別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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派閥大戦⑯

「ベル君、ランクアップ出来るけど今すぐやるかい!?」

 

「お願いします!」

 

 リュー達だけでなく敵側の隆誠も予想外と言わんばかりに凝視している中、ヘスティアはベルの確認を取ってから『Lv.7』に昇格(ランクアップ)させた。この瞬間、オッタルに並ぶ最強格の第一級冒険者が誕生する。

 

 飛躍を通り越した爆発的な成長をすれば、普通の冒険者なら肉体が追い付かないどころか崩壊する恐れがあるにも拘わらず、ベルは迷うことなく更なる高みへ至った。これまで短い期間で度重なるランクアップを重ねてきた少年からすれば今更な他、【ステイタス】更新しなければ勝負にならない事を痛感しているのだ。

 

 今のベルはこんな不利な状況で後先の事を考えている余裕などない。全てが終わった後に襲い掛かるかもしれない激痛を負う覚悟で、最終決戦を挑もうとしている。こうでもしなければオッタル以上の『最強』の頂には届かないのだから。

 

「よしっ! 終わったよ、ベル君!」

 

 ヘスティアとしてはベルに無理をして欲しくない。

 

 だけど心から勝ちたいと願っている少年の覚悟に何も言えず、ただ背中を押す事しか出来なかった。

 

「リューセー君に勝つんだ、ベル君!!」

 

「はい!!」

 

 ベルが勢いよく立ち上がった直後、握りしめている神の刃(ヘスティア・ナイフ)から、まるで自身の強さを表すように発光を灯す。

 

「ベル様、どうか――ご武運を」

 

 疲弊しきっているのが丸分かりな金毛の妖狐が微笑み、残していた最後の尾である【ウチデノコヅチ】を捧げる。

 

 光玉がベルに行き届いたのを見たからか、精神疲弊(マインドダウン)に陥った春姫は意識を失ってしまう。

 

「春姫殿!」

 

 崩れ落ちる春姫を咄嗟に命が抱きとめた。

 

 それを見たベルは、未だに自分を凝視する隆誠の方へ視線を向けて――

 

「―――行きます!!」

 

 目を閉じて深呼吸をした後、戦士の顔となって地を蹴った。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええ!!」

 

 ヘスティアの声援に、少年は戦場に身を投じる。

 

 

 

 

『ハハハハハハッ! 少しはまともに戦えるようになったな、ベル!』

 

 ベルが加入した事で四対一の戦いを強いられる隆誠だが、それでも拮抗が崩れない戦況となっていた。

 

 手負いで動きが若干鈍っていても、『Lv.10』以上の実力を持つ青年は楽しむように嗤う。

 

 早さと手数で攻める兎、斬撃を振るう妖精達、剛力を見せるドワーフが何度仕掛けても、『絶対防御』に等しい刀の結界を突き破れない。

 

 『最強』と謳われていたオッタルとは比較にならないほど、隆誠は四人の猛攻など無意味と言わんばかりの力を見せ付けている。

 

「実質、『Lv.7』が三枚……! 『Lv.8』が一枚!!」

 

 これまで『派閥連合』を支援していた【ヘルメス・ファミリア】団長のアスフィ・アル・アンドロメダは、既に冷静を失っていて『鏡』の前で叫んでいた。

 

迷宮(ダンジョン)の『深層』をあっと言う間に突破出来る筈の編成なのに……!」

 

「これでもまだ無理っちゅうことか……」

 

 バベルの塔から観戦しているヘルメス、そしてロキは改めて隆誠の強さに脱帽してしまう程だった。あんな反則(チート)級の実力者が表立って冒険者活動していれば、歴代最強の『頂天』として君臨していただろうと思ってしまう程に。

 

 オッタルより遥かに強い存在にも拘わらず、フレイヤが今まで彼を秘匿していた理由は同郷の女神ですら読めなかった。何かしらの事情があったにしろ、彼を表舞台に出したのは相当追い詰められていたのかもしれない。

 

(あの兄ちゃんを使者として寄越したのは、色ボケの警告やったかもしれんな)

 

 ロキはふと思い出した。戦争遊戯(ウォーゲーム)が正式に決定する前、隆誠がフレイヤの伝言を伝える為に使者として『黄昏の館』に訪れた時の事を。

 

