別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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何とか更新しました。


派閥大戦⑭

(やはりベルに『タポラ』を渡したのは正解だったな!)

 

 空中でリュールと斬撃の応酬を繰り広げている中、隆誠は胸が弾んでいた。

 

 彼がこの世界に来て【フレイヤ・ファミリア】の仮眷族になってから一年経った事で、自分とまともに戦える存在が誰一人いない事に孤独感を抱く日々を送っていた。

 

 ならば(イッセー)みたいに誰かを鍛えて強くさせようかとも考えたが、眷族の殆どが非友好的な連中ばかり。オッタルやヘグニ、ヘイズなど他と違って友好的に接してくれている者達も、誰もがフレイヤに対して狂信的に崇敬しているから、下手に鍛えれば余計に悪化させてしまう可能性があると断念している。

 

 自分が【フレイヤ・ファミリア】にいる以上、元の世界に戻るまでは退屈な時間を送る事になると思っていた際、予想外な人物が現れた。フレイヤの暴走によって強制的に拉致されたベル・クラネルが。

 

 最初はこれ以上付き合いきれないとフレイヤを見限るついでに【フレイヤ・ファミリア】を壊滅させようと考えるも、当の女神がそんな程度で諦めないどころか、ベルを道連れにして天界送還(むりしんぢゅう)する覚悟だったから踏み止まった。その後には心を壊す為の強制的な洗礼だけでなく、(目的があって)ヘディンの教育(ぎゃくたい)と言う見るに堪えない光景に、今まで傍観していた隆誠も勝手にやらせてもらうと決意。

 

 フレイヤとヘディンの考えなど知った事かと言わんばかりに、隆誠は心身共に擦り切れたベルの師匠役となった。約二週間と言う短い期間だったが、この世界で出来た弟子(ベル)の頑張る姿を見た事で、心から楽しい時間を過ごしたと思っている。

 

 その弟子が今では、リューと合体した事で(ノーマル状態の)自分に匹敵する実力をつけ、こうして久々に楽しい戦いをしている。この世界にベル・クラネルと言う純粋な人間がいた事に、心の底から感謝すると思う程に。

 

(そろそろ終わりにするか)

 

 胸が弾んでいた隆誠が思考を切り替え、リュールの斬撃を躱そうと一旦後退する。

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

「………………」

 

 両足から『炎』を放出しながら足場を固定するように宙に立っているリュール、全身を『風』で覆って宙に浮く隆誠。

 

 互角の戦いをしている二人が距離を取り、互いに相手の様子を窺っている。

 

 リュールが若干息を切らしているのに対し、隆誠は未だに息一つ乱していない。

 

 『風』と『炎』がぶつかりあった所為もあってか、二人の身体の所々に傷があった。『炎』による火傷と『風』に切り傷が。

 

「戦って分かった事がある。お前が『Lv.13』に限りなく近い『Lv.12』だと、な」

 

「!」

 

 直に刃を交えて戦闘をした事で、隆誠は把握したリュールの実力をレベルで表現した。

 

 『Lv.13』に限りなく近い『Lv.12』など何も知らない第三者が聞けば、とんでもない法螺吹きだと大笑いしてるかもしれない。だが、オラリオから観戦している者達は誰一人たりとも否定しない。自分達の目で追いきれないだけでなく、英雄譚以上の戦いを繰り広げているのを目にすれば猶更に。

 

 だが、それは隆誠にも言える。合体したリュールと互角に戦う彼も同等のレベルである事を証明しているのだから。

 

「嬉しいよ。こんなに本気を出しても未だに倒れない相手は久々だ」

 

 だが、と言いながら隆誠は長刀を持ち構える。

 

「この先【フレイヤ・ファミリア】副団長としての仕事が控えてるから、これ以上相手をしてる訳にはいかない。その時にはベル、お前も存分に働いてもらうが、な」

 

「……隆誠さん、僕を強くしてくれた事には感謝しています。だけど、僕は神様――ヘスティア様の眷族です。フレイヤ様の眷族になる気は決してありません!」

 

「その台詞は俺に勝ってから言うんだな」

 

