別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか IFシリーズ 作:さすらいの旅人
ベル・クラネルが目覚めた翌日、【フレイヤ・ファミリア】は彼を自分達の
オラリオの住民達と違って『魅了』が通じないベルは突然の事に混乱し、
こうなるのは既に予測しており、戻ってきたベルには『
それとは別に、フレイヤは後始末に負われていた。『魅了』が効かなかったヘスティアとベル以外のもう一人存在――『地下祭壇』にいる大神ウラノスと交渉を。他にも今回の件で綻びが生まれないようにギルドで保管されているベルの記録を没収、更にはダンジョンで探索中の冒険者達にも可能な限り『魅了』を施す等々。一切の抜かりがないよう眷族達と一緒に都市を回っており、いつも人任せな彼女とは思えないほど自ら徹底的に行動するなど、それだけベルを自分の眷族にしたいと言う本気度が伺える。
他にも動きもあった。オラリオが『魅了』で埋め尽くされる寸前、誰かの手引きによってリュー・リオンがオラリオを脱出していたとの報告が入る。彼女は『豊穣の女主人』に勤めるウェイトレスで、
余所でそのような事が起きていたなどベルは微塵も知らず、【フレイヤ・ファミリア】のお決まりと言うべき『洗礼』をやらされていた。ヴァンも含めた『Lv.1』から『Lv.4』の団員達を相手にするのは問題無かったが、第一級冒険者達が加わった事で一気に状況が変わり、死ぬ寸前まで追い詰められる事になる。そして拷問同然の訓練を終えた後はフレイヤが彼を神室に呼び、心を癒すように慈しみながら偽りの軌跡を教えて記憶をすり替えようと洗脳染みた行為を行っていた。
一連の流れを見守っていた隆誠は、余りにも鬼畜な所業だと呆れるばかりだった。特にヘディンは
「おいヘディン、ちょっと良いか?」
いつものようにベルの『教育』をしようと『庭』へ向かうヘディンだったが、その途中で背後から隆誠に声を掛けられた。
相変わらず神出鬼没なヒューマンだと思いながらも、彼は少々面倒そうに振り向く。
「何の用だ。私はこれから
「ではお言葉に甘えて……ベルの教育役を俺にやらせろ。と言うより交代だ」
「何だと?」
突然の要請にヘディンは不愉快と言わんばかりに眉を顰めた。役目を交代しろと言われたら、そうなるのは当然と言えよう。
加えて今回行っているベルの教育は、主神フレイヤの許可を貰っている。それを全く無視する隆誠の発言は命令違反も同然だった。
「いきなり何を言い出すかと思えば、そんな下らん事の為に私を呼び止めるな」
時間の無駄だと心底呆れるように踵を返すヘディンだが――
「おい、まだ返答を聞いてないんだが」
「ッ!」
突如、後ろにいた筈の隆誠が音も立てず目の前に現れた事で足を止めざるを得なかった。
『Lv.6』の第一級冒険者に気付かれる事なく接近するのは本来至難の業だが、隆誠にとっては造作も無い。
今も実力差があり過ぎる事を改めて痛感させられるヘディンは、断る理由を述べようとする。
「……
「確かにそうだが、お前のやり方は正直言って見るに堪えない。何か考えがあってやってるかもしれないが、これ以上あの少年の心を壊す訳にはいかない」
フレイヤが一目で気に入る純粋な心を持った少年は、今はすっかり曇っている。『今まで見た事のない綺麗で透き通った魂』を曇らせている元凶は、自分の眷族だと洗脳行為に意識を向けてる所為で、自分自身を曇らせている事に全く気付いていない始末。
このままではベルだけでなく、フレイヤも別の意味で堕落してしまうと危惧した隆誠は、それに歯止めを掛けようと動き出す事にした。
「あの
「下らないな」
「何だと?」
隆誠が心底如何でも良さそうに呟いた事で、ヘディンは更に眉を顰めた。
「他所の眷族を勝手に拉致したと言うのに、今度は勝手に義務を強要させている。今に始まった事じゃないが、【
その身勝手なファミリアに入ってる俺も同罪だが、と隆誠は付け加える。
「お前がそう言うなら、俺も勝手にやらせてもらうよ。ベル・クラネルの『教育』を、な」
「貴様にそんな権限など無い」
「だったら仕方ない。お前を凄く優しいヘディ子ちゃんに変身させるしか方法は――」
「やめろ! あの悍ましい記憶を思い出させるな!」
最終手段として懐に閉まっている性転換ビーム銃を取り出す隆誠を見たヘディンは、今まで見せた事のない焦りを見せる。
彼は以前隆誠に敗北した際、意識を失っている間に女に性転換させられた事があった。その時は【ロキ・ファミリア】にいる
二度と思い出したくない過去を引っ張り出されたヘディンは、打って変わるように隆誠から距離を取っている。そうしたところで逃げられないが。
「そうかい。で、どうする? 俺にベルの教育を任せるか、お前が女になって引き続きやるか、好きな方を選べ」
相手の意思を完全に無視している隆誠は、性転換ビーム銃を持ち構えて問う。
そして――
「……………………勝手にしろ!」
深く考え込んだ結果、苦渋の決断を下すかのように言った後、この場から離れるのであった。
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