今日、私は自分の部屋で……とある少女の……膝の上にいる。
何処か不機嫌そうに私の頭を撫でる手、そんな彼女の顔は笑ってはいるものの目元が全く笑っていない。結構……おこだ。怒っているというより、嫉妬という方が正し……
「ひゃん!?」
「今、何か失礼な事を考えましたわね?」
「いや、全然……」
お尻に軽いスナップを利かせた一撃を加えられる、痛いけど気持ちい……‥じゃなくて。
女の子と映画を見に行ったことはいつの間にかバレていて……どころか、直近であった事は殆どがバレていた。いや、別にやましい事をしていた訳じゃないし? 全ッ然、隠すつもりも無いんだけど……
「魔協でのお泊りは、さぞ楽しかったと聞きましたわよ?」
「くっ、クロエちゃん……ごっ、ごめんなさい……」
「いやですわね、そんなに怯えられると私が怒っているみたいではありませんの」
「いや、実際怒って……ひゃん!?」
口をへの字に曲げたクロエちゃんに、口答えをする度にお尻を叩かれる。あっ、折檻されてるみたいで興奮する……じゃなくて?
「スクイレもティンカーベルも、随分と面白い
「ひゃっ、それは忘れて欲しいというか……」
「わたくしも、まだですのに……」
「なんて?」
彼女が怒っている原因は分かっている。確かに最近色々あって、4日くらい会ってなかったけど……言うて4日だよ? いやまあ、確かに私もクロエちゃんに会いたいなって思ってはいたんだけど。
「……本当ですの?」
「もしかして、声に出てた?」
恐らくは無意識的に、口から出ていたのだろう。私の頭を撫でる手が優しい。それに何処か上機嫌そうだった。私が言うのもあれだけど、ちょっとちょろ過ぎやしないか?
「自分でも重いとは思ってますのよ、でも暫く会わないと貴方が居なくなった時の事を思い出して……寝付けないのですわ?」
「あぁぁ!? ごめんごめんごめん、本当にごめんね!?」
私のせいで、消えない傷を負わせかけている。その件に関しては本当に申し訳ないと思っていて。誠意だ、誠意を見せないと……ちょっとくすぐったいけど、背に腹は代えられない……!
「ほらクロエちゃん、好きなだけモフモフして良いから!」
「別に、いじけてなんてませんけど……仕方ありませんわね……」
キツネ耳と尻尾を一本だけ出して、ベッドにごろんと横になる。少し使い方を練習したら、神通力もそれなりに形になった。それと、ケモ度を変えられるようになってきた。今は鼻先と手をキツネっぽく近づけられるようにまで進化? した。大体ケモ度30%と言う所だろうか。
中々にこの能力、奥が深い。正直いらんとか言って申し訳なかった、シラユリ様……*1
「こん、こんっ♪」
愛くるしいお顔に、可愛らしいキツネ耳と尻尾。こんなキュートな存在がお腹を見せてベッドに転がっていれば、モフりたくなる事間違いなしだろう。さぁ、来い! 思う存分私を甘やかしていいぞ……!
「……誘ってますの? 誘ってますのね? これは、据え膳食わぬはなんとやらですわね……」
「ちょ、待って? 違っ……♡」
そもそも据え膳を食べなくて恥をかくのは男の人だし……! なんて言葉は声にならず、それはもう存分にモフられ尽くした私だったが……今日は何とか意識を失わずに済んだ。別に一日中モフられ尽くしても良いが、いや良くないが……
そもそも最近、淫紋がどうとか関係なく機会があればえっちな事をしている気がする。
健全な女子中学生として、これは如何なものなのだろうか。まあ今更か……?