 諦めずに勝とうとするリュールの発言に、隆誠は笑みを浮かべた。

 

 直後、長刀に纏う『風』が凝縮されるように渦を巻いていく。

 

 それを見たリュールも倣うように、星剣に纏わせていた『炎』を今まで以上に凝縮させながら構える。

 

 空中で構えながら己の得物に魔力を注ぎ込む両者の光景に、オラリオにいる者達の中にゴクリと唾を飲み込む。

 

「いざ――!」

 

「勝負――!」

 

 言葉を発した二人は、直後に得物を振り翳しながら急速に突進していく。

 

 そして長刀と星剣の刀身がぶつかった瞬間――『風』と『炎』が混ざり合った大爆発が起きた。

 

 

 

 

「くっ! ヘディン、どっちが勝ったか分かるかい!?」

 

「知るか!」

 

 地上で空中戦を見届けていたミアとヘディンだが、急な大爆発が起きた事で二人の姿を見失っていた。少なくとも、どちらかが大きなダメージを受けている筈だと思いながら。

 

 すると、爆発によって発生した煙から何かが飛び出してきた。それはそのまま地上へと落下し、二人から少し離れた地面に激突する。

 

「くっ、俺とした事が……!」

 

「リューセーだと!?」

 

 地面に倒れていたのが隆誠だと言う事にヘディンは驚愕した。

 

 今の彼は大きなダメージを受けていると証明するように、上半身前部分の団服が斬り裂かれているが、何とか立ち上がろうとしている。

 

(どう言う事だ? あの愚人が無様な姿を見せるなどあり得ないのだが……)

 

 ヘディンは疑問を抱く。どんな相手でも余裕な表情を見せていた筈の男が、何故こんなアッサリやられてしまったのかと。

 

 次に落下してきたのはリュールで、隆誠と違って両足で地面に着地する。

 

「はぁっ、はぁっ……!」

 

 魔力の殆どを星剣に注いだからか、リュールは今まで以上に息が上がっていた。

 

 それとは別に、星剣には所々に罅が入っている。隆誠の重い斬撃を捌いていただけでなく、『Lv.12』の魔力を注がれていた事もあって、刀身が徐々に耐え切れなくなっていたから。

 

 しかし、今の彼はそんな事など如何でもいいと思うほど気になる事がある。

 

「リューセーさん、まさか貴方は……!」

 

 大爆発が起きる寸前、振り翳していた筈の長刀が急に止まり、それによって隆誠は無防備のまま斬られてしまった。

 

 そこでリュールは気付いた。自分を勝たせる為に決着を付ける演出をして、態と斬られたのではないかと。

 

「訳の分からない事を言ってないで、さっさと来い!」

 

 余計な事を言わせたくなかったのか、隆誠は早く止めを刺せと促した。

 

 完全に隙だらけとなっている彼に若干の躊躇いを見せるも、この戦いに勝たなければいけないとリュールは覚悟を決めた。ベルだけであれば未だに迷っていたかもしれないが、リューと合体したお陰で思考を切り替える事が出来たのだ。

 

 直後、リュールの右手に魔力が集束される。

 

 それを見た隆誠は、オッタルの時に使ったアレで決める気なのだろうと察した。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 リュールは最後の力を振り絞って隆誠に止めを刺そうと突進する。

 

福音の(ゴスペル・スト)――ッ!」

 

 拳を突き出した瞬間、リュールに異変が起きた。突然全身が白く輝いた直後、合体していたベルとリューが分離したのだ。

 

「坊主とリューが元に戻った!?」

 

「ちっ! こんな時に……!」

 

 余りにも予想外な光景に、ミアとヘディンが目を見開いている。

 

「ベル、これは一体……!?」

 

「そんな、どうして……!?」

 

(嘘だろ!? 合体して一時間どころか三十分も経ってないぞ!)

