それと話の最後に、大事なお知らせがあります。
37.黒い石碑と記憶の行方なんだが?
旅行も終わり夏休みを満喫していたとある日の事。お盆と呼ばれるこの季節は、社会人であってもお休みになる事が多いという。そんな中、私は出かける為に着替えを終えてリビングへと降りてきたわけだが……仲が良さそうにテレビを見ていた二人と目が合う。
「それじゃあ行ってくるけど……」
「今日は流石についていけないわねぇ、私はお家で待ってるわ? ね、お義母さま?」
「ルクスちゃんは本当に素直で可愛いわねぇ……どっかの娘も見習ってくれれば良いんだけど」
「お家での私の肩身が狭くない?」
学校に行っている間も、ずっとお母様の話し相手になってくれているのは娘としても安心ではある。だけどそのせいで、もはやルクスの方が娘と認識されているのではないかと思う位に仲が良いのである。確実に外堀を埋められている感じがした。
「冗談よ、お母さん達もテレビで見てるから……気を付けていってらっしゃい」
「お母様……うん、行ってきます!」
夏休み中ではあるものの、今日は外せない用事があって協会へと顔を出す。一年に一度、この季節に必ず私と協会長は集まる事になっている。面白い用事では無いけど、必要な用事だ。
迎えの車に揺られる事暫く、都心にある魔法少女協会の本部へと辿り着く。スクイレを私室へと迎えに行くと、既に用意は済んでいるらしく魔法少女のコスチュームに身を包んでいた。
この前よりもずっと私物が増えているし、真っ白だった部屋に色が付いたようなそんな感覚を覚えた。この前買った棚の上には、既に私のグッズとフォトアルバムが並べられている。
「招集、感謝する。サテライト」
「うん、それで現地じゃないのは……何か理由があるんだよね?」
読んでいた本にしおりを挟んで、こちらを見るスクイレ。彼女にしては珍しく言葉に迷っているらしかった。急かすことなく次の言葉を待っていると、意を決したように口を開く。
「まず、最初に言っておかなきゃ、いけないこと。これ以上、女の子を引っかけたら……死ぬ」
「しっ、死ぬ?」
「うん、死ぬ。正確には、サテライトとしても星乃しずくとしての人生も、終わる」
唐突過ぎる死刑宣告に驚きを隠せなかったが、漸く話が見えてきた。
「私もそうかもしれないけど……グライシア。特に彼女は独占欲が強い。これ以上女の子を増やして、とっかえひっかえだと……二度と陽の光を、浴びれなくなる……よ?」
「あっ、うん……」
「勿論私も、嫉妬はする。忠告はした……よ?」
ぎゅっと私の手を握るスクイレ。その結末には期待してしまうものの、彼女達を傷つけてまで結果的にその未来を掴むくらいなら、頼み込んで飼ってもらった方が幾分かマシだろう。それでも彼女達は私を飼いたい訳じゃなくて、隣を歩きたい訳で……ダメだ、この事はいくら考えても結論が出ない。
「うん。ゆっくり、貴方は変わってる。焦らなくて、良い」
「自分ではよく分からないけど……スクイレが言うならそうなんだろうね」
と言っても悪い方向に進んでいる気しかしないが……まあ良いか。とりあえずこの話をしたいがために、私を協会に呼んだわけじゃないだろうし。
「うん、さっきの事を念頭に、置いて。一つお願いが、ある。とある、少女について」
「うん、女の子がどうしたの?」
「詳しい話は、車の中でする、けど……」
ゆっくりと立ち上がって、私の目をしっかりと見てから……ゆっくりと呟いた。
「彼女と話をしてあげて、ほしい」
その意味深な呟きの後ろに、この国を取り巻く大きな問題が眠っているなんて……この時は思っても居なかった。
茹だるような夏の暑さが辺りを包んでいて、空に輝く太陽の光が眩しい。沢山の人々が黒い服に身を包む中、私達は場違いな魔法少女の姿で花束を持ってその列に並んでいた。その中にはテレビで顔を見た事のある有名人や、国のお偉いさんの姿もある。
新しく立てられた公園の、その真ん中にある大きな……大きな黒い石碑。そこには、無数の文字列が彫られている。
「……黙祷」
集められた一同は何も言わずに、今は居ない人たちへと祈りをささげる。
この石碑に書かれているのは全て、名前だ。
それも、今はもう生きてはいない……故人の名前。
外敵に殺されたり、連れ去られて1月が経った人の名前がここに記されている。その中には当然、魔法少女だけでなく……軍や民間の人たちの名前も、載っている。
石碑に空白があるのは、その数が増え続けているから。今日も少しずつ、この石碑に名前が刻まれていく。外敵が居なければ、きっと今も生きていたであろう人たちの名前が。
こういう場は、あまり得意じゃない。それでも、この国で戦う魔法少女の頂点として……いや、魔法少女サテライトとしても、私個人としても来なくてはならないと思う。
