駆逐艦〈ハレカゼ〉 艦外
艦長の作戦により、応急員の面々は気密スーツを着用。艦外での作業を開始した。
応急員の和住 媛萌と、同じく青木 百々は、船に命綱をくくりつけつつ、無重力空間を浮遊。ハレカゼの尾翼に毛布を縛り付けていた。
「まさか、尾翼に毛布を付けてキャッチするなんて……」
『艦長は大胆っす……』
二人は作業を行いながら、常にオンにしてある通信でそう会話する。二人は応急員なので船外活動に慣れており、素早い作業で毛布の紐を器用に縛る。
「……それにしてもさ、ほんとにガミラス人を助けるの?」
『艦長はそのつもりみたいっすけど……』
「大丈夫かな……」
ガミラスとの因縁は払拭されたわけじゃない。艦内の子達にも、ガミラスによって親を失った人もいる。果たして受け入れられるのか、そもそも作戦はうまくいくのか。
媛萌は一抹の不安を抱えながらも、最後の紐を縛った。
ハレカゼはガイデロール級から逃げながら、毛布の作業を続けていた。明乃はそれが終わった報告を艦橋で受け取った。
『こちら応急班。毛布の作業終わりました!』
「作戦行けます!」
幸子が応急員の報告を受け、そう言って艦長に伝える。その言葉を受け取った艦長は、帽子を深く被り、作戦開始の合図を送る。
「よし……作戦開始!反転180度!最大戦速!」
艦長の言葉を受け、未だ怖がっている鈴が、半泣きになりながらも操縦桿を横に倒して艦をロールさせた。
視界が回転する。スラスターの出力を全開にし、エンジンの出力も最大。ハレカゼは目標へ向かった。
ガイデロールはその横から砲撃をしてくる。明乃は相手との位置に気を配りつつ、目標を双眼鏡で視認した。
『目標!距離12000!方位右30!下げ20!』
マチコが観測情報を送ってくる。
その情報を元にして、艦の航法システムには目標へのアプローチ進路が表示されている。それを見ながら、明乃が伝える。
「リンちゃん!面舵30、下げ舵20!」
「りょ、了解です……!」
明乃の指示により、船は漂流者の方へ舳先を向ける。鈴の巧みな操縦により、ピッタリ寸分違わず合わせる事ができた。
そして航法システムを見ながら、幸子が報告する。
「接触まで、あと60秒!」
「機関室!全力出し続けて!」
『あいよ!』
麻侖はそう言いながら、機関の面倒を見続けている。彼女の言う3分の間で、目標へアプローチしなければならない。
「接触まで、あと30秒!」
「進路調節!」
「は、はいぃ!」
鈴が操縦桿の十字ボタンを操作。スラスターを微量だけ噴かし、目標の少し上を通過するように調節した。
機関は全速を出し続けている。尾翼に広げられた毛布は、今頃細かいデブリなどを吸収してジャリジャリになっているだろうが、救出さえできればよかった。
「接触まで、あと10秒!」
「…………!」
幸子が報告してくる。それを聞き、艦長は目の前の点のような目標を目で追った。
やれる事はやった。あとは祈るだけ。大丈夫、必ず成功する。
「接触します!5……4……3……2……1……!」
カウントダウンと共に、少しだけ衝撃が走った。何かとぶつかったような、しかし柔らかなものに受け止められたのか、そんな感覚だった。
「ひめちゃん!確認お願い!」
すぐさま艦の下部の方で待機していた媛萌が、毛布の様子を確認する。
彼女が身を乗り出して確認すると、そこには網に捉えられた魚のようにして、ガミラスのパイロットスーツに身を包んだ女の子がいた。
『いました!目標の確保を確認!』
「やりました!」
艦橋に歓声が上がる。幸子は救助作戦が成功したことを受け、静かにガッツポーズをとった。
「作戦終了!すぐに目標を艦内へ!」
『はい!』
「本艦はこれより離脱する!進路そのまま!」
「りょ、了解です!」
機関が全力を出せる時間は少しだけ残っていた。この僅かな時間は、離脱のために残してあった。その間にガイデロールから距離を取る。
ガイデロールは相も変わらず砲撃を続けている。周囲のデブリに着弾し、あちこちから破片が飛んでくる。目標を艦内へ素早く収容しなかったら、破片で怪我人が出ているかもしれない。
『ガイデロールとの距離、離れていきます!』
「間も無く主砲の射程外です!」
マチコと幸子がそう報告した。
明乃は相手との距離を双眼鏡で確認する。距離は38000以上まで離れている。あと少しで離脱できそうだ。それまで機関が保ってくれることを願った。
「間も無く射程圏外……5……4……3……2……1……!」
幸子のカウントダウンが終わる頃、ガイデロールが最後のビームを撃って来た。
そのビームはハレカゼを捉えていたが、しかし射程圏外だったため、ビームは減衰して消えていった。
それを横目でチラリと確認した明乃は、全開運転だった機関の出力を下げさせた。
「機関、速力下げ!第五戦速よーそろー!」
「りょ、了解!機関、第五戦速!」
鈴の操作で機関の出力が下げられる。
過負荷運転を行なっていたハレカゼの高圧波動エンジンが、ゆっくりと出力を落としていき、安全な出力まで戻された。
