別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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1時頃に更新する予定でしたが、メンテナンスによって出来ませんでした。


派閥大戦⑰

(ん? フレイヤが俺の思惑に勘付いたような気が……)

 

 隆誠はベル達を相手にしながらも、遠くにいるフレイヤの疑念が伝わったように目を細める。

 

 しかし、今更勘付いたところで遅かった。彼の計画は既に最終段階に移っており、どのように敗北すれば良いのかを必死に考えているのだから。

 

(さぁ、どうするベル!?)

 

「ぐぅぅぅッッ!?」

 

 襲い掛かってくるベルの二刀を防ぎ、隙だらけとなってる脇腹に回し蹴りを食らわせる隆誠。

 

 軽く吹っ飛んでいく少年だが、即座にバク転をして両足で地面に着地して再度突進。

 

 このやり取りは既に何ともやっているのだが、ベルは決して諦めずに何度も挑む。

 

 疑似『Lv.7』のミア達も先程まで果敢に挑むも、体力が限界に近付いている事もあって足が止まっており、今は疑似『Lv.8』のベル一人だけで戦っているのだ。

 

「ベル、お前は確かに強くなった。だがそれでも俺には届かない!」

 

「ぐっ!」

 

 刃に『風』を纏う長刀の薙ぎ払いで、ベルの進行を止め続ける。

 

 力の差を何度も教えられる少年は畏れるも、それでも負けるものかと気炎を吐いた。

 

 短槍に近い長さ(リーチ)を持つ長刀が懐に入られたら隙があり、これまでベルが何とか躱して入り込もうとしてるのだが、足と言う名の武器で何度も阻まれている。

 

 隆誠は剣技だけでなく、(イッセー)と同様に格闘も出来る。なので両手が塞がっても足技を使い、接近してきた相手を蹴り飛ばしているのだ。

 

 今のベルは正に命懸けだった。何度吹き飛ばされても再び決死の覚悟を見せる繰り返しだが、誰一人たりとも無駄な努力だと思ってはいない。オラリオにいる者達の中には一撃が届くよう強く祈っている程だ。

 

 技、駆け引き、能力、あらゆるモノが全て隆誠に劣っていると分かっていながらも、少年はもう一つの武器――意思を只管ぶつけている。

 

「まだ諦めないか! 何がお前をそうさせる!?」

 

「シルさんを――あの人を助けるって約束したんだ!!」

 

 振り下ろす斬撃に、ベルは二刀で隆誠を打ち据えた。

 

 そんな中、動けない三人の中でヘディンが立ち上がっている。同時に誰にも気付かれないよう何かを覚悟するように、小さく笑っていた。

 

(初めて見たな。ヘディンがあんな顔をするなんて)

 

 だが、隆誠は見ていた。ベルと相手をしながらも、三人が何か仕掛けてくる筈だと軽く見回していたところ、笑みを浮かぶところが丁度視界に入ってしまった為に。

 

 今のヘディンは単に立っているだけで完全に隙だらけであり、まるで攻撃してこいと言わんばかりだった。

 

 【フレイヤ・ファミリア】の参謀を務めている鬼畜な白妖精が、そんな無様な姿を晒すなど普通に考えて有り得ない。

 

(面白い。お前の誘いに乗ってやる!)

 

 何か狙いがある筈だと分かっている隆誠は、敢えてヘディンの誘いに乗ろうと標的を切り替える事にした。

 

「ヘディン、避けなぁ!」

 

 打ち据えてるベルを振り払った後、彼は真っ直ぐに向かうところを見たミアが呼びかけた。

 

「【永伐(えいばつ)せよ、不滅の雷将】!」

 

 向かってくる隆誠にヘディンは想定していたのか、速攻で超短文詠唱を組み上げた。

 

「【ヴァリアン・ヒルド】!」

 

 至近距離で放たれた雷砲は躱しようもなく、そのまま隆誠に直撃――

 

「そんな魔法(もの)俺に効くわけないだろう、【福音(ゴスペル)】!」

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 する筈が、既に発動してる『避雷のルーン』によって真横に逸れてしまう。

 

 失望した隆誠からの反撃として、ルーン魔術用の【福音(ゴスペル)】による衝撃がヘディンの全身に襲い掛かった。

 

 威力は前に受けた時より落ちているとは言え、それでも相手を吹き飛ばしている。

 

「俺を失望させた罰として、自分の魔法でやられるんだな!」

 

 吹っ飛ばして倒れているヘディンに向かって、隆誠は指で新たなルーン文字を描き【ヴァリアン・ヒルド】を発動させた。

 

「――師匠(マスター)ぁぁ!!」

 

 迫り来る雷砲に、全力の急加速でヘディンの前に立ち塞がるベル。 

 

(しまった! このままだとベルが……!)

