別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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ベル・クラネルの活躍について

 ベル・クラネルの活躍をフレイヤと一緒に見守っていた隆誠は、感心するだけでなく深く同情していた。

 

 一つ目はフレイヤが怪物祭(モンスター・フィリア)で【ガネーシャ・ファミリア】に多大な迷惑を掛けたのとは別に、試練と称してオッタルの手引きでミノタウロスの相手をさせていた。彼の戦う勇姿を見て恍惚となる主神に思わずしばき倒そうかと思ったが、勝利した事で『Lv.2』と昇格(ランクアップ)。それを知ったフレイヤは『自分がベルを育てた』みたいな表情になっていたから、イラっとした隆誠は思わず『お前はただ眺めてただけだろう』と突っ込みながら事前に用意した紙製のハリセンで彼女の頭を引っ叩いていた。

 

 二つ目は【アポロン・ファミリア】の主神アポロンがベルを狙おうと、【ヘスティア・ファミリア】に戦争遊戯(ウォーゲーム)を仕掛けていた。そうなったのは向こうが主催した神の宴で、主神アポロンは卑劣な方法で戦争遊戯(ウォーゲーム)に持ち込んだ。女神ヘスティアが当然断るも、向こうは是が非でも受けさせようと、【ヘスティア・ファミリア】の本拠地(ホーム)を襲撃して追い詰めようとする始末。悪辣な手段を講じる【アポロン・ファミリア】のやり方に、隆誠は不快になるどころか壊滅させてやろうかと考えた程だ。オラリオの住民達に迷惑を掛けた眷族達を全員ぶっ飛ばした後、アポロンを滅封波で封じた小瓶を地下深くに埋めてやろうかと。それを危惧したフレイヤは『リューセーの気持ちは分かるけど、それは絶対駄目よ』と何とか抑えている。その後の戦争遊戯(ウォーゲーム)で【ヘスティア・ファミリア】が勝利して、【アポロン・ファミリア】はオラリオ追放の刑を下されて幕を引く。

 

 三つ目は【イシュタル・ファミリア】の主神イシュタルがベルを捕らえたとの報告が入った瞬間、フレイヤは本気で潰そうとオッタル達を率いて本格的に動き出した。隆誠も一緒に行こうとしたが、フレイヤから『貴方が行くまでもないから、本拠地(ホーム)で待機してなさい』と命じられた。彼女としては隆誠の強さが他の【ファミリア】に知られないよう秘匿しておきたい他、【イシュタル・ファミリア】の娼婦(おんな)達の目に入れさせたくないのが一番の本音だと言う事を悟らせない為に。結果としては【イシュタル・ファミリア】は崩壊し、その主神イシュタルは天界へ強制送還される事になった。オラリオにとって重要な【ファミリア】の一つを失った所為で、【フレイヤ・ファミリア】は後ほどギルドから(ペナルティ)を課される破目になったが。

 

 四つ目はダンジョンにいるモンスターが地上に現れてオラリオ中は大騒ぎになり、またしてもベルが大きく関わっていた。更には都市を危機に晒した事で烙印を押され、都市に住まう殆どの住民達がベル・クラネルを敵視する事になった。第三者側である隆誠は、これには何か裏があるのではないかと推測する。あのフレイヤが一目で気に入ってしまうほど純粋な少年が、そんな利己的な行動を起こすとは到底思えないと。他にもオッタルが黒いミノタウロスを見て何か引っかかっているような素振りを見せており、単なる普通の騒ぎではない何かが裏で動いていると思わせてしまう一件となった。フレイヤも当然気付いており、【ロキ・ファミリア】が主体となってモンスター討伐で動いている中、【フレイヤ・ファミリア】は密かに妨害工作を仕掛けた。オッタルが気にかけている黒いミノタウロスを、宿敵と認識しているベルと戦わせる為に。結果としてベルは敗北した挙句に逃げられてしまうも、都市の住民達からの信頼を取り戻す事に成功する。因みに後から知った隆誠は、すぐにコロッと意見を変える別世界の人間(こども)達に対して『現金な奴等だ』と吐き捨てるように言っていたのを補足しておく。

