「は?負けたいんだが?」   作:天野ミラ

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39.サンドイッチアゲイン!……なんだが?

 お昼寝をするためには当然、寝る場所が必要になる。この辺りで一番近い家と言えば、必然的に魔協の本部……スクイレの部屋になる。そんな訳で部屋に着いた()()は、彼女のベッドへ腰かけていた訳だが……

 

「あっ、サテライト様ぁ♡あなたのナビゲーター、ベルが今馳せ参じましたよ♡」

「あっ、ベルちゃん……なんで?」

「何時もより、半音……高い」

 

 何故か、何故かスクイレの私室にベルちゃんが来たのである。いや、本当になんで……? ここに入れたという事は、スクイレが呼んだのは間違いないのだろうが……

 

「で、なんでベルまで呼んだわけ?」

「ルクス・ルクスリアとグライシアの双丘に勝つためには、サンドイッチが、必要……」

「はっ……えっ? 何でサンドイッチ?」

 

 一瞬素に戻って困惑の表情を浮かべるベルちゃん。まあそれも無理はない、いきなりサンドイッチと言われても何のことか分からないだろう。それにしても……

 

「意外だったよ、まさかそんな直ぐ呼び出せる仲になってたなんて」

「新星の方と、協力して仕事する、事も……多い」

「まぁ? 仕事とプライベートはしっかり分けるって言うか?」

「後は、写真とかグッズも自慢しあう」

「なっ、ちがっ……あれはベルが自慢してるだけだしぃ?」

 

 そんな関係だったのか、まあ彼女達が仲良くなるのは私としても助かる。そりゃあギスギスしてるよりも楽しそうな方が良いよね。

 

 

 そんな彼女に、かくかくしかじかと事情を説明したスクイレ。話半分で聞いていた彼女だが、内容を聞くにつれて少しずつ前のめりになっていく。

 

「つ・ま・り…………サテライト様といちゃいちゃして欲しいってことですか、そう言う事なんですよね!? なんだぁ、そう言う事なら早く言ってくださいよぉ♪」

 

 満々の笑みでベッドへと向かっていったベルちゃん、そんな彼女はベッドの上で手を大きく広げる。

 

「さあさあ、サテライト様♡お布団へ……!」

「……私の、部屋。なんだ、けど?」

「それってぇ、ベルに何か関係あるぅ?」

 

 ケラケラと八重歯を見せて笑う緑髪の魔法少女が、薄い胸をポンポンと叩いている。こっちへ来て欲しいという事なのだろう。そんな彼女に続いてベッドに入ると、後ろからスクイレもベッドへと入ってくる。こういう時に皺を気にしなくても良いから、魔法少女のコスチュームは便利だ。

 

 布団に入るなり遠慮がちに、ただしっかりとベルちゃんに抱きしめられる。此処まで走ってきたのだろう、少し息が荒い。走ってきただけ……だよね?

 

「おっ、推しが……推しが私の胸の中に居ます……! 私、旅行でくじに負けて、悔しいのと同時に安心しちゃって……」

「なっ、何で安心したの?」

「絶対粗相をしちゃうじゃないですか、推しと同じ寝床ですよ!? もし次があったらの為に百通りのイメトレをして来たんです……!」

「本当にしてるのは、ちょっと、引く」

「勝手にプライベートを見た挙句、引かないでくれませんか?」

 

 軽口を言い合える仲……というよりは、2人とも遠慮が無くなっているというか。それはともかく、私を物理的に挟んだまま言い争わないで欲しい。

 

「サンドイッチって……こうすればいいんですかね?」

「そう、そんな……感じ」

 

 私の首元へと手を伸ばして、顔を抱きしめるベルちゃん。それにしても三人で一つのベッドとは流石に狭いかなと思ったが、体格のお陰か3人で1つのベッドに収まっている。

 

「サテライト様っ……抱きしめた頭からもとっても良い匂いがします……」

 

 押し付けられたベルちゃんの胸元は、良い匂いがするもののやはり固い。それでも完全に無い訳では無く、確かに女性らしい膨らみを感じた。そして体温が高めだ、小さい子特有の体温の高さ。

 

「えっ、えいっ。どっ、どうかな……」

 

 後頭部には、ぴったりとくっつくスクイレの薄い胸。とく……とくと心臓の鼓動を間近に感じる。頭の上に顎が載りそうなくらいの位置に顔があるので、彼女の声質も相まって耳が擽ったい。

 

「顔、近いんだけど?」

「仕方、ない。我慢して?」

「はーっ、今回だけですからね?」

 