 

 お人好しのベルが脱落者を助けにいかない訳がない事を失念していた隆誠は途端に焦り出す。

 

 いくら疑似『Lv.8』になったとは言え、雷砲を直撃すればタダではすまない。

 

 すぐに止めようとする隆誠だが、ここで予想外の展開が起きる。雷砲がベルに当たる寸前、何と真横に逸れてしまったのだ。

 

「はっ、はっ……。で、できた!」

 

「お前、それまでも……!」

 

 【福音(ゴスペル)】だけでなく、『避雷のルーン』も見ただけで発動させた事に再び驚愕する隆誠。ルーン魔術の講習時に発動させるだけでも凄く苦労していた筈の未熟な少年が、ぶっつけ本番の実戦で成功するのは二度目でありながらも思わず動きを止めてしまう程だった。

 

 そんな隙を晒してしまう彼に、ベルは今までとは違うルーン文字を片手で描こうとする。

 

 発動させたのは――

 

「【アルクス・レイ】!」

 

「ッ!?」

 

 今までの戦いで見た事のない大きな光の矢を撃ち出していた。

 

(いや、この魔法は確か【ロキ・ファミリア】のエルフが……!)

 

 隆誠は瞬時に思い出した。ベルが放った魔法は見覚えがあるモノである事を。

 

 フレイヤと一緒にバベルの塔の最上階から見ていた際、暴走した希少種モンスター『竜女(ヴィーヴル)』を追うベルと、更に追跡する【ロキ・ファミリア】眷族数名と別の冒険者達がいた。

 

 その時に【ロキ・ファミリア】側にいる魔導士の少女エルフが魔法で仕留めようと光の矢を放っていた。『竜女(ヴィーヴル)』に当てようとする寸前にベルが庇おうとしたので、咄嗟に爆散させて倒す事は出来なかったが。

 

(全く、どこまで俺を驚かせてくれるんだよ!)

 

 リューやヘディンとは別のエルフが使ってる魔法を再現させるベルに、隆誠は弟子の成長に嬉しさの余り笑みを浮かべてしまいそうだった。

 

 しかし、放たれている光の矢は相当な威力はありそうだが以前と比べて遅い。

 

「そんな魔法、真っ二つにしてやる!」

 

 弟子が見せた新しい魔法に隆誠は師として真っ向から受けようと、長刀を両手に持って振り翳す。

 

 向かってくる光の矢を切り裂こうと振り下ろし――

 

「はぁっ!」

 

「ッ!?」

 

 たのだが、ベルがルーン魔術を発動させた片手を空に掲げると、まるで意思を持つように突如上空へ方向転換してしまった。

 

 天へ向かう光の矢はまたもや方向転換し、今度は隆誠がいる真下へ向かっていく。

 

「やってくれる! 今度こそ――!」

 

「【光散(アリオ)】!」

 

「え!?」

 

 今度は外さないと再度構える隆誠だが、またしても予想外な事態が起きた。

 

 ベルが爆散鍵(スペルキー)らしき単語を言った瞬間、収束されていた筈の光の矢は雨のように拡散しながら降らせる。

 

「おいおい嘘だろ!?」

 

 思わず素になってしまう隆誠だが、拡散した光の矢は隆誠や周囲の地面に激突して連鎖爆発を起こす。

 

「「……………」」

 

 これには隆誠だけでなく、近くで見ていたリューやミアも呆然となってしまうのは無理もない。

 

 

 

 

 

「ベル・クラネルゥゥゥゥ! 私の魔法を勝手に使うだけでは飽き足らず、剰え改造までするなんてぇぇ~~!!」

 

 ベルが使ったルーン魔術用の【アルクス・レイ】を見たエルフの少女――レフィーヤ・ウィリディスは、とても他の同胞(エルフ)達には見せられない凄い形相になっていた。

 

「って言うかレフィーヤ、お前だって似たような事をしてるんじゃ……」

 

「一緒にしないで下さい! 私はベル・クラネルと違って改造なんかしませんから!」

 

「……そ、そうか」

 

 近くにいた同僚が思わず突っ込みを入れるも、レフィーヤは即座に否定しながらギロリと睨んできたので頷くしかなかった。




ぶっつけ本番で隆誠に知らないルーン魔術を披露して驚かせるベルでした。

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