「……なにが心優しい『は組』なんですか」
「そうだな」
仙蔵は喜八郎に同意した。
だが、自分が同じ組だったらどのように接しただろうか。
留三郎と同じように、伊作を支えられただろうか。
仙蔵は考えないようにして、手元にあった宝禄火矢を脇にやった。
「――さきほど喜八郎も気になっていたようだが、私が一年生の二学期に火薬委員になれたのは、まだ火薬庫爆発事件が起きていなかったからだ。火薬委員はむしろ、火器・火薬のスペシャリストの集まりだった」
火薬庫爆発事件。在学生はみな知っている。
過去に火薬委員会の生徒が持っていた火種が原因で、火薬庫が爆発した。以降、火器・火薬の扱いが得意な生徒は所属させないという暗黙のルールが設けられた。
だが、それ以上の情報は知らない。
過激な火器が大好きな田村三木ヱ門は、入学当初、火薬委員会へ入ることを希望した。どれだけ食い下がっても、委員会加入は認められず、また、他の生徒も知っている情報以外は説明されなかった。
「一年生の夏休み明けから、火縄銃の授業が始まるだろう」
仙蔵は努めて冷静に話そうとしているように見えた。
「その日は、一年は組が実技で火縄銃を扱っていた。授業中、不運はなかった。少なくとも二学期に入って、実技の授業で不運が発動することも、一学期よりは少なくなっていた。だから先生も大丈夫だと思ったんだろう。授業で使った火薬のあまりを、同じクラスの火薬委員と伊作で返しに行くように指示をされた。――途中、伊作が転んだ。ひっかかって火薬委員も転んだ。そのとき火薬委員の懐から火種が飛び出た。火薬庫まではね転がっていき、引火・爆発した」
仙蔵は長い息を吐いた。
「は組の火薬委員は、確かに火種は消したと言った。だが、二人が転んで、火薬委員の懐から火種を入れた道具が飛び出て、それが転がっていき、引火したところを見た先生がいた。この一件により、責任を取る形で、火薬委員会の顧問が土井先生に交代した。は組の火薬委員は自主退学することになった。伊作は別室で謹慎処分を受けた。は組のクラスメイトは、火薬委員に同情的だった」
「……怪我をした人は」
「人的被害は幸いにして出なかった。それだけは救いだ。……爆発事件後、火薬委員は用具委員と合同で、火薬庫の再建にあたった。のちに体育委員も応援に加わった」
仙蔵は一息ついた。
「次の年から、火器・火薬の扱いが得意な生徒と得意武器を火器・火薬に考えている者は所属できなくなる旨の通達がされた。移行措置として、この年の二学期・三学期は該当の者も所属することが許された。私は残された機会と考え、三学期も火薬に入ることにした」