 ちっちゃなおててで、私の耳元を撫でたり頭を撫でたりする2人。ぎゅっぎゅっと押し付けられたお胸は、良い匂いがするもののやはり……包み込まれるような感触はない。

 

「サテライト様は、どっちのお胸が好みですか?」

「……条件が違う。そういうのは、ズル」

 

 競り合うように押し付けられて、二人分の心臓がどくんどくんと跳ねているのが分かる。二人の緊張が感じられて、私も少しだけ恥ずかしくなる。

 

「……分かってた、けど。身体の大きさ、足りない」

「包み込むには身長が足りないですね。サテライト様……縮めたりしませんか!?」

「わっ、私を何だと思ってるのかな?」

 

 神のように崇めてくれるのは良いけど、何でもかんでもできる訳じゃない。精々が尻尾や耳を増やしたり……あっ、そう言えば……

 

「お胸が小さいとぉ、こうやって抱きしめた時にお顔が近いのは良い事ですよね♡」

「サテライトのお耳、美味しそう」

「あっ、耳は私のなんですから!」

 

 いや、どちらのものではないし……とは言えなかった。押し付けられた胸部のせいで、少し息苦しい。まあ、この幸福感に包まれたまま意識を失うのも良いかと思いかけていた所……いや、良い訳が無かった。お昼寝しに来た訳で、気絶したい訳じゃない。

 

「さっ、流石に苦しいかも……」

「むぅ、失敗……」

「そもそもぉ、お胸のサンドイッチ? に拘る必要なくなぁい?」

「でっ、でも……」

「別に競わなくてもぉ、持ち味を活かせばいーじゃん♪」

 

 そう言って布団へと潜り込むベルちゃん、子供体型を活かして私の腹部にピッタリとくっつく。

 

「そういうのも、ある? 成程」

 

 それに続くように、布団へと潜り込むスクイレ。こうなると別に横になって寝る必要も無いので必然的に仰向けになる。

 

 そんな私の腕を枕にするようにして、ぴったりとくっついている二人。小さい子特有の体温の高さから、皆で寝る為に低めに設定したクーラーが効いた部屋でもかなり暑い。

 

「すんすん、サテライト様の匂い……好きです。好き、好きっ……」

「流石に、流石に私もそんなに身体に鼻を近づけられると恥ずかしいって言うか……!」

 

 乙女だし、暑いと汗の匂いとか気になって仕方ない。そんな私の心情を知らずに、すんすんと私の匂いを堪能しようとしている緑髪が布団の中でぴょこぴょこと揺れ動いている。

 

「あっ……お嫌でしたか?」

「うっ、ううん? 恥ずかしかったけど、褒められるのは……嬉しいかも?」

「じゃっ、じゃあ続けさせていただきます……!」

 

 くんくんと鼻を鳴らしてみたり、肺一杯に息を吸い込んでみたり。私の身体に顔を近づけて好き放題している緑髪のメスガキは、身体に抱き着いたまま私の匂いを堪能している。

 

「シャンプーとコンディショナーの匂いに隠れた、桃みたいな香り……」

 

 ちゃんと褒めてくれて、好きって言ってくれるので何だかんだ許してしまう。ファンと崇拝対象としてはあまりにも近すぎる距離感、だけど私はこの距離感を不快には思っていなかった。もしかして私、ちょろいのかな……

 

 でも嗅がれるとなると、途端に匂いが気になってくる。普段から気にしてはいるものの、それでもだ。確かに絶世の美少女である私は、匂いも良い匂いではあるんだけど……!

 

「サテライト、顔が赤い。照れてる」

「ちっ、ちがっ……」

「私も、堪能する……ね?」

 

 あえて、気になっているというのに脇本へと鼻を近づけていくスクイレ。熱い、暑いじゃなくって顔が暑い。腕を枕にされているせいで動きたくても動けない。

 

「汗、かいてる。暑かったりする?」

「あっ、本当っ……? いっ、いやぁ……」

「そういう、こと? 恥ずかしさで、発汗。良い匂い」

 

 分かって、分かって言ってる……! 顔から火が出そうだった。我慢しようと、気にしないようにしようと思えば思う程気になってしまう。たっ、頼むからどいて……!