 あの時の彼女や(アイズを除く)フィン達は彼に関する情報が一切無かった為、【フレイヤ・ファミリア】の眷族らしくない青年と言う認識だけだった。

 

 そして戦争遊戯(ウォーゲーム)が開戦し、彼が戦場に加わった事で状況が一変。副団長のアレンを容赦なく粛清し、他の『Lv.6』冒険者達を一人で一蹴出来るほどの実力を持ち、更には【静寂(アルフィア)】の魔法を再現するなど、余りにも出鱈目過ぎて誰もが言葉を失っていた。

 

 余りにも凄すぎる光景にロキは、今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)に参加しないで良かったと内心安堵していた。もしフィン達も今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)に参加すれば、隆誠の圧倒的な実力を前に心を圧し折られていただろう。そうなれば今後行う予定の迷宮(ダンジョン)攻略に支障を来たすだけでなく、精神的に打ちのめされてる団員達のケアで延期せざるを得ない事態に陥るのが容易に想像出来てしまう。

 

「…………クソが……!」

 

 ロキの背後にいる狼人(ウェアウルフ)のベート・ローガも悟っていた。今の自分では隆誠に全く太刀打ち出来ないと酷く痛感させられている。

 

「あの兎野郎、俺を超えたなら意地を見せやがれってんだ……!」

 

 同時に『Lv.7』に至ったベルに対して彼なりの激励をしていた。一時的とはいえ『Lv.8』になってるのであれば、奴の防御を何としても崩せと。

 

「も~~~~っ!! あんな凄い奴どうしたら勝てるのぉ! 折角アルゴノゥト君がランクアップしたのにぃ!」

 

「知るかぁ! って言うかベル・クラネル! 私達より強くなったなら根性見せなさいよ!」

 

 ベルが強くなっても相手が全く崩れない事に叫び散らす(ティオナ)(ティオネ)も怒鳴り返す。

 

「魔法を封じられても智将(ヘディン)であれば他の方法を思いつく筈だけど、彼の前では無意味だと悟っているようだね」

 

 ヘディンであれば雷魔法を直接当てなくても、目くらまし程度の弾幕を張るくらいやってもおかしくないとフィンは見抜いている。視界を封じたところで、隆誠は背後や左右からの攻撃を目に頼らずとも防御するから、精神(マインド)の無駄遣いになってしまう事も含めて。

 

「穴はある……と言いたいが、非常に難しいな」 

 

「奴はこれまでの戦いで体力や精神(マインド)が尽き掛け、更には負傷しとる筈じゃが……そこを突いても圧倒しとるから、何とも言えんわい」

 

 『Lv.10』以上の実力を持つ隆誠に、強化した四人でも全く堪えていないのを見て思った事を口にするリヴェリアとガレス。

 

「…………………」

 

 ベル達が未だに不利であっても、勝って欲しいと無言で見続けるアイズ。

 

 そして――

 

「……リューセー、一体何を考えているの?」

 

 今まで安心して玉座に腰を下ろしていた筈のフレイヤだが、途端に不安を抱いていた。

 

 隆誠がその気になれば、もう既に勝負はついている。にも拘らず、未だに戦いが長引いているのは明らかにおかしいのだ。

 

 『最強』であるオッタルより遥かに上の実力がある筈の彼が、ベルがいるであろう『円形劇場』に場所を移して以降から、フレイヤの胸騒ぎが収まらないどころか徐々に膨れ上がっていく。

 

「まさか……いいえ、あり得ないわ」

 

 思わず隆誠もヘディンと同じく離反するのではないかと脳裏を過るも、そんな事は無いと即座に否定するフレイヤ。

 

 短い期間とは言え、自分の本質を理解している彼は一人の女として対等に接してくれている。恋愛関係にならずとも、まるで兄妹のように接してくれるのはフレイヤにとって心地好いものだと思っている。

 

 一度は反旗を翻そうとしていた隆誠でも、本心を口にした自分に尊重するよう妥協してくれた。自分のお願いを聞き、こうして戦争遊戯(ウォーゲーム)に参加してくれているのだから勝利は揺るがないと確信している。

 

「ねぇリューセー、私を裏切るなんて……しないわよね?」

 

 今の彼女はベルよりも、隆誠の事が気掛かりとなっていた。

 

 まるで大好きな兄がいなくなって欲しくないように願う妹のような感じで。




今の私は早く終わらせたいと書いている状態です。

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