伊作が不運で死なない理由   作:香枝ゆき

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(36)は組がいない理由-2

「――当時、対抗試合をどのように戦うか。組ごとに、上級生を中心として基本方針が立てられていた。

あとから知ったことだが、どの組も異なる方針だった。

い組の基本方針は、順当にたすきをとっていくというものだった。そのために採用されたのが、下級生が罠を張った後の、囮作戦だ。上級生は積極的な攻めと、下級生がおびき寄せた敵の始末の二班にわかれた。これはどの組も順当にたすきを奪いにくるという前提があった。

対してろ組は、二組とも潰すという方針だった。は組を優先して全滅させ、その後い組との対決へ。四年生と一年生、五年生と二年生が組んで行動した。下級生を狙ってくる敵下級生を返り討ちにする作戦だ。三年生・六年生は単独行動し、同級生や自分より下の学年に躊躇なく襲い掛かる」

学園が定めたルールでは、順当にたすきを奪うなら有利な学年が存在していた。

たすきは、学年差が開くほどとりやすい。制限がなければ一年生は格好の獲物となる。

よって四年生以上は三年生以下のたすきを奪っても得点にはならない措置となったが、三年生は二年生以下を、六年生は五年と四年のたすきをとっても得点としてカウントされる。

ろ組は得点にならずとも、弱肉強食を地で行く作戦を選んだ。

その選択は、なじられるものではない。

結果がすべてであるならば、勝利条件の一つを満たしているのでなんら後ろ指をさされるものでもない。

この世に理不尽などありふれているのだから。

忍術学園が常日頃意識している『上のものは下のものを守る』なんていう理論は、学園を卒業すると通用しなくなる。

「……そして、は組。は組の上級生は、読んでいた。い組は順当にすすめ、ろ組は全滅狙いと予想していた。よって全滅を避け、確実に点数を重ねる方法を選択した。上級生と下級生は別行動。下級生は基本的に分散して隠れるように指示された。最終的に、下級生も伊作・留三郎とそれ以外に分かれた。下級生のなかでは、三年生が最高学年だ。下の学年についているのが定石だが、伊作と留三郎は二人で行動することになった。不運を避けるため上級生が指示したのか、下級生たちが伊作の不運を恐ろしがってのことか、今となってはわからない」

――喜八郎の掘った穴に落ち、まともに宝禄火矢の攻撃を受けたのは、は組の下級生だった。

隠れているよう指示を受けていただろうに、いや、あるいは自分と同じか下の学年ならたすきを奪いにいくように指示されていたのか。

分からないが、囮としてあえて姿をさらしたい組の下級生を見つけ、追いかけてきたのは、は組の一年生と二年生だった。

「そして、ろ組だ。ろ組は潜んでいるは組の下級生の集団を見つけ出した。失格要件に気絶させることも含まれていた。よって高台に陣取り、霞扇の術で眠らせる作戦をとった。……作戦は、成功した」

「……きっと、眠り薬じゃなかったんでしょうね」

「そのとおり。毒性の高い薬にすり替わっていた。いつぞやの火薬庫爆発事件と同じように、術を使った先輩は、殺すための薬を学園内の対抗試合で使うはずはない、と言っていた」

 

 

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