 

「二の腕も、ふにふに。柔らかくて、気持ち良い」

「二の腕って……確かおっぱいと同じくらいの柔らかさなんですよね!」

「ねぇ、なんで今そう言う事言うの?」

 

 二の腕をもんでから言うセリフじゃ絶対ない、しかも止める気配も無いし。

 

「あばら骨すら愛おしいです……ちゅっ♡」

「流石に、私には……分からない」

「分からなくて良いと思うよ?」

 

 そのままずっと、ちっちゃな二人に身体を良いようにされながら二人の好意を一身に受けて、甘えられているとお胸の奥がむずむずしてくる錯覚を覚える。これが……母性か……

 

 数分して、温かさと安心感で眠くなったのか私に抱き着いたまま眠り始めたベルちゃん。

 

「すぅすぅ……サテライト様ぁ……えへへ……」

 

 こうして眠っているとやはり美少女だ、言動がおかしいだけでカリスマもあって頭も良い。

 

「どう? 良かった……?」

「うん、とっても良かったよ。その、恥ずかしかったけど……」

 

 スクイレは私の内心を覗いて、心の奥底で望んでいる事を的確に選んでくれる。最近は他の子と少しずつ交流を増やしてくれていて、嬉しい限りだ。

 

 私も少しずつ、うとうとしてきた。心地良い午後の微睡の中で、そのまま眠りにつこうとして……

 

「うぅ……サテライトママぁ……はむっ」

「───っ!?」

 

 寝惚けているであろうベルちゃんが近くにあった双丘に甘噛みをして、思わず声にならない悲鳴を上げる。恐らくはお母さんに甘えるように、夢の中の私に甘えているのだろうけど……

 

「ちょっ、腕離すかスクイレ止めて……!」

「うん、今っ……」

 

 きっと、わざとではないのだろう。スクイレも驚いた顔をしていたし。運動神経の良い方ではないスクイレは、寝起きの血糖値の低さもあってふらついてしまったのだろう。問題なのは、手を突いた先にあったのが私のお胸だっただけで。

 

「あっ、待っ───♡」

「んっ、ママぁ……あったかい? それに濡れて……濡れて?」

「ごめん。本当に……ごめん」

 

 びっしょりと、衣服を濡らして水滴がふとんを湿らせている。それも……上の方から。

 

「なんですか、これ……甘いような……サテライト様!?」

「おっ、落ち着いて?」

「おち、おちちっ……落ち着いていられる訳無いじゃないですか!?」

「いやぁ、それは……そうなんだけど……」

「ごごご、ご結婚されたんですか!? 相手は……いや、ファンとしては素直に祝福を……でも!?」

 

 最悪だ、今朝こうならないように絞って着たのに。もう一周回って冷静になってきた、このまま逃げ出したら無かったことにならないかなぁ……ならないか……

 

「いやっ、やっぱり嫌です……! せめて私より、サテライト様の事が好きで経済力があって幸せにしてあげられる人じゃないと……!」

「いや、同率はいるかもしれないけどさ。ベルちゃんより私のファンだって人はいないと思うよ?」

 

 少なくとも私の為に組織を作ってトップを献上しようとしてきた奴は二人しかいない。一人はベルちゃんで、一人は……

 

「……黙秘権を、行使する」

「語るに落ちてるじゃん」

「そんなことよりぃ、お相手は誰なんですかぁ!?」

 

 自分より動揺している人を見ていると逆に落ち着いてくるという奴だろうか。それとも現実逃避をしているだけなのか。まあ、こうなった以上は隠しきることは不可能だろう。諦めて、昨日会った出来事を語りだす。

 

「いやぁ、その……昨日ルクスと色々あって……」

「色々って何ですか!? あっ……したんだ!? せっ……むぐっ!?」

 

 思わず取り押さえられるベルちゃん。色々あったのだ、本当に色々。*1

 

「ほんと、人助けの為だったの。その、期待してなかったわけじゃないんだけど……」

「どんな人助けをしたら、しちゃったらこうなるんですか……?」

 

 暴走した後、愛憎入り混じった顔で私のお腹を撫で始めたベルちゃんに何とか事情を説明終わったころには……既にお昼寝をするのには目が覚め過ぎていて。

 

 まあ結論から言えば、魔力供給の為だった、そう、それ以上は聞かないで欲しい……

 

「じっ、事情は分かりました……けど。えっ、じゃあ張っちゃって大変ってコトですか?」

「まあ、そうかもしれないけど……お風呂場とか借りれれば自分で」

「じゃあ、おっ、お手伝いさせてください!」

「さっ、流石に!? ダメだと思うよ、倫理的に!?」

「あっ、赤ちゃんの寝かしつけみたいなものですから……!」

「ベルちゃんはそれで良いの!?」

 

 小学五年生が自らの尊厳を捨ててまで私を求めている、最早執念染みたものを感じる。まぁ、そこまで言うなら? 別に減るもんじゃないし、私はちょっと恥ずかしいけど。ファンの為に一肌脱ぐのも吝かでは無いかもしれない。

 

「どっ、どれくらい『お手伝い』したいの?」

「……預金通帳を渡せます」

「私も、渡せる。むしろ、受け取ってほしい」

「そっ、そんなに?」

 

