"コスモ"ハイスクール・フリート2202   作:篠乃丸@綾香

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第八話です!


第八話:不穏・不便な航海でピンチ!

地球時間夕刻

駆逐艦〈ハレカゼ〉艦内

 

 先ほどの亜空間通信を受け、ハレカゼの艦内では激論が巻き起こっていた。自分たちが謂れのない罪を着せられ、お尋ね者になった件についてである。

 

「なんで私たちが反乱したことになってんの!先に攻撃してきたのはサルシマでしょ!!」

 

 納得がいかない芽依がそう言って抗議するも、状況は変わらない。

 何故サルシマは執着的に発砲したのか、何故自分たちが反乱の汚名を着せられたのか。

 それはハレカゼの艦橋要員の自分たちが知る由もない、まるで分からないことなのだ。混乱が混乱を呼ぶ。

 

「どうしてあのまま航行不能になってんだろう……ノズルを撃ち抜いただけだよね?すぐに修理できるはずじゃ……」

「なら、わざと航行出来なくしたとか!」

 

 あまりに答えが出てこないので、幸子の妄想癖が始まる。

 

「私たち偶然にも、なにかサルシマの黒い秘密を知ってしまったんですよ!」

「始まった……」

「私たち遅刻しただけじゃん」

「オマエラー、見タナー!」

「私タチ、何モ見テマセンー!」

「エェイ、コノママ生カシテハオケン!バヒューン!ア、逃ゲラレタ。エェイ、コノママ機密トトモニ沈ンデヤル……ブクブク……」

「全部妄想でしょ……しかも宇宙だから水ないし……」

 

 冷静なツッコミを入れる芽依と、呆れて頭を抱えるましろ、苦笑いをする明乃。三者三様だったが、皆表情は明るく保てど、内心では不安を抱えていた。

 

「それより納沙さん、サルシマはああだったけど、古代教官のユウナギの方に連絡するっていう選択肢はないのか?」

 

 そこでましろは、もう一隻の教導艦が居るのを思い出してそう言った。

 確かに古代教官の乗るユウナギはまだ無事である可能性は高く、保護してもらえる可能性はある。

 だが──その可能性は明乃が否定した。

 

「危険だよ。古代教官だって事情を知っているとは思えないし、通信したら最後、太陽系の防衛軍艦艇に捕捉されるかもしれない」

「それもそうだな……」

 

 今自分達はお尋ね者なのだ。

 確かに欲を言えば、一刻も早く古代教官や他の学生艦と合流するべきであろうが、合流のために通信を飛ばせば、たちまち防衛軍の艦艇が目の前にワープアウトして来てジ・エンド。

 最悪の場合、防衛軍の艦艇も発砲してくるかもしれない。そうなればサルシマの時の二の舞どころか、ハレカゼの撃沈すらあり得る。

 ならば、逆に目的地まで一気にワープを行いたいところだが、それも困難だった。

 

「ワープも機関不調でしばらく使えない。まあ使えたとしても、惑星の近くだと座標計算を妨害されるしな……」

「ワープなしでの航海はキツイぞ〜」

「これではまるで、波動エンジンの到来以前に逆戻りですね」

 

 先ほど機関を全開で回したせいで、修理中だったワープ機関の作業が中断。

 しかも機関長によれば、全開運転の時の高圧エネルギーにより、修理の進捗もリセットされたと言う。

 

「ごめんね、一応、ヒペリオンに到着するまでの辛抱だから」

 

 艦長の明乃は、そう言って乗組員達にしばらくの辛抱を伝えた。艦橋要員の皆は仕方ないことと割り切っていたが、それでもキツイものはキツイ。

 しかも、問題はそれだけじゃない──

 

「い、位置情報は切ってあるけど……私たち、お尋ね者ってことだよね?高校生になったばかりなのに、犯罪者になっちゃったの?」

「リンちゃん……」

「こんなの嘘だよね!嘘だと言ってー!!」

「…………」

 