「ふぅ……」
「に、逃げ切ったぁ……!」
戦いがひと段落し、艦橋要員の面々は息を吐いた。緊迫の三分間であった。みんな疲れていそうだ。
「作戦終了。みんな、お疲れ様、ありがとう!」
明乃は改めて、手伝ってくれたみんなに感謝を伝える。自分の我儘だとはわかっていたが、それに皆を巻き込んでしまった以上、感謝しなければならない。
明乃も少し疲れたのか、艦長席に深く座り、息を吐いた。だが休むのも束の間、副長のましろが口を開いた。
「艦長」
「なに、シロちゃん?」
明乃がましろをあだ名で呼ぶ。
ましろとしては宗谷、もしくは副長と呼んで欲しかったが、今はそれどころではなかった。
「少しお話があります」
ましろの言葉を受け、明乃は少し俯き、無言で了承。静かに艦長席を立ち上がった。
ましろは明乃をハレカゼの廊下に連れて来た。ここは普段はあまり人通りの多くない箇所だった。明乃はここに連れて来た理由を、薄々察している。
ましろは周りに人がいないことを改めて確認し、艦長へ向けて口を開いた。声色には少し怒りが混じっていた。
「艦長、どういうおつもりですか?」
「なんのこと?」
「惚けないでください!あのガミラス人の事です!」
ましろは明乃を問い詰める。
彼女の怒りの矛先は、明乃の予想通りだった。やはり地球と因縁のあるガミラス人を助けるというのは、ましろとしても思うところがあるのかもしれない。
だが、明乃の意思は硬い。ましろに臆する事なく、彼女に反論する。
「助けた理由はさっき説明したよ」
「あんなので納得できるわけないじゃないですか……」
明乃はそう言うが、ましろは納得していないのか、反論をして来た。
「"船乗りはみんな仲間"……正直、いい言葉だと思います。人道的で耳障りのいい言葉です」
「…………」
「でも、ガミラスとの戦争からまだ3年しか経っていません。乗組員の中には、そんな耳障りのいい言葉じゃ、納得できない子達もいるんです……!」
「…………」
「艦長……!」
明乃はましろに詰められ、少し俯いた。ましろが沈黙する艦長を見て、ため息をついて頭を抱えたのを見計らい、明乃は口を開く。
「戦争で不幸になったのは、私も同じだよ」
「えっ……?」
衝撃的な言葉だった。
てっきり明乃は、ガミラスとの戦争で失ったものがないからこんな事をしたのではないかと疑っていたましろは、意表を突かれて言葉を失う。
「それでも、助けたかった。ガミラスはもう敵じゃないとか、地球の友好国だとか、それもあるけど、やっぱり私は……」
明乃はそんなましろと対峙しつつ、自分の気持ちを表現した。明野の脳裏にあるのは、ガミラスとのファーストコンタクトで戦死した父親の言葉。
──明乃、大丈夫だ。
──宇宙人とだって、きっと友達になれる。
今ではもう声も覚えていない。朧げになりつつある父の記憶だったが、そんな言葉だけは覚えていた。
父はそんな言葉をのこして、乗艦と共に天王星へ向かった。それは奇しくも、ガミラスとのファーストコンタクトの場所であった……
「……分かりました。ただし、助けるのはあの子だけにしてくださいよ?」
「うん、ありがとう」
その言葉に何かを察したのか、ましろは納得してくれた。ひとまず話は終わり、ましろは廊下を去っていった。
そんな彼女を見送りつつ、明乃は胸元に隠してあったロケットペンダントを取り出して、中の写真を開いた。
そこにはもう記憶にない父の姿と、あの焼け野原で自分を助けてくれた母の姿が、懐かしい写真と共に入っていた。
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本作ゥの予定するCPをっ、亡き総統への手向けとするのだぁっ、選べ!ガーレ・ガミロンッ!
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明乃×ましろ
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土門×もえか
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山南×百々
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南部×志摩
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ミーナ×幸子
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古代×雪
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俺は……選ばない!
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愚かなりゲーぇ↑ルーぅ↓……