 だめだ、止まれ私。そのラインは今までのラインとは別方向に超えちゃいけないラインだ。でも、こんな背徳的なシチュ……いや、流石に私も羞恥心の方が強くて……

 

「そっ、それじゃあ……優しくしてね?」

「はいっ!」

 

 してね? じゃないんだよなぁ……なんて許可を出してから言うあたり、私はちょろい女に分類されるのだろう。諦めて仰向けに寝っ転がると、四本の腕が胸元まで迫ってくるのを感じた。

 

 

 

 

 流石に二週回って恥ずかしくなってきて、顔を手で隠す。その方がエッチだとか言われたけど、そんなこと気にしてられない。恥ずかしさで悶死しそうだった。

 

「ふーっ、ふっ……♡」

 

 布団の中からもぞもぞと動く音と、ちゅーちゅーと何かを吸う音が室内に響き渡る。流石に恥ずかしすぎて、顔が真っ赤だ。声が出ないように、必死に奥歯を噛みしめる。

 

「こんな味……なんですね。なんていうか、濃厚? で甘くて……」

「普通はこうは、ならない。ルクス・ルクスリアの……仕掛けのせい」

「冷静にっ……味の感想を言わないでくれない……?」

 

 舌のざらざらとした感覚と、歯が当たる度に身体がピクンと跳ねる。恥ずかしい。恥ずかしい、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい……恥ずかしい……

 

 スクイレには顔を見られたくないなと思った瞬間、彼女が顔を出してきてじっと私の目を見つめる。そのまま彼女は、口を開いて中にあるものを私に見せつけるように舌で転がした後、ゴクリと喉を鳴らして飲み干した。

 

「いっ、意地悪っ……♡」

「でも、嬉しそう。変態さんだ……ね?」

 

 そう言われると何も言い返せない、事実として背中がゾクゾクとして……仄暗い感情が胸中を占めているのだから。母性と、羞恥心と……劣情と。その全てが綯い交ぜになって、頭がおかしくなりそうだった。いや、もう手遅れなのかもしれない。

 

「か───ぷっ♡好きっ、好き♡可愛いですよ、サテライト様♡」

「んっ♡」

「頬赤くした所もとっても可愛いです。カッコいい所も好きですけど、可愛い所も大好きです♡」

 

 舌で転がしたり、甘噛みしたりしながら味わっている彼女は……事あるごとに形が良いだとかハリがいいだとか顔が良いとか……私を褒め殺しにしている。

 

 きっと私は今、随分と蕩けた顔をしてしまっているのだろう。こんな事に慣れたら駄目だ、そんな事は分かっているけど……この二つの魔力に抗えない。

 

「もうちょっと、ゆっくり……♡」

「ちゅっ、ちゅ……」

「優しすぎても、変にっ……♡」

「」

 

 ただの医療行為、医療行為なのに……おかしい、普通じゃない。それでもルクスにかけられた魔法は私の身体に馴染み過ぎていて、どうしようもなく……気持ち良い♡

 

「サテライト様?」

「んっ……何、どうした……の?」

 

 すんすんと、鼻を鳴らすベルちゃん。そんな彼女が言う事が容易に想像できてしまった。何より、それを一番理解しているのはほかならぬ私自身なのだから。

 

「すっごいえっちな匂いがします、もしかして……期待、してくれてます?」

「何かして欲しい、事があったら。言って?」

 

 私の内心なんてお見通しだろうに、あえて私の口から言わせようとしているスクイレ。

 

「私も、私も理性が限界で……お辛そうなサテライト様の『お手伝い』させて欲しいです♡」

「お母様には、連絡しておく。今日は、泊まるって」

 

 お昼寝、お昼寝だけのつもりだったのに……まるで悪魔の誘いのように私を……

 

「私、もうちょっとだけサテライト様と居たいなって。ダメ……ですか?」

「私も、一緒に居たい」

 

 そんな、寂しそうな上目遣いでお願いされたら……

 

「ダメじゃない……よ?」

 

 ……言った、言ってしまった。

 今更やっぱなしとは、言い出せない雰囲気。

 

「やったぁ♪ えへへ、それじゃあ……」

「一杯気持ちよくしてあげる、ね?」

 

 

 嬉しそうに頬を緩ませた2人に、まあそれも良いかと流れに身を任せて……

 

 

 

 

 

 結局、解放されたのは日が暮れてからで……

 夕飯を三人で食べる事になるなんて思っても無かった。

*1
あまりにも過ぎたのでお蔵入りした、FANB〇Xが出来たからそっちでやるかもしれない




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