 鈴は泣きながらそう言う。

 彼女の言葉は、ハレカゼ乗組員の内心の不安を表していた。この先どうなるのか、助けは来るのか、汚名は晴れるのか、どんどん不安は募っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

アステロイドベルト宙域 教導艦〈ユウナギ〉

 

 空間に割れ目が生じた。

 割れ目を押し広げるようにして、水飛沫を上げながら一隻のパトロール艦がワープアウト。艦橋で太田が出現位置の報告を行う。

 

「ワープ終了!座標誤差0.001!」

 

 ワープアウトを確認し、パトロール艦ユウナギ艦長の古代は、この地点にいるはずの教導艦の位置を南部に問いかけた。

 

「南部、サルシマを見つけられるか?」

「任せてください。絶対にこの辺りにいるはずです」

 

 南部はユウナギのレーダー出力を操作し、デブリや小惑星で囲まれたこの宙域から、一隻の教導艦を見つけ出した。

 

「いました!レーダーに感あり!」

「位置は?」

「方位200、距離20000、エンジン停止で漂流しているようです」

 

 古代は艦橋上のメインモニターで、目的の教導艦サルシマの位置を確認。すぐさま太田は指示を飛ばす。

 

「よし、サルシマの救援に向かう!進路、200へ取り舵!」

 

 古代の指示を受け、太田が操縦桿をゆっくりと倒し、舳先をサルシマの方へ向けた。

 機関は巡航速度。しばらく航行していると、目視で目標が確認できるくらいにまで近づいた。

 

「サルシマを目視で確認。ノズル損傷により、航行不能に陥ってる模様」

 

 南部の報告を聞きながら、古代は艦長席を立ち上がり、双眼鏡でサルシマを確認した。

 

「相原、通信はどうだ?」

「呼びかけていますが、依然応答ありません。不気味なくらい静かに沈黙していますよ……」

 

 通信員の相原は、沈黙したまま動かないサルシマを見て、簡潔な報告と率直な感想を述べた。

 双眼鏡から見えるサルシマの様子も、まるで時が止まったかのように沈黙している。古代はその様子を不審に思ったが、もしかしたら救護を要する事態かもしれないと思い、新たな指示を出す。

 

「接舷する!救護班は移乗用意!」

 

 古代はサルシマへの接舷を指示する。

 太田の操縦で、ユウナギはサルシマの右舷へゆっくりと近づき、舳先を揃えた状態で停止した。

 接舷が完了し、一部の乗組員が移乗準備に入る中、古代はその応援へと向かうことにした。古庄教官に対し、何があったのかも直接聞きたい。

 

「人員が足りない。俺も行く、艦橋は南部に任せた」

「承りました。艦橋は任せてください」

 

 艦橋の事は南部に任せ、古代は両艦を接続する気密プローブに向かった。

 サルシマの閉ざされた気密隔壁に対し、工作班が工具を使ってロックを破壊。内部への通路を確保した。

 万が一のこともあるため、14年式拳銃を携えた古代が先頭に立つ。扉を少しだけ開放すると、先んじて中へ入り、安全を確認した。

 

「サルシマ艦内に侵入。これより艦内の調査に入ります」

 

 入口が安全だということを確認すると、古代達救護チームは二手に分かれて艦内の捜索に移った。

 その道中、古代は廊下で乗組員が倒れているのを確認、すぐさま駆け寄った。

 

「っ、おい、大丈夫か?」

 

 古代は倒れていた乗組員を介抱し、揺すってみた。反応はない。だが脈はあるようで外傷もない。命に別状はなさそうだ。

 

「乗員全員が気絶してる……?」

「何かあったのでしょうか?」

 

 救護班の班長が、何か嫌な予感がする口ぶりでそう言った。古代としても、その予感は先ほどから感じている。

 

「艦橋へ行こう。古庄教官の安否が心配だ」

 

