「は?負けたいんだが?」   作:天野ミラ

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映画一本頭の中で作ってたら思ったより時間かかりました。
前編は微妙にモチーフが合ったりなかったりします。


42.映画デートなんだが……!?後編

 次の映画は午後3時。流石にお腹も減ったので、近くのカフェでお昼と感想戦と洒落込むことにする。映画も好きだけど、それと同じくらい映画の感想を言い合うのは好きだ。

 

「それじゃあ私はAランチセットと……ドリンクは紅茶で」

「じゃあ僕もそれにするっす! 飲み物はオレンジジュースでお願いするっすね」

 

 どうやらしっかり楽しんでくれたみたいで、映画が終わった後の興奮も冷め止まぬ……と言った様子で腕をブンブンと振っていたジェーンちゃんが可愛らしかった。

 

「「ふぅ……いやぁ……」」

 

 かくいう私はと言うと……

 

「結構面白かったね?」

「いやぁ、サテ……姉御にも楽しんでもらえて良かったっす!」

「あっ、姉御? まぁ久しぶりに見たけど……やっぱりかっこよかったね」

 

 ……意外にも、結構楽しめたのである。

 

 一時間の予習が効いたのもあるだろうし、映画自体のクオリティが高かったのもあるのだろう。

 特に最後のキックは良かった、ああいうのってやっぱりロマンがあるよね。

 

「私もキックとか遠距離武器の練習しようかなぁ」

 

 こう……必殺技! っていうのあるとやっぱり見栄えが良いよね。

 

 私のサテスマって殴ってるように見えて、消し飛ばしてるだけだから……

 こう……エフェクトとか欲しい。頑張ったらできたりしないかな。

 

「……これ以上強くなって、何を倒すつもりなんっすか?」

「えっ……世界征服を企む悪の組織とか?」

「この前、神凪グループを潰したばっかじゃ無いっすか……」

 

 神凪何某……そんなのも居た気がする。確かにスクイレが攫われていたら世界くらい取れそう……か? まあいいや、どうせ万が一にでもそんな事にはならないだろうし。

 

「ランチのアマトリチャーナになります。デザートは食後にお持ちしますね」

「ありがとうございます」

「アマっ……あまま? さっ、最近の女の子は随分とお洒落なモノ食べてるんすねぇ……」

「言う程かなぁ……トマトソースのパスタだから、アラビアータとかミートソースとそうかけ離れたものじゃないよ?」

「最近の若い女の子は皆そう言うんっすよ!」

 

 まるで自分が男の子かのような発言だった。どう見ても可愛らしい女の子だし、歳も私とそう変わらないように見えるのに。

 

 それにしてもサラダにメインとドリンクにデザートがついてこの値段とは、まあ随分と良心的だった。味も美味しいし、また映画に来た時は此処を利用しても良いかもしれない。

 

「ジェーンちゃんって、仮面ライダーとかロボットとか結構好きなの?」

「そうっすね! やっぱ格好よくて……僕もあんな風になれたらなぁって。姉御は凄いっすよねぇ……自分よりも大きな外敵に、臆する事も無く立ち向かえるんすから」

「まあ、そうでもある……かな?」

「ふふっ、なんすかそれ」

 

 図体が大きいとか、強そうだとか考えて戦った事があんまり無かったとはとてもじゃないが言えない。どうせ私より弱いし、地球が動くより早く動いている敵を見た事が無いし。

 

 あっ、でも図体がおっきければそれだけ……<自主規制>もおっきくて、えへへ……

 

「それで、実はあの映画のシーンの変身って初代のオマージュになってて……!」

「あっ、私も知ってるよ? へーんしん! ってやつでしょ?」

「そうっすそうっす! それでそれで……!」

 

 あっぶね、軽くトリップする所だった。

 

 それから暫く映画の感想や、是非見て欲しい戦隊ものの布教をされたりして時間は過ぎていく。楽しい時間はあっという間と言うべきか、気づいたら目的の映画の上映三十分前になっていた。

 

 

 

 売店でキャラメル味のポップコーンドリンクを買って、劇場へと向かう。やはり恋愛映画というだけあってカップル連れが多い気がする。それとは女の子のグループ、これは純粋に友達と見に来たのだろう。

 

 ただジェーンちゃんは劇場へ行くのに何処か二の足を踏むような様子だった。

 

「その……僕が恋愛映画なんてこう……場違いじゃ無いっすかね?」

「えっ、なんで?」

 

 何をまごまごしているのかと思えば、随分と可愛らしい悩みだった。

 

「いや……その……似合わないというか……」

「映画を見るのに似合うも似合わないも無いでしょ。別におじいちゃんおばあちゃんになってからプイキュア見たって良いんだよ」

 

 他者の目を気にして何か出来るかという話だよね。一人で焼き肉でも遊園地でも好きな所に行って、好きな事をすればいい。

 

「自分が何が好きかなんて、自分の勝手でしょ」

「そういうもん……っすかねぇ」

 

 周りの目が気になって楽しめないなんて、とっても勿体ないと思う。それに……

 

「それにジェーンちゃんは、十分可愛いと思うけどなぁ?」

「かっ、かわっ……!? もう……スクイレちゃんの次は、僕っすか?」

「まさかまさか、下心無しの本心だよ?」

 

 本当に素材は良い、ボーイッシュな魅力もあるけど可愛らしい恰好をしても十分似合うだろう。

 ただこれ以上の追及は止めておこうかな、あまり粉をかけるなって釘刺されてたし……

 