 

 分離したリューやベルだけでなく、一体どう言う事だと隆誠も困惑していた。

 

 『タポラ』で合体していられるのは約一時間だが、戦闘で闘気や魔力などのオーラを使い続ければ制限時間が短くなる。加えて合体する際、使用者を万全な状態にしようと合体を維持する力を使った際、制限時間が更に短くなり、場合によっては三十分以下になってしまう。

 

(そうか! ベルとリュー・リオンが合体する前に体力や魔力が相当消耗していたから、その所為で維持する力が半分以上失っていたんだ!)

 

 今更ながら隆誠は思い出した。ベルに合体を促そうと追い詰める際、加減しても相当なダメージを与えていた事を。

 

 そう考えれば一時間どころか三十分も経たずに合体が解除するのは無理もなかった。一時間以内に決着を付ければ問題無いと勝手に思い込んでいた自身の馬鹿さ加減に腹が立っている。

 

(くそっ! 俺とした事が……!)

 

 予想外の大誤算が生じてしまった事で、隆誠は内心盛大な舌打ちをしていた。

 

 不利な状況になってる【フレイヤ・ファミリア】側からすれば嬉しい誤算なのだが、隆誠にとっては全く嬉しくない展開だ。

 

 本当なら自分を倒した褒美として、リュールをフレイヤがいる塔へ転移させる予定だった。そして彼がフレイヤの胸に差さっている『花』を散らして戦争遊戯(ウォーゲーム)を終了……と言う計画が完全に崩れている。

 

「……どうやら予想外の解除だったようだな。リュールになら負けても良かったが、この好機、活用させてもらおう」

 

 予定変更してベルとリューの二人で自身を倒してもらおうかと考えるも、それは無理だと諦めていた。リュールと合体する前まで圧倒していたのに、ここで急に負ける展開を見せては違和感があって怪しまれてしまうから。

 

「そぉら!」

 

「「ぐっ!」」

 

 隆誠が『風』を纏わせている長刀を力強く振るうと、その強風を受けたベルとリューが軽く吹っ飛ぶも何とか着地する。

 

「さっきの戦いで相当消耗してしまったが、それでも『Lv.6』のお前達を倒す力くらい残ってるぞ」

 

 本当は今でも充分に余力を残している隆誠だが、ベルとリュー、そしてヘディンとミアの四人掛かりで自分を倒す流れに変更した。

 

「あの鎧坊主、あんな凄い戦いをしておいてまだ力を残してるのかい……!」

 

「……いつまでも見物してる訳にはいかないな」

 

 隆誠の台詞を聞いたミアとヘディンは、未だに傷は癒えてなくても再び参戦するつもりだった。

 

 因みにヘディンは訝るように見ていたが、一先ず戦いに専念しようとしている。

 

「……リューさん、まだ戦えますか?」

 

「一応は」

 

 ベルとリューだが、戦える力はまだ残っている。『タポラ』によってある程度回復していた為に。

 

 先程まで合体していた二人は隆誠の思惑に気付いていながらも、敢えて戦う選択を取っている。

 

「――いいだろう、来い」

 

 戦う四人の構えを見た隆誠は改めて長刀を構え、改めてこう言った。

 

「締まらない戦いになってしまうが、これで最後にしてやる!」

 

 残り少ない(と見せかけた)『風』を纏う隆誠が、此処に宣言する。

 

 その直後、予想外な『金光(ひかり)』が突然出現した。

 

「【ウチデノコヅチ】――【舞い踊れ】!!」

 

「ん? 何だ?」

 

 聞き覚えのある声と、宙から光玉らしき『狐の尾』が降り立って、ヘディン、リュー、ミアの三人を包み込んだ。

 

「「「!」」」

 

 光を帯びた事で力が急激に上がった三人が驚愕している中、今いる戦場に闖入者が現れた。

 

「ベルくーん!」

 

「神様!?」

 

 現れたのは三名。

 

 汗だくとなって大好きな眷族(ベル)に駆け寄る女神ヘスティア、ヘディン達に魔法を行使している春姫、そして護衛をしてると思われる命。

 

 明らかにベル達を手助けする為に現れた三人だが、隆誠は敢えて無視をするのであった。




駆け足で隆誠を負けさせる予定でしたが、予想外な合体解除と言う展開にしました。

無理がある内容と思われるかもしれませんが、どうかもう少しお付き合いください。

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