「は?負けたいんだが?」   作:天野ミラ

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『質感』を意識していきたい


49.事後の後の朝ってとっても気まずいんだが?

 目が覚めて、ベッドから起き上がろうとして……動けない。

 

 というのもクロエちゃんに後ろからギュッと抱きつかれていたからだ。豊満なお胸がこれでもかと後頭部に押し付けれていて、それだけで幸せな気分になる。

 

 それと、男性の『それ』は……まるで初めから無かったかのように無くなっていた。

 全部出しきったからだろうか、分からないけど昨日のは流石に……張り切り過ぎだったと思う。

 

 昨夜、彼女のタガが外れたように、只管に虐め抜かれて……結局私が解放されたのは、結局外が明るくなり始めた頃だった。

 

 こうして起きたのは昼前だったが、まだお腹の奥の方にドロっとした液体が残っているような気がする。

 

「んっ……」

 

 そんなクロエちゃんも目を覚ましたのか、首元に回されていた手がモゾリと動く。その腕は下の方へと伸びていき……

 

「んひゃっ!?」

 

 ギュムっと私のお胸を鷲掴みにした。

 

 思わず悲鳴を出してしまってクロエちゃんを起こしてしまったわけだが、私は悪くないだろう。ただでさえ最近色々あって敏感なんだから、あまり刺激しないでほしい。

 

「あっ、申し訳ないですわ。少し寝惚けていて……その、夢かと」

「むぅ。夢の中で何をしてたのか、気になる様な事言うね?」

 

 そんな彼女は悪びれる様子もなく、そのまま手をどける様子は無い。

 

 だけどそんな柔らかい手の平の感覚を、楽しみ始めている自分もいた。

 

 こう、包まれてるみたいで安心するといいか気持ちいいと言うか……そんな感じで。昨晩まではこう言う感じじゃ無かった気がする。

 

 

 ようやく意識がハッキリしてきたのか、私の胸元に伸びていた腕は引っ込められたものの……頬をムニムニと摘まれている。まるで宝物を触るかのように、そのまま髪を撫で……ペタペタと喉元を触る。

 

 くすぐったくなって身動ぎすると、お尻がヒリヒリと痛む。テンションが上ったクロエちゃんが何度も叩くものだから、随分と真っ赤になっていると思う。

 

「ううっ、まだジンジンする……お尻が2つに割れちゃいそう……」

「またバカなことを、元から割れているじゃありませんの」

 

 そう言いながらも、お尻を優しくさすってくれるクロエちゃん……本当に善意だよね? 可愛い私のおケツを触りたいわけじゃないよね? なんかこう、手つきがちょっとイヤらしいと言うか……まあ良いか。

 

「歩くのも辛いから、お姫様抱っこしてよ。ね、クロエちゃん?」

「全く、今日は随分と甘えん坊ですわね……良いですけど」

 

 もう少しスキンシップをしていてもいいが、そろそろ起きていかないとクロエちゃんのご両親にも怪しまれるだろう。もう手遅れな気もしなくもないが。

 

 そう思って上体を起こすと……胸元にくっきりと真っ赤なキスマークの痕がついているのを見て、サッと血の気が引いていくのを感じる。この様子だと、背中や首元にも随分と……

 

「うわっ、どうしよう。首元隠さないと……」

「あら、良いじゃありませんの。見せつけてあげれば 」

「えっクロエちゃん……正気?」

 

 使用人の方とか、お父様に見られたらとんでもない事になりそうなのに、そんな事は知らないと言った様子のクロエちゃん。むしろこれ幸いとにじり寄ってくる彼女に嫌な予感を覚える。

 

「ほら、隠せないほどつけてしまえば……問題ないですわよね?」

「ちょっと!? これ以上増やしたら本当に取り返しがぁ……あっ」

 

 そんな彼女が、まるで噛み付くかのようにうなじに唇を重ねる。まるで自分のものだとマーキングするように。彼女の独占欲の強さを甘く見ていたのかもしれない。思えば、確かに随分と待たせてしまった気もする。その反動だろうか。

 

「宝物は、今すぐ閉じ込めてしまいたくて仕方がありませんの。でも、それはそれとしてパートナーとは対等に居たい……中々、難儀なものですわね?」

「……私からは、なんとも」

 

 2度、3度と唇を重ねられ……やがてキスだったものは甘噛みに移行していく。ハムハム甘えるかのように……首という急所を相手に差し出しているという感覚、時折カプリと歯型がつくくらい強く噛みつかれて思わず背筋がゾクリとする。

 

「ピアス、似合っていますけど……気に入りませんわよね」

「ごめ……んっ」

 

 ピアスをしていない方の柔らかい耳たぶに、鈍い痛みが奔る。まずいと思いつつ、この感覚も悪くないと思ってしまう私は、どうしようもないくらいマゾってやつなんだろう。

 

「今は、これで……我慢してあげますけど。次は、ありませんわよ?」

「そっ、それじゃあ……お風呂に……」

「あら、後ろはこれで終わりですけど……前が残ってるじゃありませんの」

「……えっ?」

 

 その後は鎖骨に、腹部に胸元にと口元が近づいていき……たっぷりと頬にまでキスマークを付けられた私。ご飯の前に、流石に1人のレディとして色々気になるので二人でお風呂へと向かうこととなった。

 

 

 

 

 ちゃぷんと指先を水面へ沈める。お風呂場と言うよりかは浴場と言うようなサイズ感の浴槽には、私たちが来るのが分かっていたかのようにお湯が張られていた。うん、常に張ってるだけだと思いたい……切実に。

 

「隣、失礼しますわよ」

「良いけど……いや、なんでもないや」

 

 そんな大きな浴槽に、わざわざ横に詰めて座るクロエちゃんだったが……彼女も流石にここで乳繰りあうつもりは無いらしい。まぁ当然と言えば当然だ、他の人も使うお風呂場な訳だし。

 

 それが少しだけ残念だったり……いや、そんな事無いけどね?

