別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ   作:さすらいの旅人

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ヴァルマ姉妹

「お姉ちゃん! アリーゼ達がランクアップしたみたいだけど、一体どうやったんだろうね!?」

 

「他の者がいる前で『お姉ちゃん』はやめろと言っているだろう」

 

 闇派閥(イヴィルス)の犯罪活動を阻止する為に巡回している【ガネーシャ・ファミリア】の中に、二人の姉妹が都市を歩いていた。

 

 片はアーディ・ヴァルマ。以前に隆誠と出会った青髪のショートヘアーな少女で、相も変わらずどのような状況でも明るい笑顔を絶やさない。

 

 片はシャクティ・ヴァルマ。【ガネーシャ・ファミリア】団長で【象神の杖(アンクーシャ)】の二つ名を持つアーディの姉で、長身と怜悧な顔立ちから麗人と呼ぶに相応しい。

 

 歳の離れた姉妹でありながらも、公私共に行動するほど仲が良いのは言うまでもない。

 

「もしかしたら、あの人が関わってるかも」

 

「あの人? 一体誰の事を言っている?」

 

「前に話した【アストレア・ファミリア】に居候してるリューセーって男の人だよ」

 

「ああ、その男か……」

 

 そう言われた事でシャクティは思い出した。約三週間前に妹からの報告で、男子禁制である正義の眷族達が住まう本拠地(ホーム)に、アストレアが一人の男を連れて保護している事を。

 

 最初に聞いた時は一体何の冗談だと半信半疑だったが、神々の中でもきっての神格者である彼女がそうしたと言う事は、何かしらの事情があるのだろう。【アストレア・ファミリア】と親しい関係でも、他派閥のやる事に口出しする権利など無いのだから。

 

「あの居候さん、不思議な人だったな~。急に頭を撫でられて恥ずかしかったけど、何故か全然嫌な感じはしなかったし」

 

「待て、それは初耳だぞ」

 

 以前の事を思い出しながら口にするアーディにシャクティが過敏に反応した。

 

 実は【ガネーシャ・ファミリア】の団長は真面目な性格だけでなく、愛する妹に不埒な動機で近付こうとするナンパ野郎がいたら容赦無く粛清するほどのシスコンである。

 

 故に決めた。(あくまで一方的な思い込みだが)妹の身体に触れようとする愚か者には、姉として一度話し合う必要があると。

 

「アーディ、まさかとは思うが頭以外のところは触られていないだろうな?」

 

「? いきなり何言ってるの、お姉ちゃん」

 

 シャクティは姉として妹がセクハラされていないか確認しただけなのだが、それに全く気付いていないアーディは首を傾げるのであった。

 

 すると、少し先には見慣れない服を着ている男性が目に入った。

 

「あ、居候さん!」

 

 男性を見た途端、アーディは声を掛けながら走り寄っていく。

 

「おや、久しぶりだね。確かアーディだったか」

 

「うん! 【ガネーシャ・ファミリア】所属の『Lv.3』! アーディ・ヴァルマだよ! じゃじゃーん!」

 

「それは前に聞いたから」

 

 前と同じく自己紹介するアーディに思わずツッコミを入れる隆誠。

 

「今日も君一人で巡回かな?」

 

「違うよ、今日はお姉ちゃんと――」

 

「貴様が話に聞いていたアリーゼ達の居候か」

 

 隆誠とアーディの会話に、シャクティが割って入るように話し掛けてきた。

 

「私はシャクティ・ヴァルマ。アーディの姉だ」

 

「これはこれは、初めまして。俺はリューセー・ヒョウドウです」

 

 シャクティが自己紹介してきたので、隆誠もそれに倣って言い返す。

 

 彼女の事は存じても、あくまで情報で知った程度に過ぎない為、こうして顔合わせするのは初めてだった。

 

過去(むかし)現在(いま)を比較しても、全く変わってないな)

 

 目の前にいる過去のシャクティの容姿は全く変わっていない。

 

 隆誠は知らないが、【恩恵(ファルナ)】を与えられた冒険者がランクアップを繰り返すと、全盛期の肉体を維持するために老化を遅らせる効果がある。故に彼女の身体は三十代でも、二十代にしか見えないほど非常に若々しい容貌をしているのだ。

 

「アーディから話は聞いている――私がいぬ間に、愛する妹の身体に触れたセクハラ野郎だと」

 

「は?」

 

 シャクティの言っている意味が分からないと困惑してしまう隆誠。

 

 だが、向こうはそんなのお構いなしの様子だ。

 

「貴様のような人畜無害そうな男が一番油断ならん。そこに直れ、妹に二度とセクハラしないよう粛清してやる――!!」

 

「ちょっとちょっと! いきなり何を訳の分からないこと言ってるんですか!?」

 

「お姉ちゃん!? 私セクハラなんてされてないよー!」

 

 歳の離れた姉の暴走を止めようとするアーディでも聞く耳持たずだった。

 

「ええい、避けるな!」

 

「いやいや、当たりたくないから避けるのは当然でしょうが!」

 

 殴り掛かるシャクティに紙一重で躱す隆誠。

 

(この男、一体何者だ!?)

 

 隆誠を粛清するシャクティだが、躱され続けてる事に内心驚愕していた。

 

 手加減してるとは言え彼女は『Lv.5』に到達寸前の『Lv.4』だから、相手が第一級冒険者でもない限り、簡単に躱す事など出来ない。

 

 にも拘らず、隆誠はまるで自分の攻撃を見切ってるように躱しており、当たる感じが一切無い。

 

(嘘!? お姉ちゃんの攻撃が全然当たってない!)

 

 アーディも信じられないように驚愕しており、【アストレア・ファミリア】で居候をしている隆誠が、実は相当な実力者ではないのかと思い始めている。

 

(このまま一方的に攻撃されるのは癪だし、そろそろ反撃するか)

 

「ッ!?」

 

 攻撃を躱している隆誠が一度反撃しようかと考えた瞬間、シャクティが突如後退した。

 

「はぁっ、はぁっ……!」

 

「お、お姉ちゃん?」

 

(ああ、成程ね)

 

 突然後退して距離を取ったシャクティの行動にアーディが疑問視する。

 

 隆誠も不可解な表情になるも、彼女が本能的に気付いたのだと察した。

 

「やっと矛を収めてくれましたか。何を勘違いしたのか知りませんが、俺は貴女の妹さんにセクハラなんてしてませんから」

 

「………………」

 

「ふむ。どうやら今の貴女は虫の居所が悪いようなので、俺はここで失礼させて頂きます」

 

「ちょっ! ちょっと待って、リューセーさん!」

 

 アーディが姉がやらかした事を謝ろうとするも、隆誠が颯爽と立ち去っていく。

 

 すぐに追いかけようと交差点に曲がるも、その先の一直線にいる筈の彼がいつの間にかいなくなっていた。

 

「え? あれ? あの人、確かに此処を曲がった筈なんだけど……どういうこと?」

 

 隠れる所など無い筈の道なのに、どうして隆誠がいないのかと疑問だらけになるアーディだった。

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

「お帰りなさい、リューセー」

 

「アリーゼ達は?」

 

「昼食はまだかまだかって騒いでいるわ」

 

「へいへい。それじゃ急いで作りますか」

 

 ヴァルマ姉妹とのやり取りを一切気にしてない隆誠は、すぐに昼食を作ろうと台所へ向かうのであった。




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