別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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派閥大戦⑱

師匠(マスター)の安否を確認したいけど、今は……!)

 

 盗み見した【避雷のルーン】だけでなく、(とあるエルフに申し訳ないと思いつつも)自身が調整(アレンジ)した【アルクス・レイ】で隆誠の不意を突いたが、この程度で大したダメージを与えられるなどベルは微塵も思っていない。

 

 本当なら背後に倒れているであろうヘディンの方へ振り向きたい衝動に駆られるも、粉塵で見えなくても眼前の相手から逸らす事が出来ずに耐えていた。

 

 粉塵が晴れたその先には、予想通り隆誠が問題無いように佇んでいる。『風』を纏っている長刀で全て防いだのだろう。

 

「くっ、やっぱり……!」

 

「お前には本当に驚かされるよ、ベル。まさか俺の教えたルーン魔術をここまで使いこなせるとは」

 

 不意を突かれて頭に来てもおかしくないのに、彼は笑みを浮かべていた。

 

 負傷しても未だに余裕の表情を見せる隆誠に、ミアとリューは戦慄している。一体どうやったらあんな化物を倒せる事が出来るのかと。

 

「本当ならルーン魔術を教える条件として、あの【九魔姫(ナイン・ヘル)】を――」

 

「なっ! リヴェリア様も巻き込もうとしていたのか!?」

 

 聞き捨てならないと言わんばかりに、エルフのリューが過敏に反応した。崇拝している王族(ハイエルフ)が対象になっていたと分かれば、彼女がそうなるのは無理もない。

 

 話に興じようとしたのか、隆誠は彼女の方へ視線を向ける。倒れているヘディンがベルに何かやろうとしているのを分かっていながら。

 

「巻き込むとは人聞きが悪い。魔法に特化した【九魔姫(ナイン・ヘル)】なら俺以上にルーン魔術を使いこなせるかもしれないから、弟子にしようと思っただけだ。その代わり【フレイヤ・ファミリア】に改宗(コンバージョン)してもらうつもり――だった」

 

「だった?」

 

「ああ。ベルが俺の想像以上にルーン魔術を使いこなしているのを見た事で、な」

 

 【フレイヤ・ファミリア】を改善させる手段の一つとして、面倒なエルフ達を纏める為に王族妖精(ハイエルフ)であるリヴェリア・リヨス・アールヴを(期間限定の)改宗(コンバージョン)をさせる必要があった。

 

 普段から他の眷族達と同様にフレイヤに盲信してると言っても、崇拝しているハイエルフが目の前にいれば話は別となる。口の悪いヘディンでさえも大人しくなるから、リヴェリアが何らかの命令をすれば快く引き受けてくれるだろう。仮令それが雑用であっても、リヴェリア様の力になると思いながら。

 

 仮にそんな事を実行すれば、【ロキ・ファミリア】も含めた他派閥のエルフ達が絶対黙っていない。更には只人(ヒューマン)王族妖精(ハイエルフ)を自分の手駒にする為に引き抜いたと周知されたら、世界中のエルフ達も敵に回してしまう事になる。尤も、怒り狂ったエルフ達が攻め込んだところで隆誠の敵ではないが。

 

「だから安心しろ。ベルが正式に俺の弟子になれば、【九魔姫(ナイン・ヘル)】にもう用はない」

 

「貴様、それはリヴェリア様に対する侮辱だぞ!」

 

「今度はそっちに反応するか。本当に(この世界の)エルフは面倒臭い連中だ」

 

 言い方に問題があったと自覚してる隆誠だが、まさかここまで激昂するとは思わなかった。

 

 それによってリューは怒りによって奮起したのか、立ち上がり星剣を構えようとする。他の同胞(エルフ)達に代わって成敗する、みたいか感じで。

 

 すると、隆誠が視線を外していたベルの方で異変が起きた。まるで雷装の祝福を全身に包み込んでいるように。

 

(ヘディンか!)

 

 ベルがああなっているのは、上半身のみ起き上がって片手で少年の背中に触れている白妖精の仕業である事に気付く隆誠。

 

 ヘディンがこれまで使った魔法は【カウルス・ヒルド】と【ヴァリアン・ヒルド】の雷撃魔法の二つ。ソレ等と全く異なり、今のベルはまるで付与魔法(エンチャント)のように雷を纏っているとなれば、三つ目の魔法を発動させた事になる。

 

(あんな魔法があるなら、何故今まで使わなかったんだ?)

