になってしまった。
そんな彼に手を差し伸べる行為をすれば、余計に心の傷を広げてしまうだろう。故に隆誠は戦いが終わるまで放置しておこうと、敢えて突き放すように振舞ったのだ。
「それはそうと、あのオッタルを簡単に倒すとは、やはり合体した事で相当強くなったようだな。連戦で悪いが、今度は俺が相手だ」
歩みを止めた隆誠は再びリュールと対峙して、手にしてる黄金の長剣を構えようとする。
「!」
すると、リュールは打って変わるように腰に納刀していた二刀の短剣を取り出して構えた。
余裕を見せていたオッタルの時とは違って、全力で戦うと言う姿勢を見せる事に隆誠は思わず苦笑してしまう。
直後、空気は一変する。
二人が互いに剣気を発した事で、劇場全体が途端に静まり返ったのだ。
「「……………」」
第一級冒険者である筈のヘディンやミアでさえ、気圧されてるように無言となっている。
構えてから数秒経ち、隆誠とリュールは動いた。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
「おお、やるなぁ!」
二刀で斬撃の嵐を振るうリュールに対し、隆誠は片手で持つ長剣だけで全て防いでいた。
しかし、ただの攻防ではない。
隆誠が後退しても、リュールは逃がさないと言わんばかりに一瞬で追いついて追撃をしている。
「くっ、何て速さだ……!」
「どんだけ出鱈目なんだい……!」
戦闘を見守っているヘディンとミアだが、二人が
『Lv.6』の二人でもこれだから、恐らくオラリオで観ている者達の大半は何が起きているのか全く分からないだろう。
「はっはっは! いい攻撃じゃないかベル、いやリュール!」
「――光の慈悲を――」
高速戦闘を繰り広げている中、隆誠はリュールの斬撃を防ぎながら称賛の言葉を浴びせていた。
攻撃力や速度がベルやリューの時とは全く違い、最早桁違いと言うべきほどの強さだから、彼は不謹慎ながらも嬉しい気持ちになる。
そんな隆誠の心情とは別に、リュールは斬撃をしながらも何かブツブツ呟いていた。
(さっきから何を言ってるんだ?)
リュールの呟きは当然隆誠の耳にも入っており、何か狙っているのかと思わず冷静になってしまう。
確かめる意味合いも含めて長剣を振るうと、リュールは即座に躱して一旦距離を取ってすぐ、右手に持っているヘスティア・ナイフを納刀直後に素早くルーン文字を描く仕草をした。
「【
リュールが発動させたルーン魔術は、オッタルを吹っ飛ばした【
不可視の音の塊が前進して対象に襲い掛かるも――
「甘い!」
『ッ!?』
直撃したオッタルの時と違って、隆誠は手にしている黄金の長剣を翳し、一気に振り下ろした。
不可視である筈の音の塊は彼のいる位置から左右に分かれ、そのまま背後にある壁面が破壊される。
攻撃魔法を斬撃で真っ二つなどの荒技をやる冒険者は決して珍しくないが、流石に見えない衝撃までは無理だ。
しかし、隆誠がその常識を覆すようにやってのけたから、如何に出鱈目であるかを証明してしまった事を当の本人は全く気付いていない。
「オッタルの時に見せたのが失敗だったな」
隆誠は既に見抜いていた。リュールが後退して武器を納刀してから【
その魔法は確かに回避不能だから、大抵の相手に有効なのは間違いない。
しかし、隆誠となれば話は別になる。
彼は魔力を含めたオーラを感じ取るだけでなく視認する事も可能なのだ。
身体の一部、もしくは武装に自身のオーラを(周囲に見えないよう薄く)纏わせれば対処が可能となる。
(だが妙だな……)
それとは別に、隆誠はリュールが放った【
咄嗟に放ったにしても、オッタルを簡単に吹っ飛ばせるほどの威力がある筈。
しかし、隆誠に放った魔法はそれ以下で、仮に直撃しても
「――空を渡り荒野を駆け――」
自身が扱う攻撃魔法を防がれたにも拘わらず、リュールは未だに小声で何かを呟いていた。
まるで【
(ッ! まさか!)
今更になってリュールの狙いに気付く隆誠だが、それはもう遅かった。
「――星屑の光を宿し敵を討て】! 【ルミノス・ウィンド】!!」
攻防中から呟いていた小声は、この世界が本来使う魔法の詠唱だったと漸く判明する。
つまりリュールは高速戦闘中に並行詠唱をしており、その途中でありながらルーン魔術も発動させた。
魔法とルーン魔術は全く別物だが、詠唱中に魔術も発動させるなど、相当な技術センスがなければ不可能なのだ。
ベルの会得したルーン魔術、リューの持つ並行詠唱の技術が合わさった事で、合体したリュールは都市最強である魔導士のリヴェリア以上だと断言出来よう。
(数が多いな)
リュールが魔法を発動した瞬間、上空から緑風を纏った無数の大光玉が全て隆誠に襲い掛かろうとしていた。
あの魔法こそが本命だから、威力は間違いなく【
「そんな
「【
【
その瞬間、隆誠の周囲から爆発する。
「なっ!?」
突然の不意打ちに隆誠が体勢を崩してしまう。同時に何故だと疑問を抱く。
彼はこの世界の魔法について一通り学んでおり、自動追尾の魔力弾や閃光などを任意のタイミングで爆散させるスペルキーも当然知っている。
しかし、【
それは当然、隆誠のルーン魔術を盗み見たベルも知らないのだが、合体したリューの記憶を共有した事で発動する事が出来た。
リュー・リオンは七年前に【静寂】のアルフィアと交戦し、その時に【
故にリュールはその記憶を参考にして、隆誠の隙を突こうと【
「くっ、間に合わ――ッッッ!!!」
体勢を崩された事で隙だらけとなっている隆誠は、襲い掛かる無数の大光玉に対処出来ず、一つ残らず直撃してしまうのであった。
リュールが全力で放ったからなのか、一発当たっただけでも大きな爆発が起き、残りの玉も接近する事で彼を中心とした連鎖爆発が発生する。
「ぐぅぅぅぅぅ!!」
「こりゃとんでもない威力じゃないか!」
魔法を発動させたリュールとは別に、爆風を受けているヘディンとミアは手にしている得物を地面に突き刺して何とか堪えようとしていた。
無数の大光玉による連続爆発がやっと収まるも、劇場全体は砂塵や煙で何も見えなくなってしまっている。
数秒後には漸く周囲が見渡せるようになり、爆発の中心地にいる隆誠は――纏っている全身鎧が罅だらけで立ったまま防御の姿勢を取っていた。
隆誠に不意を突くリュールでした。
感想お待ちしています。