「――私たちが一年生だったときの二学期。夏休み明けだった。委員会改組があった。保健体育委員会は、今のように、保健委員と体育委員に分かれたんだ。
――二学期の委員会決めで、私は希望していた火薬委員会に入った。文次郎、小平太、留三郎は体育委員会。一学期にあんなことがあったから、どの組も、体育と保健は希望すればすんなり入れた。伊作は保健委員会。長次は様々な委員会を経験したいという思いから、一旦図書から離れた。確か用具に入っていた」
「先輩が、火薬、ですか?」
立花仙蔵は忍術学園一と言われる火薬の使い手だ。早くから火薬の勉強をする姿は想像できる。
だが、不文律の存在が、違和感を増幅する。
仙蔵は手元に宝禄火矢を引き寄せる。
「文次郎が『おまえは火薬の使い手になれ』と言った。詳細は割愛するが、私は火薬の使い手になることが合理的だと判断した。よって、火薬の勉強ができる火薬委員会に入った。とても楽しかった」
喜八郎は口を挟めない。
本来であれば火薬委員長でもおかしくはない。けれど今の忍術学園は、火器・火薬の扱いが得意な生徒を決して所属させない。
「話がそれた。……改組理由は、活動内容が違っているので別委員会にするということだった。年の途中で分けたのは、次の代の委員長・委員長代理が苦労しないようにするためだと。保健体育委員会は、体育を主担当とする委員長と保健を主担当とする副委員長で運営していた。両者が分かれても、委員会運営も支障ないと判断した、とのことだった。
私たちも当時はその説明で納得していた。だが本当のところは、学園側が伊作の不運について見極めたかったんだ」
喜八郎は、まさか、と口にする。
「伊作の不運が伝染するものなのかを見極めたかったから、二学期なんていう中途半端な時期に、体育を切り離した。……実際に、二学期になっても、保健委員は、相変わらず不運に見舞われていた。一方、体育委員は、伊作と同室の留三郎以外は不運な目にあうことが格段に減った。不運な保健体育委員ではなく、不運な保健委員会と呼ばれるようになった」
穴実録を持つ手がじっとりと湿っていた。
喜八郎は本を床に置いた。
「当時の一年は組は、夕食を自炊して、組全体で腹を下してしまうことが何度かあった。一年生だから慣れなかったのだろう、夏場だったからだろう、という解釈をされたが、自炊して調子を崩すのは伊作が食事当番に入っているときだった。次第に食事当番を任せたくない、伊作の作ったものは食べたくない、というようになった。伊作が作って食べたがらなくて残った食事を、今いる六年生全員で食べたこともあった。そのうちに伊作は食事当番から外れた」
文次郎が「おまえは火薬の使い手になれ」というシーン。
文次郎は一年生の制服姿で言っていました。
※アニメ30シリーズ第31より。