別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ 作:さすらいの旅人
アストレアのお陰で誤解が解かれ、隆誠も罠用として施した『拘束のルーン』を解除した。
自分達を魔法らしきモノで拘束した【フレイヤ・ファミリア】の眷族らしき男が、何故此処にいるのかと疑問を抱かれるも、主神の方から説明すると――
「居候!? この男は【フレイヤ・ファミリア】なのですよ!?」
隆誠が予想した通り、明らかに反対だと思われるリューが驚きの声を上げていた。
「そうね。団服を見ての通りだけど、彼は複雑な事情があって戻る事が出来ないから、此方で預かることにしたの」
「複雑な事情があると言われても……正気ですか、アストレア様!? このような怪しげな男を連れ込むなど、もし神フレイヤに知られでもしたら――!」
女神至上主義と呼ばれる【フレイヤ・ファミリア】眷族達が他派閥の
実際、彼等は基本的にフレイヤからの命令がなければ動かない。
そう考えていたリューは、隣にいる者達も反対する筈――
「前にも自己紹介したけど、私はアリーゼ・ローヴェル。この子がリオンで、こっちは輝夜とライラ! よろしくね、謎のお兄さん!」
「ってアリーゼぇぇぇ……! 何事もなかったように自己紹介しないで下さい! この男はあの【フレイヤ・ファミリア】の眷族なのですよ!」
と思いきや、自分が信頼している団長が裏切り行為をしたことで嘆いてしまう。
「平気よ、リオン! アストレア様が『大丈夫』って言ったのよ? 私ほどじゃないにしても、清く正しい心の持ち主に決まってるわ! それにあそこの眷族だからって、そんな偏見を持ってはダメよ!」
「そ、それはそうかもしれませんが……!」
【フレイヤ・ファミリア】の全員が必ずしも女神至上主義ではないと諭そうとするアリーゼに、リューは否定出来なかった。
「時間の無駄だぜ、リオン。もうひっくり返らねぇよ。それに【フレイヤ・ファミリア】だからって、下界の人間は神様に嘘なんて吐けねえしな」
「確かに怪しいかもしれんが、貴様はアストレア様のことを信じられんのか?」
アリーゼと同様に受け入れの姿勢を見せているライラと輝夜。
最初は未知の魔法で自分達を動けなくした得体の知れない男と見ていたが、主神が彼を居候させると提案された以上反対出来ないのだ。
「そ、そんな事はありません! ですが男性と同じ屋根の下で生活するなど……!」
「何を要らぬ心配しているのだ、むっつりエルフが」
「むっつりと言うなぁぁぁぁぁぁ!!!」
(ふむふむ。七年前のリュー・リオンはこんな感じだったのか)
隆誠が知っている彼女は生真面目な性格をしてるが、好きな男の前だと急にポンコツ化してしまう面白いエルフという情報しかない。後者に関しては派閥大戦を通じて充分に理解している事を補足しておく。
今のリューは周囲に弄られる末っ子も同然だから、【アストレア・ファミリア】の中で新参者なのだろうと隆誠はそう考えていた。
「なんだ? この私の忌々しい美貌に狂ったか?」
「き、貴様!? やはりそのような目で私達を……!」
視線を向けられている事に気付いた輝夜が揶揄うように問うと、それに反応したリューがキッと強く睨んで来た。
「確か輝夜、だったな。少し前に会った時とは口調が違うなと思っただけだ」
リューの
「あらあらぁ? こちらの方がお好みで? 本当に殿方は、大和撫子なんてものがお好きですねぇ」
「いいや、どうせなら素で話してくれ。君にそんな猫かぶりな話し方をされると、何だか身体がゾワゾワして――」
「ぶぁ~~~~~かめ!!」
隆誠がありのままの話し方をするように言ってる最中、いきなり罵倒をする輝夜。
「ならば先に言っておこう! 私は貴様のような男が大っ嫌いだ! 覚えておけ!」
「はいはい、是非とも心に留めておくよ」
嫌いだと言われたにも拘わらず、隆誠は心底如何でも良いように返していた。