 ひとまず艦橋へ向かい、古庄教官の安否を確認する。無事であれば、ハレカゼとの間に何があったのかを聞くこともできる。彼女の確保は最優先だった。

 古代は艦橋へ続く階段を登り、扉を少し開けた。内側から艦橋を覗くと、そこに立つ人影が見えた。見覚えのある髪型だった。

 

「よかった、古庄教官──」

 

 だが、安心したのは束の間だった。

 古庄教官らしき人物は、こちらに向けて97式拳銃を向け、引き金を引いた。

 

「ッ!!」

 

 古代は咄嗟に扉の裏に隠れた。

 弾丸が髪を掠め、壁に当たって火花が散る。

 

「古代さん!」

「ダメだ、近づくな!」

 

 救護班の班長が咄嗟に声をかけるが、古代は跳弾などを考慮し、離れるように伝えた。

 

「くっ……古庄教官!俺です、古代です!発砲をやめてください!」

 

 だがその言葉虚しく、二発目、三発目と古庄教官は発砲を続ける。危険すぎるので顔を出すのも控えた。

 

『古代さん!どうかしましたか!?』

 

 艦橋から南部の通信が入る。

 おそらく記録を取っていた通信機器から、発砲音がしたので声をかけたのだろう。

 

「古庄教官がいきなり発砲してきた!艦橋に近づけない!」

『なんだって……!?』

 

 南部がその報告に驚嘆の声を漏らす。その間にも、古庄教官は発砲を続けている。とてもじゃないが近づけない上、放置しておくのも危険だった。

 見かねた救護班の一人が拳銃を取り出し、古代に声をかける。

 

「手足を撃って無力化しますか?」

「いや、動脈に当たったら危険だ。別の手段を使おう」

 

 古庄教官に致命傷を与えるわけにはいかない。

 そう考えて古代が取り出したのは、二つ目の拳銃だった。私物の14式と違い、大きくてゴツい見た目をしている。

 それには実弾拳銃に見られる銃口の類は見当たらず、代わりに鏡のような装置が取り付けられていた。

 

「古代さん、それは?」

「まあ見てろ。こいつの麻酔モードなら……」

 

 古代は新しい拳銃──02式パルスガンのモードを麻痺モードに選択。セレクターの出力をレベル1に設定した。

 そして古庄教官が発砲した直後、顔と拳銃だけを出して彼女へパルスガンを発射した。

 

「ッ──!!」

 

 電磁パルスのエネルギーが当たった彼女は、一瞬ふらついて倒れそうになる。だが拳銃を持ったまま、力を振り絞るようにしてまた拳銃を向けて来た。

 

「っ!」

 

 それを想定していた古代は、パルスガンの出力をレベル2に切り替え、パルス弾を発射した。

 相当出力のパルス弾をモロに浴びた古庄は、流石に耐えられなかったのか、そのまま仰向けに倒れた。

 

「教官を無力化した!艦橋へ突入!」

 

 古代の合図と共に、拳銃を持った隊員達が艦橋へ突入する。隅々までクリアリングし、他に敵対者がいないことを確認した。

 

「クリア!」

「他乗組員は気絶しています!」

「救護班、乗組員の救助を!古庄教官を最優先に!」

「了解!」

 

 救護班には、レベル2のパルス波を浴びた古庄の救護を優先させた。このレベルのパルス波を浴びてしまうと、処置が遅れれば後遺症が残るかもしれない。

 早急に救護班が彼女を担架に乗せ、艦橋を後にする。そして乗組員の救命を指揮する傍ら、古代はようやく頭を整理して、疑問を持つことができた。

 

「一体何が起きてるんだ……?」

 

 訳がわからなかった。

 ハレカゼと交戦したとの通信もそうだが、乗組員は気絶している上、古庄教官が発砲して来た。

 しかもあの時の古庄教官の目は、充血したように赤く光っており、表情も正気を失っているようだった。

 なにか、よからなぬことがこの船で起こっている。そう感じた古代は、救護班に乗組員を乗せ、サルシマから離れるよう伝えた。

 なにか、猛烈な嫌な予感がしたからだ。

 




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