「もうっ、さっさと劇場に行くっすよ!」

「ごめんごめん、照れないでよ」

「照れて無いっすから!」

 

 ぷんぷんと少し早足で歩いていく彼女には、尻込みしそうだった先ほどの面影は欠片も無かった。

 

 

 

 席に座り幾つかのCMが流れて、それから遂に……『君のオト』の上映が始まる。

 

 ヒロインの女の子は、吹奏楽部の高校生の女の子。そんな彼女が部活の帰りに、誰も居ない教室でフルートを吹いている一人の少年と出会う事から物語が始まっていくのだが……

 

 当然だが、男女の恋愛のお話だ。一応念のため言っておくと、私の周りがこう百合百合しいだけで……一般的な価値観で言えば、女の子同士というのは十分マイノリティに分類される。

 

<君、吹奏楽部には入らないの?>

<吹奏楽はもう……止めたんだよ>

 

 プロ顔負けの実力を持ちながら吹奏楽部に入らない、何処か刺々しい態度の男の子。上手では無いものの……誰よりも熱意をもって吹奏楽部に打ち込む明るい女の子。

 

<下手くそ。タンギングが下手なんだよ、こう舌を……>

<こっ、こう? とぅーとぅー>

<ふっ、間抜けみてーな顔>

<しょ、しょうがないでしょ!?>

 

 両極端な二人が吹奏楽を通じて惹かれ合っていき……

 

<お前に……何が分かるんだよ>

<分かんないよ、分かんないから……聞いてるの>

 

 衝突も有りながら、次第に放課後の空き教室で一緒に練習をするようになる2人。

 

 しかしそんなある日。大きな大会を前に、フルートを拭いている部員の一人が自転車の事故で利き腕を骨折してしまう。助っ人として、彼を誘ってみたものの……返ってきたのは、強い拒絶。

 

<言っただろ、もう吹奏楽はやんねぇって>

<……ごめんね、無理に誘ったりして>

 

 欠員が出たまま迎えた大会の当日。助っ人として駆け付けた彼が、一瞬だけ視線を寄越す。その後ステージの照明がパッと明るくなって、演奏が始まった時の躍動が私達にも伝わってきたようだった。

 

 大会は金賞、無事大成功に終わったものの……負い目からかなんとなくその日は話せないまま会場を後にする彼女。何時ものように待っていた放課後の空き教室に、彼は現れて。

 

<どうして……来てくれたの?>

<別に。お前となら演奏するのも……悪くはねぇかなって、思っただけだから>

 

 頬を赤らめて素直になりきれない彼に、女の子が……という所でカーテンが風でふわりと舞って二人のシルエットだけが映し出される。夕焼けが綺麗な窓に、フルートの音色が響いて……エンディング曲へとつながる。

 

 エンドロールが流れるのを茫然と見ていた。画面の前の私ですら、甘酸っぱいなって思う位には良い映画だった。この余韻すら気持ちが良い、感想戦が楽しみだなと思って……ふと様子が気になって見てみると。

 

「良かった、良かったっすね……」

 

 目元を赤くしていたのを見て前を向き直す。こういう時に指摘するのは、野暮と言うものだろう。少しだけ残った塩味のポップコーンを食べつつ、そんな事を思った。

 

 


 

 

 辺りはすっかり夕方になっていて、2人で映画の感想を語らいながらも帰路を歩く。

 

「恋愛映画ってあんまり見なかったんですけど……良かったっす!」

「いやぁ、恋愛要素も良かったけど……演奏も良かったね?」

 

 そう言ってもらえると、選んだ私としても一安心である。

 

「記憶を消してもう一度見たいくらいっすね……! いや、僕が言うと洒落にならないっすね」

「ふふっ、確かにそうかも。でもその意見には賛成だなぁ……いやぁ、本当に良い映画だった……」

 

 どちらの映画もとてもいい映画だったと思う。この後帰ったら、テレビシーズンも見てみようと思う位には気に入っていた。女の子と言えばぷいきゅあ、男の子と言えば戦隊もの……みたいな、固定観念はどうしても学校に居ると感じるけど。

 

「周りの目とか、気にしてたら勿体ないでしょ?」

「そうっすね、確かに……周囲を気にしてたら、この映画を見る機会も無かったんっすよね……」

 

 結局誰しも自分が一番可愛いのだ、そうでないと……いや、なんでもない。

 

「気になる人も居るってのは理解してるけどね、でも気にしない方がきっと……楽しいよ?」

「そう……っすね!」

 

 話に華が咲いて、いつの間にか彼女の住む寮の前まで辿り着いていた。

 

「送ってもらってありがとうございました、今日は楽しかったっす!」

「こっちこそ、とっても楽しかったよ」

 

 ジェーンちゃんは敷地の前へと辿り着くと、こちらに向かって大きく手を振っている。

 

「次は……ジェーンちゃんから誘ってくれたりする?」

「あっ、えっと……はい、頑張るっす!」

 

 無意識ではあるのだろう、だけどやっぱり……誰かを誘う事を無意識的に負担に思っている。結構仲良くなったとは思うのだが、それでもやっぱり心の何処かで他人を遠ざけている。これは中々、根深そうな問題だった。

 

第一章で続きが見たいお話のアンケート(第一弾)

  • 0.或る魔法少女の結末
  • 2.5.淫魔たちの牧場見学なんだが?
  • 7.5.ご主人様と躾の時間……なんだが?
  • その他(コメントまでどうぞ)
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