夕食はデミグラスのハンバーグだった。私は家庭科で無双出来るくらいの料理力しかないから、ここまで完成度の高い料理は残念ながら作れない。
「お皿片付けておきますね、お母さま♡」
「何時もありがとうね、ルクスちゃん」
流石にTPOを弁えてか、トレードマークと言えるボンテージアーマーを脱いでダボっとしたダサTを着ているルクス。淫魔としてそれで良いのだろうか?まあでも、そんな服装でも顔が良いからか凄く様になっている。
「ルクスってその……聞き辛いんだけどさ、ご飯とかどうしてるの?」
淫魔と母親と娘で囲む食卓で出すには、少しばかりそぐわない話題かもしれな……その前に母親と淫魔と食卓を囲んでいる事がおかしい事に何故気付けなかった?それくらいにはルクスが我が家に慣れ親しんでしまっている事に、たった今少しばかり危機感を憶えた。
「あら、別に精気を吸わないと生きていけない訳では無いのよ?」
「そうなの?」
「食事のほかに、そう言う事でもエネルギーを吸えるってだけなのよ。ほら……ケーキが無くても人は生きていけるでしょ?」
はっ、はえぇ……そんな嗜好品みたいな扱いなのか。皆は知らない、サキュバスの生態。こうやって互いに相互理解をしていけば、もしかしたら魔族の方とも手を取り合って生きていけるのかもしれない。外敵は……ほら、根本的に多分無理だ。そもそも遺恨が根深過ぎる。
「ルクスちゃん、お風呂出来てるわよ」
「ありがとうございますお母さま、一緒に入る?サテライトちゃん♡」
「いっ、いや流石に……!?」
流石に恥ずかしいというか、絶対目のやり場に困る。ダサT越しですら主張の強いあの大きなお山に、私が耐えられる自信があんまりない。
「残念ね、何時でもはいってきていいのよ?」
「あっ、うん……」
そういってお風呂場へ向かっていくルクス、流石はサキュバス……危うく頷きそうになった。それにしてもご飯を食べたりお風呂に入ったり……そんな時はぬいぐるみから人型へと戻るルクスだが……
「お母様も、随分すんなりルクスを受け入れたよね?」
なんでこんな馴染んでいるんだ、家族の一員として迎えるには随分とショッキングでエッチなピンク色のお姉さんなんだけど。尻尾も角も生えてるんだけど。
「そりゃあ、娘が何処のとも知れない触手に慰みものにされると考えたら……ルクスちゃんが面倒見てくれた方が安心できると思わない?」
「うぐっ、その節は本当に申し訳ないとは思っており……」
私の日ごろの言動のせいだったらしい。本当に私のせいで気苦労をかけて申し訳ないとは思ってるんですよ本当に。憧れと欲望が止められないだけで。
「そう思うなら日頃の言動を改めなさいよ、バカ娘」
コツンとげんこつをもらう。ばっ、バカじゃないんだけど?頭脳明晰、容姿端麗な天才魔法少女なんだが?という心の声は口にはしない。やはり何時の時代も母は強いのだ。それに自己評価の高い私だが……流石にとんでもない親不孝者である自覚はあるので。
「あんたが幸せになってくれれば私としては言う事無いけどさ、一人の母親として娘のウエディング姿くらい見てみたいのが親心よね……」
「うっ、うん……その……はい」
哀愁溢れる横顔で、遠くを見つめるお母さまに私は何も言えなかった。もし誰かに飼われる事になっても、ウエディングドレス写真くらいは送ろうと心に強く決めた……そんな夕食時だった。
何時ものようにパトロールと招集を繰り返す日々の中で、新星魔法協会とやらの動きは驚くほど少なかった。当たり前かもしれないが魔法少女協会の権力は驚くほどでかい。その権威を引っ繰り返すには余程大きな何かがいるだろう。
新星魔法少女協会は既存の
平和の象徴である最強の私、交渉で右に出るものは居ない
「お~っほっほ!この紅蓮の魔法少女ブレイディア様がわざわざ来てあげましたわ!感謝すると良いですわよ!」
「……何時も思うのですが、その喋り方はどうにかなりませんの?」
……こいつが実力で言うと三位なのが、なんというか中堅層の人材不足をひしひしと感じる。グライシアが普段横にいるせいでこの、コテコテな
「そうやって高みの見物をしていられるのも今の内ですことよ?この!ブレイディアが!!来年の人気投票は頂きますわ!!!」
「あはは、その……頑張ってね☆」
悪い娘では無いのだ、ちょっと五月蠅くて自意識が過剰で頭が弱いだけで。火力は高いし、人助けへの意識も高い。トップが飛びぬけているだけだし、単純な魔法の火力だけで言えばグライシアよりも高いはずだ、その分搦め手も何も無いけど。
そんなわけでこの日本の魔法少女トップ3が揃ったのだが……実はそんなに珍しい事でもない。何せ
「一応大丈夫だとは思いますけど、気を付けるんですのよ?最近は何かと物騒ですし」
