伊作が不運で死なない理由   作:香枝ゆき

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第五章 六年生が四年生だった頃
(40)委員会新設の理由


「――私たちは四年生になった。私たちの代は、い組とろ組が四人ずつ。は組は、伊作と留三郎の二人だけになった。当時三年の五年は、い組が五人、ろ組が六人。は組はゼロ。喜八郎たちの代が二年だった頃は……」

「い組が五人、ろ組が四人、は組は在籍なしです」

喜八郎が仙蔵のあとを引き取る。

「そうだ。そして、今の三年生が入学してきた。いろは各四名ずつ。忍術学園での怪我、死亡事件・事故が多かったことから、入学者が少なかった。過去最少だった」

学年と所属人数については、上に行くほど少なく、下になるほど多いのが通常だ。

だが、それが崩れていた。

「これ以上、伊作由来の不運で人を死なせる訳にはいかない。忍術学園の存亡に関わる。しかし学園長先生は、伊作を退学させるつもりはない。そこで保険として採用されたのが、喜八郎の穴掘りだった」

「……僕の」

「学外治療を重点的に行うことが大前提だが、行けない時だってあるだろう。次善の策として、喜八郎の落とし穴で不運を消化する。ただし効果は未知数。恐らく学外治療には及ばない。頼り過ぎないように、しかし有効な範囲を探る必要もある。そのために委員会の新設が検討された」

仙蔵は文次郎と三木ヱ門を見た。

「――構わん。作法委員会の新設理由にも関わってくるんだろう。会計委員の長となるなら知っておいたほうがいい。お前の口から話してもらえると助かる」

仙蔵は息を吐いた。

「――次年度の設置を目指し、工作委員会の設立が構想された。表向きは、からくり・籠城について研究し、学園内に罠をはり、警備を担当する委員会。実際は、喜八郎の能力を活かし、伊作がかかるための罠を大手を振ってつくるための組織だ。工作委員会の設置期間は伊作が学園を去るまでの限定的なもので、当初から時限的なものを想定されていた。メンバーは私と喜八郎のみ。学級委員長委員会で得た情報を活かし、他に漏らさず、かつ対応可能な少数の人員でまわすため、お膳立てされたものだった。新しく学級委員長委員会に入った浦風藤内には、これらの事実は知らされなかった」

三木ヱ門が息を飲む。

「そんな、委員会の新設なんて、簡単には……」

「そのとおり。かつての保健体育委員会が保健と体育に分かれた時は、単純に予算を振り分ければよかった。が、新設したら会計委員としても予算の配分を考え直すことになる。加えて、当時は入学者数がどんどん減っていた。今だって各委員会の人員構成はいびつだ。統合することは考えられても、新しくつくるなんて現実的じゃない」

「だが、鶴の一声があれば従わざるをえないだろう」

三木ヱ門の戸惑いを補強する文次郎の言葉に、仙蔵は簡潔に結論を言う。

「学園長先生の、思い付き……」

「そうだ。当時学級委員長委員会に所属していた私と喜八郎は、学級委員長委員会に所属しながら、工作委員会準備室としても活動した。学園長先生も予算配分のことに関しては考えておられたのだろう。工作委員会準備室には予算はつかなかった。もっとも、基本的にはひたすら喜八郎が穴を掘っていたから、特に入用なものもなかったしな」

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