別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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あくまで非常手段

「リューセー。貴方、私を出しにしたわね?」

 

「さて、何の事やら」

 

「……はぁっ、まぁ良いわ」

 

 一通りの話を終えたアーディがパトロールを再開する為に本拠地(ホーム)を去った後、アストレアは困ったような笑みを浮かべなら隆誠に問うが、当の本人は完全に惚けていた。

 

 完全に嘘だと見抜く彼女だが、責めようとはしない。元はと言えば【アストレア・ファミリア】の本拠地(ホーム)は周囲から男子禁制と言う認識であった事を教えなかったどころか、更にはアリーゼ達に一切相談せず彼を居候と決めてしまったから。

 

 自身にも非がある事を認めるアストレアだが、それでもある事を確認する必要がある。

 

「もしかして、未来のフレイヤにもそう言う振舞いをしていたのかしら?」

 

「いいえ。それどころか神としてでなく、一人の女として対等に接していました」

 

「………え?」

 

 アストレアには全く予想外だったのか、隆誠の言葉を受け入れるのに少しばかり時間が掛かった。

 

 自身が知るフレイヤは女王の如く君臨し、周囲が何を言おうとも自由気ままな性格をしている。その眷族達は彼女の命令しか動こうとしない従者の如く振舞いをする為、隆誠のような存在がいれば間違いなく許されない筈。

 

「ねぇ、もしリューセーが良かったら、フレイヤとはどのように過ごしていたのかを聞いても良い?」

 

 目の前にいる居候とフレイヤの過ごした日常が気になるアストレアは、思い切って訊いてみる事にした。

 

「それは別に構いませんが、随分変わった事を訊くのですね」

 

 七年後に起こった出来事まで話す事は出来ない、という前提で隆誠はフレイヤと過ごした一年間の生活を簡易的に教えようとする。

 

 

 

「――とまあ、こんなところです」

 

「……………」

 

 簡易的と言っても三十分近く話した隆誠に、聞き役に徹していた筈のアストレアは呆然としている。

 

 彼が語るフレイヤとの接し方は一人の女ではなく、まるで仲の良い兄妹のような感じだったのだ。美の女神が妹同然の扱いをされても全く嫌がらないどころか受け入れているから、自分が知る美の女神とは全くの別神ではないかと。

 

(フレイヤにとっては大変心地好かったのね)

 

 あくまで隆誠から聞いた話に過ぎなくても、七年後のフレイヤは彼といることで幸せな時間を過ごしていたのだとアストレアは察した。

 

 同時に羨ましく思う。眷族であるアリーゼ達を大事な眷族と見ており、母のように接して欲しいと内心そう願っている。

 

 しかし、彼女達は自身を母親のように慕っていても、尊敬する女神のように接している為に無理だった。

 

「女神の貴女からすれば馬鹿馬鹿しい内容かもしれませんが、ね」

 

「そんな事ないわよ」

 

 耳汚しをさせてしまったと自虐気味になる隆誠だが、そこをアストレアは真っ向から否定した。

 

 一人の人間(こども)と兄妹のように接した結果、フレイヤが心を開いていたのは喜ばしいことなのだから。

 

 そう思ったアストレアは――

 

「……リューセー、もし良かったらなんだけど――私もフレイヤと同じく、一人の女性のように接してくれるかしら?」

 

「はい?」

 

 思い切った決断をしたかのように、普通に接して欲しいと頼むのであった。

 

 直後、少々離れた所から爆発音がする。

 

「今のは……」

 

「また、闇派閥(イヴィルス)の仕業のようね」

 

 爆発音を耳にした事で不快そうに眉を顰める隆誠と、悲しそうな表情になるアストレア。

 

 平穏な時間を何の躊躇いも無く壊す闇派閥(イヴィルス)の所業に、元神は天罰を下してやろうかと考えてしまいそうになる。

 

 だが、それとは別に気になる事があった。

 

(ん? ライラが……)

 

 爆発によってアリーゼ達に被害を受けていないかと思ってオーラを探知したところ、案の定と言うべきか、その一行の中でライラのオーラが乱れていた。

 

 まだ死んでいないが、ここまで乱れているのは相当な重傷を負ったと見るべきかもしれない。

 

 そう考えた隆誠は、今すぐに向かう事を決めた。

 

「神アストレア、申し訳ないが――」

 

「ええ、貴方は思うままに行動しなさい」

 

 まるで考えを見抜いていたのか、隆誠が現場へ向かおうとするのをアストレアは構わないと了承した。

 

 察しの良い女神だと思いながらも、彼は即座に爆発が発生したと思われる工場区へ向かう。

 

 

 

 

 

 

「酷い有様だな」

 

 辿り着いた隆誠は周囲を見ながらそう呟いた。

 

 彼の言う通り、今の工場区は爆発によって多くの建物が損壊している。

 