「まさかその辺の外敵如きにこの!わたくしが!!後れを取る筈がありませんのよ!!!」
「特にサテライト……分かってますわね?」
「勿論、大丈夫だよ?」
そんなに信頼が無いというのだろうか、まさか私が誰にでもついていく尻軽だとでも?最近良い所が無かったからと言って、それは流石にこの私を見くびり過ぎだ。外敵なんて一撃で……
「そもそも魔法を使わなくてもいいように、異変があったらわたくしを呼べと言ってるんですわよ?」
「あっ、うん。そうだよね……」
まあ、別に緊急でも無いのに魔法を使って淫紋を発動させる必要は無い。分かってる、分かってはいるのだが……なんとなくもどかしい。こんなものが無くても、私はルクスから今更逃げたりはしないというのに。まあそれは彼女視点では分からないとは思うけど。
協会の前で別れてパトロールを始めた私達だったが、その時はあんな事になるなんて想像もしていなかった。多分きっと、誰も。
「といっても、特に何かある方が珍しいのですわよね……」
ここは特に外敵が頻出する地域でも、犯罪が起きやすいという訳でも無い。精々が、無くしモノや猫を捜しているといった困りごと程度しか起きない。そんなパトロールの最中に通り道を塞ぐように立っている赤い髪の少女。平時ならば気に留める事は無かっただろう、それが……魔法少女でなかったとすれば。
「悪いが少しばかり付き合ってもらうぜ」
相手は油断なくこちらを見据えている、敵対の意思があるという事だろう。それ自体は想定はしていたものの、その相手のせいで、一気に質の悪い冗談のような状況へと陥る事になる。
「フランマ……!貴方程の魔法少女がどうして協会を抜けて……!」
「どうしても何も、分かり切っている事だぜ……グライシア」
第二の魔王の会議の時にも出席していた……それだけの実力を持っている筈の赤い髪の魔法少女が、協会を抜けて野良の魔法少女の連合に所属している。そうだとは聞いていたが、実際に目にしてみるとやはり驚愕を隠せない。
「むしろ、あんたがまだ協会に所属している事に驚きだ。真っ先にこっちに来ると思ってたよ」
「……わたくしには、
ようやく手に入れた平穏を、わたくしの好き嫌いで歪めたくはない。だがその答えに何処かうんざりした様子で首を振るフランマ。答えがお気に召さなかったのだろう。彼女がわたくしの前にこうして現れたという事は、新星魔法少女協会にはおそらく何が目的がある。
「はっ、あんたも結局
「残念だったら、どうするというんですの?」
分かりきった答えを聞くのは、それ以上は引き返せないという意思表示。それでも、残念ながら相手の決意は固いようで……戦闘は恐らく避けられない。
「こう……するんだよッ!」
燃え盛る炎が、眼前へと迫る。
しかし、この程度の攻撃で
「氷面鏡───」
ボールサイズの氷の鏡を出現させて一斉に放つ。こういう時に、外敵と違って本気で戦えないのはやり辛い所だ。流石に同じ魔法少女を殺すのは、どうしようもない状況に限る。放たれた鏡はフランマの姿を貫き───その姿が霧のように掻き消える。
そしてまるで陽炎のようにボヤけた複数の虚像が現れる。これが彼女の魔法なのだろう。炎と氷……魔法の相性もかなり悪い、恐らくは意図的に割り振られたものだろう。だとしたら相手方は相当……頭の切れる参謀役がいる。
何が目的なのか、まるで時間稼ぎでもしているかのような……そこまで考えて漸く事態に気付いた。確かに魔法少女協会の実力者トップ3が揃っている今、わたくし達を狙うのが協会の権力の失墜に最も効果的。だから相手の目的を伝える為にサテライトと連絡を取ろうと、スマートフォンの画面を確認したはいいものの……
「時間稼ぎが目的という訳ですわね、まんまとしてやられましたわ……!」
「気づくのが早ぇな、だけど……もう少し稼がせてもらうぜ!」
携帯は圏外を示していた、恐らくは偶然ではなく意図したもの……それならやる事は変わらない。こいつを倒して、他の2人と直ぐに合流するだけ。数個程度の幻覚ならその程度は全て潰してしまえば良い。陽炎の数だけ鏡を作り……押しつぶすように放つ───
「……なッ!?」
───のはフェイク、本命は死角にいた彼女の本体。幻覚使いのやる事など、手に取るようにわかる。なにせ、それはわたくしの十八番なのだから。だが、その攻撃は当たる直前で不自然に停止する。
「な〜んだ、グライシアを倒すとか威勢だけおっきくて、なっさけな〜い♡」
「悪い、助かったぜ。ティンカーベル」
「当たり前なんですけど~?私達は仲間を見捨てたりするおバカさんとは違うんだよね♡」
