その分丁寧に描写で来ていると思うので、そんな儚い犠牲があった事を忘れずに……
是非想像を膨らませていってください。
そんな訳で夏旅行編始まるよ!
真っ白な雲と、何処までも続くような青い海が広がっている。
此処は東京……ではなくお隣の千葉県に位置する海水浴場。海水浴場の百選にも選ばれているらしい……とは車の中でクロエちゃんが言っていた受け売りだけど。実際とても綺麗な景色が広がっていた。
「海だぁ~!」
「いや、海ですけども……だいぶ前から見えてましたわよね?」
「いやいや、風情が無いなぁクロエちゃん。こういうのは”お約束”って奴なんだよ」
「まあ、そう言う事なら止めはしませんけども……何のお約束ですの?」
やや黄色みがかった砂浜は、夏の日差しを受けてアチアチだ。辺りは観光客で賑わっており、海の家らしき建物からは焼きそばのソースが焼ける良い匂いが漂ってくる。紛う事なき海水浴場が、私達5人の目の前に広がっていた。
そんな景色についテンションが上がって叫んでしまった、クラスメイトとかいないよな? 普段はお淑やかな高嶺の花系美少女として通しているのだ、こんな所を見られでもしたらまっずい。
「早速だけど着替えよっか? 更衣室は……」
「こっち。看板が、ある」
「たっ、楽しみ過ぎて下に水着着てきちゃいました……!」
「あらあら、元気で良いわね?」
送ってくれた黒い服のおじ様に礼を言って、高そうな車を降りる。本当は電車で行く予定だったのだが……クロエちゃんに話したら、あれよあれよと移動手段どころか宿泊先まで決まっていた。感覚があまりにも庶民離れしているが、お嬢様の安全のためと言われれば納得ではある。
とりあえずは折角買った水着に着替えるべく、更衣室へと向かう。若干一名、着替えるというよりかは脱ぐだけで済んでしまう御方も要るけども。
そういえば、どうして海に来たのかと言うと‥‥‥そう、ルクスへのプレゼントだ。いやまあ、私が単純に海に来たかったというのも無くは無いけど。ただ、私が海に来たいだけなら、こうして1泊2日の旅行としてプランを組むまではしなかっただろう。
文化が違えば、価値観も違う『淫魔』のルクスに何をプレゼントするかは非常に迷ったんだけど、住む場所が違うからこそ価値のあるモノってあると思ったんだよね。
そんな訳で、私のルクスへのプレゼントはずばり‥‥‥『日本の夏』。この国の四季の楽しみ方をプレゼントしようという訳だ、少し気障すぎるかもしれないけどね。
ロッカーの中へと着替えを入れて、するりと着ていた衣服を脱いでいく。私たち以外に人が居なかったのはまあ良いんだけど……若干一名、既に衣服を脱ぎおわった小学生が、目を手で塞ぎながらもしきりにこちらを気にしている。
「女の子同士なんだし、そこまで気にする必要なくない?」
「推しの生着替えですよ!? 見るのは烏滸がましくても、音だけでも楽しみたいじゃないですか!」
不審者だ、間違いなく。通報するべきか一瞬悩んで、それが知り合いだったことを辛うじて思い出す。色々としておいて、今更感が拭えないのだが……まぁ実の所、悪い気はしない。
「それにしてもあまねちゃんはよく許可が下りたね? 小学生が一人で旅行なんて……」
「だっ、大丈夫です! サテッ……世界一強い御方と一緒に行くって伝えてあるので!」
「あぁ、うん……頑張るね?」
随分と信頼されているらしい。親にまでそのノリなのかとは思ったけど。まあ
着替えが終わり、更衣室の鏡に映ったのは……白いフリルのついた、オフショルダータイプの水着を着た私だった。その姿は、まさしくビーチに降り立った天使そのもの。あまりにも可愛すぎて、
ニッコリと笑みを作ると、鏡の中の私もそれに従って笑みを返す。手を振ってみれば、ファンサービスの良い事に鏡の中の私も手を振り返してくれる。なんて、なんて可愛いのだろうか。何時までも見ていられるけど、後ろの緑髪の少女が今にも倒れそうだったのでここまでにしておこう。
「えへへ、とっても似合ってます!」