 闇派閥(イヴィルス)が何の目的で襲撃したのかは不明だが、何か理由がある筈だと隆誠は推測する。

 

「あ、いた」

 

 そんな中、彼はアリーゼ達だけでなくアーディも発見する。

 

 明らかに戦闘をしていたと思われる彼女達だが、その中で一人だけ倒れていた。

 

 隆誠が予想した通り、倒れているライラはかなりの重傷で、今はリューとアリーゼが回復魔法を使って治療を施している最中だ。

 

 しかし、二人の魔法の効果が弱いのか不明だが傷の治りは遅い。

 

 アレでは時間が掛かり過ぎると思った隆誠は、即座に彼女達の方へ駆け付けようとする。

 

「派手にやられたようだな」

 

「っ! えっ、リューセー!」

 

『!』

 

 隆誠の声に反応したのはアリーゼだった。その後に輝夜や、回復魔法を施してるリューとアーディも振り向く。

 

「どうして貴方が此処に!?」

 

「爆発音が聞こえたから、君達に何か遭ったのではないかと急いで来たんだ。案の定と言うべきか、ライラが負傷してるようだな」

 

 本当はライラのオーラに乱れが生じて駆け付けたのだが、流石にそんな事を馬鹿正直に言えない為、嫌な予感がしたと言う理由にした。、

 

「なんだよ、リューセー……来るんじゃねえよ……。こんなダッセェ姿、晒してる時によぉ……」

 

「喋ってはいけないと言ったでしょう、ライラ!」

 

「でもリオン、ライラの傷がかなり酷いから、私達の回復魔法だけじゃ完治できないよ……!」

 

 見っともない姿を見せてしまった事に減らず口を叩くライラにリューが指摘するも、一緒に回復魔法を使ってるアーディが全く治癒出来ない事に焦り始めていた。

 

 それを見た隆誠はコツコツと近付こうとする。

 

「二人とも、悪いがちょっと離れてくれ」

 

「なっ! リューセー、何のつもりだ!?」

 

「でもリューセーさん、このままだとライラが……!」

 

 回復魔法を止めた隆誠にリューが抗議し、アーディは心配そうにライラを見ていた。

 

 アリーゼと輝夜も彼の行動に眉を顰めるも、当の本人は全く気にせず懐からあるモノを取り出そうとする。

 

「ほれライラ、これを食べてみな」

 

「おいおい……冗談だろ……。アタシにそんな怪しげな豆を食えってのか?」

 

「良いから食べろ。俺に痺れ薬入りの飴玉食わせた罰だと思いな」

 

「て、テメェ……! こんな時にそれを引き合いに出すんじゃねえ……!」

 

 今朝方のやり取りを言った事で、苦しそうな表情をしてるライラは忌々しげに言い返した。

 

 初めて聞いた内容にアリーゼ達が驚きの表情になるも、隆誠は未だに食べるよう催促している。

 

「……クソが。もしその豆食ってアタシが死んだら……絶対化けて出てやるからな……!」

 

「はいはい、好きにしてくれ」

 

 如何でも良いように聞き流す隆誠が二本の指で摘まんでる豆を口まで運ぶと、ライラは仕方ないと言わんばかりに口を開けた後――ポリポリと咀嚼する。

 

 そしてゴクリと飲み込んだ数秒後――

 

「んなっ!!」

 

『ッ!?』

 

 目を見開いたライラが突如元気になったようにガバッと上半身を起き上がった事で、それを見たアリーゼ達は驚愕している。

 

 隆誠が彼女に食べさせたのは、以前の『派閥大戦』でオッタルに使った回復用アイテムの『神豆(しんず)』。それによって傷があっと言う間に完治したのだ。

 

 本当ならルーン魔術の『癒し』で施せば良かったのだが、ライラの傷が想像以上に酷くて『神豆(しんず)』を使うことにした。神の能力(ちから)でも治癒するのは勿論可能だが、此処で使うのは不味いと判断し、手持ちの回復用アイテムを選択したのである。

 

「……………………おいおい皆! アタシもう治っちまったぞ!」

 

 さっきと違って全く傷一つ無い身体に戻った事で唖然とするライラだが、アリーゼ達に完治した事を証明するように両足で立ち上がった。

 

『………………』

 

 だけどアリーゼや輝夜、回復魔法を使っていたリューとアーディは、未だに状況が呑み込めずに呆然とするしかない。

 

「よし、ライラの傷が癒えたから、俺は本拠地(ホーム)へ戻――」

 

『ちょっと待てぇぇ!!』

 

 ライラの無事を確認した隆誠が去ろうとするも、そうは問屋が卸さないと言わんばかりに復活したアリーゼ達が阻止するのは当然だった。




隆誠のやった事は迂闊だと思われるかもしれませんが、そこは目を瞑って下さい。

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