別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ 作:さすらいの旅人
アイズ・ヴァレンシュタインがオッタルの訓練を終えて以降、隆誠は暫くフレイヤの従者を務める事になった。自分を理解している
余りにも子供染みた主神の嫉妬に呆れながら嘆息する隆誠だが、命じられた以上は仕方ないと諦めて従っている。尤も、その所為でオラリオの存亡をかけた決戦に参加する事が出来ず仕舞いになってしまったが。
フレイヤとしても万が一に備えて隆誠を最後の切り札として戦いに参加させるつもりだったが、
それが慧眼だったように、【ロキ・ファミリア】が主体となっていた
しかし、いくら平和になっても【フレイヤ・ファミリア】は相も変わらず物騒な『洗礼』をやっている。強くなろうと訓練をするのは良い事なのだが、あんな殺し合いを見る度に辟易してしまう。その所為で『
普通ならこんな劣悪な環境に苦情を入れるべきなのだが、団長のオッタルは全く改善する気配がなかった。コレには流石に隆誠も訊いてみたが、どうやって改善すれば良いのか分からないとの事だ。冒険者としては圧倒的実力を有しても、寡黙で不器用な性格が災いして団長としての能力はいまいちだと、当の本人も自覚しているようだ。肝心のフレイヤも放任主義の所為か、【ファミリア】内での事に口出しする気が無い為、隆誠が必然的に事務仕事を率先して手伝うのは無理もない。
隆誠は改善する為に下剋上でもやろうかと物騒な事を考えている最中、【フレイヤ・ファミリア】は重大な出来事に遭遇しようとする。今度行われる予定の女神祭で、シル・フローヴァがベル・クラネルを
情報を得たフレイヤの眷族達は一大事だと大騒ぎになるも、隆誠だけ全く異なる反応を示していた。余りにもバカバカしくて付き合いきれないと、それはもう心底呆れきった表情で。
彼がそうなるのは無理もない。何しろオッタル達は二人のデートに介入する気満々で、過激な事を考える
オッタルを含めた第一級冒険者の幹部達が『円卓の間』で会議をしている間、隆誠はフレイヤのいる神室へ向かおうとする。
「よう、勝手ながら邪魔するぞ」
「リューセー……」
誰も呼んでいないのに隆誠が勝手に入っても、考え事に耽っていたフレイヤは全く気にせず迎えている。
敬愛する主神に呼ばれもせず無断入室するなど不敬罪極まりないのだが、それはあくまで眷族達が勝手に取り決めた
フレイヤとしても一人で考え事をしてる最中に誰かが勝手に入られれば、言うまでもなく気分が悪くなる。けれど、相手が隆誠であれば話は別だった。自分の考えを全て是とみなす眷族の中で、彼だけが唯一真っ向から向き合う存在である為に。
「随分不機嫌そうじゃないか、フレイヤ」
「あら、そう見える?」
豪華な椅子に座るフレイヤを見ながら、またしても無断で隣に座ろうとする隆誠。
そんな無作法に彼女は一切気分を害することなく、自分の心情を見抜いてる眷族に少しばかり複雑だった。
「お前との付き合いは他の眷族達に比べれば短くても、一応それなりに分かってるつもりだ」
「ふーん……。だったらあの時、私の想いに応えて欲しかったのだけれど」
フレイヤは初めて会った時から隆誠の事を一目で気に入り、その際に自分の愛を受け入れて欲しいと告白したが、その想いは見事に砕け散ってしまった。彼は自分が他所の世界から来た異分子であり、何れは元の世界に戻らなければならないから無理だと断られたから。
それでも未だに諦めきれないのか、フレイヤは事あるごとに何度もアプローチしており、結局のところは今も完全スルーされている。自分を崇拝する完璧な主神ではなく、一人の
「悪いがそれは無理だ。友人関係になるならまだしも、恋人にはなれん。尤も、お前が今も狙っているあの少年も同様だが、な」
「……何故そう言い切れるの?」
「逆に訊くが、向こうがお前の想いを素直に受け入れると思うか? 聞いた話によれば、ベル・クラネルは【ロキ・ファミリア】のアイズ・ヴァレンシュタインに今も絶賛片思い中だとか」
隆誠はフレイヤと一緒に見守っていたから、ベルがアイズに片思い中である事を知っている。それを横から割り込む行為をしようとする
「………私の愛が届けば、あの子はきっと応えてくれる筈よ」
しかし、フレイヤは相変わらず諦めない姿勢を貫いており、それどころか自分の愛で
「そうか……」
本当なら隆誠がこの場で阻止すべきなのだが、彼はそんな行動を起こそうとする気配が一切無かった。今の彼女に何をしたところで絶対諦めないと分かっているから。
それに加えて、今の彼女を嘗ての
取り敢えず今のフレイヤに何を言っても無駄だと判断した隆誠は、一度失恋を経験させた方が良いだろうと思い、引き続き見守る事にした。
「もう一つ確認しておきたい。
「大丈夫よ。あの子は私を裏切ったりしないわ」
「だと良いんだが……」
「心配性ね。だったら万が一の場合に備えて、二日目に何もないかリューセーが見届けてくれる?」