次の日、私達は都内のとある住宅街へと向かっていた。
「昨日あれだけ言っておいて別の女の話とは、大概図々しいですわね……」
「でもそう言いながらついて来てくれるところ、私好きだよ?」
「すっ……仕方ありませんわね、貸し一つですわよ?」
ベルちゃんに渡された封筒の中に入っていたのは、住所だった。つまりはあの期間で、彼女の住んでいたであろう家まで突き止めてしまったのだろう。なんという行動力とサーチ力、やはりベルちゃんは天才なのかもしれない。
ジェーンちゃんについての情報が書かれているというこの封筒の中身を、開くかどうかは非常に迷った。それでも開ける事にしたのは……彼女がもっと誰かと話したがっているように見えたから。
「深くは聞きませんけど……よく考えての決断ですわね?」
「勿論、考えた上で……私がするべきだと思っての決断だよ」
「えぇ、ならもう何も言いませんわ」
例え消したいほど嫌な記憶だったとしても、知るべきだと思った。そうじゃなきゃ……このままじゃ彼女は孤独な人生を歩むことになりかねない。彼女がなぜ無意識に人を避け続けるのかが分からなければ、解決の糸口は何時まで立っても見えない。
この判断はきっと、世間一般からすれば間違っているのかもしれない。だけど、人の隠していたプライベートを覗き見る事だとしても……私はやる。私がするべきだと、思ったから。
「ぱっと見は普通の一軒家ですわね」
書かれていた住所にあったのは、なんら変哲の無い一軒家。
「とは言え外から眺めてても分かんないからさ、お邪魔するしかないよね?」
「それで……不法侵入ですの? とんでもない行動力ですわね」
外から見て特におかしな点は無いが……カーテンが閉め切られていて中の様子は分からない。二階の窓が開いている事から、そこから中に入る事は出来そうではある。
「まあ別に不法侵入なんて今に始まった事じゃありませんけど……氷面鏡」
氷の鏡を作り出す魔法である氷面鏡。姿を消したり偵察したりと非常に器用な魔法である。
偵察や潜入といった情報収集にこれ以上ない程優秀な魔法。セキュリティの薄い一軒家に侵入する位なら、容易いモノである。
神凪何某の工場だったり本社ビルだったり、色んな所に無断で侵入しておいて法が何だとか今更と言うものである。まあどうせ、魔法での犯罪なんて立証しようがないし。魔法少女に法は適用されないとは、こう考えると恐ろしいモノだ。
ここから先は、声を出すわけにはいかない。こんな時こそ、シラユリ様の力を使う時だ。
<それじゃあここから先はこれで>
<あっ、頭の中に……本当に何でもありですわね……>
<さすがシラユリ様だよね>
テレパシー能力、確かに狐の神っぽい能力だが……こんな簡単に使えるとは思っても居なかった。
本当に勘弁してほしいのじゃ!? なんてキツネの声が聞こえた気がするが、こんな所にシラユリ様がいるわけがない、気のせいだろう。
窓の開いていた部屋は寝室のようで、侵入しておいて今更ながら申し訳なさが積もる。
<廊下には誰もいませんわよ、それにしても……>
<煙草とアルコールの匂いがキツイね……>
噎せ返るようなニコチンとアルコールの混ざった臭い、吸い殻と空き瓶が足の踏み場もない程に寝室に転がっている。育ってきた環境が良いとは思っていなかったが、これがマホ横にいるような……新星魔法少女協会が救ってきたであろう少女たちの
<家主は一階に居ますわね、ジェーンさんが使っていた部屋は恐らく……こちらですわ>
<うん……行こうか>
何か手掛かりになるようなものがあればいいのだが、それはそれとして嫌な予感がしてならない。覚悟はしていたけど、こういう環境を目の前にすると……うん。
ぎぎぎと、少し立て付けの悪い扉を開いた先にあったのは物置のように使われていた部屋だった。机やベッドがあるので、誰かが住んではいたのだろう。だけど住んでいたという記憶が消えた結果……不自然に部屋だけが片付けられずにそのまま残った。
例え肉親であろうと、綺麗さっぱり記憶を消せる魔法。実際にその効果を見ると……改めて強力だと感じる。そうでもなければ、トラウマを負った少女たちの強烈な凌辱の記憶なんて消せやしないのかもしれない。
ただ部屋自体に特に珍しいモノは見当たらない。部屋の中に日記がある訳でも無ければ、机の中にあったのも勉強で使われたであろうノートと筆箱くらい。あえて言えば、私物の類が極めて少ない事か。
捲っていたノートを閉じて、机の引き出しの中に戻……す?
<……この家って、何人家族?>
<何人って……成人の男性と女性だけですわ。靴の数からしても、他に誰かいる気配はありませんもの>
そんな、そんな事があり得るのか? だとすれば彼女の態度は……そんな事が、有り得ていいのか? 否定し続ける意志とは別に、思考は何処までも冷静に一つの推測を導き出す。
<ノートと筆箱に書かれた……名前>
<ユウタロウ……? ちょっと、ちょっと待つんですのよ。この家庭に他に男の子なんて……!?>
【僕はジェーンでいいっすよ!】
ボーイッシュな格好が好きなだけだと思っていた。
【そうっすね! やっぱ格好よくて……】
男の子みたいな趣味も、本人の趣味嗜好によるものだと。
【その……僕が恋愛映画なんてこう……場違いじゃ無いっすかね?】
まるで自分が女の子の趣味を堪能するなんて、おかしいって反応も。
その反応と名前から導き出されたのは、実の両親が彼女の人格を認めていなかったかのような結論。
<記憶の魔法少女……ジェーン・ドゥは……>
実の両親から、男の子として育てられていたという事だ。
は負けの15万UAも間近ですね、何時も応援して頂いてありがとうございます。
そんな訳でここまで応援して頂いた読者の皆様に感謝を込めて、【あぺんど!】の方で見たいお話の第一回アンケートを実施したいと思います。良ければ参加していってください。
第一章で続きが見たいお話のアンケート(第一弾)
-
0.或る魔法少女の結末
-
2.5.淫魔たちの牧場見学なんだが?
-
7.5.ご主人様と躾の時間……なんだが?
-
その他(コメントまでどうぞ)