――は組が責められるとしたら、上級生が下級生についていなかったことだ。ついていたら、もしかしたら、助かる者もいたかもしれない。だがいなかったかもしれない。
起きてしまったことは変えられない。だからもしもなんて、誰にも分からない。
「ほかにも様々なことが重なって当時の一年は組・二年は組は全滅した。この件をきっかけに、僕の学外治療は再開された」
伊作は相変わらず口布をしたままだった。
伏木蔵は、ここに平太がいなくてよかったと心底思った。
学外治療を始めた理由、一時停止時に起きたこと、再開のきっかけ。こんな経緯を小心者の彼が聞いたら、卒倒してしまう。
「対抗試合後、医務室はフル稼働。新野先生、保健委員、保健委員会経験者が総出で対応した。ひと段落したあと、当時の一・二年生は忍たま長屋で待機させ、三年生以上を全員招集した。幻術使いの師匠も出席して、僕の不運について開示された。当時わかっていたことすべてを共有したんだよ。……僕の学外治療を一時停止したことが今回の惨劇になった可能性が高い、と学園長先生は結論づけた。その言葉を聞いてすぐに、当時の会計委員長が、自責の念からその場で自害を図った。あのときの咆哮は忘れられない。止めに入った先輩がいたから、致命傷は避けられたけど、危険な状態だった。すぐに医務室送り。僕も手当に入ろうと、医務室に向かおうとしたら、会計委員長の同室に止められたよ。『おまえのせいでこんなことになった』『疫病神』と。そこまで言われて、手当に行けるわけはないね。……幸い、先輩は一命を取り留めた。ほっとしたよ」
伏木蔵には先輩がこれほどの強心臓たる理由が分からなかった。そこまで言われても忍術学園に残り続けた理由に。
……いや、理由なんて聞かなくてもいい。人には人の事情がある。生きるために必要だから忍者になる、そういう理由をつけておくだけでいい。たとえどんなに傷ついたって、その場から逃げられないときがある。
それ以上に分からなかったのが、忍術学園が不運の権化ともいうべき存在に在籍の許可を出し続けた理由だ。
いかに一流の忍びを輩出したいといっても、費用対効果が見合わない。
伏木蔵が数えられただけで、生徒十五人が死んでいる。伊作が一年生から三年生だった短期間の間に。死傷者が出た、というぼかした言い方もあったため、実際の死亡者はもう少し増えるはずだ。怪我人なんて延べ人数で何人になるのか。
「……どうして、伊作先輩は」
「僕が忍術学園に残っている理由?」
伊作は伏木蔵の目を見据えた。
「慰留されたんだ。学園長先生に」