「……まぁ言い出したのは俺だから、それくらいは引き受けよう」
何でも無さそうに指示したフレイヤだが、まさか本当に隆誠の懸念が的中する事になるとは思わなかった。
しかし、そんな事は最早如何でも良くなってしまう。
今回のデートで見事に振られたシル・フローヴァ、もとい
☆
「誰よりもフレイヤを一番崇拝している筈のお前が、まさかあんな裏切り行為をするとは思わなかったぞ」
「リューセーさん……」
「見つけたのが俺で良かったな、ヘルン。もしアレンだったら、容赦なく槍を振るっていたところだぞ」
「……どうせならアレン様に見つかって欲しかった」
隆誠が
光の粒子が消失した事で、別の人間になった。色素が抜け落ちた灰色の髪をして、闇のように漆黒の左眼を持つ美しい少女――ヘルン。【フレイヤ・ファミリア】の侍従頭で、眷族の中でも異常なほどフレイヤを崇拝している。
彼女も他の眷族達と同じく、一年以上前に入団した新参者の隆誠に対して酷く嫌悪している。敬愛すべき主神に対して無礼な態度を取っているだけでは飽き足らず、剰え平然と呼び捨てにしているから、ヘルンからすれば到底許す事が出来ない大罪人だった。
そんな無礼極まりない男をフレイヤは全く気にしていないどころか、寧ろ心地好さそうに受け入れている。ヘルンからすれば全く信じられないのだが、『変神魔法』による特性で主神の感情や感覚を受信してしまい、無理矢理理解させられてしまった。加えて今度はベルに対する好意も理解した所為で、自身の脳内で崇拝している理想の女神像が破壊される始末で、今の彼女は情緒不安定な状態になっている。
「貴方やあの少年の所為で、フレイヤ様は酷く変わってしまった! 私は危ぶんだ! 唯一無二の女王が、このままでは汚れて堕落してしまうことに!」
「……変わったんじゃなくて、あの振る舞いこそが本当のフレイヤなんだが」
「貴方にはわかるまい! あの方は誰よりも美しい完璧な女神! 私の理想である筈の女神が、ただの『小娘』になど、成り下がっていい道理などない!!」
「……理想を抱くのは結構だけど、それを押し付けるのはどうかと思うぞ」
これ以上はもう付き合いきれないと、隆誠はヘルンを
「何をしている、アレン」
「それはこっちの台詞だ、間抜け」
ヘルンのこめかみに槍の柄を叩きこもうとするアレンに、隆誠が阻止しようと咄嗟に掴んだ。
「まさかお前が先に侍従頭を見付けていたとはな」
「我が友リューセーよ、悪いが退いてくれないか。我々は女神の神意に背いた愚か者に用がある」
現れたのは彼だけでなく、屋根からガリバー兄弟、そしてヘグニも廃墟内に着地する。
意外そうに言うアルフリッグとは別に、ヘグニは隆誠を友と呼んでいた。中二病の様な言動をしても理解するように会話をしたり、
「さっさとその薄汚い手を放しやがれ」
「やなこった。そうした瞬間、お前はヘルンに攻撃するんだろう? だったら放す訳にはいかないな」
「邪魔をするなら、てめえから先に殺すぞ」
「おかしな事を言う。これまで俺に何度もボロ雑巾にされてる筈の負け猫が、よくもまぁそんな出来もしない事を口にできるものだ」
隆誠の挑発に一瞬でブチ切れたアレンが標的を切り替えようとするも――
「いい加減にしろ、アレン」
『ッ!?』
尋常ではない殺気が全身に纏わり付いた事で、アレンは咄嗟に長槍を手放し後退した。
「ハァッ……ハァッ……ハァッ……!」
「ふんっ」
脂汗を掻きながら息が上がっているアレンを見た隆誠は、心底如何でも良さそうに掴んでいる長槍を放り投げた。直後に地面からカランカランと甲高い音が地面を響かせる。
口で言っても絶対無理だろうと思った彼は、敢えて『
一体何が起きたのだと状況が呑み込めないガリバー兄弟とヘグニ、そしてヘルン。アレンだけにしか殺気を叩きこまれなかった為、彼等には何故急に下がったのかが理解出来ないのだ。
「ヘルン、五月蠅い奴が漸く大人しくなったから
「………分かりました」
隆誠が副団長のアレンをどうやって下がらせたのが分からなくても、自分では一切逆らえない相手だと身を以て経験している為、ヘルンは大人しく従わざるを得なかった。
「ヘグニ、アルフリッグ達、ヘルンの処罰はフレイヤが直接下す事になっている。だからこれ以上の手出しはするな」
「……我が友がそう言うのであれば、仕方がない」
「相変わらず勝手な奴だ」
「「「全くだ」」」
主神の名前が出た事にヘグニは大人しく退き、アルフリッグ達も渋々ながら従うことにした。
そして翌日以降、とんでもない事態が起きてしまう。
告白をしたフレイヤが振られたにもかかわらず、【ヘスティア・ファミリア】を襲撃してベル・クラネルを無理矢理奪うどころか、オラリオ全体に魅了を使う暴挙に出たと言う事実を知るのであった。
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