別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ 作:さすらいの旅人
「リューセー。貴方、初めから負けるつもりだったのね?」
「ああ」
敗北したフレイヤは、隆誠に真意を問い質していた。
がらんと空いた酒場のカウンターで、子供みたく睨む女神に、隣に座っている青年はすんなりと答えていた。
「例え勝利して俺が【フレイヤ・ファミリア】をどんなに改善したところで時間が掛かり過ぎる。お前が周囲に恨みを買っていたから余計に、な」
「そんなの、貴方が黙らせれば問題無い筈よ。ベルを手に入れさえすれば、全て上手く行くはずだったのに……!」
「んなもん無理に決まってるだろ」
フレイヤは未だに
「ベルはフレイヤの『愛』に応えるつもりなど初めからなかった。お前も既に分かっていただろうに」
あんな愚行を犯すのであれば、本格的な失恋を経験させるしかないと青年は決心したのだ。ベルに修行用バンドを施して可能な限りの時間で強化させる他、この世界で使うのは反則である事を分かっていながら合体アイテム『タポラ』も貸そうと。
「『愛』を司る筈の
「………敗れた原因は貴方の所為でもあるのだけど」
「それは悪かった。表面上の『愛』に縋る惨めなお前なんて見たくなかったから、な」
「…………………」
もう言い返す気力がなくなったのか、グラスの中に残っている酒を一気に飲み干すフレイヤ。
彼女も理解している。ベルに『貴女の「
それでも隣に座る男に対する文句は残っているが、口にしたところで意にも返さないだろうから、もう何も言わない事にしたのだ。
グラスが空になると、フレイヤはコトリとカウンターの上に置いて、目の前にいるドワーフにこう言った。
「ねぇミア、この一杯は貴方の奢りでいい?」
「ふざけんじゃないよ、馬鹿女神。ちゃんと払いな」
今まで黙って聞いていた酒場の店主――ミアは即座に言い返す。
二人がいる酒場は『豊穣の女主人』で、フレイヤは朝早く彼女を叩き起こして無理矢理付き合わせているのだ。
「リューセー、立て替えといて」
「はいはい……」
フレイヤが無一文でありながら此処へ来たのは、隆誠に払わせる気満々だったのだ。彼としては払いたくないのだが、酒の一杯程度くらい払う事に何の問題も無い。
「アンタが代わりに払うんなら500万ヴァリス出しな」
「……いくら何でも酒一杯でその値段は如何かと思いますが?」
余りにも高過ぎて思わず頬を引き攣らせてしまう隆誠。
その顔を見た事でミアは得意気にこう言い放った。
「この店はアタシが『法』なんだよ。だから値段はアタシの一存だけで決まるのさ」
「だってさ、フレイヤ。今回ばかりは俺でも無理だ」
「それは困ったわねぇ。私、もう何も持っていないし」
強気な態度に出るミアに、隆誠とフレイヤは完全にお手上げ状態だ。
派閥大戦に敗北した事で、【フレイヤ・ファミリア】は解体された。
フレイヤがオラリオ全体に施した『魅了』だけでなく、解除されても開き直って
その際に一人の女神が、とある要求をした。今回の
隆誠は自ら『Lv.10』以上だと公言したから、彼を手駒にすれば都市最大派閥として君臨する事が出来ると踏んだのだ。それは当然、他の女神達も同様に考えている。
しかし、直後に事態は急変する。
派閥連合の盟主ヘスティアが――
『リューセー君については誰も手を出さないように! ボ・ク・の! ベル君がリューセー君に勝ったんだから文句は言わせないよ!』
そう言って他の女神達を黙らせる事にしたのだ。
ヘスティアの言葉に文句を言いたいのだが、自分達が盟主として祭り上げた所為で引き下がるしかなかった。
女神達とは別に、隆誠を
しかし、実力差があり過ぎる所為もあってか、殆どが断念せざるを得なかった。彼はオッタル達と違って話が通じる相手でも、その気になれば派閥を乗っ取られてしまうと恐れた為に。
当然【ロキ・ファミリア】も含まれている。彼等は
結局は隆誠に手が出せない分、【フレイヤ・ファミリア】の莫大な資産を没収するしかなかった。
本来であれば即送還になってもおかしくないが、彼女に恨みを抱く女神連盟から『生き恥を晒せ』との沙汰を下され、裸の女王と成り下がる事になった。何処かの『誰かさん』達が送還を取り下げたのだろうと、隆誠とフレイヤはそう踏んでいる。
「頼みのリューセーが払えないなら、どうしようかしら」
フレイヤに残されたのは、今も纏っている衣服と連れの隆誠だけ。
他の眷族達はいない。フレイヤから「リューセー以外付いて来ては駄目。この地で英雄になりなさい」と言い渡している。その言い分に今までフレイヤに逆らわなかった者達は「何故ソイツだけを連れて行くのですか!?」と猛反発しながら食い下がっていたのは言うまでもない。そうなる事を予想していたのか「リューセーには私を裏切った最大の責任を取ってもらう為、
因みに隆誠をオラリオの外に出す事にやつれ気味のロイマンは大反対だったが、当時の
「金がないなら、今まで通り働いて稼ぎな。どっかのチビ女神は、『街娘』の一人くらいなら見逃すって言ったらしい。鎧坊主の方も含めてね」
「だってさフレイヤ、どうする?」
「駄目よ。惨めだもの。それに今は
「そう言えば、そうだったな」
「?」
フレイヤに言われた事で思い出す隆誠とは別に、何も知らないミアは一体何の話をしているのかと疑問符を浮かべていた。
本当なら聞きたいところだが、彼女が素直に教えてくれないだろうと敢えて何も訊かない。
「行くわよ、リューセー」
「はいはい」
「さようなら、ミア。今まで楽しかったわ」
フレイヤは隆誠を連れて、微笑みながらミアに別れを告げた。ドアを閉めた直後に重い溜息が聞こえても、二人は気にする様子を見せない。
「あの店主との付き合いは長かった筈なのに、あんな別れ方で良いのか?」
「良いのよ」
余りにもアッサリとした別れ方に隆誠が思わず問うも、フレイヤは振り向かずに答えた。
これ以上聞くのは野暮だなと思ったのか、彼は話題を変える事にした。
「んで、
「今からよ。貴方としても、早く
「……まぁ否定はしない」
隆誠とフレイヤは会話しながらオラリオを出る為の都市門へ向かっている。
その途中で――
「シルさん、リューセーさん」
佇んでいた白髪の少年が、二人に声を掛けた事で足を止めた。
いまいちな内容かもしれませんが、どうかご容赦ください。