新たに現れた人を馬鹿にしたような笑みを浮かべる緑髪の魔法少女。彼女が氷の鏡を止めた魔法少女なのだろう、だがその魔法の正体に一切想像が及ばない。まるで時間が停止したかのような挙動……しかしそんな強力な魔法なら、間違いなくこちらが負けている。恐らくは条件付きで法則を歪める魔法名……
「目標は達成~本当は貴方を倒したいところだけど……今日の所は分が悪いかなぁ」
「逃がすと思って……!」
「逃げられるんだよねぇ、まさか無策で顔を出すなんて……ベルはお猿さんじゃないよ?」
この場で最悪仕留めるつもりで放った巨大な氷の鏡。それが彼女達を押しつぶす直前───ピタリとその落下が止まり、その姿が掻き消える。おそらくは別の魔法少女、それも転移系の魔法少女が相手の陣営に居ると考えるのが妥当だろう。それはつまり、完全に相手を見失った事を示していた。
流石にあの程度の相手にサテライトが負けるとは思っていない、どちらかというと心配なのはブレイディアだった。だけど、そんな思惑は……悪い意味で裏切られることになる。それは、スマートフォンのアプリあてにしずくから届いた、一着のメッセージ。
<ファンの子がプレゼントしたいものがあるそうなので行ってきます。先に帰ってて良いよ☆>
「…………は?」
あまりの意味不明さに、画面をもう一度見てもその文字列は変わらない。人が、必死に戦っている間に、知りも知らないファンを名乗る子に……ホイホイと付いて行ったというのだろうか?そんな馬鹿な事があっていい訳が……訳が……有り得ると思えてしまった、あの子なら。
「あの子には一度、自分の立場と言うものを教えてあげないといけませんわね」
当然だが、こうやって見回りをしていても大抵の日は何もない。地域の住民と触れ合ったり、わざわざ私に会いに来たファンの人にファンサをする……人気取りが主な仕事となりつつある。それに、この私がパトロールをしているというだけで……地域の犯罪率は酷く少ない。
そんな訳でその日のパトロールも終盤と言う所で、クロエちゃんに連絡を取ろうとして……何かがおかしい事に気付く。こんな東京の街の中で……スマートフォンが圏外表記なのだ。大規模な電波障害が起きたにしては静かすぎるし、局所的に起きたにしては随分と長い。何処か薄気味悪いモノを感じつつ、暗くなり始めた街を歩く事暫く。そこで見た事のある気がする顔を見つける。
「サテライト様!」
「あっ、えっと……」
小学五年生くらいの薄い緑髪の小さな女の子。相手は私を知っているらしい、そして私も彼女を見た事がある気がするんだ。それは一体……何処だったか。思い出せ、思い……出した。書店で私の本を買っていたあの子だ。
「街で本にサインしてあげて以来かな?」
「覚えていてくださったんですね……感激です!」
確か一生推すって言ってくれた気がする。私は私のファンには特別に優しくする事に決めているので、出来る限りファンの顔は覚えるようにしているのだ。
「実はサテライト様にプレゼントがあって……」
「うん、ありがたく受け取らせてもらおうかな☆」
「運べるものじゃなくて……ついて来てくれませんか?」
それは困った、今はパトロール中だし……しかもクロエちゃんとは連絡が取れないし。流石に何も言わずに場を離れるのは良くないからここは……
「き、来てくれないんですか?折角用意したのに、うぅ……」
「待って待って、泣かないで!?」
さめざめと泣き始めてしまった女の子を必死に宥める、わっ……私のファンが泣いている。いや、でも流石に……あぁ、そうか。勝手にいなくなるのがダメなのであって、一声かければ問題ないのだ。
SNSを起動してクロエちゃん宛てにメッセージを送る、まあ回線が回復すればその内メッセージも届くだろう。そんな楽観的な考えで彼女についていく事を決めた訳だったのだが……
歩く、思ったよりも歩いて……その場で景色が一気に切り替わる。
「ようこそ、サテライト様!」
ついて行った先の、薄暗い地下に集められた総勢30人程度の魔法少女たちを見て。嫌な予感が頭を過ぎる。まさか、いやそんなまさか。こんな小さな女の子が……いや、聞いていた外見と確かに一致はするんだけどさ……
「ここが、
「えっ、えぇ……?」
そんな……王とやらが私だなんて聞いていないんだが?
ずっとSNSで更新予定を告知したり、更新をお知らせしたのですが……
つい先日、この小説でXのアカウントの紹介をしていない事に気付きました。
一体誰に向けて告知してたんでしょうね……
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この小説の3つの要素の中で求めているもの
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