【フレイヤ・ファミリア】にいた頃と比べれば、輝夜の罵倒など可愛いものなのだ。フレイヤと傍にいる事で容赦の無い罵倒を(オッタルやヘグニを除く)眷族達から散々浴びせられていた事もあって、彼からすれば小さな猫の反抗程度にしか思っていない。
「おい、話が進まねぇよ。居候、さっさと名乗れ。アタシ等だけ名前を知らねえのはフェアじゃねえだろ」
「おっと、そうだったな」
ライラからの指摘を聞いたことで、肝心な事を忘れていたと言わんばかりの反応をする隆誠。
本当なら未来のオラリオから来た異邦人が正直に名前を教えるのは非常に不味い。この世界にいるもう一人の自分に影響を与えてしまい、本来辿る筈の歴史とは大きくかけ離れてしまう可能性があるから。
だが、隆誠は元々別の世界から来た存在なので、今いる世界に影響は殆ど皆無。もしかすれば数年後に初めてオラリオへ来た過去の自分が来てしまうかもしれないが、その時に出会う確率は限りなく低い。【次元の狭間】は様々な世界の隙間に存在し、世界と世界を分け隔てる境界である為、必ずしも同様の歴史を辿ることは無いだろうと元神はそう見解しているから。
「俺はリューセー・ヒョウドウ。正しくは兵藤・隆誠で、其方の輝夜と同じく極東出身だ」
この世界では極東と呼ばれる昔の日本と思わしき国がある為、隆誠は敢えてこの世界の出身者と言う事にした。
「みんな。ここにいる間、リューセーと仲良くしてあげて頂戴ね」
「わかりました、アストレア様! これからよろしくね、リューセー! まさか輝夜と同郷者だったなんてね!」
「まぁよろしくしてやる。腕は立つみてえだが、手を焼かすなよ?」
「妙なことをすれば【フレイヤ・ファミリア】の眷族でも切り捨てる。覚えておけ」
アストレアの言葉に笑顔で迎えるアリーゼに対し、警告するライラとリュー。
「リュー・リオン、もう少し力を抜いたらどうだ? そんなに肩肘張り続けてると疲れるだけだぞ」
「なっ!? そ、そんな心配をされる筋合いなどない!」
隆誠が笑顔でアドバイスをするも、図星を突かれたかのようにリューは少々取り乱しながらも余計なお世話だと言い返した。
「それに私は、貴方に真名を許した覚えはない! そもそも何故、その名を知っている!」
「おっと、コレは失礼した」
七年後のリューを知ってる事もあって、隆誠は思わずその時の対応をした事に内心反省する。
「私が先に教えていたの。ごめんなさい、リュー」
「アストレア様……! ですが、それでも馴れ馴れしい!」
隆誠が七年後の世界からやって来た事を知ってるアストレアは、すぐにフォローをしようと自分が教えた事にした。
彼女の言い分を聞いて納得するリューだが、それと別に気安く話し掛けてくるのは別のようだ。
「アリーゼ達と異なって、私を見る目だけ違う気がする! 何かこの男はおかしい!」
(そりゃ七年後の君を知ってるから、な)
「おやおや、自分を見る目だけ違うなんて、自意識過剰なことで」
「言ってやるなよ、輝夜。リオンはエルフで、お年頃なんだからよ~」
「輝夜ぁぁ! ライラ~~~!!」
揶揄う輝夜とライラに予想通りの反応をするリューに、隆誠は思わず笑ってしまいそうになっていた。
「リュー・リオンが完全におもちゃ扱いされているな」
「仕方ないわ、リオンは私達にとって末っ子みたいなものだから。どうしても可愛がっちゃうの」
「ああ、やっぱりそういう扱いだったか」
「それとリューセー、出来れば『リオン』って呼んであげて? あの子を真名で呼べるのはアストレア様だけだから」
「了解した」
ファーストネームで呼んでくるアリーゼに、隆誠は気にする事なく彼女からのお願いを素直に頷く。
その後から、【アストレア・ファミリア】の恒例行事みたいな感じでリューは弄られることになっていた。
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