しずくちゃんのせいでもないですし、この物語には反映しません(描写と計算が大変なので)
布団の中で目を覚ますと、身体中がとても痛かった。擦れたり、腫れたりでとても痛い。キスマークなんて響きは良いが、強く吸う事による鬱血痕な訳だし。申し訳なさそうに身体を寄せている、クロエちゃんの頬っぺたをむにむにと摘まむ。
「そっ、その……昨日は確かにやり過ぎましたわよ? でも貴方も何だかんだ最後の方は乗り気で……!」
「……変態」
まさか、
「ちょっと、私もやり過ぎかなとは思ったんですわ!?」
「……クロエちゃんのエッチ」
しかもあんな、あんな……友達同士であんな事をしておいて、週明けの学校でどんな顔をすればいいのか分からないよ。でも何かあたふたしてるクロエちゃん新鮮で面白いな。
「まあ、とりあえず服着よっか?」
「そっ、そうですわね……」
寝る前にお風呂に入ったのは英断だったと言える、そうでなければ布団の中は物凄い事になっていただろう。まあそのせいで随分と長風呂になってしまった訳だけど。
油断するとすぐに腰に手を回してくるクロエちゃんを往なしつつも、服を着て朝食を食べる。明日の学校に備えて夕方前には解散になった。楽しかったのは楽しかったんだけど、互いに何となく距離を測り損ねていた気がする。
そんな事がありつつも、普段とそう変わらない日常を過ごし……いつの間にか次の休日を迎えていた。とは言え今週は特に予定は入っていない、だから初心に帰って何時も通りの日常を過ごす事にした。
突然だが、最高の魔法少女であるサテライトの朝は早い。
7時前には家を出て、身バレ防止の為に家から少し離れた場所で魔法少女へと変身する。やはり人気一位となると、素性を知りたいという厄介な人間は一定数居るもので。朝日が眩しい住宅街で、怪我防止用のストレッチを行ってからジョギングを始める。
土曜日でも、布団で惰眠をむさぼったりはしない。体型維持とパトロールの為の朝一番のジョギングから私の生活は始まる。たかが地域の好感度稼ぎと侮ってはならない、こういった一歩一歩から人気も容姿も培っていくのだから。
一応の世間体としては、体力づくりと治安維持なんだけど……そんな訳はない。変身しないで走った方がよっぽど体力づくりになるだろう。そもそもこれ以上強くなって何をしたいの? って話である。そんな不純な動機でランニングなんて魔法少女を舐めてるのか? なんて言うクレームは、私に勝てる奴を連れて来てから言えよ。
「朝からランニングとは精が出るわね、サテライトちゃん♡」
「るっ、ルクスも走りに来たの?」
「私はどちらかというとサテライトちゃんを見に来たって感じかな?」
何時の間にか後ろに付いてきていたらしいショッキングピンクの髪の淫魔。だが、角も羽も尻尾も傍から見れば無いようには見える。そんな事までできるのかと驚く半面、それ位なら出来るだろうという気持ちもあった。なんせ、ぬいぐるみになれるくらいなんだし。
何時ものコースを走り始める、だけど横に誰かが居るというのは中々に新鮮だった。普段から手を振ってくれるおばあちゃんに、何時ものように手を振ると、後ろに居たルクスも手を振っている。
あれは誰だったのかとか、マスコミに聞かれるかもしれないが……その時は友人で押し通す事にしよう。認識阻害が効いていそうな雰囲気もあるし、おそらく彼女の正体がバレるような事は無いだろうし。
「良い国ね、ここは……魔界よりもずっと。確かにこの土地が欲しくて侵攻する気持ちも分からなくは無いわ」
「そう言う目的の外敵も居るんだ、なんか知りたくなかったなぁ……」
全てでは無いのだろうが……悪意だけでなく、目的のある敵も居ると聞くとほんの少しだけ殴り辛い。いや、そんな事は無いか。どの道敵対した時点で分かり合えないのだから。
「これ、タオルとドリンクよ?熱中症には気をつけないと」
「ありがと」
終わり際に手渡された冷たい飲み物がありがたい。ここまで甲斐甲斐しく世話を焼かれて、私は彼女に何を返してあげられるのだろうか。勿論、一番欲しいものは分かっているんだけど、どうしてもそればっかりは……うん。とは言え、何時までも引き伸ばしてはいられな……
そんな時、タイミングよくというか、悪くというか……懐に入れていたスマートフォンが着信を告げる。
「電話……協会からか。ちょっと待っててね」
仕事用のスマホへの着信を見てみると相手は……
魔法は、主に幼少期の体験や経験……に基づいていると言われていますわ。確定でないのは一重に魔法少女自体の母数が少ないからだ。だが、幼少期に父に連れて行って貰った、氷った湖面に映る富士山と空が、とても綺麗だったのを今でも鮮明に覚えています。
まあ、その魔法が強く使えるかはその本人の素質に完全に依存しているんですけど。
フランマも陽炎に思い入れがあったと聞きますし、ブレイディアは「デカくて重い炎が一番強いといっていましたのよ! 正に!! 正解でしたわ!!!」らしいですわ。知り合いのテレポーターは「ここではない何処かに行きたい」という願望を持っていましたし。だから、電波を操ったり、炎を出したり……それこそ心を読んだりもしますけど……基本的に魔法少女の99%が魔法はこちらに該当するものですわ。