「うんうん、あまねちゃんも似合ってるよ」
後ろを振り向くと既に着替え終わっていたあまねちゃんが着ていたのは、白と紺色のセパレートタイプの水着だった、やや薄めの緑髪によく似合う、それくらいの歳ならスク水でも違和感は無いだろうにしっかりとお洒落に気を使っている。
挙動が変で普段は忘れがちだが、彼女もまたかなり美少女の部類である。特徴的な八重歯と、やけに挑発的な表情が似合いすぎてメスガキの擬人化のような顔つきだったとしてもだ。
「うん。全員着替えがおわったか、な?」
ラッシュガードを羽織っている黒いビキニに着替えた少女は、あまり水着を着る事に慣れていないのか少し恥ずかしそうにしている。一緒に買いに行ったから分かってはいたものの、やはりよく似合っている。余りこれ以上脳内で褒め囃すと、後が怖いのでじろじろと見るのはここまでにしておこう。
「そんなところで立ってないで、さっさと行きますわよ?」
クロエちゃんは……うおっ、すっご。こういう布を交差させたタイプの水着なんて言うんだっけ、えっと、えっと……そう、クリスクロスだ。高級感のある黒い布地はとても大人っぽくて、プロポーションからしてもとても同い年には見えない。
「お待たせしたわ。初めてだから、手間取ってね?」
ルクスは……タイサイドだぁ。思わず引っ張りたくなるようなビキニの横部分の結び目。見ているだけでクラクラするような、抜群のプロポーション。普段の言動から忘れがちだが、彼女は夢の中で人を誘惑して堕落させるサキュバスの……その女王なのだ。
人々を魅了するという事に置いて、彼女の右に出るものは居ない。思わず目を離せなくなるような蠱惑的な魅力をこれでもかと振りまいている彼女は、何処か少し困った様に私に耳打ちをする。フワリとすっごい甘い匂いがする、堕落しそう。
「にしても、人間って凄いわよねぇ」
「なになに、どうしたの?」
「いや、凄い恰好で出歩くのねぇって思って」
凄い恰好って……別に、それほど攻めたデザインでは無いだろう。フリルの付いたオフショルダータイプの水着だ、スリングやマイクロみたいな攻め攻めの水着を着ている人は、少なくとも視界には誰も映っていない。平時にボンテージアーマーを着ている方が恥ずかしいと思うけど。
「水着……なんて名前がついていてフリルが付いていても、下着みたいなものじゃない? どうして下着で海を歩くのはダメで、水着は良いのかしらねぇ」
「それは……いや、水着は水着だし」
「そういうものなのね?」
これもまた、文化の違いだろう。少なくともほかの海水浴客と比べて特別浮いているという事も無い。いや、浮いているかもしれない……あまりにも顔面偏差値が高いから。遠巻きにこちらを眺めている利用者が何組かいる。
下卑た欲望に満ちた視線が私に向けられていると思うと、口角が自然と上がる。きっと彼らの頭の中では、声を掛けて上手く行った『その後』を思い描いているのだろう。その視線は私ではなくルクスに向けられている気がするけど。
踏みしめる砂の感触。海水に指先を浸してみると、日光で暑くなった身体に冷たい水が心地良い。
ある意味保護者的な立ち位置のルクスは、何処から持ってきたのかビーチパラソルを広げてその下でサングラスをしている。ネットで調べたのだろう、完全に夏を満喫している……私が教える間でも無かったななんて、そんな事を考えていると……視線がばれたのか「こっちこっち」と手招きされる。
「ほらほらこっちよ、しずくちゃん? 日焼け止め塗ってないでしょ?」
「あっ、あぁ……そう言えば忘れてた」
自然に名前呼びされたのでびっくりしたが、ルクスなりの配慮なのだろう。名前どころか同じ家で済んでいる訳だし。私の小っちゃい頃の話とかよく食卓でしているのを聞く。そう言うのは本人のいないところで話すものなんじゃないか?
「私がやってあげるわ? こういうの得意なのよねぇ」
「うん、お願いしても良い? 背中とか塗り辛いし」
彼女の前に座りながら考える。得意ってなんだ、身体に液体を塗るのが得意なことなんてあるか?
