別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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連続で更新すると短いです。


隆誠の正義

(『正義』って何だと思う、か)

 

 【アストレア・ファミリア】の居候となった翌日の朝。

 

 隆誠は誰もいない台所で朝食を作っている最中、昨夜にあった事を思い出している。

 

 アストレアからの厚意で空き部屋の個室を用意してくれた後、アリーゼが急な来訪をした。

 

 いきなりの事に隆誠は戸惑っていたが、それでも対応しようと部屋に招いてから彼女と軽い雑談中に尋ねられる。『正義って、何だと思う?』と。

 

(難しく考えず、自分が『正しい』と考えてることで良いと言われたから――)

 

 笑いながらも答えを求めようとしてるアリーゼに、隆誠は取り敢えずと言った感じで答えた。

 

『自分にとって大切な人達と平穏に暮らすことが、俺の「正義」だよ。家族や恋人を問わず、な』

 

 兵藤隆誠として転生した元神は『家族愛』を最も大事にしており、争いのない平穏な世界で暮らす事を目標にしている。他の人間からすればちっぽけなモノと思われるかもしれないが、本人は全く気にしていない。

 

 答えを聞いたアリーゼは一瞬ポカンとしていたが――

 

『とっても素敵なことね! 平穏で健やかに暮らすのも立派な「正義」だわ!』

 

 そう言いながら笑顔で称賛してくれた。

 

 彼女もいずれ誰かと結婚して子供が出来たら、冒険者を辞めて平和に暮らしたいと考えているのだろう。

 

 しかし、今は闇派閥(イヴィルス)が跋扈してる所為もあって、とてもそのような事を考えている暇はない。

 

 隆誠から見てもアリーゼは充分に可愛い女の子で明るい性格だから、あっと言う間に恋人が出来るだろうと踏んでいる。尤も、相手の男が一般人であれば簡単に受け入れてくれないかもしれないが。

 

(まぁ、その後に改宗(コンバージョン)した方が良いと言われたけど、な)

 

 正義に対する答えを聞いて満足したアリーゼは、是非とも【アストレア・ファミリア】に改宗(コンバージョン)すべきだと勧誘してきた。

 

 隆誠は当然断るも、向こうは簡単に諦める様子を見せなく『気が変わったら、いつでも言ってね!』と言ってくる始末。

 

 まるで嵐のように去って行く彼女だが、そんなに嫌な感じはしなかった。あそこまで明るいと、まるで太陽みたいな子だと思いながら。

 

「お前……リューセー?」

 

「ん? あ、おはよう、ライラ」

 

 すると、隆誠が振り向いた先にはライラがいたので朝の挨拶をした。

 

「なんだよ、この美味そうな飯は。アタシより早く起きて、準備してたってのか?」

 

「居候とはいえ何もせずに過ごすのは申し訳ないから、せめて料理くらいは作ろうと思って、な」

 

「……随分と手際が良いな。料理を振る舞う相手でもいたのか?」

 

「ああ。旅をする際に必要だと思って学んだんだ」

 

 修行の旅では必ず隆誠が作っている。同行する(イッセー)はそれを当たり前のように食べていたが、それを聞いた教会関係者だったアーシアやゼノヴィア、更には天使のミカエル達も物凄く羨ましがっていた程だ。

 

「なるほどな。じゃあ、朝食当番を代わってくれた礼だ。アタシの飴、やるよ。そら」

 

「おっと。これはどうも」

 

 ライラが飴を放り投げると、難なく片手でキャッチする隆誠。

 

 手にしてる丸い飴を見てジッと見ていた彼だが、すぐに口の中へ入れる。

 

「……甘くはないが悪くない味だ」

 

「このスープ、ちょっぴりもらうぜ」

 

「どうぞ」

 

 隆誠が飴を舐めている間、ライラは出来上がったスープの味見をしていた。

 

「色は問題ねえ、匂いもおかしなところは無し。成分の方はアイテムで調べるとして……食器も大丈夫そうだな」

 

「おや、味見じゃなくて毒味をしていたのか?」

 

「当然だろ」

 

 真面目な顔で分析をしていたライラに隆誠が問うと、向こうは全く悪気が無いように答えた。

 

「いくらアストレア様が連れてきた野郎でも、0から100まで信用すんのはアタシには無理だ。ま、癖みたいなもんだ、大目に見ろよ」

 

「癖、ねぇ。そうまでしないと生き残れないところにいたのか?」

 

「ああ。アタシは『罪人都市』の生まれでな」

 

 隆誠は軽く聞いた程度に過ぎないが、『罪人都市』は治安が最悪と呼ばれるほど酷い街と呼ばれている。

 

 そんな街で生まれたライラは、相当過酷な人生を送ってきた事が容易に想像出来てしまう。

 

「味方は勿論、てめーみてぇなお人好しにも裏切られるのもザラだった」

 

「成程。最早自分だけしか信用出来ない、という結論に至るほど酷い街なんだな」

 

「ま、そういうこった。言っとくが、アタシ達はまだ完全にてめーを信用した訳じゃねーぞ」

 

 いくらアストレアが信用出来ると言っても、ライラを含めた眷族達は隆誠に対する警戒を緩めていないようだ。

 

 それは当然彼も理解してる。会ったばかりの人間を簡単に信用するなど微塵も思っていない。

 

「分かってるよ。でなければ、君が俺に痺れ薬入りの飴玉なんて渡したりしないからな」 

 

「っ! てめー、やっぱ気付いてやがったか……」

 

「ああ。思ってたほど大した効き目はなかったが、な」 

 

 そう言う隆誠だが、実際は神の能力(ちから)で痺れ薬を無効化している為、どれほどの効果があるのかは全く分かっていない。

 

対異常(アビリティ)を持つ『Lv.3』の上級冒険者なら異常はおこらねえ。そう考えると、てめーは少なくとも『Lv.3』以上の実力者ってのは分かった」

 

「ほう……」

 

「てめーが強いからと言っても、変な真似はすんじゃねーぞ。これでもアタシ達は格上の相手とそれなりに()ってるからな」

 

「へぇ、そうなんだ。そんな恐ろしい展開にならないよう肝に銘じておくよ」

 

 隆誠がその気になれば、ライラだけでなくアリーゼ達も瞬殺するなど造作も無い。

 

 そんな物騒な行為をする気は微塵も無いのだが、一先ずは自分の実力を知られないよう道化を演じる事にした。

 

「ところで、俺が作った朝食に問題がなければ運んでも良いか?」

 

「……ああ、そうだな。そろそろうるせえ団長様が起きてくるからな」

 

 いきなり話題が変わった事で一瞬言葉が詰まるライラだったが、毒味した朝食は全て問題無い事を確認済である事を思い出し、隆誠と一緒に運ぶのであった。




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