 

 隆誠はヘディンの三つ目の魔法についての詳細は知らない。

 

 それは他の眷族達も同様だった。

 

 彼が使う三つ目の魔法――【聖女の雷賛(ラウルス・ヒルド)】は対象者の傷を癒し、迅雷の加護を与える希少魔法(レアマジック)

 

 かなり強力な付与魔法(エンチャント)なのだが、その魔法は術者であるヘディン自身には使えず、ヘディンが認めた者にしか付与魔法(エンチャント)出来ないと言う厳しい条件がある。

 

 その認めた対象であるベルに全ての精神力(マインド)を委ねた事によって、力尽きるように倒れてしまう。

 

「――――ッ!!」

 

 小声でヘディンから何か言われたのかベルは目を見開いており、立ち上がった瞬間、少年は一条の『雷霆』となった。

 

「あああああああああああああああああああああッッ!!」

 

 そして、隆誠目掛けて突貫する。

 

 

 

「これはッ!?」

 

 距離があったにも拘わらず、ベルは一瞬でかき消して雷の双剣を振るうも、隆誠は咄嗟に長刀で防ぐ。

 

 直後、隆誠が感電した。双剣に雷を纏わせたベルの斬撃が、長刀を通じて彼の全身を蝕むように。

 

 そんな状態など関係無いと言わんばかりに、白兎の猛攻は止まない。

 

 凄まじい速度で放たれる怒涛の連続斬撃を繰り出すも、隆誠は全て防いでいる。同時に全身を貫くように感電させていた雷も既に消えていた。

 

「こんな物、俺の『風』で防げば問題無い!」

 

「ぜぁぁぁぁああああああああああああああッッ!」

 

 魔力を節約する為に長刀のみ『風』を纏わせていた隆誠だが、感電対策として全身にも施す事にした。

 

 しかし、ベルはそんなの知った事ではないと言わんばかりに猛攻を続ける。

 

 ヘディンの付与魔法(エンチャント)で攻撃と速度を特化させたと言うのに、隆誠は対応出来るように防いでいた。

 

 それによって、今行われている二人の攻防はヘスティアだけでなく、上級冒険者である命の目でも捉えきれない。第一級冒険者のミアとリューでさえ、何とか目で追うのがやっとなのだ。

 

「ぐっ!」

 

 攻防を繰り広げてる中、隆誠が突然動きが一瞬止まった。リュールの時に受けた傷が再び痛み始めた所為で、全身に纏っている『風』に綻びが生じている。

 

「はぁっ!」

 

 それを見たベルが即座に反応して斬撃を繰り出し、隆誠は何とか躱そうとするも、『風』を貫いて頬がナイフに掠ってしまい――

 

「ぐああああああっ!」

 

 雷が再び隆誠の全身を感電した。

 

 ベルの斬撃は強力な雷を纏っている為、身体に掠っただけでも強烈なダメージを与える事が出来るのだ。

 

 初めて聞く隆誠の悲鳴にベルだけでなく、ミアとリューも思わず驚愕してしまう。

 

 どんな攻撃を受けても一切音を上げる事無く涼しい顔をしていた筈の男が、ここで悲鳴を上げるなど思いもしなかった。

 

 そう考えてしまうほど、今の隆誠は相当消耗して追い詰められていると言う事になる。

 

(ここで!)

 

 動けなくなった隆誠を見たベルは追撃を仕掛けるも――

 

「舐めるな!」

 

「ごっ!」

 

 強く睨まれた瞬間、腹部に強烈な一撃を当てられたかのように吹っ飛んでしまった。

 

「え!? い、今何が起きたんだい!?」

 

 隆誠が斬撃や魔法も一切使ってない筈なのにベルを吹っ飛ばした事に、ヘスティアは訳が分からないと言わんばかりに叫ぶ。

 

 それは彼女だけでなく、この場にいる者達も同様だった。

 

(しまった! つい遠当てを!)

 

 今のベルにならやられても大丈夫だと思っていた隆誠だが、思わず防衛本能が反応し遠当てを使ってしまった。無自覚でやってしまうと言う事は、それだけ弟子が脅威になったと言う証拠になるが。

 

「ぜぁぁぁぁあああああ!!」

 

 遠当てを喰らったベルは何ともないように立ち上がり、再び隆誠に挑もうと突貫する。

 

「リュー!」

 

「分かっています!」

 

 ベルを援護しようと決意したのか、ミアとリューも残りの力を振り絞って挑みかかる。

 

 三対一と言う光景になるも、ダメージを受けている筈の隆誠の防御は一向に崩れない。

 

「……ヘスティア様、春姫殿を任せてよろしいですか?」

 

「へ? (ミコト)君、急に何を……?」

 

「足手纏いになるのは重々承知していますが、それでも自分は……ベル殿の力になりたいんです!」

 

 ヘスティアが戦いを見届けている最中、意識を失ってる春姫を支えていた命が決意して準備に取り掛かろうとする。

 

 そして――

 

「……おいおい、何とか来てみれば、とんでもねぇ戦いになってるじゃねぇか」

 

 負傷している赤髪の青年が、ベル達の戦いを目にした事で驚愕していた。




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