 

 ベル・クラネルがオラリオに来て一年も経っていないのに、こうも立て続けに災難級の面倒事に遭遇するのは最早異常としか言いようがなかった。何か作為的な運命みたいなものに巻き込まれるような感じがしてならないほど、あの少年は色々な意味で凄いと隆誠はつくづくそう思った。そんな彼や【ヘスティア・ファミリア】は現在、ギルドから『強制任務(ミッション)』でダンジョン遠征を命じられた。『Lv.4』へランクアップした事で派閥の等級も上がった事で、相応の義務を果たさなければならない立場になったようだ。因みに【フレイヤ・ファミリア】も遠征に行かなければならないのだが、フレイヤが拒否するからオッタル達も従わない始末で、ギルド側は相当頭を痛めているらしい。都市最大派閥だけでなく、この世界にいる『黒龍』を倒すには必要な戦力と言う事情もあって、不本意ながらも許容しているとか。【フレイヤ・ファミリア】が毎回好き勝手な行動が出来る理由を知った隆誠は、フレイヤが戦争遊戯(ウォーゲーム)で何かを失わなければ一生考えを改めないだろうと思ったのは内緒だ。

 

 

 

 

「随分ご機嫌じゃないか。それだけあの少年の活躍はお気に召したと言う事か」

 

「当然よ。私はあの子があれくらい成し遂げるのを信じていたもの」

 

 ベル・クラネルが黒いミノタウロスと交戦して数日が経ち、オラリオは再び落ち着いた日々を送っている。

 

 彼の活躍に大層機嫌の良いフレイヤは本拠地(ホーム)で過ごしており、今は神室で隆誠とチェスをしながら先日の出来事を話し合っていた。因みに彼女の呼び出しに他の眷族達は剣呑な雰囲気を醸し出していたが、隆誠は完全無視を決め込んで軽く流している。仮に誰かが襲い掛かって来たとしても、いつも通りに軽く迎撃すれば良い話なのだから。

 

 楽しそうに話している二人だが、チェスの盤面に視線を固定している。互いに本気でやっており、相手の動きを予測すると同時に先読みを繰り広げていた。

 

「そう言えば昨日は【神会(デナトゥス)】があったそうだな。その際にあの少年の二つ名が【白兎の脚(ラビット・フット)】に改めたとか」

 

 隆誠はそう言いながらナイトの駒を動かして、相手のポーンの駒を倒す。

 

「ええ。私は【美神の伴侶(ヴァナディース・オーズ)】にしたかったのだけれど、ヘスティアに反対されちゃったのよ」

 

 お返しと言わんばかりに、フレイヤはビショップの駒でナイトの駒を倒す。

 

「そりゃそうだろう。他派閥の眷族にそんな二つ名を付けるのはどうかと思うぞ」

 

「あの子は何れ私のモノになるから、ヘスティアに宣言しただけなのに」

 

「随分と質の悪い宣言だな」

 

 呆れた表情となる隆誠だが、フレイヤは全く意に介していなかった。相も変わらずベルに執着しており、今も本気で自分の眷族にしようと考えている。

 

 二人の会話とは別に、チェスの方は終盤に差し迫ろうとしている。

 

 そして――

 

「はい王手(チェック)

 

「あら、負けちゃった」

 

 フレイヤがベルの事を考えた所為で一瞬の隙が生じた為、隆誠は空かさずにそこを突いて王手(チェック)をかける事が出来た。

 

「むぅ……やっぱり負けると口惜しいわね」

 

 負けた事で頬を膨らませてしまうフレイヤに、隆誠は思わず苦笑してしまう。

 

 彼女は今までチェスをやって誰にも負けた事がなかったが、隆誠とは常に互角の勝負をして勝ったり負けたりの繰り返し状態になっている。因みに今日の戦績は互いに一勝一敗だった。

 

「リューセー、もう一回やるわよ」

 

「良いぞ。今日はこれで最後だ」

 

 三回目の勝負をしようと、二人は駒を元に戻して再びチェスをするのであった。




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