伊作が不運で死なない理由   作:香枝ゆき

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第三章 六年生が二年生だった頃
(22)任期変更の理由


「四月。私たちは進級し、二年生になった。い組は全十一人。進級試験での落第なし。ろ組は全十人。進級試験で一名落第した。そしては組は全六人だった。……知っての通り、組は六年間変わらない。どんなに人数が偏ってもだ。風の噂では、伊作と同じ組でいたくないと直訴したは組の生徒がいたらしいが、先生方は取り合わなかったそうだ」

進級するたびに、同期の人数は減っていく。

それでもこの減り方は偏りすぎだった。ゲン担ぎでクラス替えを希望しても不思議ではない。

「この年から、委員会の任期が一学期から一年間へ変更になった。移行措置として、この一年に限り、一学期に一回までは委員会の交代が許可された。安定した委員会活動のためという名目だったが、伊作の件があってのことだった」

話を聞く限り、何らかの制度変更の陰には必ず伊作の存在があった。

もう任期変更くらいでは、なにも驚かない。

「例の『こーちゃん事件』があってから、学園は、伊作に対し、幻術使いとして育てることを諦めた。不運を利用することはやめ、徳を積んで降りかかる不運を軽くする方向にシフトした。つまり保健委員会での活動を求められるということだ。学期ごとの改選を行うと、保健委員にずっといることが悪目立ちする。そこで委員会の改選を一学期ごとから一年ごとに変更した。伊作は不運を軽くするというよりも、人を助けたい思いが昔から強かった。徳を積むという必要がなくとも、保健委員を続ける意向だっただろうが、万が一対抗馬がでたら譲らないわけにもいかないだろうからな。一年任期はリスクを避けるうえでも都合がよかった」

仙蔵は続ける。

「委員会は、私と長次が学級委員長委員会。文次郎と留三郎が会計委員会。小平太が体育委員を続投、伊作も引き続き保健だった」

思わず笑みがこぼれる。犬猿の仲の先輩は、またも同じ委員会を選んでいた。

「食満先輩と潮江先輩、なんだかんだで同じ委員会なんですね」

「ああ。二人とも、前回の予算会議の惨状に憤り、あんな予算会議にはしたくないという思いから会計に立候補したそうだ。我々六人の中では、火薬委員会は選択肢になかった」

火薬委員会に対して思うところあるのは納得だ。そこはあえて深堀するところでもないので、喜八郎は話題を変える。

「立花先輩はクラスメイトからの推薦・投票で学級委員長になったと聞いてますけど、中在家先輩はどうして?」

「小平太を抑えてほしいという期待感から投票された」

「納得しました」

仙蔵は顔を曇らせる。

「……この年、委員会の数は全部で八つ。は組は早々に、人を出せない委員会が発生することになった」

忍術学園の委員会活動に、掛け持ちの概念はない。

よってどことも万年人手不足だが、そこは各委員会が創意工夫で乗り切っている。

「は組は学級と火薬が空席になった。一年の二学期に自主退学した火薬委員と、進級できなかった学級委員。どちらも、伊作には友好的、あるいは中立的だった。彼らが抜けて、は組の空気はかなりよそよそしくなったようだ。当時、ろ組では、は組の人数が減ったことに驚き、い組では『は組はなにかやばい』という空気感ができつつあった」

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