そんな自分の魔法でルールを越えようとしている中で、世界の方を歪めてしまおうという魔法を操るのが……『法則系』に該当する魔法少女ですわ。物理法則を歪めたり、時の流れを停滞させたりとやりたい放題な彼女達『法則系』の魔法少女は……何処か歪な精神構造をしているとされていましたけど。最近、実際その通りだと思うようになりましたわね。
まあ、なぜこんな事を今更考えているかと言うのも……
「そんな魔法少女が二人もいるからなのですけど」
「ん、私の話かな?」
「サテライトおねーさん、これお菓子です!」
「本当にすっきりする位に猫を被っていますわね……」
呼び出しの対象の魔法少女は3人。この協会の最奥の部屋に全員が集まったという事は……
「これから、ミーティングを……始める」
この面子で、ミーティングが始まるということなのですけども。
スクイレ、グライシア、サテライト、ティンカーベルの四人が集まった会議室。異色の面子で始まろうとしていたミーティングは、始まる前から前途多難であった。
「早く本題に入ろうよぉ、ベル飽きてきちゃった」
「随分と堪えしょうが無いのですわね? 戦ってる時もそうでしたわ」
「……表に出なよ万年二位、今度こそ白黒つけよ?」
当然かもしれないが、私と仲のいい皆は……それぞれ仲が良い訳では無い。むしろ悪いと言っても良い。
ベルちゃんとグライシアは私の失踪時の対応等でスクイレに不満があるし、ベルちゃんとグライシアは互いに対抗意識を燃やしている。スクイレは二人に対して悪感情は持っていないものの、相手から嫌われている分にはどうしようもない。
「3割くらいは、あなたのせい」
「やっ、優しいねスクイレ……」
正直9割くらいは私のせいだ。そして、残りの一割はルクスのせいだ。いや、何か魔王が悪い気がしてきた。全部魔王のせいだ、私の責任じゃない。この完璧で聡明なサテライトちゃんに欠点がある訳無いんだから。
「友達が、増えたんだ……ね。安心」
それをスクイレに言われるのは何と言うか心外である。とは言え確かに、対等な友人はあまりいなかったかもしれない。何より昔はちょっとだけ尖ってたし……うん。
「昔、ちょっと……?」
「ずっと猫を被ってて、内心の変化なんて分かりませんでしたけど」
「昔のサテライト様にも興味がありますっ!」
「やだなぁ。昔の私じゃなくて、今の私を見てよ☆」
恥ずかしい話題は流すに限る。とはいえ、ここで仲良く話が出来るのは私を通してのみ、もしくは私の話題位だという訳だ。いやはや、本当に恐ろしいね…………どうしてこうなっちゃったんだ。
凍った空気が少しだけ溶け始めてきた頃合いで、スクイレが遂に本題を切り出す。
「本題。ここ最近、魔法少女の失踪が何件か報告されてる」
「それは
「失踪した、魔法少女は、どちらにも……登録していない」
つまりは野良魔法少女という事だろう、失踪に気付けたのは……
「偶然。でも一件や二件じゃ、ない」
「成程、事件性があるんだね……」
何かを企んでいるものがいるという事か。それが水面下で動いている外敵によるものなのか、それとも魔法少女によるものなのか……反社的な人たちによるものなのか。どちらにせよ、碌な目に遭っていないのは容易に想像できる。
「怪しい組織にアタリはつけてる」
「神凪重工……ですの?」
そう言って差し出されたのは、神凪グループの神凪重工なる組織。何処かで聞き覚えがあったんだけど、何処でだっけか。
「……ニュースでやってた」
何処となくジトっとした目をスクイレから向けられる。いや忘れてたわけじゃなくて……興味が無くて。ただ、資料を見て思い出した。確か民間向けに外敵の素材で武器を作るだとかそんな事を言っていた会社か。志は立派だが、なんとな~く嫌な感じはしたんだよな。澄ました顔して、何となく夜とかねちっこそうというか。
「今回は、情報収集」
「それでブレイディアの代わりに”外部”の魔法少女が居るんですのね」
まあブレイディアに潜入とかスパイとかは向かなさそうだしね……
「やっだぁ~二位ともあろう魔法少女が差別するんだぁ?」
「差別でなく、区別ですわよ?」
まあ当然だが、この二人が仲が良い訳が無い。こんな時にあほっ……能天気なブレイディアが恋しくなる……世界のムードの為に戻ってきてくれブレイディア……!
「まぁ? 行方不明の魔法少女の為にベルが一肌脱いであげても良いけどぉ?」
「あら、別に私と”親友”のサテライトの2人でも良いんですわよ?」
「なっ、生意気なんですけど……」
本当にこの二人は一緒に協力できるのだろうか? 少しばかり心配である。作戦の概要を伝え終わったことでミーティングは終了の運びとなった。これから実際の作戦行動に移る訳だが……
「今回の目的は、あくまで調査。くれぐれも、気を付けて……ね」
これだけの面子を揃えておいて、心配はいらないだろう。この時はそう思っていた。