別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ 作:さすらいの旅人
「全く、あの似非撫子は……!」
輝夜から洗濯をしろと命じられた隆誠は嫌々ながらも了承した。この世界の洗濯方法が手洗いなので、洗濯機など当然ある訳がない。
故に彼は【フレイヤ・ファミリア】にいた時の洗濯手段をルーン魔術でやる事にした。『洗浄のルーン』と言う術を使い、清潔感溢れる使用前の服に戻したのだ。
ルーン魔術に洗浄に関するルーンなど本来無いのだが、そこは元神の隆誠が日常生活でも使えるように
数分も経たない内に綺麗に畳まれた服や下着類を返された事で、輝夜が訝しんだのは言うまでもない。本当に洗濯したのかと確認するも、汚れが一切無い為に何一つ文句を言えずに何故か口惜しそうな表情をしていたが。因みに傍にいたアリーゼも驚いていたが、自分も隆誠に洗濯を頼もうかしらと考え始めるも、当の本人はそれを察知したかのように退散している。
「しかしまぁ、服をかえただけでこうも反応が違うとは……」
周囲の道を確認したいと言う名目で
昨日に【フレイヤ・ファミリア】の団服を纏っていた事で周囲から警戒されていたにも拘わらず、(元の世界で作られた)普段着になっている今は正反対で全く気にも留めていない。アストレアやアリーゼ達からは変わった服だと興味深そうに見られていたが、そこは別に如何でも良い。
(フレイヤはもう知っていると見るべきだ、な)
僅かな時間だったが、隆誠が【フレイヤ・ファミリア】として
あの女神の事だから真相を確かめる為に眷族を使って、すぐにでも捕らえようとする筈。
(しばらく静観する、もしくはシルになって直接会いに行く為に機を窺う、と言ったところか)
隆誠はフレイヤと一年以上の付き合いがあるだけでなく、彼女の性格や行動パターンもある程度理解している。
流石にどのタイミングで動き出すのかまでは予想出来ないが、仮に不意を突かれたところで問題無い。ベルの時みたいにオッタル達を連れてこようが、オラリオ中に『魅了』を使ってまで記憶改竄させようが、全て黙らせれば良いだけなのだから。
道を歩きながら少々物騒な事を考える隆誠だが、向こうが今のところ動きを見せないのであれば、それまでは【アストレア・ファミリア】の
「ちょっと良いですかーっ! 茶色い髪の人ーっ!」
すると、明らかに隆誠を呼んでいると思われる女性の声がした。
「俺の事かな、お嬢さん」
「うんっ、貴方だよ! ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
振り向きながら声を掛けると、アリーゼとは対照的な青いショートヘアーの女の子がいる。
「構わないけど、君は?」
「私? 私はあのシャクティ・ヴァルマの妹で品行方正で、いつも笑顔を忘れない――【ガネーシャ・ファミリア】所属の『Lv.3』! アーディ・ヴァルマだよ! じゃじゃーん!」
「いや、別にそこまでは聞いてないんだが……」
名前だけでなくプロフィールまで語る少女――アーディ・ヴァルマの自己紹介に思わず突っ込みを入れてしまう隆誠。
(ん? この子はあの団長の実妹なのか)
彼女の紹介を聞いた隆誠はある事をふと思い出した。【ガネーシャ・ファミリア】団長のシャクティ・ヴァルマについて。
初めてオラリオに来て【
目の前にいるアーディが本当にシャクティの妹であれば、隆誠がいた七年後のオラリオで何かしらの情報を得ていただろう。にも拘らずソレが一切無かったと言う事は、彼女は途中で冒険者を引退、もしくは――この暗黒期の真っ只中で死亡したのかもしれない。
(もし彼女が本当に死んでいたとなれば、シャクティ・ヴァルマは相当辛かっただろうな)
隆誠は思わずシャクティを尊敬した。大事な妹を失ったら悲しみに明け暮れてもおかしくない筈なのに、それを乗り越え今も団長として日々活動する彼女の事を考えれば猶更に。
「貴方、今【アストレア・ファミリア】のホームから出てこなかった? あそこは男子禁制の乙女の花園なんだけど……」
考えに耽る隆誠とは別に、アーディは不審そうに彼を見ていた。
(おいアストレア、男子禁制なんて初耳だぞ)
アーディから思わぬ情報を耳にした事で、隆誠は問答無用で連れて行かれたアストレアに内心文句を言う。
女性だけしかいない派閥なのは知っていても、周囲から男子禁制と言う認識をされていたなど全くの予想外だった。
「……もしかして、泥棒だったりする?」
「いやいや、そんなんじゃないよ。俺はあそこで世話になってる居候だから」
「リオン達のところに居候? 本当かなぁ~」
「おや、君は彼女達と知り合いなのか」
だったら話は早いな、と言って隆誠はある事を提案する。
「俺の事が信じられないなら、
「……分かった。でも一緒に来てもらうからね」
提案を聞いたアーディは未だに信じられないのか、一緒に【アストレア・ファミリア】の
☆
「それじゃあ、本当にこの人は居候なんですか? アストレア様?」
「ええ、アーディ。私が昨日、彼を此処へ連れて来て居候になってもらうよう言ったの」
つい先程まで疑っていたアーディだが、嘘偽りなく答える女神の言葉を聞いて段々申し訳ない気持ちになっていく。
「申し訳ない、神アストレア。貴女に要らぬ手間を取らせてしまいました」
「気にしないで。周囲に説明しなかった私の落ち度でもあるから」
謝罪する隆誠にアストレアは笑顔でそう答えた。
「ところで、アリーゼ達は?」
隆誠は話題を変えようと、少し前までいた筈のアリーゼ達がいなかったので、アストレアに何処へ行ったかを尋ねた。
「都市のパトロールへ行ったわ。今はこんな時代だから」
「成程」
アリーゼ達がいない理由を聞いた隆誠が納得しているのとは別に、アーディが少々気まずそうな感じになっていた。
「そっかぁ、私の早とちりだったんだ。こめんなさい、居候さん」
「大丈夫、気にしてないから」
隆誠はそう言いながらポンポンとアーディの頭を優しく撫でる。
「ちょっ!? 私を子供扱いしないで下さい!」
「おっと、これは失礼」
雰囲気は全く異なるが、アーディを見てると
気恥ずかしく振り払う彼女に、隆誠は少々申し訳なさそうに手を放している。
「リューセー、会ったばかりの女の子にそんなことをしては駄目よ」
「貴女も人の事は言えないでしょう。会ったばかりの俺を無理矢理此処へ連れてきたんですから」
「ええっ! そうなんですか、アストレア様!?」
『意外な事実!』と言わんばかりに驚愕するアーディに、アストレアは困り顔になっていく。
事情聴取から世間話の流れになっていくことで、隆誠はしてやったりと笑みを浮かべていた。
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