いや、あるな。そりゃああるだろうサキュバスなんだから……でも塗っているのは絶対日焼け止めなんて生易しい液体じゃない事だけは確かだ。
ひんやりと冷たい日焼け止めを手の平で温めてから、首筋へと伸ばすように広げてくれているらしい。すーっと満遍なく塗り広げられているのをみるに、本当に人体への理解は凄まじいものがありそうだ。
「綺麗なお肌ねぇ、染みにならないようにしっかりとケアしないとね?」
「あっ、うん……いや、ちょっと入念すぎるというか?」
首筋から肩甲骨、そして背中から腰へとゆっくりと指が動いていく。必然的に距離が近いからか彼女の声が耳元から聞こえてゾクリとする。同じシャンプーやリンスを使ってるとは思えない程に、甘い……甘ったるいとも言えるような匂いが鼻腔に広がる。
「あの、前は自分でも出来るから……!」
「あらあら、遠慮しないで良いのよ?」
もう一度継ぎ足すように日焼け止めを手のひらに出して、ゆっくりと鎖骨の辺りへと指が動いていく。水着の縁をなぞる様に指が動き、心拍数が少しずつ上がっていくのを感じる。平常心、あくまで平常心だ。彼女にやましい考えは微塵も無い。
「ふふっ、食べちゃいたいくらい可愛いわ?」
無い……はずだ。
二の腕、から指先へと伸びていき……絡めるように彼女の五指がペタペタと日焼け止めを塗り広げている。それはまるで、恋人つなぎのような形で少し気恥ずかしい。本当に、無意識でやっているんだよな?
たっぷりと一分ほど指先に日焼け止めを塗り終わった後、その指は胸から下……お腹周りへと伸びていく。そんな時、彼女が思い出したかのように声を上げる。
「そう言えば、気になってたことがあったのよね?」
「なっ、何……ひゃっ♡」
ポワリと下腹部に浮かび上がってきたのは、少しだけ豪華になった淫紋だった。魔法を使っても居ないのに何故ッ……と思ったものの、それにより快感が押し寄せたりはしなかった。
「あっ、あのルクス!? 流石に恥ずかしいんだけど……」
「大丈夫よ? 他の人からは見えないから」
そう言う問題じゃ……いや、別に見えないなら良いのか? そんな事を考えていた思考を吹き飛ばすかのように、衝撃的で当然な疑問が彼女から投げかけられた。
「しずくちゃんって……意外とむっつりだったりするのかしら?」
「なっ、はっ……えっ!?」
いきなりそんな事を言われても、なんて返せばいいのか分からない。どうしてその結論に至ったのか、そして何処までバレてしまっているのか、幻滅されたりはしないだろうか? 必死に頭を回して、この状況を打開する一手を模索する。
「淫紋が進化するなんて……少なくとも、私の意図した挙動じゃないわ?」
「いっ……いやぁ!? そんな、そんな事無いけどっ!?」
「あらあら、それは残念ね?」
拙い誤魔化しだという事は分かっている。発情スイッチ代わりだと言わんばかりに、私に魔法をぶつけてきたやべー女がいるくらい……私達はこれをYES/NO枕代わりに扱っていたからだ。
「別に実害は無いのだけど……興味深いわね?」
「あっ、やめっ……ルクスっ♡」
つーっと、ハート形の淫紋を人差し指の先でなぞる様に撫でられる。幸運だったのは、パラソルが日陰になって外からはオイルを塗っているようにしか見えない事。そして不運だったのは……
「はっ、はぁっ……もう大丈夫だから……♡」
「あら、そういえばまだ日焼け止めを塗ってる最中だったわね?」
私のお腹は色々とあって少しばかり外部からの刺激に弱くなっていたという事だ。肩で息をするのが精一杯と言う所まで追い詰められたものの、彼女の指は再び当初の目的を果たすべく太ももの方へと伸びていく。
いつの間にか消えていた淫紋と、全身に残る甘い痺れ。純粋な好意を向けてくれているルクスと、そんな彼女の腕の中で感じてしまった甘い快感に罪悪感や恥ずかしさが綯い交ぜになる。
太ももとふくらはぎに念入りに日焼け止めを刷り込まれた後、漸く彼女の腕の中から解放される。少し名残惜しいような感覚もあるけれど……
淫紋を撫でられたあの時、鋼の意思でおねだりをしなかった私をどうか褒めて欲しい……切実に。
日焼け止め塗ってたら一話が終わったんだが……?