 

 

 足を伸ばして、浴槽の中で大きく伸びをする。そんな私は、結構お風呂は好きだ。某国民的アニメのヒロインほどではないけど……このくらいの年齢の女の子で嫌いだという方が少数派だと思う。

 

 家でルクスといっしょに入った時ほど緊張感が無いのは、偏にお風呂が広すぎるからだろう。家のお風呂で一緒にお風呂に入っているというよりかは、銭湯にでも来た気分だった。

 

 ただ、こんなタイミングでどんな話をすれば良いのか分からない。昨日は激しかったね……とか? 馬鹿か、論外だ。誰か、同級生の女の子とお風呂に入っているときの適切な話題について教えてくれ。

 

「その……さ、クロエちゃんって何時から私の事その……好きだったの?」

「随分と薮から棒に聞きますわね?」

「気になるじゃん? やっぱりその……何処が好きなのとか、何時から好きなのかとか……やっぱり最初から?」

「……本当に、何処からその自信はやってくるんですの?」

 

 若干や話題の選択を間違えた気もしないけど、こんなときでも無いと聞けないだろう。そんな私の突拍子もない質問に、クロエちゃんは驚きながらも答えてはくれるらしい。

 

「正直なところ、初めて会ったときはいけ好かなかった……ですわね」

「ええっ!? なんで、どうして?」

「貴方のせいで学校の試験でも……魔法少女の人気投票でも2位止まりでしたのよ? 嫉妬の1つや2つ……湧くものでしょう?」

「あぁ、それは……そうかもねぇ……」

 

 理想の自分を取り繕うのは、趣味みたいなものだから学業にもコミュニケーションにも手は抜いていなかった。魔法少女としての実力は何もしなくても育っていくし……そう考えると申し訳ないな。

 

「あの頃は、橘家に相応しい姿を見せようと躍起になって……今思えば、空回りしていましたわね」

「確かに、何につけて挑まれてたかも……てっきりバディだからかと思ってた」

「……それは忘れてくださると助かりますわ」

 

 やれ外敵の討伐数だとか、助けた市民の数で張り合おうとして来た時期があったような気がする。

 

「そもそも、わたくしの魔法は戦闘()出来るだけ。初めから持ち味を活かすべきでしたのに……つまらない事で張り合っていましたわね」

「氷面鏡って情報収集のほうが得意そうだもんね、本来」

 

 外敵を見つけなければ倒すことはできない、当然のことだ。私は単純火力こそ最強ではあるものの、決して全能ではない。

 

「そんな中で色んな現場を戦ってきて……貴方の存在は、何時しか誰よりも信頼できるパートナーになっていましたの。それから貴方のことを、目で追うようになって。でも、理解すればするほど……わたくしと貴方の差は広がることは会っても、縮まる事はありませんでしたわ」

「そんな事、思ったこともないけど」

 

 頼れる相棒だと、今でも思っている。むしろ日本でこの私を止められる魔法少女なんて、彼女くらいだと。ただ、その事を口に出したことはなかった。

 

「でも……ある日気づいてしまいましたの。わたくしが貴方に頼られたことなんて……今まであったかと。真の意味で、貴方の横を歩くことなんて出来てはいないのではないかと」

 

 彼女なりに、悩んでいたのかもしれない。一緒にいたけど全然分からなかった。だって、グライシアは私にとって頼りになる相棒なのは言うまでもないことだったから。

 

「だからあの時、しずくが頼ってくれて……本当に嬉しかったんですのよ?」

「あの時って……あっ、もしかしてあの時?」

「えぇ、そうですわ。忘れもしませんわよ、急にいなくなったりして……一番来てほしい時に、颯爽と戻ってくるんですもの」

 

 そんな彼女は私の耳元へと唇を近づける。そして……囁くかのように呟いた。

 

「もう絶対に逃がしませんから……覚悟するんですのよ?」

「ひゃっ!? はっ、はい……」

 

 

 のぼせそうなくらい熱くなって、急いでお風呂を後にした私。

 だから、その前の懸念なんてすっかり忘れていて……

 

「あら、お待たせしましたわ。お父様、お母様」

「あぁ、昨日は良く眠れ……」

 

 食卓に並べられた料理と、こちらを見て気まずそうにしているクロエちゃんのお父さんと……

 

「あらあら、まぁまぁ……」

 

 ニコニコと楽しそうに私の顔を見つめるクロエちゃんのお母さん。

 その視線を見て、ようやく首元のキスマークを思い出す。

 

「ちっ、違うんです!?」

「……ははっ、橘家は安泰そうだね」

 

 何も違わない、でもそう言うしか無かった。

 

 そんなハプニングがありながらも、娘さんのキスマークを付けた私がいるというあまりにも気まずい雰囲気の中……痛むお尻を抑えて2日間の小旅行を乗り切った私。

 

 

 

 

 

 そんな私を待っていたのは……

 

「大切な話が、ある。サテライトの……」

 

 大事な話があるという……

 

「……あなたの抱える問題について」

 

 スクイレからの呼び出しだった。

 

第一章で続きが見たいお話のアンケート(第一弾)

  • 0.或る魔法少女の結末
  • 2.5.淫魔たちの牧場見学なんだが?
  • 7.5.ご主人様と躾の時間……なんだが?
  • その他(コメントまでどうぞ)
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