献花を終えて、スピーチを卒無く終えたスクイレと一緒に壇上から帰ってくる。私は魔法少女の代表として、そして彼女の護衛としてこの式典に顔を出している。式が終わり、スクイレが歩いていく先に居たのは、オレンジをベースにした魔法少女衣装に身を包んだ少女。
必然的に、黒い服を着た人間が多い中で……そうではない人間というのは目立つ。目立つけど、意識を向けなければそこに少女がいる事に気付き辛かった。成程、そう言う事なのか。
「僕に何か用……って、スクイレちゃんじゃないっすか! それじゃあ、隣にいるのがあの?」
「そう、サテライト」
「通りで、僕の事を忘れてなさそうだなぁと思ったんすよね」
ずっ、随分と明るそうなボーイッシュな僕っ娘が現れた……こう……想定していたイメージ像とかけ離れすぎていて、一瞬反応が遅れてしまった。もっとこう、病み闇……って感じな雰囲気の娘だと思うじゃん。車内での話を聞いてれば。
「私がサテライトだよ☆何て呼べばいいかな?」
「僕はジェーンでいいっすよ、皆……というより、スクイレちゃんはそう呼ぶっす」
そんな中で車の中でスクイレが話してくれた内容を思い出す。
公園へと向かう行きの車の中で、やや気分が悪そうにしていたがポツリポツリと話し出す。
「今日式典に来るのは……これまで、沢山の魔法少女を救ってきた、影の功労者。記憶の魔法少女」
「神凪何某の話の時に少し出てきた子だよね、その子も来るんだ」
「自分が救いきれなかった魔法少女の名前を、毎年見に来る。出不精だけど、必ず」
随分と、正義感と言うか責任感が強い子だ。それゆえに潰れないかどうかが心配だが、その辺りのメンタルコントロールはスクイレが居るなら大丈夫だろう。それこそ、本人のメンタル以外は。
「……その事は、忘れて。今は、貴方がいるし。それで、その……」
「あっ、今日は尻尾はダメ。代わりに人形持ってきたから」
「……ふーん?」
さっすがに、今から行く用事が用事なだけに呆けた顔は見せられない。何処か残念そうにぬいぐるみを抱きしめて、酔い止めにするスクイレ。そんな彼女は、咳払いをしてから話を先ほどの魔法少女へと戻す。
「んんっ、話戻す。魔法少女の、魔法には。それぞれの体験や、記憶が反映される」
「色んな子が多いけど、医療系の魔法少女も多いよね」
「うん。そしてブレイディアは……炎に、グライシアは富士山で見た氷面鏡に。ティンカーベルは、時間の停滞を望んだ。これも異常だけど……」
その由来は何かが素晴らしかった、怖かった、楽しかった、なりたかったという理由が殆どだ。周囲のルールを変えたい、世界の法則を変えたいと強く思う少女はあまり存在しない。
「貴方は……例外。自分が一番正しくて、周りのルールが間違ってるなんて。普通、心からは信じられない」
「そう言われると照れるなぁ……」
「……うん」
ジトっとした目を向けた彼女は、改めて私に一つの問いを投げかけた。
「それなら、記憶を……記憶を、消したいと強く願ったであろう彼女は……どんな願いを、抱いたのだと思う?」
確かに、一体何があれば魔法が発現する歳で……そんな想いを元にした魔法が発現するというのか。それこそ、スクイレならその疑問を……いや、そういうことなのか。
「式典には彼女も来るから。顔を合わせてみて、ほしい」
「良いけど、彼女の……名前は?」
「彼女の名前は、魔法少女ジェーン・ドゥ」
明らかに偽名と分かる名前、それが意味するのはやはり……
「自分の
そんな事を言っていたからこそ……やはり実際に見た彼女とのギャップが凄まじい。
「どうしたんっすか、考え事っすか?」
「いやぁ、聞いてたよりも随分と可愛い子が来たなって☆」
「えぇ、ひっどいなぁ……どんな話を聞いてたんっすかぁ?」
心外だと言わんばかりに怒って、直ぐにカラカラと笑いだす彼女。
だけど、さっきの話を聞いてから見ると……そうやってカラカラと笑う彼女の顔に、何処か裏があるように思えてしまって仕方がなかった。
この度、は?負けないが?のR18版(FANB〇X?)の製作が決定、そして投稿も目途がつきました!
とはいえ、こちらでR18のリンクを張る訳には規約上いかなさそうなので
本日土曜日の夜22時ごろに
【R18】は?負けたいんだが?【あぺんど!】
というタイトルで投稿予定ですので、興味があればそちらを覗いてみてください。
今回は試金石として軽めの物を投稿予定ですが、5話の後とか、1話の前のお話とかもその内書くのでお待ちください。
亀更新が予想されるのと、クオリティの問題から書き直しをする場合がありますので先に断っておきます。続きを書くか、書けるかは完全にモチベと筆の進み次第です。